ルパン三世PART4第4話「我が手に拳銃を」感想

 荒れ果てた教会と思しき場所で、ミルコと呼ばれる青年がチンピラに囲まれています。どうやらギャングのリーダーらしき男に銃を持っていることをとがめられている様子。銃声が響いたあと、場面は変わり、公衆電話を頼りに病院を探している次元の姿が映ります。通行人に病院の場所を教えてもらい、そこへ向かう次元。頬を押さえているあたり、歯痛の再発であることがうかがえます。アバンはここまで。

 曇り空の下、病院で診察をしている女医(リービア)。そこに診察抜きで痛み止めだけを欲しがり、受付でゴネている男がいるとの知らせが入ります。次元です。受付に向かったリービアは、次元の懐にある銃を見咎め、取り上げようとしますが、とうぜん次元は抵抗し、反射的に銃を抜きます。驚く周囲の様子を見て「べつに、ぶっ放すつもりはねえよ。痛み止めが欲しいだけなんだ」と頬を押さえてみせる次元。診察をするから銃を渡すように、というリービアの求めに応じて次元は仕方なく銃を渡し、診察を受けます。しかし、そこに急患が入ったと知らせが入り、リービアは次元を残しその場を去ります。

 わたし、この話というか次元さんの虫歯ネタを見るたびに、はたして痛み止めだけで問題が解決する虫歯がこの世に存在するのだろうか……という疑問にかられるのですが、みなさまいかがでしょうか。思うに、次元さんの歯痛は虫歯じゃなくてストレス性とか気圧が原因の歯痛なんじゃないかなあ。その昔は厭な予感がすると水虫が痒くなってたひとだけに、まだ歯痛のほうがいいなと思うんです。

 そして今回登場したゲストキャラである眼鏡の女医さんがクールビューティな感じでいいな!と思っていたら、診察室で帽子を脱いでる次元さんはその百倍キュートでした。なんだろうあの可愛い頭のかたち……。このお話自体は、次元さんがカッコいい次元回のはずですが、虫歯を痛がってる次元さんは常に可愛いです。

 痛み止めが出るのを待って喫煙場所で時間を潰している次元に、入院患者の老人(ニノ)が痛み止めを押し付けてきます。薬で生かされてるだけの自分は生きた屍と変わりはない、と荒れるニノに、次元は「あんたの死生観についてはこんど詳しく聞くとして、こいつは気持ちだけ受け取っとくよ」と痛み止めを突き返し、病院を出ようとします。どうも待ちきれなくなった様子。

 銃を預けたリービアの姿を求めて病院のなかを歩いた次元は、包帯を巻いた姿で寝かされている人々が並んだ部屋に行き当たります。これがこの街の名物だ、というニノのもとに、新たな患者が運ばれてきます。それはニノの友人、ミルコでした。リービアが次元に話したところによると、これはすべてこの街を牛耳る〝殺さずのエリク〟というギャングのボスの仕業でした。かれは、自分に逆らった人間をわざと致命傷を外して怪我を負わせ「生きた屍」にする生粋のサディストなのです。そして、次元の存在もエリクの耳に届くのでした。

 リービアによると、この街では、治安を守るという名目で、エリクの許可なしに銃を持つことは許されず、エリクは街の住民に法外な金を要求しているというのです。「あんたらはなんでそんな奴に好き勝手させてるんだ」という次元の言葉に、リービアは眉を曇らせ「絞るだけ絞ったら、別の街へ行く。それがかれのやりかただから。わたしたちのできることは、ただ嵐が過ぎるの待つ。それだけ」とつぶやきます。そして、その病院にも仲間を引き連れたエリクが姿を現します。

 銃を持った人間を探し、病院を荒らすエリクたちを見てさすがに身を乗り出す次元ですが、リービアは「丸腰でなにができるの」と止めます。「じゃあ、おれの銃を寄越せ」という次元を、リービアは連れ出します。しかし、次元に銃を返すのは反撃の為でなく、銃を持ってこの場を去ってもらいたいから、というのです。「分かったよ、嵐が過ぎるの待つんだろ」とリービアの言う通りにしようとする次元でしたが、隠し場所に銃はありませんでした。驚くリービア。

 けっきょく病院では銃は見つからないまま、エリクはその場を去ります。どうやら銃はあの老人、ニノが持ち出したらしいのです。次元は念のため、銃の弾は抜いておいたのですが、ニノはそれをもってエリクに立ち向かおうとし、結果、エリクの餌食に……というところでAパートは終了。

 まあ、ここまでの展開でまっさきに思うのは、この街に警察は存在しないのかということなんですが、そこらへんはまあ新ルぽいふわっと感なのかな………。「ルパン三世」は、物語上のリアリティラインの設定が基本あいまいでシリーズごとどころか話数によって違ったりするので、今回のこの話はそういうことなんだ、ということでしょう。でも、個人的には、次元回かつ美人のゲストキャラが登場するにもかかわらず、安易な恋愛話に持ち込まないあたりに好感が持てます。おたがいそれどころじゃないのがリアルですよね。

 Bパート。思いつめた顔でメスを白衣に忍ばせるリービアに対し、次元は「それでエリクを殺そうってのか」と声をかけ、メスを奪います。「やめとけよ、返り討ちに合うのが落ちだ」という次元の指から、メスを奪ったせいで血が流れるのを見て、リービアは顔色を変えます。リービアは、ニノが友人のミルコの敵討ちに次元の銃を持っていったのを止められなかったと悔やんでいたのでした。自分が中途半端に治療してしまうから、生きた屍を作り出してしまうのだ、と言い「エリクの片棒を担いでいるのはわたしなの」と嘆くリービアに、次元は「なら、ほっとけよ。そしてただ死ぬのを待ってりゃいい」と冷たく言うのでした。「……それができないから、わたしがこの手でエリクを殺すしかないの!」と叫ぶリービアでしたが、次元は「詭弁ってやつだな」と片付けます。

 そして、そこに戻ってきたのは傷ついたニノ。あまりの有様に動けなくなったリービアに、次元はすぐ手術の準備をしろ、と声をかけます。「考えるのはあとにしろ、この街にはエリクを殺したいと思うやつはいくらでもいる、ただ、傷を負った人間を治せるのはあんたしかいない。……違うか?」と次元はリービアにメスを握らせます。「銃を返してもらいに」とエリクの元に向かおうとする次元をリービアは止めますが、次元は「……万一のときは、おれもあんたに治してもらうさ」と言い残し、その場を去り、リービアはニノの命を救うため、手術台に向かうのです。

 ここのリービアと次元のやりとりがとてもクールでよろしいです(どこ目線)。わたしは次元さんに恋愛がからむの大好きですが、それ抜きで女性と関わる、いわゆる「男心」系の話も大好きだから……。次元さんがリービアからメスを奪ったせいで血が流れる、それを見てリービアが動きを止めるのもいいし、自分を責めるリービアに中途半端に優しい言葉をかけるのでなく、自分の仕事をしろ、というかたちで声をかけるのも好き。そして、メスを握らせるときに、一瞬だけ手が触れあう描写が良いです。本人たち的には恋愛ではまったくないけど、外野が見てたら、こんなことされたら惚れてまうやろ、という感じの自然な紳士っぷりがすごく次元さん。あと、早川先生のコミカライズでは、この場面、一瞬、次元さんの帽子の下の目があらわになってリービアと見つめ合うんですが、すごく良いのです……。

 エリクのねぐらに向かった次元は、銃はあくまで自分のもので、それを返してもらいに来ただけだ、とうそぶきます。次元の銃に踊らされたかたちとなったエリクは「こんどはおまえが踊る番だ」と、次元を私刑の場に連れ出します。「ダンスフロアにしちゃずいぶんとかび臭い場だが、野郎とチークダンスは勘弁だな」という次元にエリクの部下たちの銃が一斉に向けられます。銃で人を殺すのは簡単だから、殺さないように殺すゲームをしている、「ゲームってのは難しい方が楽しいって思わねえか?」というエリクに、次元は薄く笑い「狭い世界で生きてんだな、おまえ」と応じます。気にせず「丸腰のやつになにができる」と死のカウントダウンを始めるエリク。「殺すのは簡単だといったな」とカウントダウンと同時に身構える次元。一方、リービアはニノを救おうと必死に手術に取り組んでいます。「おまえが思うほど人間はそう簡単に死なねえもんだ」という次元に向かって、一斉に放たれる銃弾……。そして、あわやというところで持ち直す、ニノ。

 エリクのアジトに向かったときの余裕と、囲まれたときの減らず口、エリクの部下に警告するときの凄み、この一連の流れの次元さんはほんとうに完璧な次元さんで、スタッフさんありがとうございますという感じですね。こういう場での次元さんのカッコつけからでないと得られない栄養があります。あと、PART4の次元さんは基本いつもそうですが、ネクタイがだらしなく崩れてる感じがたまらなく好みです。「おまえが思うほど人間はそう簡単に死なねえもんだ」という台詞に、ニノの救命が重なるのが効果的です。

 そして舞台は変わり、私刑の場所となった荒れた教会に、警察がやって来ています。次元を取り囲んでいたはずのチンピラがみな倒れていることに驚く刑事。そこにやってきたのは、ルパンがこの街に来たという情報をつかんだ銭形警部でした。銭形は、現場の状況から、エリクの一派に囲まれた男が放たれた銃弾の方向を読み、同士討ちさせたと推理します。

 その推理通り、一派を片付けた次元は、ひとり残るエリクに迫り、自分のマグナムを取り返したのでした。命乞いするエリクに「次はねえぞ」と背を向ける次元でしたが、エリクはその背にマシンガンを乱射します。「次はねえって言ったろ」と次元は天井の照明を支える鎖を撃ち抜き、エリクはその下敷きとなったのでした。銭形はそう推理するのですが、聞かされた刑事は「きみはそんなバカげた真似ができる人間がいると思うのか」と半信半疑です。が、銭形は「357マグナム弾……あいつがおれに話しかけてくるんです。やつの仕業じゃないか、とね」とつぶやきます。

 ごめんなさい、正直に書きますが、PART4放送当時にこの同士討ちのくだりを初めて見たときのわたしの感想は「ないない(笑)」でした。ガープが銃弾を避けるのと同じくらいない話だと思いました、すみません。でもまあいまこうやって見直すと、これはこれでありかなという気分になるのはわたしがすっかり次元さんに甘くなったせいでしょうか。ていうか次元さんがカッコいいからそれくらいやって当然かなという気になります。あと、ここは「次はねえって言ったろ」でトルネードがかかるくだりが完璧すぎるので……。そしてなにより、それをただひとり理解してるのがほかならぬ銭形警部というあたりがたまらないじゃないですか! もうこれなら文句ないよ!

 無事に病院に戻り、ニノのもとで一服して痛み止めと煙草を交換する次元。リービアがそこにやってきますが、すでに窓は開いて次元は姿を消していました。「……水臭い男」と微笑むリービア。ずっと曇り空だった天気も晴れ、心地よさそうな風に髪を揺らしたリービアは「嵐は去ったわ、おかげさまでね」とつぶやくのでした。一方、次元を迎えに来たルパンは「一言くらいあっても良かったんじゃないの」とあきれますが、次元は「花に嵐のたとえもあるさ、サヨナラだけが人生だ」と笑うのみ。ルパンは次元の歯の具合を気にしますが、次元はニノからもらった痛み止めを見て「このくらいあれば当分は持つ」と明るく言うのでした。

 というわけで第4話、PART4初の次元回の感想でした。ルパンも最後にちらっと出るだけで、徹底して次元が主役、なおかつ恋愛も過去の因縁もないストイックなお話で、次元回としても大好きです。次元回は次元さんがカッコ良くてナンボ派です。

 ただ、最初のほうの感想でもちょっと書いたんですが、やはり警察がなにしてるんだろうとか(最後に出てくるなら病院が荒らされた段階で出てくるべきでは……)、たぶん外科医のリービアが次元さんの歯を覗き込んでなにしてるのかなとか、街に一個しかない総合病院ぽいけれど、医師はリービアしかいないのかなとか細かいところで気になる部分はありますが、いちばん気になるべき、エリクの部下を全滅させた次元さんの超絶な技巧を受け入れたわたしになにを言えましょうか。まあ、リアリティラインという意味で言えば、PART4もまだ4話目ということで、そのバランスがまだ定まってないのかもしれません。これ、PART2ならわたしはぜんぜん気にしなかったと思うので……。

 あ、不二子ちゃんは登場しなかったので、とうぜんジゲフジ的にはなにもありませんでしたが、リービアのことを知ったら不二子ちゃんは内心おだやかでないよね!と思ったので、当時、それだけで小説を書きました(URL)。そこらへんが気になるジゲフジ好きのかたがいらしたら、読んでください! 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です