とうとう入手しましたよ。レンタルも同時開始です。
というわけで、「LUPIN THE lllRD 峰不二子の嘘」の感想を書こうと思います。がっつりネタバレしてますので、未見のかたはお気を付けください。あと、わたしの感想はいつもそうですが、無駄に深読み太郎であれこれ語っちゃううえに、オタクくさいみっちりした長さです。あと、ちょっと(?)ジゲフジで荒ぶっています。ちなみに、Blue-rey収録のオーディオコメンタリーは未聴です。
ですので、いろいろアレなことがある感想かもしれませんが、そのあたりは温かい目で読み流し、気楽に読んで頂けたらと思います。では、どうぞ。
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まずは冒頭。眼鏡姿の病弱な少年、ジーンとともにいる眼鏡姿の不二子が新鮮です。そこに現れる敵の影。ジーンの父親、ランディにジーンを託される不二子。指を鳴らされ、「仕事だ」の声とともに目覚める敵役、ビンカムが不気味でとても雰囲気がありますね。ビンカムに追い詰められたランディにより家はランディもろとも爆破、そこから逃げるジーンと不二子……という導入部がテンポ良かったです。わたし、ランディが家を爆破する勢いがすごかったので、普通にビンカムも巻き込まれて終わりかと思いました。
そして場面は移り、次元さんとルパンさんの登場です。予告でも登場したこの紫シャツとサマージャケット、サングラスの次元さんですが、実際に物語本編で見たらそう違和感なくて良かったです。そういえば次元さんは次元さんなりに服装にはこだわりある人だった。個人的には後ろ髪がいかにも伸ばしっぱなしのもさもさした感じなのもポイント高い。しかし、それよりもルパンですよ、ルパン!このウェイターに扮したルパンのキュートさときたらもう!しかも黒メガネって、ヤバ過ぎませんか、可愛い。
ふたりはコドフリーマイニング社というワルな会社を狙ってるみたいです。わたし、初見時にこの場面を見たとき、「そんな連中なら同情もいらねえな」という次元さんの台詞のあと、ルパンが社長の椅子に何かを仕掛けて店をあとにしたもんだから、てっきりボカーンと爆弾でも爆発するのかと思いましたが、よく考えなくてもそんなことをする意味はなかった。
もちろん、ルパンが仕掛けたのは爆弾ではなく盗聴器。そこで、ランディという会計士が5億ドルという大金を横領し、その金の行方が分からなくなっていることと、そのランディの息子と姿を消したメイドが、「峰不二子」であることを知るふたり。
ここで、その名前を聞いたとたんにコーヒーを吹き出すルパンが控えめにいってもかわゆすぎて楽しい。小池ルパンというとクールでシリアスで……というイメージがありますが、こういうとこも見せてくれると嬉しいですよね。目が真ん丸なの。次元さんも、そんなルパンを見て「たしかに、峰不二子って言ったな」と笑ってる。笑ってる。(繰り返し)。その名前を聞いたとたん、盗聴器をさっさと片付けて次の行動に移るふたりがクールです。
一方、「GoldenBar」なる店で、ランディを待ち続けるジーンと不二子。しかしランディは一向に現れず、かわりにやってきたのはあの殺し屋、ビンカム。かれは「ランディは死んだ」と二人に告げます。その様子を見ただけで、ジーンに逃げるよう伝え、ビンカムにもひるまない不二子がカッコ良い。しかし不二子はビンカムに突き飛ばされてしまい、ジーンは金のありかを求めるビンカムの巻き起こした不思議な黒い煙を吸い込んでしまいます。
「わが呪いにかかれ」というビンカムの言葉通り、それには催眠効果がある様子で、ジーンは問われるままに5億ドルが銀行の貸金庫にあることを口走ってしまいます。それでも肝心の暗証番号を口にする前に、ジーンは我に返った不二子により救われます。そこに迫るビンカム。ここ、不二子ちゃんが子どものもたつく足に合わせないといけないから、よろよろと逃げるしかないのがリアリティあったな。
そして、そこに思わぬ救いの手が。ビンカムの足元に銃弾が撃ち込まれたのです。その銃弾を放ったのは、ほかでもない、次元大介!
きゃー!ありがとうございます、開始3分で、今回初めてのジゲフジを頂きました!(真面目に言ってます)。いや、それはもちろん、ルパンが車を運転してやってきてて、狙撃といえば次元だから、こうなるのは当たり前なんですけど、わたし、劇場での初見時には、思わず手元に一時停止と巻き戻しのボタン探しましたからね。えー、だってだって、不二子ちゃんのピンチをいきなり次元が救ってるなんて、キャッキャしちゃうじゃないですか!次元ったら、ビンカム相手に「女子供相手に大人げない野郎だな」まで言ってるし……。
しかしもちろん不二子ちゃんは礼ひとつ言わず、ジーンを連れてさっさと自分の車に乗り込むのでした。うん、じつに不二子ちゃん。
とりあえずアジトに落ち着いた三人。ジーンを寝かしつけた不二子に、今回のいきさつを確認するルパン。「あたし、心を入れ替えたの」という不二子の台詞がおもいきり嘘なんだけど、わたしはこのとき、不二子は今回の作品でどれだけの嘘をつくのかなあと思いました。ここでのふたりの会話、腹の探り合いの様子が、ルパンと不二子の微妙で大人な関係性をうかがわせて面白いです。抱き寄せた手をパチンとやられてしまうルパンが可愛い。
でももっと可愛いのは、寝ているジーンを見守っていた次元さんかな(笑)。ねえ、なんでこのひと初対面の子供の前でくるくる拳銃回してガンプレイしてるの?ヒマなの?ちょっとカッコつけてみせたくなったの?それとも、ジーンが一応男の子だから、こういうの好きかな?ってサービス精神の現れなの?(笑)正解が分からずに、でも、ここの次元さんの可愛さに劇場でニコニコしてしまいました。小池ルパンの次元さんはなんだかやることがいちいち若いんだよな。可愛い。
そしてそのガンプレイが功を奏したのか(マジで?)、ジーンはルパンたちに、貸金庫の暗証番号と引き換えに、父親の仇討ちを依頼します。肝心なことをルパンには隠していたつもりの不二子は大慌てで、なんとかジーンを懐柔しようとしますが、ジーンは言うことを聞きません。そんな不二子をよそに「たったひとりを始末するだけで5億ドルだ、引き受けねえ手はないぜ」と、どこか楽し気な次元さん。ルパンも悪い顔だし、不気味な殺し屋といえど人殺しで大金ゲットだ!ってノリノリなあたり、ふたりとも悪人!って感じでいいなあ。どう考えてもジーンの涙にほだされてって雰囲気じゃないものね。
そしてルパンたちは、マイニング社にタレこみを入れて、ビンカムをレストランにおびき寄せようとたくらみます。しかし、不二子はそれに不満で、なんとかジーンをなだめて敵討ちを止めさせようとしますが、ジーンの態度はかたくなです。そして、その会話をしっかり盗聴しているルパン。「おれたちを出し抜こうってそうはいかねえぞ、不二子」って不二子をまるっきり信用していないルパンさん、この一連の場面のワルい顔がすごくいい(笑)。でも、次元も「あの女にも弱点があったとは」と不二子のいつもの手が子供には通用しないのが楽しそうだ……。ふたりとも、この不二子にはいろいろと痛い目を見せられてきたことが伝わりますね(笑)。ここでルパンがなにげなく広げたメモが後半の伏線となります。
そこに現れたビンカム。ルパンと次元は砂嵐に巻き込まれたうえに、カーラたちの妨害で動けません。不二子はひとりビンカムと向き合いますが、銃も蹴りも通用しない相手に苦戦することに。それでもなんとか車に乗り込み逃げる不二子とジーン。それをバイクに乗り、追うビンカム。ここのカーチェイスシーンはスピーディで迫力あったなあ……。そして不二子は踏切を利用し、みごと逃げ切り、二人を見失ったビンカムは、そこではじめて「峰、不二子……」とその名を口にするのでした。
一方、ルパンはなんとかカーラたちの車のボンネットにしがみつき、ビンカムを追います。カーラを見て「あらあ、イイ女じゃねえの」と余裕をかますルパンですが、鞭を振るわれる始末。それでも「あー、気持ちいい、もっと叩けエ」っていいな!そしてビンカムと対峙したルパンは、かれに銃を向けます。ここ、鞭で叩かれて赤い線が入った顔に不敵な笑みを浮かべてるのが超カッコいい。しかしながら、ビンカムは「あの女は何者だ」とすでに不二子に気が向いている様子。「あの女をモノにしようってんならあきらめろ、このおれがライバルじゃ分が悪いぜ!」というルパンでしたが、あの黒い煙の前にはさすがのルパン三世も形無しだったのでした。ここのルパンのくるくる変わる表情が可愛かったりカッコ良かったりで、わたしほんとうにルパンの顔面好きなんだな、と思いました。
ビンカムたちが姿を消した後、倒れたルパンのもとに駆け付ける次元。この場面にかぎりませんが、なんだか次元が甲斐甲斐しくルパンの世話を焼いてる感じがあって、今回は「墓標」も「血煙」も越えたふたりなんだなーと思いましたね。そういう意味では旧ルに近いかな?
さて、不二子はジーンを連れてモーテルに。不二子ちゃんお得意のお色気作戦も、小池ルパンだとなんだか一段と直接的ですね!敵討ちがどうなったかを気にするジーンはずいぶんストレスが溜まっているようで、不二子になにかと突っかかります。
実はわたし、こういうこどものわがままの描写ってすごく苦手なので、今回のストーリーを知ったときから、大丈夫かなーと思ってたんです。が、ジーンの場合は、それがとても自然に描かれているせいか、そこまでストレスには感じませんでした。不二子ちゃんの嘘はじつはけっこう薄っぺらいから、そりゃ言うよな、と思った。「お金目当てでパパに近づいただけでしょ!」ってジーンの台詞、不二子には悪いけど笑っちゃった。そのとーりー!(笑)。
だって、ママになってあげる、と不二子は何度もジーンに言うけれど、そのリアリティを不二子自身も感じていない気がする。大人の男はそれでも騙せる。なぜなら大人の男はそもそも騙されたがっている生き物だから(あのモーテルの支配人がいい例。不二子ちゃんにあんなサービスまでいただけて良かったね……)。でも、ジーンはそうではない。だから不二子の嘘はジーンには見破られる。なにより、不二子がいまついている嘘はジーンが聞きたい、騙されたい嘘ではなく、不二子はそれが分かっていない。
もしジーンに言うこと聞かせたいなら、そんなママになってあげる系の甘言よりも、あなたのパパ、ランディに頼まれたからよ、とか、実は黙ってたけどパパと落ち合う場所がもうひとつあるの……とかいう線で押す方がずっとリアルなのに。ランディの名前を出せば、ジーンも少しは聞く耳を持つはずなのにね。でも、ラストで分かることですが、実はランディは生きているので、その可能性を少しでもジーンに悟らせるわけにはいかない不二子にはその手は使えなかったのかなとわたしは解釈しました。
あと、自分のいつもの嘘が通用しないことにイライラしてヒステリックになる不二子の様子を見てたら、ほかのキャラクターがそうであるように、この不二子もまだまだ若く青いところのある峰不二子なのかなと思ったりもしました。あんがい余裕がない。
そんなあげくに支配人に警察を呼ばれた不二子はとうとうジーンを扱いきれなくなり、いったん距離を取ることに。しかし、ジーンを保護したはずの警官が、かれを連れて行ったのは警察署でなく、あのコドフリーマイニング社だったのでした。ここで前半終了。
ジーンを追ってマイニング社に向かった不二子でしたが、そのままジーンとともに囚われの身に。翌日、清掃会社のスタッフに変装した次元とルパンのふたりもマイニング社に乗り込みます。この変装姿もいいな!確認の為に帽子のつばを持ち上げて目を見せる次元さんが実にカッコいい。ルパンは可愛いって感じですね。
社長のもとに連れてこられたジーン。「お金のためならなんでもするのね」と不二子に嗤われた社長は「君に言われたくないね、金欲に溺れたメイドさん!」といらだつのですが、わたしも不二子ちゃんには言われたくないだろうなとたしかに思った(笑)。この会社が一日で動かす現金500万ドルを目の前に、ジーンをなんとか懐柔しようとする社長ですが、ジーンの態度はかたくなで、とうとうビンカムの登場となります。しかしガラス張りの向こう側に鎖でつながれたビンカムがいるのってすごい趣味の部屋だね。
ビンカムの黒い煙の前に、あやうく暗証番号を口にしかけるジーン。それを食い止めたのは不二子の「パパの仇を取るんでしょう、あなたの記憶だけが唯一の武器なのよ!」という不二子の叫びでした。おそらく、今回の逃避行でジーンに向けて不二子が口にした、初めての、嘘でない真実の叫びです。そんな不二子もまたビンカムの前に投げ出されてしまい、その身に危機が迫ります。
ですが、ビンカムとより近く対峙した不二子は、その顔と唇に触れ、甘く囁くのでした。「ビンカムっていったかしら……」と。そして、「あんな男たちのいいなりになっていいの?」と耳打ちし、誘惑するのです。ここの不二子の指の動きがほんとうに素晴らしい。セクシーな喘ぎ声をあげておきながら、「男のくせにいくじなし」と言い放つ声は、少女のように冷たく愛らしい。ほんとうに、ザ・峰不二子!って場面ですね。しかし、不二子ちゃんにしてみれば、こうやってビンカムを相手にする方が、ジーンを相手にするより百倍楽だったかもしれない。
そしてそこに駆け付けたのは、ルパンと次元です。あの、ここで、ビンカムを撃ったのは、もちろん、また次元ですよね!?だって、ルパンは室内に駆け込んだときに銃を取り出してたものね!やだもう、これで二回目とかマジですか。またキャッキャしちゃうよ。とか言ってたら、ここからもう大変なの。だれがって。わたしが。
まず、次元の「クリーンアップタイムだぜ」の台詞に始まる、ルパンと次元の活躍がとてもカッコ良くて楽しいのです。ジーンに「仕事のできないおじさん」っていわれちゃうルパンは可愛い。一方、不二子から離れたビンカムはぼうっと突っ立ってて、次元に「あの呪い野郎、今日はまるでやる気がないぜ」といわれちゃう始末。「血煙」でもホークのことを「あの木こり野郎」と言ってたし、小池ルパンの次元はやたらとこういう言葉遣いしますね。楽しい。
しかし、なにより、なによりですね、ここのハイライトはですね、「なにも女まで助ける必要はないだろう」と憎まれ口をたたく次元に「あら、助けられて嬉しいくせに」と笑う不二子。それに小さく「うるせえ」という次元。そして、そのふたりのツーショットをじっと見るビンカムってとこですよね、ね!?
ここ、劇場で見て、一時停止ボタン探した(二回目)。幻聴だったらどうしようかと思ったけど、二回目でもそう言ってた。Blue-reyでもそう言ってたので、ほんとうにヤバかったです……。え、なにこれ、なにこれ……(萌)。
ちょっと、ストーリー感想から脱線しますけど、これを押さえないと嘘でしょう、ウー、カンカンカン!って感じで、全ジゲフジ好きに招集がかかったよ、いそぎ緊急会議開始だよ。待って待って。あのですね、次元ちゃんが不二子のことを助ける必要はない云々とか言うのは珍しいことでない。でも、それに不二子ちゃんが「助けられて嬉しいくせに」っていうのはどういうこと。これあきらかに自分に気があることが分かってる男へのからかいですよね。「血煙」でもありましたよね、「次元さん感じちゃった?」ってあれ。でも今回のこれはちょっと一段階進んでる。まあ百歩譲って、なんといっても不二子ちゃんなので、世界中の異性愛者の男は自分に気があるものとして扱うのがデフォルトなのかもしれない。それは分かる。
でもね、そこで、この次元さんの返答ですよ。「うるせえ」って。これ、どういうこと?もしですよ、次元さんが不二子のことなんか本当になーんとも思ってなくて、マジでうぜえな、くらいの感じなら、この場合ふさわしいのは「アホか」とか「そんなわけあるか」とかその類の言葉ですよ。でもね、次元さんたらここで「うるせえ」って言ったの。あのコバキヨボイスで苛立った吐き捨てる感じで「うるせえ」。それはつまりもうこれ以上言うな、黙れってことですよね!
え、もしかして次元さん、照れてるの……?そうだね、男って照れると怒る生き物だものねー!(いま、とりこ。は、大漁旗を振り回しています)しかもここ、不二子ちゃんの可愛いお尻がちょうど次元さんの顔の真ん前にあるの。ほんとうにヤバい。なんだこれ。ビンカム、その黒い煙をちょっとそこの髭の男に吹きかけて「おまえはいまその女をどう思ってるか言う」とか呪いをかけてくれないかと期待しました。いやあ、小池ルパン侮りがたし。まったく予想してなかったから、劇場で大変、Blue-reyで大変、でした。
ま、まあ、それはともかく、無事にマイニング社を脱出したあと、不二子はルパンたちを置いて、さっさとジーンとともに高級ホテルへ向かいます。あきれた次元は「だからあんな女助けるなって言ったんだ」といいますが、ルパンには別の考えがある様子。一方、ともに危機を脱したことにより、ジーンはようやく不二子を信用します。ここはやっぱりこどもだなあ……と思いましたね。不二子が言っていることは変わらないのにね。もちろん、そこを逃さず、不二子はジーンの聞きたい優しい言葉をこんどこそ正しいタイミングで囁くのでした。このお風呂場面の不二子ちゃんは色っぽかったなあ……(海外で上映できるのかな、と心配にもなりましたが)。
一方、ルパンは次元を連れてコドフリーが会社の利益を投資している投資会社という名目の場所へ。もちろん、そこはそんな場所ではなく、あのホークの姿が見つかるのです。「どうやら見えない糸がつながり始めたようだな」というルパンの台詞が意味深です。
そして、ジーンはとうとう貸金庫の暗証番号を不二子に渡します。それを受け取り、美しく装った不二子はこどもを受け入れるママの姿とはほど遠く、不安を感じるジーン。ですが、不二子はその不安を打ち消す嘘を口にすることはなく、ジーンを置いてホテルの部屋を去るのでした。
その後、バーにいる不二子の元を訪れるルパン。欲しいものを手に入れたはずなのに、どこか浮かない顔をしているように見える不二子に「らしくねえな、あんなガキにこだわるなんて」というルパン。ジーンの命が危険に晒されているのは事実だが「いつものおまえなら用が済んだ男は切り捨てるだけだろ?」なんて試すように言うルパンさんは、さぞかし自分も切り捨てられた経験があるんでしょうな……。それに対し、ジーンは男でない、子どもだと言いつつも「できもしない嘘はつきたくない、それだけよ」と答える不二子。
わたしはこれ、不思議なセリフだなあと思います。だって、不二子はずっとできもしない嘘をつき続けてきたのに。だからより正確には「できもしない嘘はもうこれ以上つきたくなくなった」ってことかなとも思います。そして、不二子にビンカムはだれかが作り上げた厄介な殺し屋だということを示唆するルパン。しかし不二子は「心をあやつるのはどっちか、あなたならどっちに賭ける?」という言葉を残してその場を去ります。「乗る気にならないね、結果が分かり切っている賭けなんて」というルパンの表情がすごく素敵。ルパンのこういう顔が見られるなんて、すごい。
そして、次元が待つ車に乗り込むルパン。女との話を片付けたらこんどは男同士の話、という感じなのかな。なりゆきを気にする次元に「今回はこれで勘弁してくれや」と煙草を差し出すルパン。それはきっと仕事はここまで、のサインですが、次元は引こうとしません。「いいのか、金にはならない仕事だぜ」というときのルパンの表情が絶妙です。「おまえももの好きな男だねエ」「おまえに言われたくねえ」というやりとりと、煙草を吸うふたりの男。ベタでお約束かもしれないけれど、だからこそなんど見てもいいなあと思います。ここのふたりはとてもカッコ良くて相棒感がすごい。そういうふたりだよ、とは思うけれど、小池ルパンのふたりならではの距離感がある気がします。なんか次元さんがルパンと居るといつも楽しそうなのだ……。
さて、五億ドルを手に入れた不二子は、札束の写真とともに、マイニング社に挑戦状を送ります。そのために覚醒させられたビンカムは、カーラを用済みの存在として葬り去り、峰不二子を追うこととなります。ランディ家のそばにある荒野でビンカムを待ち受ける不二子。ここでのふたりの肉弾戦は、もちろんビンカムに分があるものの、不二子も負けてはいません。ビンカムにもなぜか以前の余裕はないのです。不二子の髪を束ねるバンダナがちぎれてしまう描写がカッコ良かった。万事休す、と思われた、ビンカムのあの黒い煙が吹き荒れた瞬間、不二子はその呪いの正体を見抜いていたことを告げるのでした。不二子の企みにより、ビンカムの呪いは無力化されます。
そして、不二子は、すでになすすべもないビンカムに告げます。「あなたにも、すでにわたしの仕込んだ毒が回り始めている」と。驚くビンカム。「わたしならあなたを理解してあげられる、乾いた心を癒してあげられる……」「さあ、言ってごらん……、わたしが欲しいって」とビンカムに身を寄せてささやきます。そしてその誘いのままに口を開いたビンカムは、その言葉を言い終えるよりも先に、不二子によって絶命させられるのでした。息絶える前に、毒の正体を知りたがるビンカム。「しいて言うなら、愛という名の媚薬」と言う不二子の答えを聞き、ビンカムはゆっくりと倒れます。「ゆっくり、おやすみ……」という不二子の言葉に送られて。
今回の敵であるビンカム。わたしとしてはこれまでの小池ルパンのなかではいちばんお気に入りの敵です。不気味だけど美しいビジュアルの持ち主で、身体能力に優れているけれど、なによりの武器があの謎めいた黒い煙というあたりも不二子の相手にはふさわしい気がします。そして、毎回、メインキャラクターが殺し屋と戦うこのシリーズだけど、よく考えればあの不二子がそんな殺し屋と正面対決するなんて、無茶な話ですよね。しかもそれをここまで直接的な肉弾戦で描くとは思ってなかった。
それだけ、ビンカムとの対決から最期までの一連のシーンは、とにかく不二子が美しくて、やりすぎなくらいに完璧で、スタイルの良さが強調された(というかあの長い脚をふんだんに使った)アクションが素晴らしく、まさに男の夢としての峰不二子の具現化という雰囲気でした。でも、その最高潮は、あの瞳のアップの場面と、間違いなく、ほんとうにビンカムを倒したものは、不二子がビンカムに注いだ、あの毒という流れでしょう。不二子の存在によって自我に目覚めさせられたビンカムは、その結果、破滅に導かれたのですから。だから、本当は長剣で身体を貫かれたときではなく、あのマイニング社での邂逅の瞬間に、ビンカムの負けは決まっていたということ。峰不二子、強い。
いやほんとうにここまで不二子がカッコいいのはありかなと思うほど、この場面の不二子は際立っていた。ただカッコよく強いだけでなく、ビンカムの呪いの正体を見抜いたあたりは不二子らしい頭の良さが発揮されてるし、胸がはだけても気にしない、そんな直接的なものを利用しようともしないあたりも、この作品の峰不二子っぽかった。あんなに美しいのに、むしろ男っぽいくらい。リアルなところでいえば、あんなにおっきなお胸があんなに揺れたら痛くてしょうがないのではと思いもしますが、そこらへんも含めて、男の夢って感じがするんですよ。もちろん、女にとっても魅力的なことはいうまでもありませんが。
一方、こっちは女の夢かな。ビンカムから連絡がこないことにいら立つ、コドフリーの前に現れるルパンと次元には、もう、きゃーっと悲鳴をあげました。社長室の椅子にどっかと座ったルパンと、その前に陣取っている次元の絵面がもう最高。次元の素早いガンさばきも最高。殺し屋工場についての真相に迫ろうするときの、ほんとうにワルい顔をしたルパンが素晴らしい。ああ、悪人だなって思います。しかし、口を開きかけた瞬間に、社長の頭は撃ち抜かれるのでした。離れたビルから狙撃したのは確かにあの、ヤエル奥崎。呆然とするルパン。
ここ、わたしは劇場で見たときに驚愕しました。いや、ホークは分かるよ。だって、あれは生まれからしてどこかから再生されたって感じだったから。でもヤエルまで?次元ちゃんが「ガンマンとしてのやつは死んだ」とまで言い切ったのに、なんかめっちゃごっつくなって再生してるし!なんかすごいなあ、「墓標」から「血煙」そして「峰嘘」までのこのラインをここまでしっかり描写するんだ、と思った。「墓標」ではあくまで可能性、それを「血煙」で補強したあの流れを、今回のこれで一本の太い線にした、そんな印象を受けました。
そしてすべてが終わり、荒野でひとり身体を休めている不二子のもとに、ルパンが現れます。ここで、ランディは死んでおらず、死んだことにして敵の目をあざむくつもりだったこと、しかし不二子はさらにそのランディをもあざむいて、ジーンから貸金庫の暗証番号を手にいれようとしていたことを、ルパンは推理します。「しかしガキの手術費用までかすめ取ろうとするなんて血も涙もねえな」ってルパンさん、わたしもそう思うわ。でも小池ルパンの不二子なら、そんなことも気にしない。ランディもまたジーンと再会できたならば5億ドルも安いものだと思うのでしょうね。
このルパンと不二子の会話場面。すごく大人な雰囲気です。個人的には「ふーじこちゃん」「ルッパーン」な関係が大好きなわたしだけど、このふたりの雰囲気も好きです。ここまでになると、常の男女の駆け引きとか恋とか愛とか、そういうのはとっくの昔に超えちゃってる気もするので、このふたりがそこまで落ち着いてていいのかな?とも思いますが。
それでも「わたしのことを忘れない男がひとりでも多い方がいつか利用できるでしょう、あなたみたいに」と嘯く不二子はとてもこの作品の不二子らしい。そして、こんな不二子が気を許して肩を借りる男がルパン三世なわけで、でも、もしかしたらそれさえも不二子の計算なのかもしれず、それもまたルパンには織り込み済みのことなのかもしれない。それはクレジット後のルパンの台詞を見ても、そうなのかなと思います。忘れられそうにない、というのは、峰不二子を知ったすべての男の思いなのかもしれませんね。
というわけで、だらだらと語ってしまいました。長くてすみません……。まとめてしまえば、さすがの小池ルパンで、とても楽しませてもらった、という感じです。とにかく不二子が堂々とした主役ぶりなので、そこがもう文句なしです。
もう過ぎたことなのでいろいろぶっちゃけますが、わたし、上映前のスタッフのお言葉でやたらと「不二子の母性」が強調されていたのに、やや違和感があったのですね。だって、峰不二子よ?しかも、新ルとかのいろんな意味でかわゆくて隙だらけの不二子じゃなくて、あの小池ルパンの不二子ちゃんよ?と思った。母性なんて属性をよりにもよって峰不二子に付け加えなくても……と思った。
でも結果として、わたしはこの映画の不二子に母性とかそのたぐいのものは感じなかったです。ジーンとの関係がべたべたしてなくてホッとしました。お風呂の場面も、あんなジーンの言葉を聞いても不二子がほだされたようにはわたしにはまったく思えなかった。だからこそ、不二子が何を考えて動いたかという本当のところはわたしには分からないです。ビンカムとの直接対決に臨んだのは、5億ドルを手に入れたからには、遅かれ早かれビンカムと対決するのは避けられないのだから、自分に有利な時点で勝負をつけようと判断したのかな?くらいに思ってます。なんだか自分がひととしてのなにかに欠けているところがある気がしてきましたが、いやだって、それくらいクールなのが、この話の不二子っぽくないですか。
そんなクールな不二子と同じくらいクールなルパンの関係性もこの作品の要のひとつですよね。でも、個人的には、あそこまで落ち着いてる仲では、とてもじゃないけど「複製人間」のラブラブな感じにはたどりつきそうにないので、このあと、どうなっちゃうんだろうと思います。わたし、小池ルパンのこのシリーズのたどり着く先は「複製人間」のリメイクだとずっと思ってたんですが、今回のこれを見て、これはそれほど単純な話にはならないぞ、と思い直しました。この次に来るのは銭形警部だと思うのですが、そのあと、ルパンの物語にたどり着くのなら、なおさら。
そして、あの。こんなことを気にしているのは、小池ルパンファンのなかでもわたしくらいかもしれないんですが、そうなると、次元さんと不二子ちゃんの関係も気になりますよね……。
いや、これほど正面切って、とてもいいルパフジを見たうえでなに言ってるんだおまえは、って話ですし、いかなわたしでも公式の作品中でふたりになにかあるとは思ってませんよ。ただね、ただ、「複製人間」とか新ルパンのごく初期にあったらしい「次元は不二子にひそかに惚れている」設定を、もしかしてもしかして、小池監督は忘れてないのかなーとか……ちょっとエッセンスくらいは汲んでくれてないかなーとか……、夢を見ちゃうじゃないですか、あんな場面を見たら!もっともその場合でも、どう考えても次元さんの一方的な胸に秘めた片思いだけど、それでも、まあよろしくお願いします(誰に何を)。
つぎにこのシリーズの新作を見ることができるのは、また二年後かな?そのときもいまと同じくらいの情熱で、新作を鑑賞することができたらとても嬉しいです。でも二年なんてあっというまだから、きっとそうなりますね(笑)。これからの小池監督のルパン三世に期待します。楽しませていただきました、ありがとうございました!