犬神サーカス団「『ビバ!アメリカ』レコ発単独興行」(岡山CRAZYMAMA 2nd Room)

 さて、ライブが続くよ日曜日。というわけで、今日は地元にて、犬神サーカス団のワンマンライブです。イベントではちょこちょこ見ていたのですが、ワンマンはなんと3年ぶり。
 本来は10月発売だった新作「ビバ!アメリカ」は、ちょっとした事情の為、iTunesでのDL販売が先行となっています。犬神といえば、歌詞もとても重要なバンドの為、パッケージ販売を待とうかとも思っていたのですが、ついつい待てずにDLで購入しました。そしたらこれがあなた。大変な傑作。個人的には、「形而上のエロス」以来の作品です。それ以後のアルバムもどれも良作なのは間違いないのですが、この「ビバ!アメリカ」を聴いてしまうと、あともうひとつ欲しかったのかなあ…となんとなく思ったり。それだけこの「ビバ!アメリカ」が良かった。たとえば、他人にバンドをお勧めする際に、どれを聞かせたらいいか悩む事ってあるじゃないですか。無難なのはベスト盤かもしれませんが、本当ならば、そのバンドの最新アルバムを聴かせて「こういうバンドだよ!」と胸張ってお勧めできれば気持ちいいですよね。このアルバムはそれが出来るアルバムです。これだけの曲数(15曲)の、どれもが捨て曲無しで、どれも犬神、バラードも振りつけ曲も激しい曲もずらりと勢ぞろい。もちろん、犬神の世界観は濃厚にゆるぎない。たまらないです。そんなアルバムの発売記念ライブとあれば、期待も高まるというものですよ。
 
 会場は、外階段に並ばされるので印象深い岡山CRAZYMAMA 2nd Room。幸い、大して並ぶこともなくするっと入れました。お客さんは30?40人くらいだったからね…。イベントでは何回か来岡していますが、ワンマンで来るのはここ数年ではないことでは。それもあってか、地元バンドのO.A有り。
 
 まずは、KILER(公式サイト)。GtとVoのユニットで、今回が結成してから、ライブ三回目、とのことでした。訥々としたVoのMCによると、前のバンドで一緒だったGtとユニットを組むにあたり、活動頻度はゆっくりで行こうと話していたにも関わらず、Gtから来た今回の話はとても急で「一生のお願いだから」と言われたとのこと。なぜか。Gtが犬っ子だから。「怪談首吊りの森の頃からファンです、今回、サインをもらえるんじゃないかと淡い期待をもってきました」とにこやかに語るGtに好感度上がる。例えリップサービスだとしても、こういうこと云われると嬉しくなるじゃないですか(でも、Gtは後でブログに「よしき君へ」と書かれたサイン付きCDの写真をUPしていたので、リップサービスではなかったと判明)。でもまあね。そういうのはおまけでね。ちょっとね、えらいことが。主にわたしのなかで。チラシを見た段階では、正直、まったく期待してなかったのに。演奏が始まり、何曲も聴くにつれ、メロディアスな楽曲と抽象的で甘い歌詞、そしてVoのハイトーンで歪まない声が。が。ががが。わたしのなかのマスケラとかBABYLONとかが入っていた部屋をこんこんとノックして、「すいませーん新入りです」って云った。いま云った間違いなく云った!来たよこれ来た!という感じで、うはうはとCDも購入してしまいました。お友達が聴けば、はい、くさてるんの好みですねとお分かりかと思います。視聴ができるMySpaceはこちら。ぜひひとつ。 
 そんなわけでKILLERにふにゃふにゃしてたもので、続くセツナ神姫さんは、まったりと眺めてしまいました。様式美って楽しいなあと思った。
 そしていよいよ本編、犬神サーカス団の登場です。これからツアーに参加されるかたのために、曲名だけ保護色にしておきます。
 犬神サーカス団を生で見るたびに思う。この凶子さんの声が、音源で再現されないのはなぜなんだろう。もちろん、音源の声も素晴らしいんだけど、生声で聴くときの、響きというか質というか、とても可愛らしく、広がる感じが大好きです。今回のアルバムがわたし的に大傑作なので、そのアルバムのお披露目ツアーということで、期待はもちろんあったのですが、期待以上に、ライブで聴く新曲は良かったです。犬神はとても巧いひとたちなので、音源だけで完成されているのは間違いないのだけど、ライブではそれが再現されるだけで終わらない。当たり前と言われるかもしれないけれど、それが意外と当たり前でないバンドも多いと思うのよ…。アーティストが実際に眼前に実在している有難さというだけでない、ひとつの作品としてのライブ。そういう感覚を、別に芝居仕立てとか構成がどうこうというレベルで無く、感じることが出来ました。
 また、わたしにとっての犬神サーカス団は、出会った時期が個人的にとてもしんどかった頃で、その楽曲でずいぶん救われたという一方的な思い込みがあるバンドです。歌詞に励まされたとか共感したとかとはまた違う話で、歌詞も演奏も楽曲もぜんぶこみで、この曲に救われたという思いがした曲が何曲もあります。「夜が終わっちまう前に…」「鬼畜」「父親憎悪」などなど。今回のアルバムにも、いずれそうなっていくだろうなという曲が何曲もありますが、初聴からやられたのが、間違いなく「幼女人形」。絶対に放送されないどころか印刷された歌詞もあれだろうと思うものですが、この激しさと切なさ、美しさに、わたしは涙ぐむ思いになりました。この日のライブでも、この曲には激しく胸を掴まれたような心持ちになりました。どんな表現でも、その表現でしか現すことができないなにかがあるからには、そこに存在する意味を否定することは、誰にもできない。わたしは犬神の歌詞については、世間で思われてるほど、猟奇だの狂気だのというものは感じないのです。むしろそれを小道具にしながら、自然とにじみ出るなにかがある。それを受け取ればいい、そんな印象でいます。
 まあ、そんな理屈は置いておいて(笑)、今日も犬神サーカス団はみんな可愛かった!個人的にやりたいこと、というお題に、それなりに真面目に答えた兄さんたち(ジン兄「もっとピック弾きが出来るようになって、15周年で作ったピックを減らしていきたい」情次兄「楽屋でスポーツチームを作るとか盛り上がっても、いろいろ調整するのがめんどくさくて実現しない。なので、そういうことを調整してくれる若くて可愛い男の子を探す」明兄「小説を書いて賞金二千万を獲得する」)を見て、「みんなすごく真面目に答えてる…。あたい、雲に乗るとかそういうのでいいと思ってたのに…」とつぶやき、場の爆笑を引き起こして驚くきょんきょん。ツボに入って笑い続ける明兄さんとこみで本当に可愛かった。きょんきょんの笑い声は、それを聞くだけでこっちが笑っちゃいますね。極上。様々な振り付けや小道具に対応する犬っ子の皆さんを見て「みんな本当に柔軟ねえ」というコメントもおかしかった。みんな楽しそうなのでいいと思いますよ!
 あと、グッズのシュシュについて「一個ニ個じゃなくて三個着けるのが東京では流行ってるんだよ、トリプルテールって」としれっと云う情次兄さんも地味におかしかった。「振りつけは、フリーで行こう」とお約束を忘れない明兄さんといい、可愛い謎の店員さんが愛らしかったジンさんといい。犬神はメンバーみんなが犬神サーカス団を楽しんでいる感じが伝わってきて、それだけで、見ているこっちも楽しくなります。
 曲について。「ビバ!アメリカ」収録曲は全部演奏したんじゃないかな?一般に、バンドの新譜発売のツアーでは、新曲中心だと、つい過去曲が聴きたくて寂しくなることがあるのですが、今回は問題なし。アルバムを事前に聴きこんでたせいもありますが、ライブ映えする良い曲ばかりで、本当に楽しかったです。とりわけ、ライブで絶対に楽しいと思っていた「メメントモリ」や「DEAD END KIDS」が予想通りに楽しくて、しっかり拳を上げてました。また、「華麗に舞え!」にあんなに可愛い振りつけがあるとは(笑)。犬神の振り付けはその場で見てもすぐに対応できる難易度なので、有難くも楽しいです。また「CRAZY CAT LADY」の「猫にゃんにゃんにゃん!高部知子もにゃんにゃんにゃん!奥菜恵もにゃんにゃんにゃん!」には笑った。年齢ハードル高っ(笑)。 新曲以外では、大好きな「花嫁」が嬉しかったし、まさかのアンコールでの「黄泉の国」では、実に楽しく振りつけさせて頂きました。最後の最後での「命みぢかし恋せよ人類!」は、定番ながら、盛り上がるので良かった。ああ楽しかった。
 安定した完成度でいつも楽しませてくれる大好きなバンドです。今後も見ていきたいと思います。ありがとう、犬神サーカス団。

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