「ルパン三世 THE FIRST」感想(ネタばれありVer)

 さあ、去年の12月の公開から半年待ったよ! というわけで、無事にBlue-reyも発売しました。レンタルも同時開始です。

 さっそく、「ルパン三世 THE FIRST」の感想を書きたいと思います。もちろんネタバレしてますので、どうぞご了承のうえでお読みください。また、いつものわたしの感想ですので、なんだかいろんなところにいちいちひっかかって、重箱隅をつついてみっちりした長さです。本当に長い……。ジゲフジ的なところではそこにさらにあれな感じで忙しくなります。ほんとうにご了承のうえでお読みいただけたらと思います。いろいろと申し訳ありません……。

 ただ、読んで頂く前にこれだけはお伝えしておきたいのは、わたしはこの映画を劇場で4回見たほど気に入っております。ですので、途中であれこれ理屈をつけつつも、基本的には「ルパンカッコいい!」とか「ヤバい、楽しい!」とかそんなことしか言っていない感想になります。なので、そういう好みの人が書いた感想として気楽に読んで頂くのがいちばんかと思います。

 では、どうぞ!

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 冒頭。第二次世界大戦時のフランスで、不思議な機械仕掛けのダイアリーを娘夫婦に託すブレッソン教授。娘の腕には愛らしい赤ん坊もいます。その場を離れた娘夫婦と行き違いになったのは、ナチスの追っ手。かれらが教授の命を奪ったのと同時に、娘夫婦にも別の追っ手が迫り、車はクラッシュしてしまいます。転倒した車に残された娘夫婦の赤ん坊の手には、あのダイアリーがあったのでした……。

 劇場で初めてこの冒頭を見たときは、あまり深く考えずに、ああCGってこういう質感なんだなあと思って眺めてたんですが、全体のストーリーを見たあとだと、キーアイテムであるブレッソンダイアリーの登場、それをたくされる赤ん坊、追っ手の存在、と今回のお話のエッセンスがぜんぶと言っていいほど詰まってるのが分かりますね。カークラッシュの場面も迫力あった。でも、正直いいまして、そこから始まったこのOPに、心はすべて持ってかれちゃったんですけど!

 正直言いまして、実際に劇場に足を運ぶまでにはまだわずかに残っていた「CGルパンって正直どうよ」的な思いが、このタイトルバックで振り返り、横顔を見せるルパンをみたとたんに吹き飛びましたね。マジイケメン。YouTubeで先行公開されたときにさんざん言いましたから繰り返しませんが、マジイケメン(繰り返した)。

 もちろん、そのあたりは他のキャラも同様で、先行作品をオマージュしつつも、3DCGモデルの質感は十分に生かした動きとこの構成にすっかりシビれました。何回見ても次元さんの銃弾が不二子ちゃんに向かうあの流れに夢を見ているのではないかと思います(そこか)。

 そしてまたバックに流れる、大野雄二先生の「THEME FROM LUPIN III 2019」が最高なのです。これを劇場で聴くために通ってた気さえするわ。いつものあの聞き慣れたあのテーマ曲なんですが、この微妙なアレンジがたまらない。あたりまえだけど、やっぱり大好きだなあ……。

 さて、場面は変わり、舞台はブレッソンの回顧展が行われている十数年後のパリへ。そこで、ブレッソン最大の謎とされている「ブレッソンダイアリー」が公開されることになったのです。分かる人にしか分からない話で恐縮ですが、ここでそれを紹介する博物館のキュレーターが、わたしにはゲスニックマガジンの西条さんにしか見えなかった。

 この「ブレッソン・ダイアリー」。箱の中に隠されている日記を読めば莫大な財宝を手に入れることができると噂されています。そんな話題に耳を澄ませる美女がひとり。顔は映らずとも、その見事なおっぱいのラインだけでも正体が知れるあたりが最高ですね不二子ちゃん。いやほんとうに奇麗なんですよ、不二子ちゃんのお胸。

 そこに届けられたのはルパン三世からの予告状。博物館側は、あわててブレッソンダイアリーを金庫に収めようとしますが、警備員の少女が、予告状を持ってきた警備員こそがあやしいとみとがめます。呼ばれて現れるのは銭形警部。そこで警備員は正体を現し、ルパン三世が登場。追いすがる銭形警部を置いて、華麗な逃亡です。そして、ダイアリーは警備員の少女によって守られた……と思いきや、彼女はそれを持って逃亡しました。

 もうわたし、ここから笑っちゃって。すごい、新ルパンにいくらでもあった気がするこんな展開! でも、ここでルパンがワイヤーを飛ばしとっつあんの前でマスクをはいだ瞬間のあの笑顔! わたしルパンファンなので、あの顔面見るだけで免疫力が上がった気がしました。ときめいた! しかしそんなに大事なブレッソンダイアリーなのに、ここまで警備がザルでいいのかしらとは思いましたね。これ、大事なものみたいだからわたしが運んでおきましょうってPART4の第1話でも見たな(パタリロもやってた)。

 そしてそのダイアリーを盗んだ少女の前にルパンが現れ、ふたりはダイアリーの争奪戦というかルパンにしたら遊んでるだけだねこれ的なやり取りを繰り広げます。いったんはルパンの手に入ったダイアリーですが、それは突然現れた不二子が奪っていきます。そして、ルパンは銭形警部の手に落ち、少女はパリの街に消えるのでした。

 このパリの街をバックにした少女(レティシア)とルパンのやりとりが軽くて楽しいですね。ルパンの身のこなしの軽さ、ほとんど地に足がついていないような自由さがすごくいい。「泥棒はいやいややるもんじゃねえぜ?」という一瞬かいま見せるルパンらしさもいいな。そしてここに現れる不二子ちゃんの脚線美も素晴らしい。それに対し「てめえ不二子、いつもいつも……」と怒ってるあたりは、ここはルパン「そりゃないよふじこちゃーん」とかじゃないんだな、と思いました。ルパンが不二子にあんまりデレデレしないのが令和以降のルパン作品の特徴かなあという気もします。

 そしてここでの警官隊とルパンのドタバタがすごく楽しい!あの警官隊の山から抜け出して、パンツ一丁で、ゴムをぱちんとやるあたりとか。まさに縞パンメンオブザイヤー。誰もルパンのこの位置は奪えないな!

 一方、逃げる少女は「おじいさま」に失敗の報告を。どうやら自分の意志で動いているのではなさそうですね。バックアップが上手くやってくれた、という相手の台詞からして、不二子がこの「おじいさま」あたりと手を組んでいるのは間違いなさそう。

 そこでまた場面は変わり、こんどは屈強な男たちを前にして、ブレッソンダイアリーを手に入れた報告をするランベールと呼ばれる教授が登場です。教授とゲラルトと呼ばれた男のもとに、ダイアリーを運んで来たのはやはり不二子。報酬を持って消えようとしますが、お宝に色気を出してダイアリーを入れた箱に発信機をつけていたことを見抜かれ、窮地に。

 窮地に、と書きましたが、このときの「あら」(バレちゃった?)っていうときの不二子の眉の動きがほんとうに可愛い。舌まで出してるんだよ。わたしは常々不二子は美しいのはあたりまえで、さらにそこに可愛げがないと物足りないと思ってるのですが、この不二子ちゃんにはそれがありました。これならルパンも何度騙されても許してしまうであろう説得力。これがないとね!

 そして当のルパンは銭形に捕まって顔に落書きまでされて、護送車で運ばれています。このとっつあんのこどもっぽさは新ルっぽいな。「ここまでか……」と肩を落としてみせておいてから「んなわけあるかよ!」と不遜な笑顔になるルパンがカッコいい。落書き顔だけど。そしてここで、これまたYouTubeで先行公開されたあのカーチェイスシーンになるわけです。

 これだ。やだもう言葉の説明必要ないわ!って感じで、文句なしの次元と五エ門のターンです。次元さんのドライビングテクニックと五エ門の斬鉄剣、というだけの展開かと思いきや、次元のマグナムが看板のねじを外して車を足止めしちゃう、なんてほんとう、アニメって自由でいいな! とわたしは大喜びしました。実現可能かどうかなんて関係ない、この世界では可能なんだよ! という理屈でつっぱしるためのこの画面と動きです。テンポ良くて分かりやすくて大好き!
 
 しかしとにかくもう次元さんがエロい。口ひげがだめだ。セクシーが過ぎる。あと、落ち着いてBlue-reyで観たら、やっぱりスリーピースが最高すぎた。なんだあのベストのライン。服着てるのに脱いでるよりもセクシーなんじゃないの。あときっとこの次元さん脱いだらギャランドゥがすごいと思います。わたしは嫌いではありません。

 とか思ってたら、五エ門の袴がですね。「七年目の浮気」のモンローのごとくのはためきかたで、五エ門に関してはそういう類のよこしまな思いを抱いたことがないわたくしでさえ、ちょっと覗き込みたい気持ちにいやその。あとやっぱり五エ門もイケメンだ。なんだろうこの美青年。わたしは五エ門はきれいとかより整ってるとか美丈夫みたいな容姿が好きなんですが、この五エ門もいいわー。髪のなびきかたもすごくきれい。

 で、その二人を迎えるルパンの「来た来た来たあー!」って台詞がまたいいんですよね。すごく無邪気なの。来るってわかってたけどやっぱり来たよな! おまえらだもんな! みたいな二人へのルパンの信頼が感じられて、ちょっとした台詞だけど、すごく好きです。

 なのに無事に回収されたら「遅えんだよ」とかとりあえず文句言ってるあたりも超可愛い。この三世さん可愛いぞ! それに対し「助けに来てやっただけでもありがたく思え」って言う次元さんもいいし、それに、二ヒヒって笑って答える三世さんもいい。言ってみたかっただけなんだよね。後ろで我関せずの五エ門も良い。ルパンはブレッソンダイアリーを取り返しに行こうと次元たちを誘いますが、ふたりは乗り気でない様子。断られたルパンはおおいにむくれるのでした。

 一方、ブレッソンダイアリーを手に入れたはいいものの、その難攻不落の仕掛けに悪戦苦闘しているランベール教授。どうやらブレッソンダイアリーを開けるには鍵が必要な様子。そして、ルパンからダイアリーを奪った少女は失意のまま自分の部屋に戻ります。そこに現れたのはルパン。靴に発信機が仕掛けられていたのでした。

 そこでの会話でブレッソンダイアリーに記されている財宝は「エクリプス」と呼ばれるものであること、少女が考古学者を志していること、ブレッソンダイアリーを開けるのに必要なメダリオンをルパンが祖父から譲り受けていることが分かります。少女はその情報を教授に伝えると、例の約束とやらを餌にされ、ルパンを教授の元に連れて行くことに。彼女はルパンに協力を持ちかけます。最初は渋るルパンですが、ブレッソンには発掘資金をサポートしたパートナーがいた話と、エクリプスの謎を解きたい、という少女の言葉に納得し、協力することを決めます。ここで初めて、ルパンは少女の名前〝レティシア〟を知るのでした。

 ここでは、じいさま大好きなルパンさんが見られて嬉しかったです。あと、ようやく落ち着いて赤ジャケットを見ると、レザーの質感が本当にたまらないですね。ここで本作ヒロインのレティシアちゃんが大きくクローズアップです。大きな青い目が本当に可愛いな。でもあくまでまだネンネの少女だというのも良かった。怖いもの知らずなんだけど生意気という感じじゃないんだよね。

 そしてルパンがそんなレティシアちゃんに向かい「聞きだす方法はいくらでもあるんだぜえ」と迫って、んちゅちゅちゅちゅとする(我ながらあんまりな表現ですが、こうとしか書けない)場面がすごく好き。このあくまでファミリー映画としてのルパン三世のなかではあくまでおふざけの場面ですが、CGルパンさんのこんな顔が見られただけでもBlue-reyを購入した甲斐があるというものです。立て続けに三回繰り返して見た。セクシー&キュート!

 船の荷物に隠れて教授のもとに向かうルパンとレティシア。そこで、ルパンはレティシアの名前がいまは亡き母からもらったものであることを知ります(つまり、冒頭の赤ん坊こそがこのレティシアであるわけです)。レティシア本人はそれらの事情をまったく知らない様子。教授のいる飛行艇に乗り込むふたりは、そこでブレッソンダイアリーを発見します。自分の鍵とレティシアの鍵を組み合わせて、ダイアリーを開ける鍵を創り出すことに成功したルパン。しかし、それを無事に開けるのにはキーワードが必要でした。さもなくば爆破、というタイミングでルパンは正しいキーワードを入力。無事にダイアリーを開けて日記を取り出すことに成功したのでした。

 この潜入時、レティシア相手に、いちいち手を差し伸べるときのルパンが、ほんとうにジェントルマンという感じで好きです。まだひよっこ相手だから下心はまったくないけど、オンナノコには違いないからねえ、という感じでそつない。一瞬、目を細めて笑顔を作るとことか最高です。隠し金庫を開けるくだりも、いちいち仕草が可愛いし楽しくて、ルパンのとんでもなさが軽く表現されてて好きです。不可能を常に可能にするのがルパン三世なのだ! しかし何回見てもあのタイミングで鍵を差しちゃうレティシアちゃんはうかつというか、先に説明聞いてるのにあの形状で自然に差し込もうと思うかなあという感じですよね(笑)。

 日記を取り出したレティシアは、古代言語で書かれたその内容をどんどん解読していきます。エクリプスは古代文明による無限のエネルギー発生装置だったということも分かりますが、なぜか、レティシアはルパンに銃を向けます。しかしもちろん、ルパンにはそんなことはお見通しだったのでした。ルパンとレティシアは、教授とゲラルトの前に姿を現すことになります。ルパンのからかいに激高する教授が口走った言葉から、ルパンは教授が「アーネンエルベ」という機関の創立メンバーであることを知ります。

 ここで夢中になって日記を解析するレティシアがいいですね。ルパンがちょっと置いてけぼりなのがまたいい。でも、こういう純粋さこそこの手のルパンが愛するものだとも思います。正面からルパンに褒められると照れちゃうのも可愛い。ルパンを裏切るときは辛そうだけど、ルパンはすべて計算済みなのですよね。そこもいちいちカッコいいというか、レティシアの背後に大きな組織があることくらいは分かってたわけで、それがゲラルトを前にしたときのあの不遜な笑みなのだと思います。この笑みがまた素晴らしい。

 レティシアは教授に例の約束の履行を迫ります。レティシアはボストン大学の考古学部への進学を望んでいたのでした。その夢をかなえるために、教授のいいなりに動いていたレティシア。しかし、〝ブレッソンのように〟というレティシアの言葉を聞いたときの教授の表情は穏やかなものではありませんでした。さらにゲラルトの言葉により、教授よりもレティシアの方が考古学のセンスに優れているらしいことが示唆されます。

 そうだったのか、と思うものの、ゲラルトの組織はこんな普通の女の子をもぐりこませないとブレッソンダイアリーを手に入れることはできなかったのかなあと疑問は残りますよね。バックアップは準備していたという言葉通り、不二子ちゃんの方が本命だったのかもしれないけど。

 飛行艇の格納庫で、捕えられた不二子と再会するルパン。不二子はあっというまに見張りを制圧し、ルパンを置いて飛行艇で去ります。一方ルパンもその場から脱走し、ゲラルトと教授のいる場所に向かい、そこで、エクリプスが強大な兵器となりえることと、このふたりがいる組織、アーネンエルベがヒトラーの生存を信じているナチスの残党であることを知るのでした。

 わーい不二子ちゃんだ! 「おれを裏切ったから、ばちが当たったんじゃねえか?」というルパンのからかいに「うるさいわね」と眉をひそめるその表情の可愛らしいことよ。でも、もっと可愛いというかお見事なのは見張りの男を一分足らずで落としたこのテクニックですね。ルパンまで目を丸くして見てるんだもん。赤子の手をひねるようなとはこのことよ。流し目がいいんだ流し目が。

 そしてこのタイミングでこの行動に出たのも、ルパンが来たという絶好の機会を逃さなかったという計算高さで、どこまでも不二子ちゃん。不二子が賢いと嬉しいです。緑のドレスから飛行服に着替えるわずかなカットで、ファミリー映画にちょうどいいレベルのセクシーな雰囲気を出すのもよろしいです。ルパンに見られてもまったく物おじしてないんですよ。カッコいい。

 そして、ここで、ゲラルトたちが、ヒトラー生存とかナチス復活だというくだりが出るわけです。劇場でここを初めて見たときには笑いだしそうになって口を押えましたね。いま? この令和の時代にこのネタ?って。しかしまあこのお話自体は60年代なわけだからそう不自然ではないというかなんというか。ただ、ヒトラーは、すでにほとんど歴史上の人物に近いけれど、それでも他のナポレオンとかアルカポネとは違い、よりシリアスな背景を持つ人物なだけに、その扱いは要注意だよなあとも思ったり。そのあたりの心配については、また後述いたします。

  そしてそのふたりの会話を聞いていたのはレティシア。ナチスと聞いて動揺するレティシアを飛行機から放り出せと教授に迫るゲラルト。しかし教授にはできません。激高したゲラルトがレティシアを落とすと、ルパンもまたそれを追いかけて飛行艇から飛び出すのでした。宙に落ちていく二人がしがみついたのは、不二子の飛行艇。しかし、ゲラルトたちの飛行艇に追われて、危うい目に。そこに現れたのはフィアットに乗った次元と五エ門の姿でした。

 この宙に落ちるルパンとレティシアの場面、楽しくていいですよね! くるくる回りながらレティシアの前に現れるとことか最高。そしてルパンの身体能力もすごいけど、レティシアもすごいな!(笑)。飛行艇を縦横無尽に操縦する不二子ちゃんもいい。

 で、ですな。不二子の飛行艇が翼を撃たれて飛行不能になりかけたとき、地平線の彼方から飛び出てきたのはフィアットなのです。え? 白馬の騎士? そんな言葉がわたしの口から飛び出そうになったのもしかたがない。

 五エ門がすごく頑張って(前のめりで)運転してるところに、次元さんはと言えば、車から立ち上がって両手を差し出し、レティシアに向かって「お嬢ちゃん、飛び降りろ!」とみごとお姫様抱っこでキャッチです。ここ、次元さんの帽子が一瞬飛んで、オールバックのお顔が露になるのもいいですし、レティシアに礼をいわれ、「どういたしまして」と下ろすのもいい。やだこの次元さんジェントルマンだわとか最初は思った。そしたら、コンマ数秒後にすごいことが起きました。劇場で悲鳴を上げなかったわたしを誉めて。

 両手を広げた次元さんの腕の中に不二子ちゃんが飛び込みました。

 次元さんの。腕の中に。不二子ちゃんが。みごとなダイビングお姫様抱っこが。次元さんが。ガガガ(動揺のあまりブレた)。この場面、ブックレット掲載の絵コンテによりますと、次元「おい待てって」不二子「キャッホー」と落ちて、次元の腰がギグっとなる。次元「ウッ……」不二子「何よ!」という流れらしいです。が、実際に見ると、「おい待てって」「キャッホー」のくだりは無かった。それがあったらあと3.5秒くらいこの場面が長かったかなと思うと惜しいことをしたと思います。ていうか、キャッホーって不二子ちゃんが叫んで次元さんの胸に飛び込むって、それ普通につきあってないかな。

 が、それがなくても。なにかなこのふたり、つきあってるの? いやわたしはなにを隠そうわりとコアにジゲフジ者なので(まったく隠していない)公式で多少の接触があれば、すぐに、つきあってるの? とか考え無しに口走るんですが、それでもこの場面の衝撃は大きかった。いいものを見た。

 劇場でもそんな感じだったんですか、このために購入したといってもいいかもしれないBlue-reyでの再三の確認でも、やっぱり、つきあってるのかな、って……。次元がレティシアちゃんを紳士的に助けるのは分かりますよ。でも、そのあとに不二子がこうね、すぽっとね、まるであつらえたかのように次元さんの腕の中にDive into Your Bodyするこの自然さ(突然のTMN)。レティシアちゃんに比べて露骨に重そうなんだけど、それはやはり乳と尻の重さがってわたしのなかの昭和のセクハラおやじ黙れ。

 ていうか、劇場では数秒なんだけど、Blue-reyだと止めることもできるし、細かいとこまで見ることが出来るじゃないですが。すごい。このふたりのこんなにぴったりな身体的接触、めっちゃ貴重。ありがとう山崎監督。観る前にすごくいろいろ言ってましたごめんなさい監督(後述します)。

 もちろん、落ちてきた不二子ちゃんを次元さんが無事ゲットする、親方!空から女狐が落ちてきた!場面もすごいんですが、今回Blue-reyで見て気がついたのが、この直後、ルパンがフィアットに乗れずに地面に落ちて「次元、てめえ……」って怒るけど、次元は「見りゃ分かるだろ、満杯だ!」って返す場面なんです。

 ここ、みんな見て。フィアットが急ブレーキでぐらぐら揺れているから、次元さんの手が不二子ちゃんの背中にしっかり回り、不二子ちゃんの手が次元の首にからんでるのです。くっついてる。不二子ちゃん、抱きついてるよこれ次元に抱きついてるよ! ぶっちゃけ、え? いまキスしなかった? ってなんども確認しました。良く見えなかったけどしてたんじゃないかな……。だからルパン怒ってたのかな……。

 もちろんその数秒後には次元さんは不二子ちゃんを下ろすんですが、それもどこか紳士的な感じがして良かった。それどころじゃない状況なんだけど。

 さて、不二子の飛行艇にとどめを差してその場を去る飛行艇。それを見送り、「なんでおまえらここにいるんだ?」と不思議がるルパンにカリオストロ仕込みの技でルパンを締め上げる次元。どうやら不二子から情報が伝わっていた様子。このままではエクリプスが放たれてしまうとあわてるレティシアに、考えあぐねたルパンは、「世界中どこにでも来てくれる」銭形警部を呼び出して、見事そのヘリを奪うのでした。

 ここ! みなさんお気づきになりましたか。次元ったらさらっと「不二子からブレッソンダイアリーが開かれたときいたぞ」って言いましたよ! やだ、連絡とってる! つい数分前のお姫様抱っこに続いてのこれで、わたしの中ではもうそういうこととして決定事項になったのですが、やっぱりこのふたりつきあってないですかね……。

 それにしても、あれだけ勝手にしろとか言ってたくせに、ルパンと同様に、わたしも現金だなあと思いました(まあ、次元たちが最初から組んでたらレティシアとルパンのあの流れが成り立たないし、飛行艇の中で話が完結してしまうので、それはしょうがない……)。もっとも、ホントはルパンのピンチだから駆け付けたんだけど、そういうことにしておかねえとカッコがつかねえからなってとこなんでしょうけど。

 そして、お約束でどこにでも現れる銭形警部が楽しかった! ルパンをどこまでも追い詰めつつも肝心なところでかわされてしまう、でもぜったいにあきらめない! という新ルの銭形警部のブラッシュアップ版な感じですね。ここは銭形突撃隊のみなさまも超可愛かった。3DCGがちょっと息切れしてるのかなという感もありましたが(なんかマネキン人形感がある)、部下に慕われる警部はいいものです。そしてこれで、銭形警部も仲間入りとなったのでした。

 ヘリの中でルパンの話を聞く銭形警部。インターポールもまたナチス復活を警戒してチームを組んでいたというのです。そんな奴らが兵器を手に入れようとしている、ここは休戦で……とルパンに持ちかけられるも、さすがにためらう銭形警部。しかし、レティシアの懇願もあってこの話に協力することになります。

 ここのくだりは、カップヌードルを食べる一味に目が行きますよね。ダイマだ! ちょっと早くカップヌードルに手を出そうとするルパンの手をはたくくせに、自分はむせちゃう五エ門がすごく可愛い。やっぱりこういうちょっとした日常場面があるの嬉しいなあ。銭形警部が見たレティシアがキラキラしてたのは笑っちゃったけど。

 一同は大西洋沿岸の海底油田へ。そこでレティシアはルパンから、ブレッソンダイアリーを開けるキーワードがレティシアの名前だったこと。つまり、ランベール教授ではなく、ブレッソン教授こそが本当のレティシアの祖父であることを告げられます。戸惑うレティシアに、彼女の考古学への情熱こそが証拠だと言うルパン。ルパンもまた、祖父アルセーヌ・ルパンから受け継いだ泥棒への情熱の持ち主なのです。
 
 そしてもちろんルパンは飛行艇から降りるときにちゃっかり日記を頂いてきていたのでした。それは本当にすごいなルパン!(笑)。そしてその日記の表紙を飾るルピナスの花から、ブレッソンダイアリーの仕掛けを作ったブレッソンの協力者こそ、かのアルセーヌ・ルパンそのひとであることに気づくのでした。レティシアとルパンはあらためてたがいがパートナーであることを認めあいます。

 この場面。レティシア側の事情と、ルパンがレティシアに肩入れする理由が分かりやすく開示されて、わたしは、ああ、こういうルパンなんだなあと思いました。ここまで来たらさすがに途中で仕事を放棄するルパンではないけれど、相手が可憐な少女である限り、そこには下心も恋心も存在しない。あるのは、ちょっととした騎士道精神と自身の祖父への思いだけ。それでいい。

 わたしはルパンファンなので、レティシアに語り掛けるルパンがずっと超やさしくてイケメンな顔面でそれをながめてるだけでも嬉しかったです。夕日に照らされたルパンがとても素敵でした。おじいさん大好きなルパンは萌えます。そして何気に話をぜんぶ聞いている他の一味もいい。これはそういうルパンなんですよ!

 一方、エクリプスを求め、メキシコのティオティワカンに向かったゲラルト一行。しかし、エクリプスを守る仕掛けの前に手も足も出ず、その手掛かりとなる日記もルパンに奪われたとあって、一時撤退することに。その様子を見守っていたルパンたちは、とうとうその遺跡に足を踏み入れることになりました。

 ここ、短いんですけど、ゲラルトたちのやりとりを盗聴(?)している次元さんがカッコ良くて、なんども見てしまいました。やっぱり次元のオールバックは素晴らしいな。国宝にしたいな。3DCGの次元さんは目が大きくて若干垂れ目でそこがまた色気がある。すぐに帽子被っちゃうのもったいない。無精ひげっぽい口ひげともども、うかつに見たらすごい破壊力なんですよね。ああもう永遠に眺めてたい。メキシコすごい暑いだろうに律義にスリーピース決めてるあたりもいい。でもこれうっかり上着を脱がれてベスト姿とかになったらわたしが劇場で悲鳴を上げました。

 さて、エクリプス遺跡の第一の試練は、遺跡の片目のくぼみに、天井と壁に無数に並べられた目玉のどれかから、正しいものを選ぶというもの。重力さえも度外視したその仕掛けのなか、次元が視線が交差している場所にある正解を見つけ出し、無事にクリアとなりました。

 ここからはようやくルパン一味のターン、という感じで、それぞれのキャラの動きを見ているだけで楽しかったです。あまりの数に速攻でやる気を無くし、座り込んじゃった次元さんがらしいなあと思ってたら、帽子が宙に浮いちゃってあわてる顔が超イケメン。

 そしてここでもたいへんなことが。みなさま、お気づきになりましたか。正しい目玉を探すレティシアと不二子ちゃんをよそに、相変わらずやる気なさげに寝ころんでると思しき次元さん。しかし、その視線の先には不二子ちゃんが! より正確には不二子ちゃんの可愛いお尻が! このムッツリスケベ! わたし嘘ついてないですよ、ほんとうにそうなんですよ。次元さんの視線が不二子ちゃんに向けられてて、そのおかげで正しい目玉が見つかったんです。え、なんだこれ、やっぱりこのふたりつきあってるんじゃないですか。で、この正しい目玉を見つけたときの「おい、ルパン!」って得意げな次元の口元がまた可愛かったです。

 続く第二の試練は、自分に降ってきた星、つまり隕石を使って、光の帯(エネルギー波みたいなもの?)を橋として、向こう側に渡るというもの。隕石などは当然持ち合わせがあるはずもなく……と思いきや、五エ門の斬鉄剣は隕石を使って作られた刀ということで、斬鉄剣が差し出されることでここもクリアとなりました。

 ここ、ランタンを持ってる次元さんの猫背がひどくてほんとうに萌えた。あと、不二子ちゃんがルパンに気軽に「ルパン、隕石だして」というの笑った。わたしもルパンならしれっと出しそうな気がします。そしてここで斬鉄剣を奪われまいと必死にプルプルする五エ門の可愛さ無限大。3DCGの五エ門はきれいだなあと見てたんですが、こういう顔になるとただもう可愛いですね。ルパンがじいさまにこだわるのと同様、五エ門には斬鉄剣にこだわってほしいとわたしは思います。そしてそんな五エ門に「駄々こねてる場合じゃねえぜ」というルパンもいいし、「な?」と肩にドンと手をやる次元さんのドヤ顔も良かった。この三人ただの仲良しさんだな。

 そして残る最終試練は「死の回廊」。身体能力を使って駆け抜けるしかない、ということでさっそくルパンが挑戦することに。あまりのヤバさにいったん退却するルパンですが、その回廊の先に祖父の物と思しきシルクハットを見つけ、奮起。みごと攻略に成功するのでした。

 さて、この映画の最大のクライマックスかつ見せ場(すいませんそんな気分です)であるこの場面。繰り返しますが、わたしはルパンファンなので、この場面のために劇場で4回見ました。とりあえず、身体能力で駆け抜ける、というだけで全員の期待がルパンに集まるのが楽しい。なのに次元さんたら気軽にルパンの背中を押すあたりもひどい。だから帽子奪われちゃうんだよ!(笑)しかしこのときの次元さんは可愛かった……。このあとしばらく帽子レスであのイケメンの顔面を拝ませて頂けて有難かった。

 というか、有り難いというなら文句なしにこの死の回廊を突き抜けるルパンですよね! 言葉にすればただもうカッコ良いとか素敵とかルパン♡飛んで♡とうちわを振るしかない状況なんですが、この数分のためにこの映画はあった気がします。わたしはこういうルパンが見たかった! 

 どんなTVSPでも映画でも、ルパンに視線を奪われて、ああもうこのひとカッコいい、このひとが大好きだと思える場面があればいいわたしです。いったんは退却したものの、向こう側にあるおじいさまのシルクハットを見つけて本気になる流れもいい(その結果次元さんの帽子が犠牲になるのもいい)。ほんとうにこのルパンは良かった。表情、動き、どれもパーフェクト、見事ステッキまで手に入れて、向こう側に到着したときのあの後姿を額に入れたい。ありがとうございました!

 しかし、安心したのもつかのま、ゲラルトたちがルパンたちの背後に迫ります。ゲラルトたちはエクリプスを攻略させるためにルパンたちを泳がしていたのでした。かれらはルパンたちを拘束し、レティシアを脅し、とうとうその力を我がものとします。崩壊する遺跡から命からがら逃げだしたルパンたちが見たものは「間違いなく世界を変えちまう、なにか」でした。

 というわけで、めでたしめでたしとはまだいきません。それにしてもわたしがゲラルトならもう用済みなのでここでルパン一味を撃ち殺して終わりにするのですが、他に役に立つことがあると思ったのかな……。

 そして、ルパンたちが縛り上げられている並び、五エ門、そこを次元と代わってくれないかと思ったわたしですが、これまでにいろいろあったうえに、なおかつ不二子ちゃんがキーっとなる相手が次元だったりしたらもうこれは単に公式CP爆誕になりかねないのでそういうわけにもいかなかったのかな……と自分をなだめました。わたしはそれでもいっこうにかまわないのですが。でも、「わたしの金銀財宝は?」と言う不二子ちゃんの台詞に「へ?」という口になってる次元さんがいた。可愛い。しかも足癖も悪かったのが実にらしいので楽しかったです。

 そしていよいよエクリプスが発動。ルパン一味が逃げるくだりで、ここでも五エ門と次元の位置が逆なら……と思いました。すみません。短い場面だけど、逃げるときのルパンの「畜生、ただじゃ置かねえぞ!」という台詞と五エ門の「斬鉄剣、斬鉄剣、斬鉄剣」がいいですよね。劇場で観たときに近くにいた小学生の男の子が「ごえもんはいつもざんてつけんざんてつけんだねえ」と楽しそうにコメントしてました。

 飛び立った飛行艇を追いかけるルパン一味。ここはようやく次元さんと五エ門の見せ場! で良かったですね。次元さんのボロボロになった帽子からのぞく表情がすばらしくカッコ良かったし、五エ門もようやく斬鉄剣の本来の力を見せられて満足そう。ふたりがそれぞれ片翼ずつ落とすというのもいい。ルパン一味はカッコ良い! しかしここでエクリプスが真の形で発動してしまえば、そういうレベルが歯が立つ話でもなくなるわけで……。

 一方、エクリプスの力を手に入れた教授はゲラルトに反旗をひるがえします。レティシアの言葉も耳に入らず、世界を破壊しようとする教授。ゲラルトとかれが争っているうちに、レティシアはエクリプスを止めようとします。彼女に向けられた弾をその身で受けてかばったのは、教授その人でした。教授の犠牲にもかかわらず、レティシアの企みはエネルギー不足で実を結びませんでした。そこに、アーネンベルクよりゲラルトにブラジル支部に向かうよう無線が入ります。総統が生きていたというのです。

 わたし、このくだり、教授のキャラがもうちょっと丁寧で深みがあればもっと悲劇になったのになあと残念でした。最後にレティシアを助けるのならば、ゲラルトにレティシアを飛行機から落とすよう命令されたのを拒んだことと、不二子の飛行艇にしがみつくレティシアを見たときの「レティシア!」という叫び、あと少しのプラスが欲しかった。なにぶん、他の場面では、怒鳴るわ暴言を吐くわの連続なので、この流れがどうしても唐突に見えちゃう気がするんですよ。

 ブレッソンへの妬みと長年の鬱屈が教授をこの狂気に至らしめたという部分と、そんなかれにとって一筋の光がただ利用するだけの存在であったはずのレティシアだったというのが、もうちょっと分かりやすくあればなあ、と思います。それはこの場面で、一瞬の回想、幼いときのレティシアを迎えに来る教授の姿を見たせいかもしれません。

 さて、場面はアーネンベルクのブラジル支部へ。エクリプスを乗せた飛行艇を迎えたのは車椅子に座ったヒトラーそのひとでした。抵抗もむなしく、レティシアはその場から連れ去られてしまいます。そのまま、飛行艇内部でゲラルトからエクリプスの説明を受けるヒトラー。しかしその様子はどこかおかしい。車椅子に座っていたはずが軽く立ち上がり、言葉遣いも軽いものに。そう、このヒトラーはルパンの変装だったのでした。ルパン一味はインターポールの協力のもと、一足先にこのブラジル支部を制圧していたのでした。

 まあ、わたしがゲラルトなら教授が死んだ段階でレティシアを撃ち殺して終わりなのですが(わたしはなんでも撃ち殺して終わりにしようとするな……)、ブレッソンダイアリーが無くなったから、もしものときに必要になるかと判断したのかな。ヒトラーの正体も、登場した瞬間からそりゃルパンだよね、という感じなのですが、目の表情だけでルパンだと分かるのが楽しい(レティシアは分かってなかったみたいだけど)。

 そしてここはやはり、レティシアを捕らえたひとり……のふりをしてた次元さんのカッコよさですよね。サングラスを取って、どこからともなく出てきた帽子をかぶるあのときの笑み。なにこのイケメン。たいへんここにイケメンがいる。そりゃ広瀬すずさんも「帽子を取った次元があんなにイケメンだったなんて……」とコメントしますわ。だって、イケメンなんですもの!

 しかしイケメンと言えば、ここで「ご協力感謝します、レティシア……いや、ミス・ブレッソン」と帽子を取って微笑む銭形警部ですよね。公僕らしい折り目正しさがある。とっつあんはカッコいいんだよ! そしてここから続くブラジル支部制圧の流れが実に楽しい。この映画、物語上の制約だからしかたがないとはいえ、どうしてもルパン以外の一味がなかなか活躍できない。そのフラストレーションはここで解消しますね! という数分間だと思います。やられ役のブラジル支部の皆さんは、大丈夫ですか、3DCGがそろそろ力尽きましたかと確認したくなるマネキン具合でしたが……。

 ヘリから飛び降りるときの不二子の顔が超かわいいし、マシンガンを連射するときにお胸がそれに合わせて揺れているのもよし。次元も五エ門も一瞬で決めちゃうその活躍が、最後、とっつあんの笑顔で〆られるのもいいな! 楽しい場面でした。

 一方、ルパンは飛行艇のなかでゲラルトとの一騎打ちに挑みます。ルパンの目的はエクリプスを壊すこと、でした。そうはさせじとするゲラルトとの肉弾戦の結果、みごとエクリプスの自爆に持ち込むことに成功。逃げようとするルパンと追うゲラルト。しかし、とうとうゲラルトは偽物の総統の写真とともにエクリプスに飲み込まれていくのでした。

 この場面、ヒトラーの変装をかなぐり捨てたルパンがゲラルトに総統はと問われ「そんなの生きてるわけないだろ? 学校で習わなかったか? 1945年に死んでまーす」と軽く返すのがほんとうに正しくて、いまこの時期にナチスを扱うなら、こういうやりかたがいいんじゃないかとわたしは思いました。最初、ナチスが今回の悪者だと知ったときの戸惑いがここで解消しました。そう、死んでるんだよ、その思想も同時に。床に落ちた不細工なマスクのように。

 もちろんゲラルトはそうはいかずにルパンに殴りかかるわけですが、ルパンがあくまで真面目に対応しようとしないのがいいですね。「おれたち泥棒はおもしれえことが大好きなんだよ」というシンプルさ、自由さこそがルパンですよな。仕事を終えたらとっとと逃げ出そうとするのもいい。でも、最後につぶやくのは「けじめはつけたぜ、じいさま」なんですよね。すべてはじいさまとじいさまのパートナーであったブレッソンの言葉通りに、ということなんだと思います。

 そして最後の最後まで頑張った悪役、ゲラルトですが、性格描写にブレが無いので、観ていてストレスが無い悪役でした。こういう悪役に葛藤は必要ないしな。藤原竜也さんの声も良かったです。

 無事にエクリプスが消滅したことを確認して、銭形警部の前から去るルパン一味。ルパンもまた第一の試練の時に使った道具で無事にレティシアの待つ地面に降り立ちます。再会を喜び、ルパンになにかを伝えようとするレティシアですが、その前に不二子が現れて去り、つづいて次元たちがルパンを迎えに来ます。名残惜し気なレティシアに「おまえはここまでだ」と諭し、ボストン大学からの招待状を渡すルパン。レティシアの部屋にあった論文をボストン大学に送っていたのです。そして去るルパンを見送るレティシアの前に、こんどは銭形警部の一行が通りかかります。敬礼で別れを告げる一行を笑顔で見送るレティシア。ルパンたちを乗せたボートは夕暮れの中遠くなっていくのでした。

 銭形警部の前から逃げ出すときの一味の後ろ姿が可愛かったな。レティシアとルパンの前に現れる不二子ちゃんがお宝満載のボートに乗ってるあたりが、そうですよね! って感じで良かったです。峰不二子がただ働きするわけないもんね!(これはあくまで妄想なんですが、このかさばるお宝の積み込みをぶつくさ言いながら次元と五エ門が手伝わされたら萌えますね)それにルパンも「相変わらずだな、不二子ちゃん」であっさり済ませるのがいい。ていうか、この映画、ルパンと不二子は常にあっさりしてる。その理由はなんかそのうちわたしがpixivにあげそうです。←駄目だこのひと。

 レティシアとルパンの別れも、ルパンが一貫してレティシアをひよっこ扱いしかしていない大人の男なのが良かったです。カリ城のオマージュ満載のこの映画なんですが、クラリスとルパンの関係と、レティシアとルパンの関係は似てるようで違うんですよね。レティシアがルパンに抱いた淡い想いはクラリスがルパンに抱いた想いに似てるかもしれないけど、ルパンが違う。だって、カリ城のルパンはクラリスを抱きしめかけるんですよ。この可憐さを盗めるかという思いは頭をかすめなかったわけじゃないと思う。なんというか、そのあたりが、時代と、山崎監督と宮崎監督の違いですよな。

 ルパンは間違いなく完全無欠のヒーローだけど、作劇上の都合でどうしても失敗したり窮地に追い込まれる必要が出てくる。そういうときのお約束として、ルパンが女子供のわがままに振り回されてしまうパターンがよくありますが、わたしはそれがまったく好きではありません。でも、レティシアちゃんはそういうウザさが少なめで良かった。というか、ルパンがいちいち有能で大人なので、多少レティシアちゃんが生意気いったところで軽くいなされたり、さらに上を行かれて終わりなのですね。このレティシアちゃんのまっすぐさとルパンの軽さ、その組み合わせの化学反応が良かったのかなあと思います。

 それにしても、論文を送るまではいいが、そのボストン大学からの返事をあなたどこで受け取ったのルパン、という気分にはなりましたよね。さすがルパンには不可能が無いな!

 レティシアはルパンを見送るけれど、彼女はまさに籠の中の鳥ではなく、これからどこにでも行ける存在となる。そして、これからは市井の世界で生きていくであろう彼女の前を、ルパンや不二子、次元や五エ門、銭形警部ですら、ただ通り過ぎていく。おそらく、もう二度と会うことはない。けれどきっとルパンたちの活躍は続いていく。それこそが「ルパン三世」なんだなあと思うラストでした。そして主題歌の「GIFT」はほんとうによい曲だった。カラオケで歌いたい。

 あ、ちなみに同封の<ブレッソン・ダイアリーエディション特典映像>の内訳は、以下の通りでした。(これ以外は、イエローカーペット映像・ノンクレジットオープニング映像・・興行会社ロゴスティール映像となります)。
 
 メイキング映像(18分)では、「ブレッソンダイアリーを盗み出す」「レティシアが飛行艇から落ちる」「エクリプスの表現」などの絵コンテや動画コンテ(これがすごく良い絵なのです)にエフェクトを加えて完成品になっていく過程が見られます。また、3DCGアニメーションのメイキングでは、不二子からブレッソンダイアリーを奪われるあたり、「不二子てめえ、いつもいつも……」という一言の場面が出来上がっていくところと警官隊の山からパンツ一丁で抜けだし、キメるところを作る過程が見られます。また、「ライティングコンポジットメイキング」ではルパンがレティシアの部屋を訪れるときのライティングや博物館の借りが仕上げられていく過程がよく分かります。すごく細かいの。

 また、CGモデルギャラリー(12分)ではブレッソンダイアリーやメダリオン、ルパンの車や不二子の飛行艇、警察車両、ICPOのヘリ、飛行艇、ルパンの銃、斬鉄剣などのプロップ、および各場面の背景美術が紹介されています。

 そして、監督&キャストインタビュー(33分)。キャストは栗田貫一さんと浪川大輔さん及び、広瀬すずさんと藤原竜也さんの対談が収録されています。クリカンさんのモンキー・パンチ先生の物真似というレアなものが見られて楽しかった。そして山崎貴監督のインタビューは、すみません「不二子の脇がエロかった」と喜ばれている監督のお姿に、ああ、このひとはこのひとで業が深いひとだったなと確認する結果になりました。

 さて、全体の感想を言うならば、「面白かった!」というシンプルなものになります。ファミリー映画としての「ルパン三世」なら文句なしの出来でしょう。実は、わたしは今回の映画の監督があの山崎貴監督だと知ったときには、正直、かなりドキドキしていました。監督の他の作品をなんどか拝見したことがあって、いやその……だったので……(すみません)。

 でも、今回、その心配が杞憂に終わったのはほんとうによかった。山崎監督が、素晴らしく職業監督に徹してくれたというか、まずは「ルパン三世」を作ろうとしてくださったのではないかなあとインタビューなどを読んでも思います。「カリ城」が好きで、オマージュをあれだけ入れ込んだことに賛否両論はあるかと思いますが、わたしは気になりませんでした。二回やれる技じゃないとは思いますが。

 もちろん、不満とか物足りない部分が皆無なわけじゃありません。せっかくの3DCGなんだから、もっとルパン一味の活躍が見たかったというのがいちばんのそれですが、物語上しかたないところでもあるんですよね。物語的にも、これまでのブラッシュアップ的なもので、目新しいものがある物語ではないと思いますが、それはそもそも最初からこの映画の目的ではないと思うし。

 わたしとしては、こういうファミリー向けの明るく楽しいルパン大好き!という思いの方が強いです。原作沿いのクールなルパンは小池ルパンがあるし、いま現在のルパン三世としては、あのPART5がどれだけ頑張ってくれたかと思えば、それらとはまた違う、こういうルパンを見られてわたしはとても嬉しかったです。だいたい、わたしは新ルパン世代なので、こういうルパンが嫌いなわけないじゃないですか! みんな違って、みんないい精神で、これからもいろんなルパンを楽しんでいきたいです。ここまで読んで下さって、ありがとうございました!

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