ルパン三世PART6第12話「英国の亡霊」感想

 ルパン三世PART6第12話「英国の亡霊」の感想です。公式によるあらすじはこちら(URL) 。以下の感想は、完全にネタバレですので、大丈夫な方のみご覧ください。では、どうぞ!

冒頭。爆発したブラックドローイングのあった建物のそばで、煤が舞い散るなかにいるリリーとホームズ。「わたし、ルパン三世がお父さんを殺したと思ってた。だけど、いまはなにか違う気がする……」というリリーに「あのていどのことで死ぬような奴ではない。野次馬にでも変装して、いまごろそこら辺を堂々と歩いてるさ」と笑うホームズ。ビンゴ!(笑)アバンはここまで。

 人々がなごやかに過ごしている公園のベンチに座る、アルベールとルパン。ルパンは、さきほどの爆発がデストラップであり、フォークナーはその仕掛けも教えられていなかった可能性のある、ただの番人だったことをアルベールに教えます。「レイブンは組織の細分化が進みすぎて個々のつながりが弱く、活動が表面化されない」というアルベールに「いちどでも失敗すれば容赦なく抹殺される、非情な組織だ」と応じるルパン。

 アルベールはルパンに手を組むことを持ちかけますが、ルパンは「おれはおまえのな、そういう人を見下したような態度が大嫌いなんだよ」とすげなく拒否。銃に手をかけようとするアルベールでしたが、それはいつの間にか忍び寄っていた不二子によって阻止されます。腕を組んで去るルパンと不二子を見送るアルベール。そして、そのアルベールの様子を確認していたMI6のエリオットの部下たちは、次元と五エ門に軽くのされて終わるのでした。

 ここ、アルベールはほんまアルベールやなあという感じでちょっと面白かった。あいかわらず不器用というか、ルパンを転がすのが下手というかうまくなる気もないというか。ルパンはホームズとのほうがずっと気が合ってる感がする。

 そして、不二子ちゃんがルパンの彼女っぽく登場したのも良かった。わたし、こういう場面で不二子とルパンが仲良いの大好きです。ホームズ篇ではルパンと不二子の仲はずっと良好で裏切りもないですね(たぶん、不二子ちゃんのあの裏切りをプラスすると話がややこしくなりすぎるうえに、このご時世では、不二子がルパンを裏切っても、同時にルパンが間抜けにも見えず不二子が意地悪にも見えないように描くの、けっこう大変なんだと思うんだよね……)。

 でもごめんなさい。わたし、ルパンと不二子が公園をでたところで車に乗った次元が待ってて「茶番は終わったか」とか言ったとたんにするっと不二子がルパンの腕から離れて素知らぬ顔で車に乗り込み、ルパンもまた「お待たせお待たせ~」なんて軽く言って終わらせちゃう場面まで頭に浮かんじゃってたので、その期待がさらっと裏切られたのは寂しかったですね。いいがかりにもほどがありますが。あ、でもそれはエリオットの部下を倒した後でやればいいのか……(妄想)。

 一方、資料を前に考え込んでいるホームズと、それを見守るリリーとハドソンさん。そこでなにかひらめいた様子のホームズはスコットランドヤードに行き、レストレードにフォークナーの私物を確認させるよう迫ります。取調室に入れられた際、私物はすべて押収されていたのでした。

 ホームズは、レイブン内部の人間が、フォークナーの情報を売ることで、フランスを動かそうとしたのだと語ります。ホームズの動きでフランスが失敗することを予想してのことでした。他国の諜報員がかれに化けていたとなれば、フォークナーは取調室に入るしかなくなる、それが犯人の狙いでした。高級品ばかりを身に着けていた洒落者だったフォークナー。しかし、その指輪だけは何の価値もないガラス玉の指輪だった、ホームズはそこに着目したのです。

 犯人は、フォークナーを取調室に入れることで、ふだん身に着けていたものをすべて外させ、ブラックドローイングの番人であると同時にレイブンの財宝の番人でもあったフォークナーの私物から、隠し場所のキーを探し出し、財宝を手に入れようとしたのです。そのキーが指輪だというのが、ホームズの推理でした。その推理を隠しカメラで不穏な笑みを浮かべて眺めているのは、MI6のエリオット。

 一方、銭形警部には日本本部からの帰還命令が出されます。「どうしてです? この街に一味が潜伏しているのはあきらかなんですよ」と動揺する八咫烏くん。個人的には、このときの銭形さんの表情から察するに、さんざん日本警察のパトカーを川に沈めたり市街地でカーチェイスしたりしたやらかしが本部の耳に入ったのではと思ってしまいました。

やた……おまえはまだ若い。こんなことで将来を潰すな」とやたくんだけを帰国させようとする銭形警部。しかしもちろんやたくんがそうするわけもありません。「最後までつきあいます。あなたはぼくのあこがれの捜査官なんですから」と。「ばかなやつだ」と嬉しそうな銭形警部。

 たいへん。ここにイケメンがいるわどうしよう。ここ、最初から銭形さんてばヤタくんが言うとおりにするって思ってない感じがして、でも一応言って見て、反応をうかかがってるのがたまらないですね。部下を思う気持ちは本当だけど、でもここで、はいそうしますってやつじゃねえよなあとは思ってるはず。やたくんもそんな銭形さんの気持ちは分かってるから、あえてさらっと答えた。はたで聞いていて恥ずかしいようなことを言った。それでこそやたくん。なんかちょっとズレてる感じもするけど、そこがまたやくんクオリティ。かわいいよやたくんかわいいよ。

 そしてそこで目的地もないまま車を走らせるようやたくんに命じる銭形警部。「おれの勘はこれでけっこう当たるんだ。このまま走っていればいずれルパンに会える。そんな気がする」と断言する警部に、さきほどのカッコいい台詞と裏腹に、露骨に困り眉になる八咫烏くんの可愛さがさく裂してどうしようかと思った。やたくんはルパンたちはもちろん、銭形さんにもまだ完全には慣れてないんだと思うの。しかし、その銭形警部の言葉を聞いていたかのように、不二子が車の窓をノックするのでした。

 一方、アジトをたたむ準備をしているルパンたち。財宝の鍵がフォークナーの指輪と知り「グズグズしていると、あの探偵に先を越されるぞ!」とイラついている五エ門に、ルパンは「焦るな焦るな。お宝をだれが見つけようと、重要なのは最後の最後に誰が手に入れるかってことさ」と意味深な言葉で答えます。

 すいません、この荷造りの様子が短いけど楽しかった。五エ門は風呂敷包み、次元さんはスーツケースなのはそれらしいですが、次元さん、最後に手に取ったそれはもしかしなくてもまちがいなくおパンツですね。チェック柄とはおしゃれ。イギリスだから?

 さて、ここで、スコットランドヤードに忍び込み、押収品のフォークナーの指輪を盗み出す男の姿が。男はその指輪を使い、地下道へと降りて行きます。やがてかれは地下の貯蔵庫らしき場所にたどりつき、そこに収められた大量の木箱に、不穏な笑みを浮かべます。しかし、その背中に銃を向ける音が。そこで待ち構えていたのは、ホームズとリリー、レストレードでした。「みごとにかかってくれたな。さあ、両手を上げてこちらを向いてもらおうか」というホームズ。ここでAパートが終了。

 Bパート。男の正体は、あのMI6のエリオットでした。煙幕を張り、逃げようとするエリオット。しかし、そのエリオットの銃を撃ったのはルパンでした。エリオットは地に倒れます。「おーっと全員動くんじゃない。レイブンのお宝はおれが頂くぜ」とホームズに銃を向けるルパン。ルパンはフランスのエージェントが持っていたデータから指輪のイミテーションを作り、この場に入ったのでした。

 ルパンは、リリーに向かい、自分はワトソンを殺していないこと。10年前、ホレイショを殺し、目撃者のワトソンを殺したのはエリオットだと話します。ホームズもまた、一連の殺人事件の全ての犯人はエリオットだとつけくわえます。「かれにはレイブンにかんする秘密資料に接する機会があり、フォークナー殺しの時にもスコットランドヤード本部内にいた」と。しかし、そこでさらに現れたのが銭形警部。その背後に財宝を得ようとした不二子がついたのです。そこでとつじょはじまる銃撃戦。

 「帰還命令を無視したんだ、八咫烏のためにも手ぶらで帰るわけにはいかん!」って銭形警部、その理由面白すぎるんですけど。でもここで気を失っているエリオットを邪魔にならないように隅に寄せる八咫烏くんが気が利いてると思いました。しかしここで銭形警部はホームズにバリツで投げられてしまい、退場状態に。

 「勝負だ、ルパン!」とホームズとルパンは一騎打ち状態に。ここ、単なる銃の撃ち合いじゃない迫力ある格闘場面でよかったですね。そしてルパンの銃弾が放たれたあと、ホームズは倒れます。そこに駆け寄る、リリーとレストレード。「死ぬなホームズ!」と必死になるレストレード。しかし、そこでランプの明りの元、逆光になったレストレードの顔を見たリリーは、なにかに気づきます。記憶を刺激され、リリーが思い出した、その顔は。

 あの晩、ワトソンを殺した犯人こそが、レストレードだったのです。記憶を取り戻したリリーの言葉に顔色を変えたレストレードを止めたのは、倒れたはずのホームズでした。「レイブンの情報に近づくことができ、フォークナー殺害時にスコットランド・ヤードにいた。エリオットにあてはまることは、おまえにもあてはまるのだ」と。そのそばに寄るルパン。そこに、不二子に支えられてやってくる銭形警部。すべてはレストレードを追い詰めるための、ルパンとホームズのたくらみだったのでした。

 ここ、わー、ホントにレストレードだった!というのがいちばんの感想です。これまでの流れと状況から言って、ワトソン殺しの犯人候補はレストレードかホームズしかいないんだけど、仮にも原作基準で存在するキャラにそんな汚れ役をさせるかなあと思ってたの。

 さらに、ここの展開も、なにかあるだろうなとは思ってたんですよ。リリーもいるのに、ルパンとホームズがばんばん撃ちあうのもおかしい。しかしこうなると、エリオットくんは単に自分の欲だけで動いたのか、それともホームズに操られての行動だったのかそこは分かりませんね。これ、エリオットくんが気を失わずに「違う!」とか言ったらどうしたんだろう……。

 ホームズがレストレードが犯人だと確信したのは、ホームズが体調不良を装ったとき、レストレードがリリーのマフラーをワトソンが殺害されたときものだと指摘したことでした。それは犯人のみが知りえる情報だったのです。逃げられないと悟ったレストレードは、爆弾を身に着けていることをあきらかにし、レイブンの財宝をわがものにしようとします。

 しかしそこで、ルパンにより、レイブンの財宝の正体が明らかにされます。「だったらまず、レイブンのお宝を拝んだらどうだ?」という言葉とともに転がされてきたのは、ボロボロの不発弾、それこそがレイブンの宝だったのです。

 レイブンは、第二次大戦中に猛烈な爆撃に晒されたロンドンに埋まった多くの不発弾を爆破可能な状態に戻し、密かに蓄えたうえで、防空壕などの遠大な地下通路を掌握し、ロンドンのどこにでも運べるようにしたのです。そして、英国の重要施設をいつでも爆破できるとして、暗躍を始めたのでした。

 しかし、いまはどれも使い物にならない状態でした。レイブンは非常に細分化された組織で、それが強みである一方、弱みでもありました。組織は90年代以前、すでに崩壊していたのです。指揮系統は機能しなくなり、爆弾の整備も行われなくなった。しかしレストレードたちのような末端のメンバーはそれを知らず、己の使命を忠実に守り、代々引き継いでいったのです。

 つまり、レストレ―ドのやったことはまったくの無駄でした。それを知り、絶望したレストレードは爆弾を抱えたまま、ロンドン橋から川に身を投げます。「リリーに伝えてくれ、〝すまなかった〟と……」と言い残し。それを見届けたホームズはルパンにリリーにこだわっていた理由を問います。ルパンの答えは「頼まれたんだよ、ワトソンに」というものでした。瀕死のワトソンは、自分に駆け寄ったルパンをホームズと見間違えて、愛する娘、リリーの行く末を頼んだのでした。

 「約束は守らねえとな。リリーを守るのはおれじゃあなくて、おまえの役目だ、ホームズ」というルパンに、ホームズは「負けたよルパン。完敗だ」と笑い、不二子とともに去る姿を見送ります。「いいんですか、ルパンを追わなくて」とリリーに問われた銭形が大笑いして、本編は終了。

 ED後。記者会見の場に立つホームズは、現役復帰を宣言します。そこにやってきたのはベーカーストーリ―トのひとりの少年。モリアーティと名乗ったかれはホームズに握手を求めます。そして、ホームズに〝ワトソン〟と呼ばれ、の助手として扱われたことを喜ぶリリー。それを見送ったモリアーティは、車にいるルパンに声を掛けます。この少年こそが、〝教授〟ことモリアーティだったのでした。ルパンとは旧知の間柄のようですね。

 そこにやって来た不二子は、レイブンの貯蔵庫で見つけた、ロンドンの地下通路の地図をルパンに見せますが、ルパンは興味がない様子で車を発進させます。「このお宝、いったいいくらで売れると思う?」という不二子の言葉にも「ロンドンはもうこりごりさ」と答えるのでした。

 次回予告。ナレーションは不二子です。「秘宝オークションに香るとある女の面影……そし手怪盗と女たちの舞踏会は始まった」との言葉通り、さまざまな美女の姿が映ります。次回、第13話のタイトルは「過去からの招待状」新たな謎が、ルパンを誘います。

 というわけで、第12話でした。11話から始まった謎解きがきれいに収まった感があって面白かったです。レイブンの正体が拍子抜け、な方もいらっしゃるかなあと思いましたが、これ、冷戦終結後の世界情勢を思えば、あんがいリアリティある落ちだと思うのですよね……。末端は組織の崩壊を知らないままというあたりを含めて。

 個人的には、銭形さんとも仲良くなってたと思しきレストレードさんがワトソン殺しの犯人だったというのがちょっとせつないですが、それもまた組織の末端であればあるほど、組織の人間である自分とそうでない自分を切り離して生きていたのかなあと思います。その目で確認すれば、これまでのレストレードの振る舞い、なかなかにスリリングなものでもありますね。

 アルベールはこの落ちを分かっていたのかどうなのか。レイブンがそういう組織だったということを含めて、英国が隠したいと思っている情報だったのかなあとも思わないでもありません。それもまたフランスにとっては有益な情報だと思うので。そもそもアルベールは財宝目当てじゃないしね。

 あと、まさかのモリアーティが美少年ショタだった。ルパンとはフィールド違いの犯罪者ということなのですね。そのうち、このモリアーティVSルパンなんかがあっても面白いかも……。

 さて、これで1クール目が終了です。あくまで個人的な意見として言わせてもらえば、すごい傑作になりえたのを惜しくも外してしまったクールかなあという気がします。やはり、ルパンVSホームズ、舞台はロンドン!と謳うなら、ホームズ篇があと2、3話は欲しかったと思うのはわたしだけでしょうか。

 ぶっちゃけ、リリーの話は、ワトソンを殺した犯人はルパンのわけがないという前提が見るほうにあるので、そこまで引っ張る話じゃないんですよね。だから、もうちょっとレイブンという組織の底知れなさやホームズの才能が分かる話があった方が良かった。

 もちろん、そして、そのなかでロンドンで暮らすルパン一味の姿がもうすこしベタに描写されたらいうことなかったんだけど……。フィッシュアンドチップスを食べる次元と五エ門とか、紅茶をたしなむルパンとか。 ジャックザリパ―ネタ、あっても良かったと思うんですけど。ホームズに投げ飛ばされて傷心の五エ門が修行に出たのがライヘンバッハの滝だったとかいう小ネタがあってもよかったのでは!

 あと、単発話大好きっ子のわたしが言うのもなんですが、全12話のうち7話(実質)が単発話というのは、バランスが悪かったのかもしれません。PART5と同じ数ですからね。で、PART5はひとつひとつのエピソードに1、2話を挟むという、ちょうどクッションにふさわしいタイミングだったので……。2クール目に単発話があるかどうかわからないですが、そこ、もうちょっとバランスが良ければいいなあ。

 でも、わたしとしてはここまでのPART6、嫌いなわけはありません。ずっと危惧していたリリーのキャラクターが意外なほど良かったし、ホームズ篇はルパン一味の描写のバランスも良かった。だからもうちょっと見たかったのよ。単発話も、一本一本評価すれば、どれもそれなりの面白さをもった短篇だったと思います。お気に入りは「大陸横断鉄道(嘘)の謎」か「帝都は泥棒の夢を見る」かなあ(「時代」は評価からのぞく)。やはり「ルパン三世」は単発話が本来のかたちではあると思うのです。

 あと、これだけ騒いだので、いさぎよく認めますが、ジゲフジ者としては、このPART6、たいへんなシリーズなので……。これまでのシリーズならあり得ないクラスの描写をどんどん頂いてますので……2クール目もこれでぜひお願いしたいところです。よろしくお願いします(平伏)。

 来年からは、いよいよ2クール目です。「ルパンの母親」というすごいギミックを叩きこまれてしまいましたが、それはもうこれまでにだっていろいろあった後付け設定のひとつとして(笑)、どんな風に料理されるのかを楽しみにしてみたいと思います。その設定に、他のルパン一味がどうからむかも純粋に楽しみです!

 そしてようやく折り返し地点ということで、これまでの感想を読んで頂き、拍手などで反応してくださったみなさまにも感謝しています。ただ観るだけでも楽しいのだけど、こうやって感想を書くために丁寧に見るとまた新たな発見がある。そんな楽しみ方ができるのも、毎週感想を読んで下さる方々のおかげだと思っています。2クール目も頑張って書きたいと思いますので、また読んで下さると嬉しいです。どうぞよろしくお願いします!

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