「ルパン三世 五右ェ門登場編」(松田朱夏・双葉社ジュニア文庫)感想

 こんにちは。「シン・ゴジラ」を観に行ったところ、そのあまりの良さに、つい薄い本が欲しくなってしまったとりこ。です。ジャンルは巨災対の面々の日常ギャグ、CP的には、安田→尾頭の一方的片思いでお願いします。それにしても2016年になって楽しんでいるのがゴジラルパンとは昭和も近くになりにけり。あと楽しみにしてるのはヤマト2199の新作です。

 さて、今日ご紹介するのは、この7月に発行されたばかりの「ルパン三世 五右ェ門登場編」(松田朱夏・双葉社ジュニア文庫)です。

 これ、発売はなんとなく知っていたんですが、児童書ということですぐに飛びつく気にならなかったですね。それが、このブログの読者さまからの熱烈なお薦めを頂き、とりあえず夜中にamazonで注文したんですが、翌日の朝にやっぱり我慢ならずに近くの書店に走った次第です。

 内容としては全三話。副題こそ「五右エ門登場編」ですが、一話目の「アルセーヌ・ルパンの魂」には五右エ門は登場せず、ルパン一味のお仕事話です。二話目が「錬金術の秘宝ー五右エ門登場編」。ここで五右エ門が登場。そしてそのいきさつを踏まえて、謎の組織とルパン一味の攻防戦、第三話「三重殺」につながる構成になっています。

 まず、ぜんぶ読み終えての感想としては、いやあ、双葉社および松田朱夏先生のお宅の方向はどちらでしょうか、すぐに飛びつかずに本当に申し訳ないとそちらに向かって頭を下げたい気持ちでいっぱいです。これは児童書でありながらも、あくまでモンキー・パンチ先生の原作「ルパン三世」のノヴェライズなのですね!なので、アニメのノリも多少匂わせつつも、あくまで雰囲気は大人っぽい。児童書なのに、キャラクターはみんな煙草を吸いまくるし、ルパンと不二子ちゃんは毛布の下でイチャついちゃう(キャー!)。著者の松田先生のブログにもそのあたりの説明が掲載されています(URL)。

 なにがいいって、とにかくキャラクター全員のキャラがいい。みんな原作が基本にあるせいか、すごくクールでカッコいいのです。主役たる五ェ門も、原作のあの少年剣士っぽいまっすぐさが可愛くも一本筋が通っているし、ルパンも単純な正義の味方ではなく、あくまで泥棒。とっつあんもルパンの終生のライバルたる貫録は十分。
 
 そして次元さんがカッコいい。ルパンの相棒っぽい雰囲気がよく出てるし、不二子ちゃんのことを疑ってルパンに釘を刺しつつも、しょうがねえなとあきらめ早いところもそれっぽい。あごひげをぽりぽりかいちゃう描写がキュートです。もちろん、不二子ちゃんも良いです。というか、こういう不二子ちゃん、大好きです!ルパンや次元とはあくまで対等、仲間じゃない。謎めいていて、頭が良くて、自分の為には平気でルパンたちを裏切るけれど、その論理には自分なりの信条があるのが実にカッコいい。ネタバレになるので引用できないのが悔しいんだけど、いいセリフがいっぱいあります。P58の台詞とかもう最高です。そしてもちろん色っぽく美しいのですよ。

 そう、そんな不二子ちゃんと次元さんがこの本には存在するわけです。一緒の物語に存在するわけです。一緒にいるわけです。そこがこのブログにとってはいちばん大事なところです。

 というわけでジゲフジ者のみなさま、大変です(カンカンと鐘を鳴らす音と共に)。ジゲフジ界の殿堂(ついこのあいだわたしが作った殿堂ですがなにか)に新たな入場者が!ぜんぶ挙げていくと普通にネタバレるので、もう実際に手に取って確かめて頂くしかないんですが、とりあえず、これだけはというところをご紹介すると。

 ほら、物語には、いちばん最初にいわゆるプロローグがありますよね?物語の入り口、紹介、冒頭の部分です。本というのは最初が肝心じゃないですか?立ち読みでもなんでも、最初にぱらっと見て雰囲気をつかもうとするものじゃないですか。一冊まるごと読み通すかどうかを決める大事な場所ですよね。みなさま、覚悟してください。そのプロローグ場面に、いきなりジゲフジ場面がありますキャー(紫色の悲鳴)。

 いやもちろん、キスとか抱きあってるとかそういう分かりやすいことじゃないですが(当たり前だ)、TVSPとかで同じような場面があったら、わたしがすかさず「あ、13秒」とかカウントするの間違いなしです。いつもサハラ砂漠の砂のなかから砂金を探すような思いで公式作品からジゲフジ場面をさらっていたわたしにとっては、砂金どころか金メダル。さすがオリンピックイヤー(どうよ)。すごくさりげない場面なんですけど、それがじつにこのふたりらしくって!もうこのプロローグからわたしが大変です。

 そのあとも、物語の展開が進むのと同時に、ふたりの関係がくっきりと分かるようになります。次元さんは基本的に不二子ちゃんを疑ってて、しょっちゅうツンツンしつつも、不二子ちゃんはそれを余裕で受け流し、次元さんをからかっちゃう。そしてそれをなんとなく次元さんも受け入れているんですよ。なんだこのこなれた大人の関係。中学生には早くないか。とりあえず、P83の不二子ちゃんの台詞とかみんな読んで。そして倒れて。わたし、いつ双葉社で仕事したっけって気分になったからね(失礼です)。

 そうやってにまにましながら読んでたら、第三話がすごかった。なんと次元さんと不二子ちゃんの協力プレイという夢の展開!ダサめの格好に変装した不二子ちゃんを次元さんが「新鮮だ」と思うんですよー。「メゾン星見台」って高級マンションで落ち合うんですよー。次元さんが疑った煙草を不二子ちゃんが毒見でひとくち吸って、その煙草をそのまま次元さんが吸うんですよー(不二子ちゃんの煙草だと次元さんには軽すぎるから、口紅が残るフィルターを次元さんがむしっちゃう!こういう細かいディティールがたまらない!)。

 ……いや、ここまで書いて思ったけど、この話のふたり、もうきっとデキてます(断言)。描写こそなかったけど、メゾン星見台はきっといつもの逢引場所です(言い切り)。描写こそなかったけど、きっと会話の途中で不二子ちゃんは場所移動して次元さんの膝の上です(見てきたように)。描写こそなかったけど、会話の間にキスとかしてます(しつこい)。ヤバい(主にわたしの頭が)。

 ああもうわたしこれの二次創作書きたい。わたし、こういう公式のありそでなさそで曇った眼の持ち主だけには見える萌えが大好き。タイトルは「星見台で星を見て」に決定だな(落ち着け)。そんなことまで口走って、ちょっと申し訳無い気持ちになりましたが、そういう感じで、ほんとうにジゲフジ者にはたまらない内容です……。この場面以外にも読んでる本を落としそうになる台詞や描写がちょこちょこあるの……。P167P176P178と……(以下略)

 すいません、ここまで書きましたが、ジゲフジ者でなくとも、ルパン一味(+銭形警部)のキャラがとてもいいので、ルパンファンには楽しめる内容だと思います。ほんとうです。児童書ということもあってか、こみいった伏線や展開はないですけど、そのぶん読みやすいです。あとね、これ書くかどうか迷ったけど、すごいル銭。読んでて恥ずかしくなったくらいにル銭。

 そういえば表紙絵。モンキー・パンチ先生ぽいけど、ちょっと最近の先生の線とは思えず、しかし過去分でもなさそう……と思ってたら、さすがの早川ナオヤ先生でした。素敵。なので、この本にゆいいつ不満があるとしたら、児童書のお約束であるたくさんの挿絵が存在しないことですかね。とくに第三話とか。重要なことだと思いますね!

 というわけで文句なしでおすすめの一冊です。第二弾は11月に、と帯にはありましたが、そこはやっぱり売れ行き次第のところはあると思いますので、わたしのこんな紹介でも、気になったかたにはぜひお手に取っていただきたい本です。わたしもリアル書店ですでに買いましたが、amazonもキャンセルせず、いつかの布教用にとっておくつもりです。あー、楽しかった!