「血煙の石川五ェ門」感想(ネタバレありVer)

 こんにちは。「LUPIN THE ⅢRD 血煙の石川五ェ門」、5月末に発売の限定版Blue-rayを予約しておいたのに、いきなり4月5日に前篇、5月2日に後篇がレンタル開始ってマジかと驚いたみなさん、わたしと握手いたしましょうという気分のとりこ。です。そして知ってますよ、それなのにレンタルで借りてきちゃったでしょ。あ、もうすでに劇場で劇場限定版を購入済みでしたか、それは失礼しました。わたしもあれ、Blue-rayじゃなくてDVDなら、Blue-rayを買うまでのつなぎにと買っちゃうところでした。あぶないあぶない。

 というわけで、無事にDVDのレンタルもはじまったというわけで、「LUPIN THE ⅢRD 血煙の石川五ェ門」の感想をそろそろUPしようと思います。もちろんネタバレ満載ですので、未見のかたはご注意ください。そしてとにかく自分の思うがままのことしか語ってませんし、基本的にオタクくさい深読み太郎な感想ですので、そこのあたりも優しく読み流して頂けるとありがたいです。あと、無駄に長い。字数を確認したら、普通にいつもPixivに投稿してる小説なみの長さでした。それでも読んで頂けるというかたはぜひ、どうぞ。

 この「血煙の石川五ェ門」、劇場では三回見ました。一回目を見たときには、正直言って分かりにくく思うところや冗長に感じるところもあったのだけど、見終わったあとになんども自分のなかで反芻したうえで、二回目、三回目を見ると、なるほど、もうこれしかないという気分になりました。いちばん最初に結論を言うなら、「傑作」です。

 個人的にいちばんポイントだと思ったのは「斬鉄剣の物語ではない」ということでした。なんでも斬っちゃう魔剣を持ってるから五ェ門が強いという物語では、ぜんぜん無いのです。五ェ門といえば斬鉄剣、だと思っていたので、そこがとても新鮮で、しびれました。なによりもまず「五ェ門自身の物語」、五ェ門という生身の存在のお話なんですよね。

 しかし、その五ェ門がとにかくストイックである意味取りつく島もない(だからこそ、その姿はとても美しいし、その禁欲的な姿勢こそがラストのカタルシスにつながるなによりの溜めとなるのですが)、対する敵役のホークも安易な感情移入を許さない、あくまで“異物”としての描かれ方なので(まさに“バミューダの亡霊”なのです)、見る側にもある種の覚悟がいる物語であると思いました。そういう意味で、手ごわい作品です。残酷描写的にも覚悟がいりましたが。イタタタ。

 だからこそ、そのふたりのまわりに立つ、ルパンと次元、不二子に銭形といった存在の描かれかたが重要なんですが、そこがすごく良かった。以下、各キャラクターについて。

 助演男優賞は、間違いなく銭形警部でしょう。単にシブいとかカッコいいとかいうレベルじゃなくて、たたずまいが素晴らしい。ルパンや次元、五ェ門といった法の外にいる人間とはあきらかに違う、法の番人たるアイデンティティが確固として成り立ち、銭形警部という存在を形作っている。だからこそルパンたちのしょせんカタギじゃない犯罪者としての悪さがくっきりと浮かび上がって、両者が対峙するときには火花が散るような緊張感が走る。ヤバい。

 けれど、そんな銭形警部もまた、けして善良な市民と片付けられるような存在ではないことは、国道でホークに向かって眉ひとつ動かさずにガバメントを連射したあの姿をみればあきらかです。とっつあん史上一二を争うカッコよさでした。そして、きっとその銭形警部の特異さ、単なる警官で終わらない部分をおそらくルパンは見抜いてるんですよねー……。たまらない。

 三世さんファンとしては、この作品のルパン三世が、とにかくカッコ良くて、悪くて、可愛いので、出てくるたびにキャーキャー言ってました(内心で)。黒シャツが殺人的にカッコよくてもうどうしましょうという感じでした。あれはほんとうにいいものだ。ファーストカットが後姿っていうのにもシビれるし、金庫の前に降り立った瞬間のあの笑顔を見たとたん「やだ世界でいちばんカッコイイひとがいる」と素でつぶやきました。DVDで見るたびに言ってます。言い足りない。

 また、別荘でぐでぐでに酔っぱらってるところのクソかわいいことったらありゃしません。車の中で銭形にすごんでみせるときの、本気でワルい顔には震えたし(ねえ、この顔見て恋に落ちずにいられる女子ってこの世に存在するんですか?)、なのに銭さんに一言言われて「え?」てなるときの顔も可愛い。一発食らってのびちゃう、あの、のけぞったときの顎のラインだけでわたしご飯食べられます。焼きおにぎりでも可です。

 ルパンと五ェ門はともに普通の人間というところからはすこし外れている存在です。だからルパンは五ェ門のことも直感で分かるのかなーとおもいました。そしてなによりルパンは賢いので、五ェ門の葛藤を見守るしかないということを分かっていて、なおかつその通りに出来る強さを持っているというあたりが良いのです。そして説明されずとも、五ェ門の意図を察することもできる。やだこのひとただの天才じゃないですか。手首になんか刺さったままでも笑ってるあたりも最高です。でも早く病院に行ってくださいと思いました。

 もうほんとうに、カッコよくて可愛くて、ワルくて頭が良くて、素敵なルパン三世でした。大好き!

 次元さんについて。予告のカットの段階から、全次元ファンに激震が走った(笑)黒スーツ色眼鏡姿がほんとうにカッコ良くてたまらなかったです。ホークと一騎打ちする場面では、結果としてホークの強さを見せつける結果となりましたが、あの場面の次元さんは十分に早いし、強いし、カッコいいよね。それがしっかり表現されているからこそ、ホークの強さと不気味さが際立つのです。そして不二子ちゃんと同じくらいにあきらめ早いあたりが実に可愛い。無駄に熱くならないの。でもルパンと違って次元には人間の血が流れているので(笑)、五ェ門のことは心配しちゃうし、おもわず手を出したくなるあたりもらしくていいなと思いました。ラストあたりの頭から血を流しつつも、にゃんこ口な次元さん、超可愛かった。

 小池監督のインタビューによれば、この「血煙の石川五ェ門」は「次元大介の墓標」の一か月後くらいの話だそうですが、ルパンとの距離感がぐっと近くなっているのも見ていて楽しかったです。おたがいになにかと声を掛けあう感じが、まさに相棒、という感じで堪能しました。

 不二子ちゃんは、とにかくビジュアルが好みで好みで。このボブヘア本当に可愛い。そして目元に赤く入ったポイントがセクシーです。最初の登場場面から紫の(強調)ボディスーツがセクシーでしたが、その後のホルターネックワンピースがばっちり70年代で素晴らしい。水煙草を吸う場面で、あの、その、はれんちなことを連想させて頂きました。ありがとうございました。そして、肝心な情報を握っているこの役割が、その後の「複製人間」につながるのかなと思うと、ドキドキしましたね。

 ……さて、そろそろいいでしょうか。まあこのブログの読者さまならばすでに覚悟はできているかと思いますので(わたしは常に読み手のみなさまの寛容さに甘える書き手です←処置無し)、ノンストップで語りますが、今回の作品におけるジゲフジ要素について、です。ついてきてね!

 正直に言いますが、わたくし、劇場で一回目を見た後、あのラストシーンに痺れ、カッコいいエンディングにため息をつき、良いものを見た……ありがとう小池監督……素晴らしかった五ェ門……とか思いながら、顔が勝手にニヤニヤするたいへんに気持ち悪い生き物になっておりました。公式からの供給って最強だよね!

 ていうかね。まあ、まずはあのボートの場面ですよね。「不二子、だいたいなんでお前がここにいる」ってあれ。おたがいにツンツンしあってるところから、すでにわたしのニヤニヤは止まらなかったわけですが、そこからあれですよ。

 指圧の場面!キャー!

 思いっきり色っぽい不二子ちゃんの顔と声に、まあ今回R15指定になったのはここが理由かしら、もしかしなくても次元さんの前でルパンさんなにをなさってるのかしら、そういや原作ルパンには似たような場面もありましたね、それでもそういうプレイっていろんな意味でやらかしてないかしらとか10秒くらいのあいだにわたしの頭がすごくうるさくなりました。やらかしているのはわたしの頭でした。

 しかし、予想もしないこの場面に、脳が沸騰してしまったのか、正直、初回はこの場面の台詞をほとんど覚えてませんでした。ただひたすらに「…ありがてえ……ありがてえ……」と繰り返しておりました。あれが供給になるのかと思われるかたもいるかもしれませんが、わたしにとってはものすごい公式からの供給で、自らの萌え樽から萌え水が溢れんばかりになりましたよ!(萌え水ってなんだよ)(知らないよ)

 ちょっと落ち着いて語れば。この短い場面は、この三人の微妙な関係性をいくらでも解釈できる場面でもあるんですよね。あのルパンの指の下で不二子ちゃんがあげる声は、次元さんにとってはあきらかに耳障りなんですよね。うるさいし、エロいし、そんなもん聞かされる身にもなってくれよという感じ。その事実をしっかり認識しながら「感じちゃった?」ってからかう不二子ちゃんもすごいよね。豪胆といってもいい。それにたいして次元さんは「馬鹿言え」とあきれてみせるしかないし、そこでルパンの「あのね不二子ちゃん、おれはふたりきりでね……」という牽制とも単なる不平ともとれる台詞が入る、この流れがたまらないのです。

 ルパンは不二子ちゃんの肌に触れることは出来るけれど、それはあくまでマッサージ。ふたりきりでしっぽりとを希望してもさらっとかわされる。そしてそんなふたりのそばにはなぜか次元さんがいる。ルパンが、気をきかせて席を外せよ、くらいのことは言ってもおかしくないし、それこそ、ふたりがそんなことをはじめたとたんに、自ら、気を利かせるか、あるいは単に馬鹿馬鹿しくなって部屋を出てもおかしくない。なのに次元さんはおおいに呆れつつも、そこにいるのです。うわあ。

 うん、分かってる、単に分け前の配分が決まってなかっただけの話かもしれないよね。でも、こんな罪作りな場面見せられたら、あれこれ考えちゃいますよ。わたし、めんどくさいオタクだから!

 それに、そんなこと言ってたら、不二子がホークの説明をする昼間の場面では三世さんはベロンベロンで、そのあとの夜の場面で素面ですから、たぶん、三世さんはいちど潰れて寝ちゃったんじゃないかと思うんですよね。ということは。ね!残るのは、ね!(目がいまランランと輝いています)(自分でも気持ち悪いです)まあ、分け前をきっちりもらうまでは不二子はあの場を離れないでしょうし、ルパンが潰れてるんじゃ分け前の話は出来ないうえに、不二子が持ち逃げするのも許さねえと次元は不二子を見張ってたんでしょうね。ふたりきりで。そのあいだになにがあったのかなー。気になるなー。

 まあここまで言っててなんですが、わたしはジゲフジ好きの三世さんファンなので、この三人のうちに葛藤とか苦しみが生まれかねない三角関係とか恋のさや当て話とかにはぜんぜん興味が湧きません。だからかもしれませんが、この三人のあいだにはそこまでいくようなものはない、はず。まだ。でも、もうちょっと緊張感というか、微妙なところで寸留まっているなにかがあってもおかしくないなあと思いました。大人の男女ならではの、なにか。

 こうやって各キャラクターのことを書いていると、不思議と肝心の五ェ門とホークについてはあまり語ることがないということに気づきました。あくまでわたしにとっては、ですが、それはやっぱり、この物語自体が、五ェ門の話という証拠なのかもしれません。五ェ門というキャラクター自体については、作品のなかで完結しているというか、あまり言葉にする必要性を感じないのですよね。あの画面に立っていたあの姿こそが五ェ門です、という思いになるのです。しかし、最初の賭博船に乗ってたときの白い紋付き姿は良いものでした。ちょっと奢ってる感がまたいい。それからボロボロになって、覚醒するまでのあの姿と、覚醒した後の何十人斬りのあの場面こそが五ェ門なんだろうなと思うのです。怖く、そして、美しい、人斬りの男。そういう五ェ門を見ることが出来て、とてもぞくぞくしました。

 ホークについても同様です。なんかあれ以上こっちが語る必要ある?っていうくらいのキャラ立ちなんですよね。あの歯はとうぜん「007私を愛したスパイ」のジョーズのオマージュだと思いますが(同じ70年代だし)、ジョーズよりは全然頭もキレて、怪力だけの存在じゃないのが良かった。そして、ホークをルパンたちが「ウェスタン野郎」「カウボーイのおっさん」と呼ぶのがらしくってすごく良かった。そしてホークからすればルパンたちは「小僧」なんですよね。そういうちょっとしたことでキャラが立つ台詞っていいなあ。

 そして、銭形警部の「ルパンもまた死んだ存在だからです」の台詞で、否応なしに「複製人間」を連想しました。あれもまたアイデンティティの物語です。そう思えば、この「LUPIN THE ⅢRD」というシリーズは、「峰不二子という女」からはじまって「次元大介の墓標」「血煙の石川五ェ門」と、すべてキャラクターのアイデンティティとレゾンデートルの物語ですよね。そして、「次元大介の墓標」のラストを引っ張ってくるまでもなく、今回の黒幕もまた「死んだとされる重要人物を生き返らせている」マモーなのは間違いありませんよね。ということは、やはりこの小池監督による「LUPIN THE ⅢRD」は、最終的には「複製人間」にたどり着くのでしょう。

 わたしは元の「複製人間」も大好きです。あれをへたにいじられたくない気持ちもありますが、小池監督とこのスタッフのみなさまならば、きっとみごとに「複製人間」を銭形警部とルパン三世、ふたりの物語に再構成してくださるのではないかと期待してしまいます。あと残るのは、このふたりしかないのだから。

 そして「複製人間」と言えば、次元さんが不二子ちゃんにひそかに惚れてる設定がありましたよね!ね!(でも、リメイクされたら、がっつりとルパフジになるのではないかという予感もあります……)(ていうか元々がっつりルパフジであった)(でも最終的には銭形警部とルパンが仲良く二人三脚してたので、やはり不二子ちゃんと次元さんが飛行機で飛び去るあのラストでひとつお願いしたい)(なんならもっと盛ってくれてもかまわない)(落ち着けわたし)。

 そして、ここまで「LUPIN THE ⅢRD」というシリーズを褒めちぎってメロメロになっていながらも、その一方で、わたしはかつてのTVSPやTVシリーズのような、より明るく柔らかく楽しい「ルパン三世」も大好きです。そういういわばファミリー向けな「ルパン三世」もまた確実に「ルパン三世」であるには間違いないと思っているので、そういうルパンも見たい気持ちもあります。まあ要するに、いろんな「ルパン三世」が見たい!ということです。おかしな言い方かもしれませんが、今回、この「血煙の石川五ェ門」を見てそう思いました。それだけルパン三世が好きという気持ちを再確認したというところです。いろんな「ルパン三世」が好きです、いろんな「ルパン三世」が見たいです。

 つまり、わたし、ほんとうに「ルパン三世」が好きです。あらためてしみじみとそんな気持ちにさせてくれた「血煙の石川五ェ門」という作品に関わったみなさますべてに感謝しかない思いになりました。ルパンファンとして、ほんとうに嬉しいです。ありがとうございました!