ルパン三世PART6第15話「祝福の鐘に響けよ、銃声」の感想です。公式によるあらすじはこちら(URL) 。以下の感想は、完全にネタバレですので、大丈夫な方のみご覧ください。では、どうぞ!
モノクローム調の画面に映るのは、雨のふりしきる街と、窓からそれをながめる次元。珍しく、帽子をかぶっていません。かれは万年筆を手に取り、スズランの花が添えられたメモ紙になにかを書こうとしたあと、スズランだけを手にして部屋を出ていき、雨の中、そのスズランを地に投げ捨ててその場を去っていきます。「覚えているのは、あの日の雨の音と、スズランの香り」という次元のつぶやきで、アバンは終了。
雨の降る中、アジトの小窓のそばで外を眺めている次元。それを「五月雨を 眺める次元の 髭面かな 作ルパン三世」とからかうルパン。それに対し「ひどすぎる。センスのかけらもねえ。おまけに字余りだ」とそっけなく答える次元ですが「モチーフのせいさ。雨にたそがれていいのは美女だけと相場が決まってんだよ」とルパンは気にした様子もありません。ひらっとソファを乗り越え、座り込む仕草がいいですね。
でも、ここ「髭面天使にゃ似合わねえの」ってルパンはさらっと言いましたが、あの、ルパンさんには、次元ちゃんが天使に見えているのでしょうか。〝紳士〟の聞き間違いかと思ったんですが、字幕も〝天使〟だった。いつからそんなことに。
気が晴れない様子の次元にルパンはテレビのニュースを見せます。それはフェルナン・メーストル伯爵の結婚発表のニュースでした。幸せそうに寄り添う美男美女のふたりが記者会見に応じる様子が流れます。伯爵家の伝統で花嫁に贈られる〝マルセイユの涙〟なる宝石が、ルパンのつぎの獲物です。長いあいだ幻の宝石と呼ばれていたその画像が、数週間前、とつぜんネットにUPされたことが、ルパンの目を引いたのでした。
「ま、おれ的にはあっちの宝石の方が好みなんだがなー」と笑ってルパンが指さすのは、伯爵の花嫁となる美女。しかし、次元はその美女を見てなにか思うことがあるようで、ルパンにこの仕事を待ってくれるように頼みます。
場面は伯爵の婚約披露のパーティ会場へ。そこで、伯爵の婚約者が、ミレーヌ・ルグランという、貴族の出ではなく、恵まれない人々が多い場所で町医者として働いている女性だと分かります。伯爵と結婚するのにもかかわらず、ふだんは質素な服をまとい、人々を助ける仕事をしていることを隠すことも恥じることもしない、その凛とした様子を見守っているのは会場に潜入している次元さん。畏まった場所柄のせいか、蝶ネクタイに帽子なしという珍しいスタイルが拝めます。眼福。
ミレーヌは、助けを求める人ならば誰にでも手を差し伸べる女性でした。伯爵と出会ったのも、事故を起こした伯爵を助けたのがきっかけだったのです。その笑顔を見て「変わらないな、あの頃と」と思う次元。しかし、その目はすぐに会場に潜む怪しげな男の姿を捕らえます。
その男は、ジャッカルという営利誘拐を専門とする悪党でした。ルパンによれば、子飼いのチームを率いて大富豪の身内をさらい、身代金を得ても証拠を残さないために被害者を返すことはない、プロフェッショナルの犯罪者でした。
「次の狙いはメーストル家。そして、あぶないのは……」というルパンの言葉に立ち上がる次元。ルパンは手を貸そうかと申し出ますが、次元は「こいつはおれがやるべきことだ」と助力を断ります。ここ、「訳アリ……なんだろ?」と、すこしだけからかうような、でも慎重に次元さんの出方をうかがっているルパンさんがいいですね。断られるのは織り込み済みなんだろうな。
一方、ジャッカルのアジトでは、ルパンの読み通り、ミレーヌの誘拐計画が進んでいる様子です。そこにはジャッカルの弟、セドもいます。冷静そうなジャッカルとは対照的な、ナイフをちらつかせる危なそうな男。
そしてここからは、医者として働くミレーヌの姿を影から見守る次元の姿が描かれます。次元さん尾行下手すぎないかと思ったのはわたしだけですかいやその。だってもうちょっと離れないと、どちらかというとあなたが不審者に思われる距離じゃないかな、それ……。
離れた場所からミレーヌを見守っていた次元は、やがて降ってきた雨に、彼女との出会いを思い出します。かつて、雨の降りしきる中、数人の敵を倒したものの、自分も腹部に傷を受けて座り込んでしまった次元に声をかけたのがミレーヌでした。しかし次元は彼女に銃を見せて、その場から去らせます。「死ぬときは……こいつとふたりきりがいい」と笑ってマグナムを握りしめたまま地に倒れた次元は、しかし死ぬことはなく、やがて、目を覚まします。
近くの大学病院で働いていたミレーヌが次元を助けたのでした。大学病院から薬や道具を勝手に持ち出してきたと知り、「なぜ助けた」と問う次元。それに、ミレーヌは「銃は怖いわ。でも、あなたの目が……」とつぶやきます。「あなたの目が、〝生きたい〟って言ってるように、わたしには見えたの」との言葉に「そいつは見間違いだ」とそっけなく答える次元でしたが、ミレーヌは「間違いでもいいわ、こうして生きていてくれるのなら」と微笑むのでした。その思い出から現在に戻った次元が、ふたたび彼女を見守る場面で、Aパートは終了。
ここまでの感想としましては、なんかもう古式ゆかしい次元回すぎて、ちょっと笑えた。申し訳ない。新ルパン189話です、とか言われても違和感ないんですが、新ルなら、もうその話はやったよ!と突っ込まれてしまうだろうな。まあぶっちゃけこのPART6でも突っ込むしかないのですが。
だってほら、体調を崩した次元さんが女性に助けられるのはアンジェリカだし、雨と言えばキャサリンだし、雨の中女性のもとを離れる場面とお花が絡むのは「グッバイパートナー」のアリサの母親だし、誇りを持った女医者といえば、PART4のリービアだし……。なんだこのキメラ具合と思っちゃうのはファンならしかたがないのでは。
もちろん、これはパクリとかいってるじゃありません。なんといっても、公式のやることなので、お約束とか様式美として受け取るのが正しいかと個人的には思います。でも、もうちょっとなんとかならんかなあ、時代は令和だよ、と思いながらBパートに突入です。
雪の降りしきるなか、相変わらずミレーヌの様子を見守っている次元は、彼女との過去を思い出しています。体中に古傷をもち「ろくな生き方をしてこなかった、それだけだ」という次元と、貧しさゆえに、病気にかかったあとも満足な治療を受けられなかった両親が亡くなり、孤児院でひとり育ったミレーヌ。だからこそ彼女は医者になった。そして、将来は満足な治療を受けられないひとのための自分の診療所を持ちたいと夢を語ります。
「でも、わたしにできるかどうか……」と不安を告白するミレーヌに「できるかどうかで悩むヤツはみんな棺の中に消えていった。おれたちの世界じゃ、いつだって選択肢は二つだ。やるか、やらないか」と言う次元。その言葉を聞いたミレーヌは「やっぱり、やさしいのね」と次元の手を取り、唇を寄せようとしますが、次元はふと、甘い香りに気づきます。それは部屋に飾られたスズランの香りでした。「ここではスズランは幸福を呼ぶ花なの。そして、愛を意味する花……」とミレーヌはささやき、そのまま、ふたりの唇は重なったのでした。
ここで、えー!と思ったわたしを責めないで頂きたい。いや、わたしはこの話、ぜったい「男心」系の、ミレーヌとは過去にも手も触れない清い関係で、ただ恩人として陰からミレーヌを守って去る話だろうと勝手に予想していたので、まさかちゅーしてたとは思わなかった。次元さんもカタギの女性に裏社会のモットーを話してどうなるという感じですが、さすがミレーヌもフランス女性だけあって情熱的でしたね。ていうかこれ基本的にミレーヌからぐいぐいいってますよね。むしろ次元さん押し倒されてますよね。ホントに次元さんこの手の気の強い一本気な女性に弱いな!
しかし、この場面、あくまで個人的な感覚なのでお許しねがいたいのですが、次元さんの目がずっとはっきり見えているせいか、ずっと見てて、なんかこう、恥ずかしかった……。次元さんの台詞もカッコいいはずなんですが、ただもう恥ずかしかった……。てれてれ。
そして時は流れ現在。ミレーヌが行きつけのカフェで街の人々に伯爵との結婚を祝福してもらう場面になります。親のいないミレーヌはどうやらカフェの店主に式の付添人を頼むようで、だれもがふたりの結婚を祝っている中、涙ぐむミレーヌ。ですが、それを見守るフェルナン伯爵はどこか浮かない表情です。
そこで、そのカフェを監視する怪しい男が。しかし、その男の後ろに現れたのは次元。次元はそのままかれらのアジトを急襲し、ジャッカルを追い詰め、そのなかでジャッカルの弟、セドの命を奪います。争いの中で、自分の相手が次元大介であり、かれが守っているのがミレーヌだと知ったジャッカルは、危ういところでその場を逃げ出し、復讐を誓うのでした。
ここ、「その面に、帽子。間違いねえ、次元大介!」とジャッカルが言うあたりが、次元さんが暗黒街のプロのあいだでも有名人な感じがして良かったです。それに対し「品性の欠けた狂犬と話す趣味はねえ」と返す次元さんはいかにも次元さん。そして、短かったけれど、セドと次元のナイフ対銃の戦いも良かった。あえて銃を捨ててナイフで倒したあたり、えー、どうして、という考えもあるかもしれませんが、手段を選ばない感じが、根本的にはアウトローな次元らしさがあったとわたしは感じました。まあ、次元さんいちいち台詞が決めすぎなんですけど、それもまたらしさかな……。
やがて、舞台は結婚式当日の教会に。ウェディングドレスに身を包んだミレーヌの胸には、ルパンが狙っていたあの〝マルセイユの涙〟が光っています。式の準備が進む中、次元はジャッカルを警戒し、ひとり鐘塔から、会場の様子を伺います。しかし、その目が、ひとり会場を離れていくフェルナンの姿をとらえました。
会場から離れた木立の中で、ひとり迷っているフェルナン。次元はかれに「後悔しているのか?」と声をかけます。貴族として生まれ育ち、自分自身の手で得たものはなにもないフェルナンは、それとは対照的に自分の力で道を切り開き強く生きてきたミレーヌに対し、引け目を感じていたのでした。「ぼくは、彼女にふさわしい人間なんでしょうか」と問うフェルナンに対し、次元が言った言葉はこれでした。
「選択肢は二つだ。ここに残って式をやめるか、それともいますぐ彼女のそばに行くか。だがここを出たら二度と戻っちゃこれない。悩みながら、迷いながら、それでもそばにい続けるんだ。死がふたりを分かつまで。それがおまえさんにできるか?」そして、そう言われたフェルナンは「分かりません……」と迷いつつも「でも、行きます! 僕が彼女と共にいたいから」とミレーヌの元に戻るのでした。それを見守る次元の脳裏には、あの日、ミレーヌになにも書き残せず、彼女の元を去った思い出が浮かびます。「選択は、とうの昔に済んでる」。次元の手は、マグナムを選んだのでした。
ここ、初対面のいかにもカタギでなさそうな男にいきなり人生相談をするフェルナンを見て、このひと本当に追い詰められてるんだな、大丈夫かなと思ってしまったのですが、その人の良さというか善良さこそがミレーヌを引き寄せたんじゃないかなあと思ったり。そして、その善良さは誠実さと勇気の現われでもあるのです。次元の言葉はおそらくかつての自分にも問いかけた言葉であったはずですが、フェルナンは己のプライドよりもなによりも、ミレーヌのそばにいることを選んだ。それは、かつての次元にはけして選べなかった選択肢でもあったのです。
そして、粛々と進行する式のなか、結婚の誓いとともに打ち上げられる花火。その音に乗じて、神父に化けていたジャッカルがナイフを取り出しますが、その企ては参列者のひとりに変装していた次元によって止められるのでした。
ここはちょっと驚愕した。もしかして銃声は花火の音に紛れたから聞こえなくてだれも見てない気づかないってことですか。いや、見えとるがな。いきなり神父さんがナイフ取り出したうえに参列者が飛び出して撃ったらふつうは大騒ぎやがな。なのにみんな「おめでとー」ってなんだこれ。結婚式の余興と思われたのかな。さすがに無理展開じゃないですか、ここ。
あと、わたし、これ、変装してたからルパン? と一瞬思っちゃった。しかもこのあとすぐ鐘塔にいる次元が映ったので、また混乱。え? え? もしかして次元はふたりいたの? さっきフェルナンの人生相談を受けたのは次元本人で、もしかしてルパンが変装して見張ってたのかなー。そう思ったのは次の場面を見たからでした。
場面はマルセイユでも有名な軍記念碑の前に移ります。そこにいたルパンの前に現れたのはミレーヌでした。なんと、あの〝マルセイユの涙〟の画像をネットにあげたのはミレーヌ本人。それを餌にルパンを誘い出した目的は、結婚前にもういちど、次元と会うためでした。「あのひとはすこしも変わっていませんでいた」と語るミレーヌ。次元が彼女を守っていることは、すべて彼女にはお見通しだったのです。
「不思議だった。銃を持ちながら、どうしてあんなに優しい目をしてるのか……あの目がずっと忘れられなかった」とつぶやくミレーヌが、いまだ次元を思っていることをルパンは察します。しかしミレーヌは涙ぐんだあと、〝マルセイユの涙〟をルパンに渡し、その場を去ります。
そしてやってきた次元に対し「あんないい女、盗んじまえばよかったのに」とぼやいてみせるルパン。「おまえとは違うんだよ」という次元の返事を聞いて、ルパンはさきほどミレーヌから受け取った〝マルセイユの涙〟を渡します。しかし次元は、それをマルセイユの海に投げ捨てます。「おれに涙はいらねえ」と言い残して。で、幕。
次回予告。「カリスマデザイナー、ギャビーの新作コレクション、そのミューズに五エ門が選ばれた?」という衝撃のナレーションとともに、ファッションショーの訓練?に勤しむ五エ門の姿が。「えっと、なにかの間違いよね?」という不二子ちゃんの台詞にあやうくわたしもうなずきかけたところで、次回、第16話のタイトル「サムライ・コレクション」。今回に続いて続いて単発話、五エ門回だ!
というわけで、第15話でした。いやー、古式ゆかしいというかこれまでにやり尽くされた次元の過去の女回を、いまごろそのままもう一回やってどうするのかと思って見てたんですが、最後の最後で、ちょっと工夫がなされていたので安心しました。昔だったらこのドンデンはなかった。
えーと、けっきょく、ミレーヌは結婚前にもういちど次元に逢いたくて、〝マルセイユの涙〟を餌にしてルパンをおびき出し、取引したわけですよね? ルパンとの話からすると、ミレーヌはジャッカルの存在に気づいていないので、ジャッカルはあくまで予想外のファクターだったということ。
そもそもミレーヌと次元の話は、二三年前の話というあたりでしょうか。そのあいだに、自分の診療所という夢をかなえたミレーヌが、伯爵と結婚するにあたって〝マルセイユの涙〟という宝石の存在を知り、それを利用することを思いついてルパンと取引したわけか。このご時世なので、次元がルパンの相棒だというのは、ググればすぐ分かることですしね。つまり、単に〝マルセイユの涙〟をターゲットにする仕事という名目で、次元を自分の周りに出没させてくれとルパンにお願いしたってことなのかな。ややこしいけど、普通のやりかたでは次元は自分と会ってくれないであろうことをミレーヌは分かっていたのでしょう。
だとしたら、ほんとにすごい胆力の女性だと思います。頭も良ければ美女でスタイルも良く、度胸もあるなんて、ほんとに次元さんの女の好みは一貫してますね……。
まあわたしとしては「おれに涙はいらねえ」とかいって止め絵になっちゃうラストとかで、新ルか!とまた叫んじゃったわけですが。もちろん次元回は嬉しいし、次元に女が絡むのも大好きですが、そこはそれ、もう令和なわけですからもうちょっと工夫が欲しかった。なので、あのラストじゃなければ、次元回としての点数はもっと低かったかもしれません。ごめんなさい、ただ、もっといろんな次元さんが見たいんだよ……。
あと、自分でも意外だったんですが、普段はあまり出ない次元さんの両目がやたら強調されてたのが、個人的に恥ずかしかった……。あれはたまに出るからご褒美なんだな。ずっと出てると、なんかこう、見てはいけないものを見ているような恥ずかしさがあった。もちろん、イケメンなのは間違いないし、次元さんの男の色気がだだ漏れしてた。丸藤さんのこの絵をご覧ください(URL)。やっぱこのひとはある種の女性を引き寄せて仕方がないタイプのモテ男だ。それはもうミレーヌも押し倒すわ(違)。
で、こういう話があったら、今回は出ていなかった不二子ちゃんのことも気になるわけですが、それはもういろんなことを考えています。もはやわたしのこれは業なので……。そのうちなにか出てきたら笑ってください。なにもかも次元さんがモテ男なのがいかん。
そして次回は五エ門回ですよ。なんだか楽しそうな雰囲気で、ちょっと期待してます。五エ門回もまた、過去の因縁か斬鉄剣絡みとか女絡みとか、一定のパターンがありがちなんですが、これはちょっとコメディ話ぽい。可愛い五エ門が見られそう。他の一味も登場するみたいだしね。第2クールの単発話は、大御所揃いだった1クールと違って、若手の脚本家を多く採用しているらしいので、色々変化球があるのかもしれません。それもまた歓迎です。楽しみ!
そんなわけで、個人的には、これどっちに向かうんだPART6、なんか取っ散らかってんなと思うこともありつつも、毎回楽しんでみています。PART5のときのような毎回の緊張感はないものの、いろいろあってみんないい精神で公式の供給を受け取るのがわたしの決まったスタンスです。
で、こうやって感想を文章にすることで、他のルパンファンのみなさまにも共感したり、面白がっていただけるならばさらに嬉しいです。人の意見はそれぞれなので、おまえそれ違うだろ、と思われてる可能性も大ですが、それだよね!と思って下さるかたがいらしたら、拍手など押して教えて頂けたらさらにうれしいです。いつも、頂く拍手や閲覧数にエネルギーを頂いています。これからも頑張って続けていくつもりですので、どうぞよろしくお願いします、ありがとうございました!