「残り少ない人生、おまえの墓を守って過ごすのだ」(cv.納谷悟朗)。
ルパン三世ベストセレクション、第20位は、PARTⅢ 第37話「父っつあん大いに怒る」でした!第21位に続き、銭形回ですね。この並びに今回のセレクションのガチさを感じます。さっそく、いつものように、ベストセレクションが放送されていない地域に住まうわたくしが、エア感想を書かせて頂きます。ネタバレありなのでお気をつけください。あらすじはこちら→(URL)。
今回の「父っつあん大いに怒る」正直言って、そんなに印象に残ってる話ではなかったのですが、見直したらびっくりするほど面白かった!ベストセレクションなので票が集まりやすいのはキャラクターが中心の話だと思います。しかし、この「父っつあん大いに怒る」は、銭形回ではあるのですが、それ以上にストーリー展開が秀逸なのですよね。PARTⅢらしい軽やかさで流れるように騙し騙されの展開が続いて、あっというまにお話が終わる感じ。だからかえって印象に残ってなかったのかな。
そういえば、わたしは放送当時にリアルタイムでPARTⅢを見ているはずなんですが、やはりその内容はふしぎなほど記憶に残っていません。再放送で繰り返し見たPART2と違い、本放送のみの視聴だったせいもあるでしょうし、単純にこどもだったせいかもしれないんのですが、それ以上に、このひたすらテンポの良い面白さのせいかもなあと、大人になってからPARTⅢを再見して思ったりもしました。それくらい、ストレスかからず楽しい話が多い。この話も、そういうお話です。楽しい。
冒頭から過去に自分を騙した男への恨みを語るルパン。PARTⅢは他にもなんどかそういう話がありましたよね。そう思うと、ルパンは相棒に恵まれない星の下に生まれたのかしら(次元ちゃんを大事にしてね!)そして銭形とアンの出会いの場面でわたしが好きなところがあります。怪しいやつ、と手錠をかけたにもかかわらず、相手が少女と知ってあわてて外し、手をなでなでしてあげる、そのさりげない描写が女子供にやさしいとっつあんらしくて、いい。そして、ここでアンが語る身の上話にほだされちゃうとっつあんですが、その頭に浮かぶ和風のストーリーのほっかむり三世さんが超可愛いですね!なんでその図柄なのか分かんないけどね!
ルパンはカルロスの葬式に出て、孫に声をかけるものの、現れたのは神父に化けたとっつあん。ここからはじまる逃げて逃げて逃げまくる次元とルパン、そしてそれをどこまでも本気で追いかける銭形警部の場面はテンポ良くて楽しいですね。場面転換で終わったかと思うとまだ続いているんだ。五ェ門がめずらしく水上歩行器なんか発明して、しかもそれを銭形警部に奪われたり、こまかいところに遊びがあって、それも楽しい。そして、ルパンにアンを殺されたと思い、涙する銭形警部。アンがパパの腕に抱かれてるみたい、と言うあたりが、なんかこう、銭さんのツボを押したのかしら。しかしここで、バックに龍と虎が出てきて嵐となる心象風景の描写にはちと笑いました。まさにタイガー&ドラゴン、ルパンさん的にはおれの話を聞け状態ですな。
とうとうルパンの射殺許可まで手に入れて、本気になった銭形警部に、コテンパンに五ェ門がやられちゃうあたりは、PART2第57話「コンピューターかルパンか」をほうふつとさせますね。そう、本気モードのとっつあんは強いのだ!PARTⅢの銭形警部は(作品全体の雰囲気もあって)わりと軽かったり情けないところが強い印象になっちゃうんですが(個人の感想です)、この話のとっつあんは実にカッコいいです。そして、接着剤でくっついた斬鉄剣を五ェ門と一緒に頑張って引っ張る次元さんがかわゆいです。そしてアンの企みにより、ついに、スタジアムでのルパンと銭形警部の対決と言う流れになるものの、ルパンがすべてに気づいて介入したのはここらへんからなのかなあ。しかし裏切りは美女の特権っていいセリフですね。
スタジアムでの決闘場面がいいのは、ルパンらしい軽やかなおふざけで流すのかと思いきや、しっかり、正面対決で決めちゃうところですね。そして、ここで、銭形警部に「わざと外したな、ルパン」と言われちゃう三世さん。これね、わざと外したほうが銭形警部の罪悪感を刺激してだましやすいと考えたのか、それともそうしたほうが自分が撃たれるという結果に説得力があると判断したのか、はたまたその両方か、いろいろと考えてしまいました。
このときの三世さんの表情がまたいいんだ。もちろん、すべてはルパンの計算、なにもかも分かったうえでのお芝居であることは承知の上ですが、あんがい、ルパンの胸中にはとっつあんになら撃たれてもいーや、くらいの気持ちもあったのかな、と深読み大好きオタクはつい思っちゃうような笑顔でした。
だからこそ、このあとの銭形警部の落ち込みようが、よけいに可愛くも胸に迫っちゃうんです。そして、すべてが明るみに出てルパン一味はお宝を無事に手に入れて、銭形警部はルパンが生きていたと知るあのラスト(ルパンが銭形警部にかける「とっつあんとっつあんドコ行くの」って台詞の響き、あれ、いいなあ!)。ここにたどりつくまでの流れがじつにスムーズでいいですね。
というわけで、ルパン三世と銭形警部、このふたりの関係性を二転三転するストーリーのなかにうまく織り込んだ、すごく巧い話だと思いました。いちおう、主役は銭形警部なんだけど、かれを中心にそれぞれのキャラクターが配置されて回るお話の立て方がいい。今回のゲストであるアンは、不二子もルパンも騙そうとする悪役ながらどこか憎めない部分が残る少女、不二子ちゃんはいつものように信用ならないものの、ちょっとツメの甘い悪女でルパンの泣きどころ、次元はルパンをサポートする義理堅い相棒(死んだことになっているルパンを前にして銭形警部に言い放つ「いまおれたちを怒らせるととっつあんもあの世に行くことになるぜ」って台詞がすごくカッコいい!)、五ェ門はすぐれた剣技でルパン一味の要となる役割ながら今回はちょっとご苦労さんな感じ、そしてなにより銭形警部が銭形警部で、ルパン三世がルパン三世であるこのお話、本当によくできているので、あまりあれこれ言う必要も感じないんですよね。まあいっぱいあれこれ言いましたけどね。しっかり楽しませてもらいました!というのがいちばんの感想です。
さて、このベストセレクションもようやく20位になりました。いまのところ、中間発表で顔を見せた作品が順調に登場していますが、番狂わせはないのかしら。そして、ここまで五ェ門回が登場していないあたりに、五ェ門クラスタの静かな底力を感じたりもしています(「五ェ門危機一髪」ベスト5とかに入るんじゃないのか)。これからも毎週、にこにこと楽しみつつ、エア感想も書いていこうと思いますので(はい、放送自体は見られないんですよ、わたし)、どうぞよろしくお願いします!