「銀河英雄伝説@TAKARAZUKA」(宝塚大劇場)

 さて、いよいよやってきました兵庫県宝塚市にあります宝塚大劇場。かの銀河英雄伝説がよりにもよって(いやホンマに)あのタカラヅカで上演される(公式サイト)との第一報を耳にして色めき立ったあの日から早や数ヶ月。とうとう来ましたよ、大劇場まで。えぇ、台風とともに
 岡山を出る時にすでに結構な雨降りだったのですが、今回ご一緒する圭木さんと会った新大阪は曇り空。とりあえず、無事に宝塚まで着きさえすればあとは野となれ山となれ精神でいたのですが、まだこの段階では台風が我々のはやる心に追いついていない感じでした。そしてはやりすぎたあまりに久しぶりの再会にも関わらず、会ったとたんに「未来警察ウラシマン」の話をしてすみませんでした…(CSで第一回の再放送見たばかりで超萌えてた)(リアルタイムで見ていた幼い頃は全く気づかなかったが、リュウとクロードは出逢い頭がいきなりちゅーだった)(すみませんどうしても誰かに言わずには)
 も、もちろん道すがらには銀英伝の話をしましたよ!原作ノベルズは、わたしら世代のオタク女子には外せない一大ムーブメントでした。魔王伝とかバンパイアハンターDの時代です(懐)。いろいろ楽しく思い出しながらも自分の黒歴史の釜の蓋もうっかり開きかねない、そういうお年頃の頃に楽しませてもらいました。その後もマンガ版や長大なアニメ版(リアルタイムでは色々文句もあったけど、いまとなっては本当に良いお仕事をして下さったとCSで一挙放送を見るたびに思います。特に声優…)の存在のおかげで、未だに忘れることはない素晴らしい作品であります。
 で、それがタカラヅカで上演とあっては、行かない選択肢はありますまい。わたしはヅカに関してはファンと名乗るのもためらわれるスーパーライトな楽しみ方しかしてませんが(数ヶ月に一回、気になる演目があればA席で見るくらい)、あの華やかな舞台と銀英伝の組み合わせなんて、考えるだけでもわくわくします。だって、あの美麗極まりない登場人物たちが、タカラヅカのスターによって具現化されるのですよ。しかもタカラヅカだからオーケストラつきの音楽…(うっとり)。もちろん、あの原作をどこまで切り取るのか、戦闘場面が多いのはどうするのか、タカラヅカだから当然ロマンスの要素は外せないんだけど、主役たるラインハルトの相手であるヒルダの登場は物語のかなり後半だよとか気になる要素も沢山ありました。が、配役が発表されポスターが公表されたら、見事にノックアウト。ほら、我々(々ってだれ)、これまでの経験から、写真マジックには騙されないすれっからしじゃないですか。でもね、タカラヅカはね、写真がマジックじゃないの…この写真が生きて動いて歌って下手したら写真より美しいのです。舞台化粧は舞台でこそ映えるのです…。この美しい生き物(失礼)が演じる銀英伝ですよ、見ないでか!
 と、テンションMAXなつもりで降り立った宝塚大劇場にて、そんなわたしのテンションを微笑ましく見守りながら、ご自身たちは、テンション以前に滾る溶岩のような情熱をヅカに注がれている先輩のお二人、C嬢とK嬢とお会いすることができました。お二人とも元は帝國での出逢いです。C嬢とは二年前の悪魔さんで私が上京した際にお茶をして「次に会うのはどこですかねー」「兵庫県宝塚市ですかねー」なんて笑ってたのにまさか本当にそうなるなんて。K嬢に至ってはいつぶりかを過去サイトの日記をひもときなんとなく調べたら、たぶん10年ぶりです。いまはネットがあるので顔は合わせなくともなんとなく繋がり感は保てるものとはいえ、なにがすごいって変わってない。さては年齢を止めたな、ずるいよ!
 日曜ということもあり、団体客も多くて混み混みの会場でしたが、C嬢が手配して下さった席はほどよく真ん中で嬉しいかぎり。席について宝塚観劇の際は基本のオペラグラスを取り出すと、宝塚初心者の圭木さんまで持参してたので、その抜かりなさに笑いました。必需品だよ!
さて、本番。なんせ原作を読んだのははるか昔、もちろん基本的な展開は頭にありますが、その原作本もいまは実家(こういう人が多そうだ…)、細かいツッコミは難しいうえ、タカラヅカ自体もライトなファンの為、なにかとふわっとした感想になるのをお許しください。
 まずはストーリーについて。だいたい原作の二巻までと思って頂ければよいかと。キルヒアイスの死と、皇帝の死によるラインハルトの出世にくわえて、原作ではまだ登場していないヒルダがラインハルトを支える存在となっていたり、ヤンはジェシカ・エドワーズとの淡い関わりがクローズアップされています。なにかとややこしい舞台背景をあらかじめ分かっているはずもなく、それどころかSFにも馴染みがないお客さんにまで(銀英伝がSFかどうかといわれたらそりゃ諸説あるところかもしれませんが、かの大元帥の『SFは絵だねえ!』という名言もありますし、なによりスペースファンタジーなのでまあいいか)飲み込んでもらわないといけないわけです。その狂言回しとしてすべてを裏で掌握しているフェザーンのルビンスキーが要所要所で大活躍でした。ルビンスキーってこんなに重要な役回りだったっけ?(笑)しかし、間違いなく今回のお疲れ様大賞。それでも全体的に、かなりうまく、原作にある良い場面や名台詞を抜き出してまとめていたと思います。どうしても駆け足だったり説明不足なところもあったとは思いますが(特に二幕。ルビンスキー忙しすぎ)、それはもう、仕方ないよねえ。 
 それでも良かった場面といえば、個人的には、アンネローゼを巡る宮廷の陰謀や権力争いの華やかさや底しれなさがうかがいしれる一連の場面が、タカラヅカの舞台に映えててすごく良かった。宮廷を舞台にしてるんだから、タカラヅカの雰囲気に逢うのは当たり前なんですが、さすがという感じです。わたしは原作でもベーネミュンデ公爵夫人の狂気がとても痛ましくかつ人間的で、好きな逸話だったので、これがちゃんと表現されてたのが嬉しかったです。あれは、アンネローゼの無謬性が、普通の人間にとってどれほど遠く理解しがたい力を持つものかということを象徴的に現しているエピソードだと思うのです。そもそも、この銀英伝という話自体がアンネローゼという稀有な存在がいなければ成り立たない話ですしね。
 今回の舞台でのオリジナル要素ともいえる、ヒルダとラインハルトの触れあいも、この段階の二人であれば頷けるごく自然な気持ちの寄り添いかたにとどまっていてそれも良かった。わたし、あの原作でのラインハルトのプロポーズのエピソードが実に可愛らしくて大好きなのですが、この舞台での二人ならゆくゆくはそれに繋がっても不自然は無い感じでした。それも舞台で見たいなあ。ヤンのほうも、ジェシカ・エドワーズとのエピソードが、とてもかれらしく描かれていました。女の立場からしたらひどいかもしれんが(笑)。フレデリカも登場してますが、まだあくまで上司と副官にもしかしてプラスα?くらいの扱いに留まってましたね。ここもこれからの気持ちの盛り上がりを見たいなあ。
 キャストに関しては、もう、どの皆さんも素晴らしいとしか言いようがなく、道原かつみのマンガ版に3倍美麗さを足すくらいだと思って欲しいです。あ、ロイエンタールは本仁戻だったかもしれん。でも、ビッテンフェルトとフレーゲル男爵は見事にアニメ版だった(笑)。また、宝塚歌劇、ですので、当然、歌がふんだんに入るわけですが、これも世界観に違和感なくしっくりときて、楽しめました。個人的に良かったのは、全然メインじゃないんですが、ガイエスブルク要塞への出撃前夜、帝国軍の精鋭たちが愛する人と共に夜を過ごす場面で歌われたせつない曲。これが、銀英伝らしい軍人たちの一面と、タカラヅカらしいロマンスの香りが融合している感じで、すごく雰囲気があって良かったのです。ここのロイエンタールは良かった…。
 まあ、誰が良かったとかそういう話をしていると、キャストひとりひとりについて語りそうだし、そうなると一回見ただけでは確認が難しいからといまから東京に出かけてしまいそうなのでアレなんですが(来ればいいよ!の声が聞こえたな)(九州もあるよ!とかも聞こえるな)、とりあえず、ラインハルトは完璧でした。あの自信家でこどもで天才肌なんだけど可愛らしいお人形のような美形が具現化されていました。なにより、マント。素晴らしいよマント。何枚も衣装替えするよマント。マント愛好家のみなさまには外せないマントといえましょう。ヒルダも可愛らしかった…。しかも、自分の野心の為に邁進するラインハルトを慕う、ただ美しいだけのお嬢様ではないヒルダがちゃんとそこにいました。
 あと、個人的に印象的だったのは、キルヒアイスとアンスバッハ。アンネローゼへの思慕の念を大事に抱えつつ、野心を抱くラインハルトを支える友人として、この物語の要であるキルヒアイスに説得力が無ければ物語が成り立たないだけに、このキルヒアイスの良さには痺れました。また、アンスバッハもラインハルトにとっては適役ながら、軍人らしい凛とした姿がとても良かった。
 また、全体的に、美麗な人々の暗躍と闘いや政治的な駆け引きがメインの話となるのですが、そこかしこにちょっとした笑いが仕掛けられていたのも楽しかったです。「食堂が閉まります」には心がほのぼのした(笑)。ユリアンのヤンに対する物言いも実に楽しい。オーベルシュタインの目玉とか(あれは笑いの仕掛けではありません)。
 まあ、どのキャストも素敵だったおかげで見せ場が各自欲しかったし、もっともっと見たかったな!というのが正直なところですが、あの原作をよくぞここまでまとめ上げたという感じでとても楽しめました。原作ファンなら「こういう銀英伝もある」と思って楽しめること請け合いです。個人的には、本編が終わって、満足感を感じて余韻に浸っているところにはじまるラインダンス、というあのタカラヅカならではのドリーム展開まで楽しんで頂きたい。わたしも初めて見た時は意味が分かりませんでした。いまも意味は分かりませんが、あれが無いとなんとなくいやです。
 舞台が終わってからは、人の波に飲み込まれそうになりながらなんとか外へ。ちょうどよく、台風到来。すさまじい風と雨の中を歩いて、駅近くでみんなでお茶しました。K嬢がにこやかに「みんなわたしのところまで来ればいいよ!(ヅカファンとして)」と語った時に、「冗談でも頷けない」と言ってしまいましたすみません。大阪ドームでのサッカーの試合(違)が台風で飛んでしまったC嬢も、エンタメに向けるその情熱を尊敬しています。その勢いでわたしの見果てぬ地平へと突き進んで下さい。しかしそこで聞いたお話はどれもたいへん面白いものでした。「ベルばら」見たいな。そして、みんなジャンル変わってもやってることは一緒だね、というのがお友達の証拠だと思います。「でも、みんな今日も軍服で一緒になったね」というのが落ちだったかも。あはは。なにしろ台風だったもので、関東組のみなさまは帰途がたいへんだったようです。つぎはもうちょっと気候が良い時に一緒に楽しみたいですね。やっぱり宝塚になるのかな(笑)。
 この銀英伝@TAKRAZUKA、銀英伝ファン、また銀英伝はなんとなくレベルのオタク属性のかたにはおすすめです。宝塚初心者にはちょうど良い入り口のような気がします。あと、東京公演と博多座での公演が残っていますので、興味がある方はぜひ!とお薦めさせて下さいね。お付き合い頂いたみなさま、本当にありがとうございました!とても楽しかったです。

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