ルパン三世ベストセレクション第3位「十三代五ェ門登場」感想。

 「峰不二子ちゃん。つまり、それがしの、がーるふれんど」(cv大塚周夫)。

 ルパン三世ベストセレクション、第3位は、PART1第5話「十三代五ェ門登場」でした!とうとう来ました、数ある五ェ門回のなかでも記念すべき、旧ルパンでの五ェ門初登場作です。五ェ門クラスタのみなさまの底力を見た思いです!いつものように、ベストセレクションが放送されていない地域に住まうわたくしが、エア感想を書かせて頂きます。ネタバレありなのでお気をつけください。あらすじはこちら→(URL)。

 ます現れたのは、なにやら物々しい斧を使った修行道具(?)。たたずむ一人の男に向かって自動的に無数に投げられる斧は、その男の剣の一閃でばらばらに。剣を鞘に納めたかと思えたその男は、続く上空からの仕掛けもまた切り捨てます。その剣の妙技をしっかりと見せつけたところで、いきなり手を叩いてその技をほめそやす、見るからに怪しい二人組、次元とルパンの登場です。旧ルパンのルパンと言えば、クールで虚無的なところがあるイメージでもあるんですが、こういういかにもあやしげな三枚目っぽい仕草も堂に言ってますね。隣の次元さんもいいんだ。

 それに対し「これは曲芸ではござらん。拍手など迷惑至極」と言ってのけるその男、石川五ェ門はイメージ通りの堅物さですね。ヒーロープロモーションのエグゼクティブプロデューサーと名乗るルパン。ここのルパンの眼鏡姿はほんとうにかわゆい。PART4でも変装のときは眼鏡かけてましたが、いいよね、ルパンの眼鏡……。呼び屋と称してますが、にじみでる山師臭がたまりません。

 とか言ってたら、早撃ちキッドを名乗って「ヘイユーサムライ五ェ門!勝負、勝負、アハン?」と呼びかける次元さんのかわゆさにも轟沈です。あなたも!どう考えても!日本人!しかしそのふざけた挑戦に唇だけで笑って見せる五ェ門のカッコいいこと。このほのかに浮かぶ傲慢さが初期の五ェ門っぽくっていいわあ。「見栄っ張りの剣豪坊やにちょいとお灸をすえてやろうってわけ」というルパンの悪い笑顔がまた素敵です。次元が勝つって疑ってないのよね。しかしみごとにそのあては外れて、目を丸くするルパンと次元。というところでタイトルです。

 舞台は変わり、日本家屋の縁側でごろりと横になっている次元さん。あの、ルパンと五ェ門が中で会話してますから、一応、護衛というかなんというかそういう役割ですよね。そこがまた次元さんぽい。そして一方、五ェ門をほめそやすルパンですが、それに対し「それがしが普通でほかの日本人が狂っておる」とか、五ェ門らしさが連発です。

 しかし、近々、自分の愛刀(まだ“斬鉄剣”という名前は出ていないのですね)で、ある男を切る、その男はルパン三世との五ェ門の台詞にぎょっとするルパン。とたんに起き上がり懐に手をやる次元の描写がいいです。でも五ェ門はルパンの顔を知らない。そうと分かり、とたんにヌフフと笑うルパン。ああ、これはルパンの笑いだなあと思います。山田康雄さん最高。でもそれが気に入らなくて部屋にある鹿のはく製の頭を切っちゃう五ェ門。しかしハンティングトロフィーって西洋風な気がするな……。

 そしてそこに現れた和服の美女。もちろん峰不二子の登場です。ここの不二子ちゃん、髪を愛らしく和風に結い上げてすっごく可愛い。これはもちろん五ェ門も「それがしのがーるふれんど」と自慢げにしちゃいますね。そこで自分の正体をばらされまいと不二子ちゃんに詰め寄るルパン。ここでの物言い、実にイヤらしいですなあ。

 そして逃げようとした次元とルパンの前に立ちふさがった仕切りに「死んでもらいます」と高倉健リスペクトの文字があるところが時代です。ここでの「野次馬根性旺盛にしてむやみにおせっかいを焼きすぎるのが大きな欠点」との五ェ門のルパン評に、「ふん、見る目は誰も一緒だな」って次元さんがいいですね。

 しかし、この場面はさりげないけど、面白い。三つ数え終わったあとに生死の瞬間が決まる、と三秒の余裕を申し出る五ェ門に対する次元とルパンが実にカッコ良いのです。「花も実もあるお計らい、感謝」となにやら一癖ある表情を浮かべ「なあ次元よ。逃げ遅れたからってフテるなよ。なぜってそうだろ、おれたち悪党がだよ、曲がりなりにも畳の上で死ねるんだ、畳の上でな」というルパンに対し「そうだな」とくわえ煙草の次元。この余裕がルパンたちですよねえ。しかも、三つ数え終わった五ェ門が剣を振るった瞬間に、その“畳”という言葉が逃走のキーワードだったことが分かるわけです。しびれる。

 そして塀の上でのルパン対五ェ門。次元対ルパンは新ルパンでありましたが、ルパン対五ェ門もいいものですね。眼鏡ルパンの真剣さと軽さが同居している表情と、同じく真剣ながらも固さと傲慢さが前面に出ている五ェ門。両者の間で火花がバチバチしてるこの緊張感がたまりません。山田康雄さんと大塚周夫さんの真剣勝負にも思える、このやりとり。そして、ここで銃を抜くと思いきや、液体燃料で片をつけようとしちゃうルパンの、この手段を選ばない感じが悪くていいのです。あくまで武士道にこだわる五ェ門を軽くかわすこの感じが実にルパン三世だ。でも、五ェ門もそれで終わらずルパンを巻き込んじゃう。負けてない。いや、改めて見るとほんとうにいいな、ルパン対五ェ門!(しみじみ)

 場面は変わり、包帯姿で「ンモー!おれはだな、石川五ェ門は釜茹での刑にかけられたから、だから火に絶対弱い、そうにらんであの液体燃料を用意したっつーのに、モー!」と愚痴るルパンのかわゆさをいったいどうしたらいいのか。ちなみに、わたしは台詞を引用するときは、台詞をいちいち聞き取って書いているのですが、それはもうこの山田康雄さんのかわゆらしい声の響きを正確に残したいからなのです。真面目に全人類の宝だくらいに思います。

 そしてそんなルパンの嘆きを「よせよ、牛みたいにモーモーわめくのは」ってクールに片付ける小林清志さんの次元も素敵。そして、その次元さんによって、五ェ門の裏に百地三太夫なる伝説の殺し屋が存在することが説明されます。死んだとされていた百地が後継者を育てていたという話に、まさか、顔色を変えるルパン。それに対し「それがあの五ェ門大先生なんだ」って次元さんらしい表現ですよね。

 一方、その五ェ門大先生は正座してラジオのDJ(ダイスケ・ジゲンじゃないですよ、ディスクジョッキーですよって、これももはや死語であろうか……)のおしゃべりに耳を傾けています。新ルパンでもその傾向は強くなりましたが、「それがしのがーるふれんど」といい、五ェ門はこういう感じで古風な中にも不思議な柔らかさも持ち合わせていて、そこがまた魅力ですよね。そしてそこに闇討ちをかける百地三太夫。その百地に、女などにうつつを抜かしと罵られ「いえ、あのひととは、峰不二子ちゃんとは単なるわたしの女友達、まだ指一本触れあったことすら……」って台詞、最高ですよね。「まだ」って正直に言っちゃうあたりが、かえって五ェ門のまじめさを現してると思うの。ほんとうに不二子ちゃんは五ェ門にえらいトラウマを植え付けたのではなかろうか……。

 しかしながらその峰不二子ちゃんはルパンたちの前に現れ、五ェ門についてあることないことを吹き込んでいるわけです。わあ性悪女(喜)。しかしここの不二子ちゃんによる悪い五ェ門はすごいですね。後年のTVSPでもさんざんキャラ崩壊な描写はあった五ェ門ですが、これを越えるものはいまだに無いような気がします。なぜ前歯まで変わる。

 そして、その不二子ちゃんにいいように転がされているルパンを見て、向かいのソファに転がっている次元さんは「けっ、馬鹿馬鹿しい……」と背中を向けるんですけど。これはもうこっちが勝手に解釈させて頂きますが、ヤキモチ大介可愛いね!(すいません)しかし「だいたい不二子は男ってものを知らなすぎるからそんなはめになるんだよ」ってルパン正気かって台詞ですな。あなたいままでなにを見てきたんだ。まあそれはその後の展開のための浮ついた言葉なんでしょうが、それはもちろん軽くかわす不二子ちゃん。このあたりの不二子ちゃんは作画も神がかってて、ほんとうに美人さんです。ピンクのワンピースが素敵。

 やがて、不二子の案内で五ェ門の隠れ家と思しき廃ビルにたどりつくルパン。しかしそこには五ェ門が待ち受けていたのでした。ルパンが五ェ門を罵る言葉はDVDコレクションではカットされつづけるわけですが(いいじゃんねえ、色基地外くらい)、ここで五ェ門もまた不二子にルパンのことを悪しざまに吹き込まれていることが明らかになります。しかし、「朝から晩まで清らかなあの人の体に触り続けたとか、この下劣でエッチな触り魔!」ってルパンとしてはそんなに驚かない通常営業な気もしますな。そしてこれは百地の罠で、ルパンたちは百地の攻撃に晒されることに。

 続く場面で、不二子ちゃんが百地とつながっていたことが明らかとなります。床下でそれを聞きつつ「あの清らかな不二子ちゃんが……それがしには信じられん」とショックを受けている五ェ門がかわゆくもお気の毒です。そして百地は五ェ門を殺そうとした理由をその場ででっち上げますが、五ェ門は即座にそれを見抜きます。ここで「つまりあんたが老いぼれたってことさ」って啖呵を切る五ェ門が実にカッコいいんですよ。年寄りくさくみられがちな五ェ門だけど、そのなかには若さと青さがあるって分かる、いい場面だと思います。

 そして不二子ちゃんを人質にとり、気球で逃げる百地。ルパンならためらわず自分を殺していた、それがおまえとルパンの差だ、と笑ってその場を去ろうとする百地の台詞を背中で聞いて「違いねえ、いいこと言うぜ、おまえさん」と気球を撃ちぬくルパンがここで登場です。なにこの世界でいちばんカッコいいひと。

 そのルパンを追いかけ、勝負を迫る五ェ門に「まあ、待てって五ェ門。おれはだな、おまえってやつがなんとなく気に入っちまったんだよ」というルパンの表情がいいですね。もちろんそれをこの五ェ門が受け入れるわけもなく、ふたりは車を捨ててハイウェイでの生身の逃走劇となるわけです。ここのカッコ良さはどうしたらいいんですかね。液体燃料を構える直前のルパンの後姿のカットとか、素晴らしいのひとことです。もちろん、そこでは勝負はつかず、不二子ちゃんはふたりの対決を撮影してその姿をちゃっかりTV局に売りこみ、五ェ門はルパンとの再戦を誓うという終わりになるのです。

 この「十三代五ェ門登場」。五ェ門初登場のエピソードとして、完璧です。五ェ門のかたくなさ、古風さと、そのなかにもある若さと柔らかさが表現されている。このあと、次元とはまた違ったかたちでルパンと対することになる五ェ門のキャラ立ちが見事です。また、それに対するルパンの立ち位置もいい。三世さんファンのわたしとしては、冒頭の眼鏡姿に始まって、要所要所で決めるところを決めるルパンが本当にカッコよくてうっとりでした。

 そしてそれをサポートする次元さんも良く、最初から最後まで頭がよく立ち回る不二子ちゃんもらしくっていいのです。面白かった!そしてこれは余談になりますが、「血煙の石川五ェ門」がいかに旧ルパンをリスペクトしているかもよく分かった気がします。ブラッシュアップするべきところはそうしているけれど、オリジナルのままでいいところはそのまま。素晴らしいなあ。

  さて、ベストセレクションも第3位となりました。あと二本は「さらば愛しきルパン」と「死の翼アルバトロス」ですね。そうなると「国境は別れの顔」は落ちてしまったのか……(これで二位だったら驚愕する)。旧ルパンは1話から5話までがすべてランクインという結果になったわけですが、まあ、それも納得の内容だと感想を書くためにじっくり再見して思いました。

 ほかの結果はどうかと言われたら、それはもうあれが入ってないこれが入ってない、順位に納得がいまひとつ、とかの恨み言が無いと言えば嘘になるんですが、それこそがある意味でガチのセレクションらしさかなーという気がします。万人が納得するような完成度だけで作為的に選ばれた並びじゃないってことなんですよ。なので、自分のなかのベストセレクション24話はありつつも、今回のこのベストセレクションの結果もまたそれでいいものだと個人的には思います。まあ言ってしまえば、24話だけ選ぶなんて、無理だから!その無理をこの半年楽しめたと思っています。

 というわけで、ベストセレクション、残り二話も楽しんで感想を書くつもりです。これをきっかけに一話一話を丁寧に再見して感想を書いていくのはほんとうに楽しい経験でした。そんな感想を読んで下さったり、拍手をくださる方、ほんとうにありがとうございます。励みになっています。どうぞこれからもよろしくお願いします!