「百合と腹巻」田辺聖子(ポプラ文庫)



 5つの短篇が収録されています。
 どの短篇も、人間の恋とおかしみが心地良くて気持ち良く楽しめます。とくに、勢いよくならべ立てられる河内弁の凄さに笑った「四人め」と、50歳の女が恋人との別れの予感を弄ぶ「薔薇の雨」が良かったです。誰も悪くなくても、こんなにもひとの心は思いのままにならない。それを愁嘆場にもメロドラマにもせず淡々と描くこの文章の美しさ。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする