「……マシンガンが吠える 吠える 地獄に向かって 明日会うときは さようなら いま 別れの言葉はなにもない……」(cv二階堂有希子)。
ルパン三世ベストセレクション、第14位は、PART1第2話「魔術師と呼ばれた男」でした!名作ぞろいの旧ルパン前半においても、名高い一作ですね。わたしも大好き!いつものように、ベストセレクションが放送されていない地域に住まうわたくしが、エア感想を書かせて頂きます。ネタバレありなのでお気をつけください。あらすじはこちら→(URL)。
のちに続編「生きていた魔術師」(OVA)が作成されるほど、人気が高い一作です。魔術師パイカルの圧倒的な技というギミック、細かいところまで行き届いたキャラ描写、どう転がっていくか分からないハラハラなストーリー展開、と名作の条件が揃っているので、それもうなずけるところ。個人的には、あの第一話「ルパンは燃えているか……?!」の翌週に、真っ白な状態でこんなものを見せられた当時のファンのかたを思えば、そりゃ「ルパン三世」という世界に撃ち抜かれちゃうわ、と納得です。46年前の、しかもTVアニメですよ。やっぱりすごいなあと思います。
まずは冒頭。のんびり釣りをしている三世さんがかわゆく、早撃ちの練習をしている次元さんが素敵。渋くカッコ良く決めて見せるんだけど、みごとすべての的を撃ち抜いちゃうと歯を見せて笑っちゃうこのかわゆさよ。旧ルパンの次元ちゃんはほんとうにかわゆいなあ。そして、そこに響く不二子の歌声。
全編を通じてなんですが、この話はとにかく不二子ちゃんが素晴らしい。最初から最後まで、完璧なノワール映画のファムファタールです。非の打ち所がないこのコケティッシュさと得体の知れなさがたまらない。不二子がそういう女であることを知らしめる役割が、ここで響くあの唄なのですね(ザ・シロップという昭和歌謡系バンドがカバーしています。そのときの題名は「二人を愛してしまった私」。ちなみにシロップには「裏切りは女のアクセサリー」なんて曲もあります。どちらもアルバム「清純な乙女のためのハレンチ講座」に収録。amazonプライムで聴けるよ!)。しかし、二階堂有希子さんのこのけだるげな歌声が、すごいよねえ……。この声に本能的に薄気味悪さを感じる次元と、怖いもの知らずに面白がるルパンの対比がいい。
そして「おい、朝飯は女が作るもんだぜ」って次元さんの名台詞、来ました!料理をしてる次元やルパンの描写はちょくちょくありますが、次元さんのような一見そんなことしそうにもない男性が台所に立つ姿はいいものです。もちろんルパンのようなタイプの男性がさらっと一品作っちゃうのも素敵。このときはジャガイモを剥いているけど、なに作ったのかな。あとのテーブルは洋食だったからヴィシソワーズとか作ってたら萌えるな。もちろん三世さんはそれどころでなくタコを見て逃げ出してるわけですが、こっちも可愛い。こういう小さなキャラ描写が楽しくていいな!
「次元、シャンパン冷えてるだろうな」ってルパンの台詞が、旧ルというか原作ぽいですね。ルパンの方がボスなんですよ。そしてそこに現れたパイカルと名乗る謎の男。「酔っ払いちまいそうな名前だな」っていうのがこれは子供向けに作ってるわけではないという感じがします(でも子供を排除してるわけでもないんだよね。年齢関係なく、ただこれをカッコいいと思う奴に向けて作ってるんだよ、という印象がするのがわたしにとっての旧ル前半です)。
パイカルというキャラは、白いスーツがニヒルさを際立たせてますね(墓標のヤエル奥崎もそうだな)。パイカルがルパンたちのアジトを急襲するこの場面では、次元のコンバットマグナムもルパンのワルサーもパイカルには歯が立たないことがハッキリと描写され、その強さと不気味さに説得力を持たせます。そしてこのときの不二子ちゃんのいかにも70年代風ファッションの素敵なこと!
繰り返しになりますが、ここに限らず、とにかく不二子がいいですね。パイカルを誘惑するときの「坊や」って二階堂有希子さんの呼びかける声がすごいなあ……。可愛いんだけど、まさに大人のオンナで、どうやったらこんな声が出るんですかねとか思っちゃう。そして、パイカルに向かって銃の引き金を引くのをまったくためらわないあたりも大人のオンナ。
このあと、ふたたびアジトを急襲され、ルパンたちの持ち出した重火器もパイカルの能力の前には歯が立たないことがハッキリと描写され、ルパンの苦境に説得力を持たせます。「逃げるか」という次元の台詞に「なに?このオレが!?……逃げよう」ってお約束だけどこんなときでもかわゆいな。宙を浮くパイカルを見たときの次元さんもかわゆいけどな。
アジトに戻り、パイカルの使うトリックの一部は解けたものの、まだ最終的な謎は解けずに意気消沈するルパンたちの前に現れた不二子。もちろんその狙いはマイクロフィルムなのだけど、ここで不二子はルパンに「お馬鹿さん」と呼びかける。パイカルに「馬鹿な魔法使いの坊や」と呼びかけたのと同じように。
パイカルとルパンのふたりの男への想いで、不二子は揺れているのか、それともルパンの盗みの技とパイカルの不死身の秘密に惹かれているのか、それははっきりと描写はされず、でもどちらにしても不二子はそのなかでふたりの男、どちらにも真実の瞳で訴えかけ、その振る舞いで惑わせる。こういうことをして愚かにも嫌味にもならない女性キャラをこの時代に造形できたというのはすごいなあと思います。
そして不二子のある意味まさに「女」であるそのふるまいこそがルパンを引き寄せるのだけど、旧ルの次元ちゃんには魅力というより、ただ得体の知れないものにしか見えないんじゃないかなあと思いました。最初の方の車のなかでの「ははっ、恋人ね。あれが?」「ほう、女っていいもんだぜ」というルパンと次元の会話とかね。そこがルパンと次元の違い。だからなにかと「なんだあんな女」ってあきれちゃう。次元には不二子のことが分からないんですよ。まだ。
そして明らかになったパイカルの使うトリック。それ自体は本当にマジックだな!マンガだな!的なものなんですが、それを自分のものにして調子に乗る次元さんはかわゆいです。コバキヨさんの笑い声がじつに溌溂としてていい……。化学式を欲しがる不二子ちゃんとそれに乗じようとするルパンの駆け引きの後、怒った不二子ちゃんを見送る次元さんの表情がいいですね。そのままルパンとともに寝転がって空を見上げるところは余韻もあって素敵なラストシーンだと思います。楽しかった!
このベストセレクションもそろそろ上位になってきて、毎回「わあこれ大好き」とか言ってるような気がしてきましたが(それに比して感想も長くなる……)、それでこそまさにベストセレクションなので、素直に毎回楽しんでいます。終了後にはベスト50くらいまで発表してほしいなあ。この調子で感想も書いていくつもりですが、なんせ名作ぞろいのラインナップですから、すでに言い尽くされたことをいま発見したように浮かれて書いているかとも思います。思うがままに書いております。そんな文章でよければ、読んでやってください。どうぞよろしくお願いします!