「ニッケルオデオン【青】」道満清明(小学館・IKKIコミックス)



 8Pの読み切り短篇マンガが13編収録されています。
 可愛らしい絵と裏腹に、ぎりぎりのバランスで成り立っているような危うい感覚。それらが不思議と調和しているのが心地良いです。読んでいても、こういう路線で行くのかな?と思ったところで、ふっと軽く足を掬ってきて、こちらの予想を裏切ってくれる感じ。いきなり足元が揺らいでしまったこちらとしては、あっけない思いのまま、物語の行き先を見守るしかないわけです。読み手としての快感に浸りながら。
 微笑ましく感じられる内容のものもあれば、ブラックなネタや下ネタもあります。が、それらはどれも同じ世界軸の中で成り立っていて、読んでいて違和感や厭な感じがしません(ひとによってはするかもしれませんが。エロはそうでもないけど、グロはきついかも)。わたしにはそれが好ましいです。
 13編、どれもそれぞれ面白いです。個人的には、食人マニアに捕らえられた姉妹。姉が妹を助ける為に申し出たこととは…という「食餌の衝動」。食べてしまいたいほどにあなたが好き、が文字通りの意味である世界のなかでの純愛がせつない「ミシュリーヌとその中の者たちの話」、ハヤブサに恋した女子とそれを見守ることしか出来ない男子の「うたかたの日々」などが好きでした。読み手の数だけ、ベスト1が違うような気がする、そんな作品集です。

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