「血族」山口瞳 (文春文庫)



 自己の出生にまつわるなにかについてけして語ることが無かった母。その母が隠し続けた事実をさぐることにした「私」。時にためらい、壁にぶつかりながらも途中であきらめること無く探し続けた結果、目の前に見えてきた母の血族の正体とは。
 桜庭一樹の書評本で紹介されていて読んだ一冊ですが、驚くほど面白かったです。これまでずっと敬遠してきた私小説というジャンルだけど、秘密を探る過程がとてもスリリングで、美形揃いだったという母の一族、その正体が知れるまでの流れとかはミステリといっても良いと思う。小洒落たエッセイの書き手、としか意識していなかった著者の一面を知った思いです。良かった。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする