「裏切りは女のアクセサリーのようなものさ、いちいち気にしてちゃ、女を愛せるわけがない。そうだろ?」(cv山田康雄)。
ルパン三世ベストセレクション、第5位は、PART1第1話「ルパンは燃えているか……?!」でした!すべてのアニメ版ルパンは(パイロットフィルムは別格として)、ここから始まった名作です。いつものように、ベストセレクションが放送されていない地域に住まうわたくしが、エア感想を書かせて頂きます。ネタバレありなのでお気をつけください。あらすじはこちら→(URL)。
レーシングカーが居並ぶサーキット。そのマシンに怪しげな細工を行おうとしている男に声をかけるレースングスーツ姿のルパン三世の登場から物語は幕を上げます。このファーストカットのルパンの顔がカッコ良くて思わずDVDを静止させました。「きみ」という呼びかけ方がまた貴族的でいいな。そしてそんなルパンが呼びかける相手が次元大介。この初登場がまた。草むらに足を組んで寝転んで、つま先を揺らしながら「いやあこっちはのんびりしたもんだ。小鳥がピーチク鳴いてるぜ」って完璧ですよね!山田康雄さんもそうなのですが、小林清志さんも、声が若々しいのはもちろん、まだ微妙に硬さがあるのがたまらないのです。
しかしそんな次元に対しルパンは「おまえのことじゃない。おれの恋人、峰不二子はどうした」と一言。ここらへんが旧ルですよね。ルパンのほうがボスなのだ。しかしそれをたいして気にした様子もなくニヤついて答える次元さんがまたいい。旧ルのにゃんこ口次元さんはかわゆいなあ。一方、ルパン三世を葬ろうともくろむルパンの宿敵スコーピオンの集会に忍び込んでいたその峰不二子は敵の手に落ちて……というところでタイトル。短い時間ながら、主要キャラクターの登場、悪役と場面設定の提示、さらには物語の引きが的確に構成された優れた導入部です。
敵に捕らわれた不二子ちゃん。いや、ここの不二子ちゃん、美しいったらないですね。そして拘束されているにもかかわらず「葬式行列のバトンガールでもやれっておっしゃるの?」って、完璧すぎませんか。二階堂有希子さんすごい。そこで、その不二子ちゃん相手に、ルパンを葬るため、飛騨スピードウェイを舞台にしたスコーピオンの計画が語られます。「あれほど用心深く抜け目のないルパンが、ことレースとなると一枚の招待状でころっと引っかかる。これだから人間は面白いねえ」というコミッショナーの台詞で語られるルパン三世という男の像が興味深いですね。そしてコミッショナーの語りはルパンの影にある「ルパン帝国」の存在をも示唆します。原作!
やがてレースはスタート。快調に飛ばすルパンですが、次元は「ちょいと雲行きがおかしいんだ。彼女からの連絡が途切れてもう三十分たつ」と不二子ちゃんを心配しています。しかしルパンはたいして気にした様子もなく、それに対して「おい、なんていう言い草だ」と次元さんはこころもちご立腹です。うん、分かってる。ここで示されているのは恋人が囚われてもあくまでクールにふるまえるルパン三世のキャラクター。そして、それに眉をひそめるフツーの感性を持つ次元大介、両者のキャラクターの対比なんだということは分かってる。しかし、それらを無視してわたしは素直に、旧ルの第1話からこんなジゲフジ頂いていいのかしらと喜ぶことにしています。「彼女」って言い方がいいよねえ。「女狐」じゃないんだよ。
まあ、もちろんすぐに、ルパンは今回のレースに潜む敵の罠を見越していて、さらにはそれの対応までをも考えていることが示されるのです。いやあ、頭のいい男って本当にカッコいい。そしてそれを得意げにぺらぺらおしゃべりしちゃうところも素敵。でもそこでちょっと「罠?」ってきょとんとしちゃう次元さんがかわゆいですね。ルパンはいつでも次元の前を行く男なんだな。
そしてそこにルパンを追って、銭形警部の登場です。しかしルパンのレーステクニックに追いつけるってとっつあんも第1話からカッコいいことこのうえありません。「ルパン、こんな風に貴様を追い続けてもう何年になるだろう……、血が、宿命が……、貴様がアルセーヌルパンの孫でなかったら、おれが銭形平次の子孫でなかったら……」との銭形警部の独白が語られますが、フランスの大泥棒と江戸の岡っ引きの追いかけっこが血の宿命ってなんかすごいな。ルパン三世はほんとうに奇想天外な発想と緻密な描写と自由な設定で成り立つ物語であると思いますね。冗談抜きで。
いよいよはじまるルパン抹殺計画。しかしルパンはみごと敵の罠をかいくぐり、次元との入れ替わりに成功です。ここで目と目で通じ合うふたりがいいなあ。ルパンはそのまま単身、スコーピオンの本拠地に乗りこむことに。しかしここがフツーにカッコいい乗りこみかたではなく、水道局に扮してトイレに入りこむというコミカルさ、しかしそれが後々の伏線になっているところが最高ですね。そしてわたしは、あちこちの水道栓を破壊していきながらも、途中のエレベーターで服を脱いで絞ってるルパンの描写を挟みこむ遊び心が好きです。
さらに囚われの身の不二子ちゃんにも危険が迫ります。くすぐりマシーン!あの、わたしはしょせん女性なので、このシーンがある種の殿方の性癖にどれだけの種を撒いたかとかむしろ直撃したかとかそういうことは想像できても実感は難しいのですが、それでもやはりこの場面は、なんというか、あの、フツーはアハハと笑うギャグ場面だけど、そうじゃない場合は、あれですよね。あれ。「バーバレラ」のジェーン・フォンダは可愛かったですよね!(微妙にお茶を濁す)。
しかし、スコーピオンの集会はなだれ込んできた水で大混乱に。「奇跡でも起こらんかぎり、ルパンは……」と狼狽するコミッショナーの前に「起こったんだなあ、それが」と登場するルパン三世。きゃーカッコいい―!(悲鳴)あふれる水を利用して感電を起こし、みごと不二子を救いだします。でも、ここでもあくまでクールなふたりの関係性がいいですね。当たり前なんですが、旧ルのふたりっぽい。
一方、ルパンの代わりにレースを走り順調にライバルを片付けていく次元さん。迫ってきた銭形警部に対して「銭形のとっつあん、けしてあんたの腕は悪くねえんだが、車の性能が違うんでね。ま、気を落としなさんな」っていいですね。そしてみごと、ルパンと入れ替わった次元はそのまま不二子ちゃんのもとに参ります。来たよ来たよ!ヤバい(わたしが)。あの「よう、赤ずきんちゃん」です!
旧ル1話からこんなジゲフジを頂いて(二度目)。しかしここの次元さんの、微妙に不二子ちゃんを女子扱いして侮っている感じがいいですね。赤ずきんちゃんに見えるんですよ。大丈夫かな(わたしが)。さきほどのルパンと対照的だ。そしてみごとに足をすくわれるあたりまで含めてたまりませんね。旧ルの次元さんは本当にかわゆい。
みごとレースに優勝したルパン。もちろんそこには敵の罠が潜んでいたのですが、そこは軽く切り抜けて、自らばらまいておいた爆弾を使い、スピードウェイを火の海にします。銭形警部につかみかかられても、アリバイがある、ととぼける始末。しかし、不二子ちゃんの裏切りで手錠をかけられてしまいます。けれど、そんなルパンの頬にキスして去る不二子ちゃん、その後姿を頬を撫でつつ見送るルパンの表情がいいですよね。
もちろんルパンはちゃっかり手錠から抜け出し、ついには、不二子ちゃんの車にいつのまにか乗りこんでます。ここで、ルパンのあの名台詞「裏切りは女のアクセサリー」が出るのですが、個人的にはあの後ろ手で縛られて転がされていた次元さんも助けてあげたんだよね、ね?という思いになりますな。そこであのくすぐりマシーンのお手々を持ち出すルパンもお茶目、そしてそれに甘えた悲鳴をあげる不二子ちゃんというところで、この話は幕を下ろすのでした。
個人的な気分ですが、わたしはある作品を楽しむときに、それがいつ作製されたものかとかスタッフがどうとかいうことはあまり重視しません。いま、このときにわたしがこの作品に出会ったんだよ!くらいのテンションで、それがいくら古い作品で歴史的な価値があろうと、有名スタッフが関わっていようと、それはあくまで作品の価値に添えられるものであって、作品そのものの本質ではないと思ってるのです。もちろんそういう情報があることで作品の楽しみ方が広がるのはとても大切だし、オタクだからそういうことをちまちまチェックするのも大好きですが、なによりまず肝心なのは、受け手がそれを見たときの純粋なときめきだと思っているのです。
うん、でもね、やっぱりこの作品に関してはこれが1971年につくられたということを無視すべきではないと思いました。それはそれだけの古さを持っていることを免罪符にするべきという意味でなく、にもかかわらずこれだけの面白さ、時代の波に削られていない普遍的な価値をもっているということを称賛すべきだと思うから。わたしは年代的に旧ルパンに関してはリアルタイムの視聴者ではなく、大人になってからルパン三世という作品世界をより知るために視聴したレベルの人間なので、そこらへんはリアルタイムのファンのみなさまと完全に同じ感じ方ができるわけもありません。
でも、わたしがそれこそ、その当時の70年代の子どもで、いつものテレビマンガがはじまるよ!というノリでTVの前に座ったときにこの第1話を見せられたらと思うと(いつぞや大槻ケンジもエッセイでその衝撃を熱く語っていましたな)、いやもうほんとうにすごいもの作っちゃったな、当時のスタッフのみなさま!という思いでいっぱいになります。TVアニメとしても「ルパン三世」としても、文句なしに名作だと思います。
さて、ベストセレクションも第5位となりました。残るはあと4本。一位と二位は、「さらば愛しきルパン」と「死の翼アルバトロス」だとして、残る二本は、「脱獄のチャンスは一度」「十三代五ヱ門登場」「7番目の橋が落ちるとき」「国境は別れの顔」のどれかから選ばれると考えれば、個人的予想としては「脱獄のチャンスは一度」は絶対だと思うので、まあ、「7番目の橋が落ちるとき」「十三代五ヱ門登場」のどちらかの二択じゃないかと……。そりゃ個人的には「国境」をお願いしたいけど!いっそここでまさかの「男心」でもいいけど!
というわけで、ベストセレクションの感想でした。やはりエアとはいえ、感想を書くたびにDVDで再見するので、その面白さを再発見できることが楽しいです。そんな「ルパン三世」大好きだ!の気持ちのまま、一位まで書いていこうと思っています。個人的な思い込みとジゲフジ要素を抜かせない個人のオタク語りな感想ではありますが、書くほうは楽しんでおります。そして読んで下さるかたへの感謝の気持ちでいっぱいです。拍手もありがとうございます。どうぞこれからもよろしくお願いします!