小説「ルパン三世」(大沢在昌他・双葉社)感想

こんにちは。アウトプットもいいけどインプットもね、と数多く出ている「ルパン三世」関連書籍の感想などを書きはじめてみることにしました、とりこ。です。基本的に、ネガティヴワードは使わず、またネタバレも無いことを心がけていきます。よろしくお願いします。

 まずは、その名もずばり「小説 ルパン三世

5人の作家によるアンソロジーです。それぞれ個性ある作家のかたが、ルパン三世という舞台を使ってさまざまな世界を作っています。以下、個別の作品の感想など。

拳銃稼業もラクじゃない」(大沢在昌):仕事で訪れたある国で、因縁の相手と出会い、拳銃早打ち大会に出場する羽目になった次元と、次元を慕う少年。しかしその少年と早打ち大会には思わぬ関係が……というストーリー。
 
 「新宿鮫」などで有名なベストセラー作家のルパン作品です。わたし、著者のほかの作品を読んだことはないのですが、正直に言いまして、プロのお仕事を見せて頂いた感があります。「ルパン三世」というお題にたいして求められるものをちゃんと作り上げている。クールな次元の早撃ち、お宝を狙うルパン三世、そこに絡むドラマティックな複数の人間模様をきっちり過不足なくまとめあげている展開で、堪能しました。あ、ル次的にどきっとするような場面まであって大沢先生なにをご存じですかとかいやその。TVシリーズの一本としたら、大傑作。足りないのは五ェ門の活躍くらいかな。

バンディット・カフェ」(新野剛志):一年に一回、世界中の大泥棒が集まってくるカフェ。そこでルパンと待ち合わせした次元だったが、ルパンが姿を消してしまう。そこのオーナー、伝説の大泥棒とルパンの思わぬ因縁とは……というストーリー。

 これも主役は次元かな。南半球でいまひとつ調子が出ない次元の様子がなんとなく可愛い。五ェ門も登場し、不二子ちゃんもじつに悪女らしい活躍をみせます。謎解き込みのスピーディな展開で楽しめました。

1-1=1」(光原百合):原作マンガ「ルパンと金庫破り」の続編(?)として、ルパンにふたたび挑戦する金庫作りの青年錠太郎とルパンの対決……というストーリー。

 女子高校生に囲まれてキャーキャー言われて困っちゃうルパン一味がかわゆい。そして、ちょっとホロリとさせる人情噺も挟み込んで、読後感が良いです。

深き森は死の香り」(樋口明雄):過去の因縁を持った相手と40億円のダイヤモンドを巡るルパン三世の決死行を描くお話。

 ハードです。ルパン一味は次元以外は登場せず、ほぼルパンのみの甘さの無い展開。だけどルパンがルパンらしさを失っていないので、厳しく苦いストーリーでも陰惨ではなく、カッコいいルパンを堪能できます。きっとこのルパンのジャケットは緑。

平泉黄金を探せ」(森詠):藤原四代の黄金伝説とそこに刻まれた不二子からのSOS。ルパン一味は800年前にタイムスリップしてしまい……というストーリー。

 ようやく(って言っちゃうけど)五ェ門が活躍しますよ!義経、頼朝、と歴史上の人物も活躍するけど、ルパン一味は相変わらずのドタバタ加減。笑いも多いです。きっとこのルパンのジャケットは赤です。新ルパンのなかにある一話と言われても納得かも。楽しかったです。

 という感じで、「ルパン三世」というお題で、それぞれの作家のかたがおもいきり腕を振るってる感があって楽しめるアンソロジーでした。個人的に一押しはやはり大沢先生の作品かな。興味がある方にはおすすめです。