「アナザーストーリーズ そして、ルパン三世が生まれた 命を吹き込んだ男たち」(NHKBS)の感想

 こんにちは。現在放映中のNHKの朝ドラ「なつぞら」はまったくチェックしてなかったのですが、「三代目カポネ」は気になりすぎる、とりこ。です。「バケモノくん」もかなり点数高いです。

 そして、そんなNHKのBSプレミアムで8月20日に放送された「アナザーストーリーズ~そして、ルパン三世が生まれた~命を吹き込んだ男たち~」を見ました!(公式サイト)とても面白かったので、覚え書きていどの感想を書いておこうと思います。

 全体的には、モンキー・パンチ先生の盟友バロン吉本先生による、モンキー・パンチ先生の誕生と、原作「ルパン三世」の成り立ちのエピソード、おおすみ正秋さんの語る、旧「ルパン三世」のコンセプトと展開、その挫折の物語、浄園佑プロデューサーを通した、現時点で最新の「ルパン三世」である「LUPIN THEⅢRD 峰不二子の嘘」によって語られる、過去から現在へと受け継がれるルパン三世、という感じのコンパクトな構成でした。

 ですが、旧知のエピソードが改めて映像付きで語られる面白さと、新たな証言、なによりこういうかたちで「ルパン三世」という世界がまとめ上げられたことが面白かったです。もちろん、わたしはオタクだけどマニアやコレクターの気質がなく、ルパンファンとしてもぜんぜんヌルいレベルなので、単に細かいところまでツッコめてないだけかもしれないのですが……。なので、おかしなことを書いててもお見逃しください。

 でも、なにより自分が大好きな「ルパン三世」が、こういうNHKらしい落ち着いた語り口で紹介されたことが、なんだか嬉しかったのです。それなりの年齢のオタクとしては、いまさらながら、アニメやマンガがこういうちゃんとした創作物として扱われる時代になったことを実感した思い。まあ、よく考えれば、このNHKBSでは普通に「全プリキュア大投票」とかもやってるんですが、それでも。面白いことしてくれるなあ、NHKさん。

 あ、面白いといえば、劇画時代のモンキー・パンチ先生(かとう一彦名義)の作品「復讐」の落ちな!(笑)すごい、わたしが貸本屋に通っているこどもでこれ読んだらぜったいに「かとう一彦」の名前を忘れない(笑)。

 もっとも、見ていて、ああもっともっとここのお話を聞きたい!とか、そこ、もうちょっと見せて、あれもこれも紹介して……とかいう部分もたくさんあったのですが、それはもう50年の歴史を1時間でやるわけですから、しょうがないですね。それでも贅沢な作りだなあと思いました。この一時間の番組のために、いったい何十時間の素材が準備されたんだろう。それもお宝だよなあと思います。いまは表に出ずとも、何十年という歴史を持つコンテンツにはぜったいにアーカイヴが必要なので、これからのNHKさんに期待です。バロン吉本先生はぜったいもっと喋ってる(そしてちらっと映っているバロン先生の作品がなんだかすごくカッコ良かった……読んでみたい……)。

 そう、まさに歴史的アーカイブ。そう思っちゃうくらいに、登場するみなさまがいちいちレジェンドでした。言及されているレベルの紹介だけでもすごい面子が揃ってますが、インタビューなどで出演されているみなさまもすごい。大塚康生さんや栗田貫一さんは予想できましたが、まさかの柏原寛司さんの登場には素で声が出た(あ、あと冒頭のモンキー・パンチ先生を偲ぶ会の映像で、普通に大野雄二先生が見切れていたのにも驚愕しました……)。また、個人的には元編集者の原美千子さんが語るモンキー・パンチ先生のエピソードが、先生の人となりが感じられてとても素敵でした。

 これらの錚々たる証言によって、原作マンガ、TVアニメ、TVSPから現在の「LUPIN THE ⅢRD」シリーズまでのルパンの歴史が軽く一望できる流れになっているのも良かったです。

 そして、こうやって50年の歴史を見ていくと、たどり着くのはけっきょく「ルパンとはなにか?」「そのキャラクターの魅力とは」というあたりなのかなと感じました。個人的には「ルパンとはなにか」を作品そのもののテーマにするのはPART5でもうお腹いっぱいだよという思いもあるのですが、そもそも「ルパン三世」を手掛けるクリエイターならば、みな一度はその問いと向き合い、なんらかの答えを出さざるを得ない問いでもあるのかなと思いました。つまりそれは「ルパンはどうして魅力的なのか?」ということでもあるから。それ分かってないと作れないし。

 でも、それはなにも作り手だけではなく、見る側にとっても同じくらい大事なことかもしれない。この番組でも、作り手でもあり見る側でもあったみなさんが口にするルパンや次元といったキャラクターへの憧れの思いは、突き詰めれば「ルパン三世」という存在への思いでもある。番組では、モンキー・パンチ先生の「不二子はみんなの不二子なんだ」という発言が紹介されてましたが、まさに不二子はそういう意味で永遠に固定されない、夢見る人の数だけその姿を変えるような男の夢なんだろうなと思います。ルパンや次元もまた、男が憧れる男の夢ですよね。でも、それは一種の合わせ鏡みたいなもので、女の夢でもあるんですよ。ぜったい。性別の垣根を越えて、それだけ「ルパン三世」とそこに登場するキャラクターにはすばらしい魅力がある。わたしはそう感じています。

 もちろん、その原型が作られたのが50年前というだけあって、それはもしかしてきわめて時代性の強いカッコよさや憧れなのかもしれませんが、そのあたりのずれは、クリエイターのみなさまのチューニングによって修正されていくはずだし、なにより、「ルパン三世」というキャラクターの魅力の芯にあるものは時代を超えると思うのです。それがなにかと問われたら、わたしのなかでは「自由を体現していること」なんですが、人によってその答えはそれぞれのはず。だから面白い。でも、まさにそんな感じでこの「神出鬼没の大泥棒は時代の壁をひらりと飛び越え」てきて、これからも存在していくのだと思います。

 ついついそんなことまで思いをはせてしまった番組でした。でも、見終わっていちばんに感じたのは「ルパン三世が大好き!」ってことです。こんなにもたくさんのひとがこだわって、みんなが好きなルパン三世だけど、わたしもやっぱり大好きです。最後の吉本浩二先生が紹介された清水文人さんの言葉にもあったように、「これを超えるキャラクターは二度とない」のだと思うし、その可能性ははかりしれない。番組中、ここで映し出された、モンキー・パンチ先生の描いたマスクをとった瞬間のルパンのイラストを見たときに、わたしもそう思いました。わたしはルパン三世が大好きです!

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