「ルパン三世はなぜ盗むのか?―250万円の快楽」豊福きこう(双葉社)感想

 こんにちは。いろいろルパン関連書籍の感想を書こうとしていたところ、ついつい読み込んでしまい、肝心の感想を書く時間が無くなってしまうことが多々ある、とりこです。こういうの、朝顔やつるべとられてもらい水っていうんですかね(違う)。

 今回は、「ルパン三世はなぜ盗むのか」―250万円の快楽」豊福きこう(双葉社)の感想です。

 これね。最初、題名だけ見て、よくある謎本かルパンの名前だけ使ったビジネス書(あるんですよ)なのかなーと思っていたんですが、読んでみたらとんでもなかった。原作ルパン三世に出てきたルパンのあらゆるデータを集計して、その数字からルパンおよびその一味の実像に迫るというすごい一冊です。

 そもそも、原作のモンキー・パンチ先生からしてルパンには一貫とした設定を作っていないというのは知られた話だと思うのですが、それにも関わらず、著者は、単行本化されている作品はもちろん、雑誌掲載のみの作品まで探し求めて、データを集計し、ルパンの生い立ち、仕事内容、仕事の成功率にいたるまでを、数字と表に現していくのです。
 そもそもルパンという作品そのものの性質からして、そういうたくらみが作品理解にとって、どこまで有効なのかなと思わないでもなかったのですが、それでもこうやってデータで表されるとそれなりの説得力と面白味があるのは確か。

 ルパン本人だけでなく、次元や五ェ門、不二子や銭形も同じようにデータ収集の対象となっているのがまた面白いです。ルパンが不二子と組んでやった仕事の成功率はなんと100%だったり(ルパンと次元だと66.7%なのに!/笑)、次元の弾の意外な命中率の低さ(!)とか、扱われているのは無味乾燥な数字のはずなのに、そこから導き出される著者なりの考察も、ファンとしてはいろいろ思う部分もありますが、面白いのはたしか。

 あと、さすが双葉社の刊行だけあって、豊富な原作マンガの図版が多数使われています。というか、内容からして双葉社全面協力じゃないとまず成り立たない一冊なのですが。そしてさらにレアな作品を求める著者の苦労話や、そこで紹介されるレア作品も面白い。この本で挙げられている作品のうちいくつかはオフィシャルマガジンに再録されていますが、まだ普通に見ることが出来な作品もあって、それが読みたくなることも請け合いです。

 原作ルパンのファンであるならば、楽しく読める一冊だと思います。おすすめ。