ルパン三世ベストセレクション第13位「ターゲットは555M」感想

 「……次元、おまえさんは世界一のスナイパーよ!帰ったらフランス人形買ってあげる」(cv山田康雄)。

 ルパン三世ベストセレクション、第13位は、PART2第148話「ターゲットは555M」でした!え?これがもう出てきたの!と驚いた方も多いのではないでしょうか。わたしもベスト10に入ってるかと思ってましたよ。新ルパンのなかでも屈指の名作のひとつです。もちろんわたしも偏愛しております。いつものように、ベストセレクションが放送されていない地域に住まうわたくしが、エア感想を書かせて頂きます。ネタバレありなのでお気をつけください。あらすじはこちら→(URL)。

 正直言って、この「555M」に関しては、感想と言っても困っちゃうくらいに名場面、名台詞揃いなうえにストーリー構成もほんとうにうまいので、もういっそ最初からすべての場面を書き起こして解説するレベルで感想も書きたいのですが、どう考えてもうっとおしいですね(わたしの愛が)。

 しかし、それでもこのオープニングシーンの見事さについてはまず語りたい。次元の標的がルパン?とどきっとさせておいて、放たれた銃弾とルパンの間にあったのは硬質ガラス(BGM「トルネード」が流れるタイミングが最高)というつかみ。そこで今回の仕事の困難さを提示したうえで、次元とルパンの「やれるか?次元」「無理だ。……と言ったらどうする」「おまえは言わねえさ」「……だったら聞くなよ」のやりとりが最高。キャー!ですよね。これねえ、なにがいいって、最後の「……聞くなよ」はあくまで次元のつぶやきでルパンの耳には入ってるのかいないのか、いえ、ルパンのことですから耳に入れているのでしょうけど、次元は答えを求めていない、あくまでぼやきだってことですね。それがすごくプロっぽい。なによりこのふたりっぽい。この冒頭場面で、今回はプロフェッショナルの男たちによるお仕事話だと自然に示してるんですよね。

 そのあと、今回の仕事の舞台であるマリンタワービルとその完璧な警備体制が説明され、そこに潜り込んでいる不二子と、守る銭形警部といういつもの面々が紹介されたうえで、夕暮れ時、離れた場所でライフルを構える次元さんの場面が入る。そして、同時に仕事に入るルパンと五ェ門の姿も。

 もうね、この話の次元さんはいちいちカッコ良くて(金子裕さんの脚本の多くはそうなんですが)、わたしにとり理想の次元さんです。風向きを確かめるのにむしってるのは髪かヒゲか気になるところです。仕事には本気で取り組みつつも、軽口を叩くことは忘れず、ぼやきつつも、けして逃げないプロの男。それがあのルパン一味での次元大介という男の立ち位置そのままの描写だと思います。まあこの話の次元さんといえば、出番すべてが名場面と言ってもいいんですが(真剣な顔で言ってます)、どこがベストかと問われれば、わたしにとっては、やっぱりあの、最後の銃弾を撃ち込んだ瞬間の、ルパンとのやり取り、です。

 この話を見ているうえで、こんなわたしの感想にまで目を通していらっしゃるみなさんにはこの場面の魅力なんて、釈迦に説法だと分かっていますが、わたしはもうこれが大好きで大好きで。もひとつおまけに大好きで。「ガキの頃、縁日の射的でな、あと一発のところ、タマがなくなって泣きを見たことがある」「なに狙ってたんだ、キャラメルか」「ん?ピンクのドレスを着たフランス人形さ」少年時代の次元さんが目に浮かびますね!さらには「どうしたルパン。射的屋のオヤジだってな、当たったときはなんか言ってくれたぞ」「……当たりー!」ですよね。ね!(同意を求めるのは酔っぱらいの証拠です)(素面ですが酔ってます)(次元とルパンのカッコ良さに)

 余談ではありますが、この場面のふたりの台詞、わたし、DVDノーチェックでほぼミスなしで書けちゃいました。完璧な台詞ってそういうものよね。キャラクターの生理に完全一致しているから不自然なく、覚えやすいの。まあわたしが必要以上にこの場面を繰り返して観てるからでもあるけどな。大好きなんだもん……。

 どこがそんなに好きかと言われたら、こういうとき、わたしは己の語彙の貧弱さを呪いたくなりますが、もう「……いい」としか言えないんですよう(ラピュタのドーラの息子の顔で)。次元とルパンのふたりには数限りない名場面や名セリフがありますが、この話のこのやりとりの部分は、そのなかでも群を抜いてわたしのお気に入りです。次元さんとルパンの人間ぽいやり取り、ルパンがなんのてらいもなく次元を褒めて、次元も満足げってのがいいんですよね。次元さんの絶技に、こどもみたいに驚いて喜ぶ三世さんの可愛いこと!

 そして、緊迫したストーリーの山場でのこの軽口の応酬のあと、次元が自分のやりとげた仕事をルパンや五ェ門に引き継いでまかせる、その流れが実にプロフェッショナルなやりとりという感じがします。何より重要なのは、そういうプロの男たちのやりとりが、555メートル先の硬質ガラスを突き抜けるために、同じ一点にひたすら弾を撃ちこみ続けるというそのトンデモないアイデアに説得力を持たせていることですね。

 だって、ルパンのトリックや仕掛けって、基本的に無茶じゃないですか。物理法則も鼻で笑ってごり押ししちゃって、でも、どんなトンデモないことでも、このルパン一味の面々ならなんとかしちゃうんじゃない?あ、なんとかしちゃったよ、マジかよすげー!っていうのがわたしにとってのルパン三世の魅力のひとつなんですよね。で、そのルパン一味なら、と思わせるにはそれ相応の説得力を持ったキャラクター描写が必要で、この話はそれがとてもうまくいっていると思うのです。神は細部に宿るのです。

 次元さんのことばかり熱く語りましたが、この話が面白いのは、「ターゲットは555M」だけど、その555Mというハードルをクリアした段階で終わりじゃないことですよね。さらに、宝石をどう手に入れるか、エレベーターの閉じ込められたルパンがどう逃げるかとつぎからつぎへと危機的状況を繰り出されて、それもドキドキ。ガラスを割って、それで終わりじゃないのだ!

 そして今度はこの展開で、ルパンと五ェ門の関係が描かれるのがこれまたいいですよね!このふたりのこういうやりとりは珍しいですけど、次元とルパンとはまた違った感じの関係性がうかがわれてとても楽しい。マジな五ェ門とさめてるルパン、でもより命の危機にあるのはルパンの方、っていうのが実にらしい。そしてそんなルパンが決死の命をたくすのは五ェ門なんですよ。素敵すぎる……。

 また、この話では、銭形警部は全篇通して、ひたすらコメディリリーフとしての役割を果たして大活躍なんですが、挟み込まれるそういう部分がストーリーに絶妙な緩急を与えていると思います。派手なドタバタ、アクションの一方、小粋な台詞や緊張感ある場面がはさみこまれ、両者が共存しているところもそうです。それがちょうどいいバランスでブレンドされて、ストーリーがグイグイ進んでいくのも、これこそルパン三世!と思います。わたしはルパン三世のこういう懐の広さとなんでもありなところが本当に好き。大好き。

 そしてみごとにダイヤを手に入れたあと、三人で分けてる(こういう場面も珍しいですよね)ところに、不二子ちゃんが来襲。次元も五ェ門も後遺症で身動き取れず、と言う描写がそこはかとなくおかしいです。しかしそこはみごとなルパンの技(?)で逃げ出して、男三人が去っていく(このときのルパンの顔がまた最高ですね。ぐうかわ)ラストまで見てしまえば、わーただの名作じゃないですか!この密度で20分ちょっとですよ。素晴らしい。今回、この感想を書くためにDVDで再見したんですが(エア感想ですからね)、やはり面白いなあ、見所だらけだなあと思いました。堪能いたしました。

 しかしルパン三世ベストセレクション、13位がこれですよ。すごいな、これから先の順位が読めないというか、こうなったらもう本当に順不同みたいなもんですね。それに比して感想も長くなっていく気がしますが、楽しいことこのうえないです。1位が発表されるまでにはエア感想を脱したいものです。これからもこういう感じで自分勝手な感想を書いていきたいと思いますので、それでももしよろしければまた読んで下さると嬉しいです。これからもよろしくお願いします。