ルパン三世PART6第19話「フェイクが噓を呼ぶ 後篇」の感想です。公式によるあらすじはこちら（URL) 。以下の感想は、完全にネタバレですので、大丈夫な方のみご覧ください。では、どうぞ！
ヘイゼル殺害の容疑で獄に入れられた銭形警部。警察に向かって「あんたら正気か！」と激高する八咫烏くんですが、警察の態度はとりつくしまもないもの。さらに怒るヤタくんですが、アリアンナにたしなめられてなんとか矛を収め、銭形警部にも「こういう時こそ冷静になれ」と忠告される始末。あくまで落ち着いている銭形警部と、まだ若い八咫烏くんが対照的ですね。
ヘイゼルの死はコトルニカの治安にも影響を与えました。高速道路や列車、飛行機などの移動手段がすべて制限されるなど、国中が大騒ぎとなっており、マティアも足止めされている様子が映し出されます。アバンはここまで。
一方、アジトに戻ったルパンは、ヘイゼルの死と、銭形警部が捕まったことをニュースで知ります。「花屋の娘もまだいるんだろ、大丈夫か？」という次元の言葉に「心配ねえさ、あっちにはとっつあんの部下もいる」と答えるルパン。
そのとっつあんの部下である、八咫烏とアリアンナは、ヘイゼルのアパートを訪れますが、手掛かりになりそうなものはすでに鑑識によって持ち出されたあとでした。レコーダーに記録を吹きこんでいるアリアンナ。押収された遺留品を調べようと街を歩く二人のもとに、ヘイゼルの汚れ仕事を引き受けていたと思しきチンピラが因縁をつけてからんできます。「ふたりだけか、ICPOもなめられたものだ」と応戦するヤタくんですが、アリアンナを人質に取られ、窮地に陥ります。しかしそこで、アリアンナは自分で敵を投げ飛ばし、銃を抜いたおかげで形勢逆転。ですが、アリアンナをかばったヤタくんは腕に傷を負うことに。結局はそこに警察が駆け付け、事なきを得ました。
すいません、いつもだったらAパートはストーリー説明したあとで、まとめて感想を述べてたんですが、今回はもうAパートからひとつひとつの場面にツッコミたい。だって、今回の19話、まさかのヤタくん回じゃないですか！ なにを隠そう（隠してない）わたしはPART5からのヤタくん贔屓なので、ちょっともういろいろたいへんだった。ヤタくん本人はそれどころじゃない場面ばっかりだけど、赤飯炊こうかと思った。
今回、冒頭からシリアスなお話の雰囲気にそぐわない感想で本当に申し訳ないんですが、ヤタくんらしいまっすぐさが全開で、わたしは笑いが止まらない感じでした。もうほんとヤタくん可愛い。この実力足らずのやる気だけみなぎる感じがほんとうにヤタくん。好き。
街中で襲われるところも、そもそもチンピラの因縁のつけかたもすごいんだけど（「就活前に」ってあれ笑うところか）、ヤタくんが「ICPOもなめられたものだ」ってコート脱いじゃってアリアンナに渡したところで、再生止めようかと思った。いや、ぜったいヤタくんがボコられてアリアンナがさらわれると思ったので、ちょっと胸が痛くて見てられなかった。ごめんなさいヤタくん。あるいはヤタくんがやる気になったところで、アリアンナが敵をやっつけておしまいかと思った。こっちはちょっと当たってた。
しかし、この場面、ヤタくんにコートを渡されて「え」ってなってるアリアンナも面白かったです。内心、「マジでやるのこのひと大丈夫なの」って思ったんでしょうね。もちろんやたくんはやる男でした。そしてわたしの予想通り、アリアンナちゃんのほうがやる女だった。つくづく期待を裏切らないヤタくん。
病院で手当てを受けたヤタくんを迎えるアリアンナ。ふたりのあいだには何かが生まれかけている様子です。翌日、警察で押収された遺留品を調べるうちに、アリアンナは、ヘイゼルがかつての家庭教師を探しているというあの記事を見つけ、声をあげます。アリアンナもまた、トモエと名乗る家庭教師に教わったことがある一人だったのです。
「いまのわたしがいるのは彼女のおかげなんです」と語るアリアンナ。かつて、アリアンナがチンピラに囲まれていたところに現れたトモエ。しかしそこで彼女は自分でアリアンナを助けるのでなく、警察を呼ぶ（？）ことで事態に対処しました。「わたしは教え子を子どもだと思っています。でも、本当の母親ではない。命がけで守ることできません」とアリアンナをさとしたのです。冷たいようだが、その覚悟で生きろと教えてくれていたのだと言うアリアンナ。
ここ、えー、やっぱりアリアンナもトモエの教え子だったんだ！ と驚きました。ということは、やっぱりミレーヌやギャビー、リンファといった（直接的には）トモエの教え子であると明かされていない2クール目のゲストヒロインたちも、そうなんだろうな。でも、ここ、「命がけで守ることはできない」って、トモエは言ってますけど、ルパンのことは命がけで守ったはずだよね……。つまり、トモエはルパンの本当の母親、ってことなんでしょうか……？
アリアンナの話を聞き「危険を前に行動するのは難しいしね」とコメントするヤタくん。それを聞き「やた先輩もです！」と声を上げるアリアンナ。この会話のあいだ、ふたりの頬は染まったまま。助けて見てて恥ずかしい。ストーリー進めながら初々しい男女のラブストーリー同時進行させないで。
警察署を出ようとするふたりを呼び止めたのは、ひとりの女性職員。彼女からヘイゼルの同僚だったセリムが警察に逮捕されたことを知ったふたりは、その情報を基に警察署長のもとを訪れます。そこで、通報のおかげで、警察がディープフェイクで稼いでいる連中とセリムを発見した事実が明らかになりました。ヘイゼルは死ぬ前のその証拠を得ていたようでしだが、その通報者や証拠をヘイゼルに渡したのは誰だったのかということは、署長によると、謎のままです。
そして、その通報者であるルパンは、アジトでのんきにカップヌードルにお湯など入れているのです。五エ門はたすき掛けで花の手入れ中。新聞を見た次元が「銭形はまだ牢屋みたいだぞ」というのを聞き「なーにモタモタやってんだかなあ」とこぼします。「おぬし、犯人が分かっているのか」という五エ門に「まさか。ただ、銭形が出るための手掛かり持ってるとしたらあいつしかねえってだけさ」と不敵に笑うルパン。
一方、獄のなかでヤタくんたちから報告を受ける銭形。現場の遺留品が、脅迫の証拠の捏造動画やパパラッチに撮らせた盗撮写真ばかりだったと聞き、自分が現場に到着したときにもシャッター音を聞いたことを思い出す銭形警部。八咫烏たちはセリムからパパラッチの所在を手に入れ、銭形警部より先に現場に到着していた人影があることを突き止めます。
ここ、パパラッチに銃を突きつける八咫烏くんの顔がこち亀の両さんを思わせる怒りようでちょっと面白かった。さらにパパラッチの言葉に怒ったヤタくんよりさきにアリアンナのほうが手を出してるあたりも、ふたりの呼吸がぴったりで楽しい。そして、現場で動き回ったのはふたりだけど、獄中で推理を働かせる銭形さんのキレ者ぶりもカッコいいですね。ほんとうに最近の銭形さんはこっち路線だな。
釈放されたあと、銭形警部はヤタくんたちに向かい「今度からはもうすこし、おまえらを頼ることにする」と、すこしばかり嬉しそう。さらには「いいコンビだよ、おまえたちは」とまで告げて、部下の成長を喜んでいる感じが伝わってきます。さりげないけどいい描写だなあ。Aパートはここまで。
というわけで、Aパートの感想なんですが、銭形が捕らえられた！となったらとうぜん？ルパン一味が出張ってくるのかなと予想してたらぜんぜんそんなことなかった。ある意味拍子抜けしたのですが、でも考えてみりゃルパンたちがそんなことする理由はないんですよね。ルパンはとっつあんならこれくらいのこと自分でなんとかするでショ、と思っててもおかしくないし。ただ、「向こうにはとっつあんの部下もいる」と言ったときには、いや、ルパン、そこはあまり信用しない方がいいのではと思ったりその。あ、でもこれはマティアちゃんのことだったのかな？
でも、結果としてまさにヤタくん回となってしまって、わたしはすっかり子どものピアノの発表会を見守る母親のような気分。ルパン一味の活躍を期待する視聴者のみなさまにとっては、いまひとつな流れだったかもしれませんが、トモエというキャラクターとヘイゼルの死という謎を探るテーマのためには必要な展開だし、正解なんですよね。
さて、Bパート。ふたりきりになったアリアンナと八咫烏の距離は、夕食をともにしながら口にしたワインの酔いも手伝ってか、どんどん近くなっていきます。宿に帰り、会話するふたり。アリアンナはルパン三世を逮捕したいがために銭形警部の部下になったのです。「いままでは警部一人でルパン一味を追ってましたけど、いまは違う」というアリアンナ。ふたりの指先が触れあい、アリアンナはそっと八咫烏に寄り添います。しかし、八咫烏が「アリーはまだ少し頼りないけど、大丈夫、ぼくが守るから」と言ったところ、アリアンナはかれから離れ「それは嫌です……わたしはやた先輩に守ってもらいながら現場に立つのは嫌なんです」と答えるのでした。
もうすいませんわたしにとってはPART6最大の問題場面というか、ほんとうにもう恥ずかしくて恥ずかしくて！ ヤタくんに春が来たとかそういう問題じゃなくて、なんですかねこの恥ずかしさ！ふたりでワインを飲んでるあたりからむずむずしてたんですが、宿に入ってふたりがベッドに座ってたので驚愕した。え、もうカップルだったっけ？と思いました。
そもそも、なんでこの二人が同室なのか。ホテルが見つからなかったとかいう理由かもしれないけど、その場合、どう考えてもこの部屋をアリアンナに譲って、ヤタくんが銭形警部の部屋に行くのが常識でしょう。それとも、もしかして銭形警部が気を遣ってとっとと姿を消したのか。あるいは「じゃあな、ヤタ！（にやり）」とか肩を叩いて自分の部屋のキーだけ持って行っちゃったのか。あとは若い二人にまかせて、とか？ いつから銭形さんはそんな気が利くひとに。
しかも、ふたりきりになってからずっと頬が赤い二人が、ベッドに座ってからは、指先が触れあう触れあわないとかもう10代の少年少女のようなことをやってるのでどうしようかと思いました。わたしとしてはずっと、ヤタくん、そこは肩をぎゅっと抱いて！手を握って！とウチワを持って応援してる（でもまともに画面を見られない）感じだったんですが、ヤタくんがあまりにヤタくんだったせいで、チャンスの神様をみごと逃したこの流れ、完璧でしたね……。「アリーはまだ少し頼りないけど」って、わたしリアルに「おまえがな」って声出しちゃったよ。そしてアリーちゃんもアリーちゃんだった。銭形さんのところには似たもの同士が配属されることになってんのかな。
でも、ちょっと思ったのはこれが昭和か平成のルパンなら（この後の展開を踏まえたうえで）、ヤタくんはアリアンナとどうにかなっちゃったんじゃないかなーということ。昭和の銭形さんなら、この状況なら抱きしめちゃってもおかしくなかったと思うんですよ。「奥さん！」ってやつですよ。でも、ヤタくんはやはり令和の男子なので、こういう作法もアップデートしてるということかもしれません。まあ、単に気が弱い男子なのかもしれないけれど（そこがいい）。
アリアンナにベッドを譲り、自分はソファで眠る八咫烏。しかし、アリアンナは眠らないまま、パパラッチから入手したヘイゼルのアパートの侵入者の写真をチェックしていました。そこで、彼女は気になるものを見つけます。侵入者の小柄で細身のシルエット、その手首に見えたのは、どこかで見た革のブレスレットでした……。
翌朝、目覚めた八咫烏は、「頼りになるところをお見せするため一足お先に。あとで合流しましょう」とアリアンナが記したメモを見つけます。アリアンナはあのマティアと連絡をとっていました。ホテルで会うことになったふたり。一方、単独行動を戒められた八咫烏もアリアンナと連絡をとりますが、詳しい話は聞けないまま、遅れてホテルに向かうことに。
ホテルの一室でお茶しながらマティアと会話するアリアンナ。マティアのブレスレットが露店で買われたものだと確かめたかったアリアンナですが、マティアはアリアンナの仕事に興味津々な様子。その会話のなかで、アリアンナは自分とヘイゼルの家庭教師が同じ人間だったことを口にします。とたんに、マティアは「その話、すごく興味がある」と瞳を光らせます。
アリアンナたちのいるホテルに急ぐ銭形警部と八咫烏。そこでも〝トモエ〟の名前が出て、銭形警部は、あのメルセデスもまたその家庭教師のことを口にしていたことを思い出します。偶然とは思えない展開に、「なんか、怖くなってきた」とつぶやく八咫烏。
そして、マティアはアリアンナがいつからルパンを追いかけようとしていたのかをたずねています。「なにかに、導かれる……的な？ 結局ルパン三世がヘイゼルさんのところに行った理由ってなんだったんですかね」と言うその表情は、いつものマティアと変わりません。が、そこでマティアは、マティア自身が知るはずもないヘイゼルの部屋の「たくさんある写真」というキーワードを口にします。
とたんになにかに気づくアリアンナ。マティアもまた、そのことを勘づき、ふたりのあいだの緊張感が増していきます。「……わたし、なにかやったと思われてます？ その誤解ってどうやったら解けますかね？」とつぶやいたあと「無理か……」と笑うマティア。銃を向けるアリアンナ。ですが、「あのとき、ブレスレットに血がついちゃったんです」とのマティアの言葉に、ブレスレットに一瞬目を向けてしまい、襲われてしまいます。銃が落ちたアリアンナの後ろには、革ひもをかざしたマティアが。
うわー、この展開、すばらしくスリリングで面白くて、カッコ良い！ マティアとアリアンナの頭脳戦も緊迫感あっていい。台詞ぜんぶに無駄がない。これですよ、これ。ここまでのヤタくんとアリーのもだもだも、その伏線があったからこそのアリーの単独行動につながるわけです。そして単独だからこそ、こんなことになってしまった。すごい。ヤタくん可哀想だけど。
ホテルに駆け付けた銭形警部とヤタくん。しかし、そこで目にしたのは血を流して倒れているアリアンナの姿でした。アリアンナは自分がマティアにやられたことを伝え、血まみれの手で、自分のレコーダーを警部に渡し「それを、ルパン三世に」と言い残すのです。
そして、ルパン。どうやらアジトから出かけるようですが、次元にも五エ門にもその元気の無い様子を指摘される始末。「なーんか調子でないんだよな」とぼやくルパンの目に映ったのは、以前、マティアの店で購入した花がしおれ、花びらが落ちているさまでした。
次回予告。「あの子との関係？ 腐れ縁ってやつかしら。ファッションセンスも男の好みもぜーんぶ真逆、お宝の盗み方だって……」という不二子のナレーションに合わせて、第2クールの1話目にも登場したカワイコちゃんが映ります。次回第20話は「二人の悪女」。「ほんと、いっしょにしないでよね」、つまり不二子ちゃん回の単独話です。やった！
というわけで19話でした。いやー、面白かった。わたしがやたくんファンというひいき目もあるとは思いますが、ルパン一味がほぼ蚊帳の外であるにもかかわらず、これだけ話が進んでなおかつ面白いってすごくないですか。でも、連続話ならこういう展開も必要だと思うんですよ。すくなくとも、わたしにとっては、この第2クールの連続話、あれだけ〝ミステリ〟と謳ってた第1クールよりよっぽど謎で引き付けられるミステリです。
ご贔屓キャラであるヤタくんにかんしては、本編内の感想でさんざん言いましたので繰り返しませんが、昔の銭形さんが引き受けていた、熱血で不器用なところを一身に受け継いだだけのキャラに終わらない感じが出てきて、PART5の頃から好きだった人間としては嬉しい限りです。しかしやっぱりアリアンナは死んじゃったのかな？ だったら可哀想だな……。でも、そうだとしたら、そこであらためて、銭形とヤタくん、ふたりがマティアに対する理由ができますね。
そしてやはりマティアちゃんがラスボスだった！ このキャラ立ち、素晴らしいですね。その目的やルパンのことをどう考えているかはいまだ謎です。わたしの考えるトモエの娘説がありなら、まだ見ぬ（仮の）兄としてルパンをゆがんだかたちで慕ってたとかだったら萌えます。それなら、ヘイゼルを殺した理由もルパンとヘイゼルの仲を邪推してかなと思うし……。でも、そんな単純サイコパス案件だけでは拍子抜けしちゃうな。どうなるのかな。
でも、アリアンナの手にレコーダーが残っていたのも、マティアからのメッセージと解釈するのが妥当なんでしょうね。マティアがそれを見過ごすわけはないもの。となると、これからがマティアとルパンの本当の物語が幕を開けるわけです。いきなりクライマックスだな。すごいな。
また、謎といえばトモエも謎。そもそも単なる家庭教師なのかなんなのかよく分からないひとですよね。教えるのは女オンリーなのかな。そしていまでも生きているのか。順当に考えれば、第13話に出てきた女性キャラのなかで、唯一歳老いた手だけが映っていた、あれがトモエなのだろうけど……。
そんな風に連続回の謎はいまだ尽きませんが、次回は単独話です。ようやく来たよの不二子ちゃん回！ なおかつ男がからむわけではなく女友達話なんて、嬉しくてしかたがないです。「男の好みも真逆」なんて、気になっちゃうなあ。次元さんにちょっかい出してくれないかなあ。
PART6、こんな感じで毎回楽しく見ています。そして見たあとで感想を書くことで、さらに内容についてあれこれ考えてみるのも楽しい。こんな風に楽しめるのも、いつも感想を読んで下さるみなさまがいらっしゃるからこそです。いつもありがとうございます。頂ける拍手も励みになっています！ 最終回まで後数えるばかりとなりましたが、この調子で最後まで頑張って書いていこうと思っています。これからもどうぞよろしくお願いします！