追悼 増山江威子さん

「ルパン三世」において、峰不二子役を演じられていた、声優の増山江威子さんが、5月20日にご逝去されました(URL)。

 このブログを始めてから、なんども追悼の文を書いてきました。モンキー・パンチ先生、井上真樹夫さん、小林清志さん。どのときも、なんとも言葉にできないようなつらさと苦しさがありました。今回もまた、そうです。子供の頃から見ていたコンテンツを大人になっても大好きなままだと避けられない運命なのでしょうが、そもそも人間が年をとるとはそういうことで、いいかげん慣れてもよさそうなのに、やっぱり慣れない。ひとの死は、慣れない。しょうがないことだけど、哀しいというより、苦しいと思います。

 増山江威子さんといえば、キューティーハニーやバカボンのママ、という声もあるのですが、わたしとしては年代的な傾向としても圧倒的に峰不二子です。こんなルパン好きになっていなくても、訃報を聞いたらいちばんに浮かんだのは間違いなく不二子ちゃん。二階堂有希子さんの不二子とはまた違った、可愛らしくも甘く、まさに峰不二子としか表現しようのないあの声。

 「ルパン三世」という時代を越えたコンテンツにおいて「峰不二子」という存在は、どの作品でも、その時代においていちばんの「いい女」でなくてはならないというのがわたしの(勝手な)持論です。そして、1977年に二階堂有希子さんから受け取ったバトンを2011年に沢城みゆきさんに渡すまでの長い年月において、いつでも「とびきりのいい女」として存在し続けた峰不二子であった増山江威子さんは、そんなファンの勝手な夢と願望をみごとに具現化してくださった素晴らしい声優さんでした。

 増山さんご自身も、不二子として演じた中でお気に入りだったのは「カリオストロの城」だったと発言されていましたが、わたしも、訃報を聞いていちばんに浮かんだのは「カリ城」の不二子でした。身体の線もあらわなドレスをまとうこともなく、ルパンを甘く誘惑することもない。けれど大人の女性としての芯を感じる存在として、間違いなく「いい女」だった不二子。カッコ良かったなあと思います。

 もちろん、新ルの不二子ちゃんも大好きです。ていうかそれは大前提といってもいい。愛らしかったりずるかったり、ときには人としてどうかと思うような裏切りをしつつも、ルパンに甘えてとろけるような声を出し、危機一髪逃げ出したり、きれいな涙を流すこともある、あの不二子ちゃん。

 峰不二子はなんでもできる。メイ・ウェストの〝Good girls go to heaven, bad girls go everywhere〟(良い娘は天国に行ける、悪い娘はどこへだって行ける)を昭和50年代のTVアニメで体現するには、増山さんの声の魅力が必要不可欠だったと思います。増山さんの不二子ちゃんは、色っぽく艶やかでありながらも、どこか優しく可愛らしい。ほんとうに素敵だった。憧れました。

 そして、そんな増山さんが命を吹き込んだ峰不二子は、この令和の時代においても「とびきりのいい女」であり続けます。これまでずっとそうだったように、これからもずっと。そしてわたしは増山さんの不二子を楽しんでいくし、大好きであり続けます。だって不二子は不二子なんですもの。それが二次元のキャラクターの素晴らしさ、かれらはどこにも去りません。わたしが忘れないかぎり。そしてわたしが増山さんの不二子を忘れるわけがないのだから。

 そんな、まさしく稀有な存在である峰不二子の、間違いなく一部であり魂であった、増山江威子さん。ほんとうにありがとうございました。心よりご冥福をお祈りいたします。

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