LUPIN ZERO第5話 「その男、密かに躍る」感想

「LUPIN ZERO」第5話 「その男、密かに躍る」の感想です。公式によるあらすじはこちら(URL) 。以下の感想は、完全にネタバレですので、大丈夫な方のみご覧ください。では、どうぞ!

 ルパンと次元は、海岸そばのドライブインシアターで西部劇を楽しんでいます。映画を見ながらも、ルパンはどこか浮かない顔。しかしすぐに気を取り直し、上映機器のトラブルで画面が映らなくなってしまったステージ前で次元と即興芝居。居合わせた客たちからの拍手喝さいを受け、上機嫌でその場を去ります。
 
 一方、舞台は米軍キャンプへ。カップルを迎え入れた警備の兵は何者かの変装でした。つづいて、倉庫の前にやってきたカップルの女性は巧みな話術で警備の兵を追い払いますが、その正体は、あのルパン二世。かれはそのまま倉庫の内部に入り込み、警備の兵を倒します。「さすがにでかいな。まあ、当然か」と謎めいた言葉をつぶやいて。アバンはここまで。

 ドライブインシアターでルパンを気にする次元ちゃんの目が可愛い。映画技師さんが大塚康夫さんぽいルックスですね。上映中の西部劇は、キッドとドクと呼び合ってるから、ハワード・ヒューズの「ならず者」かな? スクリーンの前で遊んだあと、車のなかで笑ってるふたりは、大人になったあとの姿を彷彿させて、なんだかとても可愛らしかった。

 二世さまが変装した警備兵、睫毛がバチバチだったので、銭形のとっつあんかと思ってドキドキしました。違った(あたりまえ)。そして二世さま、やってることが三世さまそっくりで、たいへんときめかせて頂きました……。

 クリスマス前の宝石店で、洋子さんへのプレゼントを物色するルパン。ナイトクラブを訪れたときに、洋子が男に殴られて休んでいると聞かされ、そのまま洋子のアパートに向かいます。しかし、そこにいたのは入れ墨長髪の巨漢(ガウチョ)。多少のすばしっこさでは太刀打ちできず、痛めつけられるルパンでしたが、そこに洋子が現れます。

 洋子の顔のあざを見て顔色を変えるルパンでしたが「これは大人の男と女の話よ。子供に口を出してほしくないの」と言われ、引き下がるしかありませんでした。ルパンの後ろ姿に表情を曇らせる洋子でしたが、実際には彼女を痛めつけているのはガウチョではなく、別の男。洋子はかれのために自ら望んでその男の元へ行き、なにかのマニュアルを入手してきたのでした。

 洋子さんへのプレゼントを選ぶルパンが超可愛らしく、セーターが超昭和でした。しのぶさんの手編みかな。できれば次元ちゃんにも「J」柄をお願いします。そして、ルパンを痛めつけるガウチョ、初見では子ども相手にひどいな!と思いましたが、あとの展開を見れば、警戒するのもあたりまえの立場のひとだった。ルパン、あきらかにただのこどもではありませんし。でも「ただの」こどもではなくとも、こどもである事実には変わりがなく、聡明なルパンはそれを悟って洋子の前から去ったのでしょう。せつない。このガウチョが、1話で洋子さんが触れてた「あのひと」なんだろうな。

 ルパンの心象を現すような曇り空のもと、ルパンは屋敷でしのぶにけがの手当てとお説教をされています。居合わせた次元は、ルパンの相手が戦いのプロであることを見抜き、手を引くように忠告しますが、ルパンはとうぜん納得できません。しかし、カタギと泥棒、自分の将来をどちらにも決めきれないルパンに対し、すでにカタギではない次元は、おまえはまだ間に合う、と(暗に)カタギになることを勧め、屋敷を去りました。

 いい場面なのですが、次元ちゃんが林檎(お見舞いかしら)の皮をただ丸ごと向いているのが気になりました。ルパンはあのままかぶりつく派なのか、ウサギにするのは恥ずかしかったのか。

 そしてあのですね、ここの次元ちゃんのルパンへの態度が、大人になった次元さんがカタギのお嬢さんと知り合ったあとさりげなくお別れするときの態度のひな型のように思えてしかたがないのですが、わたしの目が狂ってますか。「明るい世界に帰れよ、ボンボン」の響きが素晴らしかった。やさしい。そのやさしさを分かっているからこそ、ルパンはそれを受け止めきれない。そんなルパンのことを次元ちゃんも分かるから、やさしく去っていく。いい思い出だったと言い残して。

 あのですね、これはもうわたし、次元パパの教育がどうなってるのかちょっと個人的に問い詰めたいですね。こういったことは親のやることみて子どもは育ちますからね! 三者面談やろう三者面談(わたしの立ち位置とは)。次元パパ、大人の次元ちゃんに負けず劣らずのモテ男と見た! そして大人の次元ちゃんに負けず劣らず、女を幸せにできない男と見た! パパ見せて!(混乱)

 一方、舞台はあのルパン一世の屋敷へ。米軍キャンプからなにかを盗み出した男の情報を求めてやってきた政府筋の男に、ルパン一世は、それは自分の不肖の息子に違いないと断言します。二世は、その言葉通り、盗んだものの取引をつつがなく終わらせています。そして、取引相手は、あのガウチョ。東京が火の海になると予想したしのぶに、二世はルパンを連れての東京脱出を持ちかけますが……。

 待って。いろいろあるけど、待って。あ、あの、一世さま、美形をベッドにはべらせているのはいいのですが、これ全員美青年ではないですか! おじいさま、そっちもイケるの? と驚愕しました。

 真面目なこと言うと、一世さまなので、なにやってもいいというか、やっぱり世間一般の常識なんか軽く蹴飛ばしてイカれてるおじいさま、というキャラのやることとしてはまったく間違ってないとは思います。ただ、わたしが驚いた。あと、心臓移植したばっかりなのに元気だな、さすがだな!と思いました。

 また、そんな場面に、幼アルベールがいるのはどうよ……と思ったんだけど、アルが読んでたのがボードレールの「悪の華」だったので、いろんな意味で大丈夫と思いました。面白かった……。

 二世さま、「無用な詮索をしないのがこの仕事の秘訣です」と言いながら首を叩く仕草が、カッコ良さ無限大で繰り返し見ちゃった。古川ボイスと相極まってどうしていいか分かんないくらいカッコいいですね。しのぶの思わせぶりな「ルパン帝国」という言葉も気になりますが、そのまましのぶの胸に手をやってつねられる二世さまのカッコよさのほうが大事でした(いや、この尺ではまともに帝国の話なんかできないと思うので……)。

 しのぶと二世の関係性も気になるなー。父親似、そうなんだと思いますが、大人になった三世さまは、二世さまと一世さまのハイブリッドって感じですね、いまのとこ。

 次元は学校に現れなくなり、洋子もナイトクラブを去り、アパートはもぬけのからになっていました。いっぽう、次元は右翼団体「大日本任侠繪」に父親推薦で雇われて、泥棒を始末する仕事に駆り出されることに。その泥棒こそ、ルパン二世。かれが沖縄の米軍から原爆を撃てる大砲(原子砲)を盗んだことを知り、あわてた官邸が、愚連隊上がりの組織に屋敷を急襲されるよう命じたのでした。失意のルパンはひとり屋敷に戻っていますが、そこにやってきた次元は、たどり着いた仕事先がルパンの屋敷であることを知り、驚愕。ルパンと対峙し、銃を向けます。そして屋敷に駆け付ける、しのぶと二世。 

 「なんだよ、みんないなくなっちまいやがって」のルパンくんがかわいそうでかわいい。ルパン、あんがいこういうシチュエーションに弱いよね。本質的に孤独の星の下に生まれついてるくせに、寂しがりやなんだよな。好き(すいませんつい言わずに)。

 そしてえらい仕事を息子にまかせるんだな、次元パパ……。なんかもしかして次元パパはこの世にもういなくて、次元ちゃんが次元パパの振りして仕事とってきてるんじゃないかという気さえしてくるよ………。そして、もちろんここでも二世さまカッコ良すぎて素晴らしいんですが、雑魚キャラの「カチコミにカチコむとは」という台詞にちょっと笑った。たしかに。

 屋根の上で対峙する次元とルパン。次元はルパンにカタギに戻るよう説得しますが、ルパンは受け入れません。カタギと泥棒のどちらかという以前に、自分の人生を第三者が決めようとする、そのこと自体が我慢ならないのです。そこにやってきたしのぶは、次元に銃を向けます。ルパンはふたりの間に割って入り、しのぶの銃から次元をかばいます。「おれが決めて、おれが選んだことだ!」と。

 しかし次元はその仲裁を「おれはな、強いやつがいるってなると楽しくなってきやがるんだ」と断ります。それを聞いた瞬間、ルパンは笑いだします。おれも同じだ、と。そして、しのぶに向き直り「おれは泥棒になる」と宣言します。一世や二世の言いなりになるのではなく、自分のワクワクにしたがうかたちで、ルパンが初めて盗んだものは、次元の心でした。

 しのぶの「悪友です」の言葉に、あ、やっぱりそう見てたのね、と納得しました。次元が苦く笑う「その通りだよ」のひとことが、せつない。次元ちゃん、ずっとルパンにカタギになれって言ってるのに。次元の存在そのものが、ルパンを裏の世界に誘うものと位置づけされている。なぜなら次元は、しのぶと対峙することに歓びを覚えるほど、強い相手を見抜き、戦うことを求めているから。それはカタギの人間には理解しえない感情です。次元ちゃんは生粋の裏の世界の住人なわけ。

 そして、その感情を本能的に理解したルパンもまた、そういう種類の人間なのです。そう思うと、(他の世界線ではいざ知らず)、このるぜろの世界線では、ルパンを泥棒に目覚めさせたきっかけのひとつはまちがいなく次元、なんですね。すごい。あー、こういう理解か、と思いました。少年時代のふたりの出会いを、こういう風に解釈するんだ、と見てるこちらも目が開かれた思い。

 それは、単なる幼馴染でも、こどもの頃に知り合った友達、でもない関係性です。次元にとってのルパンの特異性はある意味、理解しやすいですよね。凄腕ではあっても普通の人間である次元の前に現れた超人ルパンなんだから。でも、ルパンにとっての次元は? それはいくらでも解釈できることだけど……。

 このるぜろでは、次元こそがルパンの中に流れる、まっとうではない、刺激を求めてスリルを生きがいとする裏の世界の人間としての血脈をはじめて自覚させた存在になるんです。なんて特別なの。これはふたりが大人になって出会った設定ではありえない、こどもの頃に出会ったからこその解釈です。すごいすごい。面白い! この解釈が正しいかどうかはともかくとして、わたしはそう理解しました。

 で、その結果、初めて盗んだのが、次元ちゃんの心、というのがまた……。これ、「次元ちゃんのハート」と一度書いて、あんまりだな、と思って「心」という表現にしてみたんですが、とたんに銭形のとっつあんの「あなたの、心です」を思い出して頭抱えました。いやその。解釈は人それぞれながら、ここ、すごいよなあ……。いわゆるBL的に受け取っちゃった人手を上げて!(ハーイ)

 というのは冗談としても、次元ちゃんの胸に手を当てたルパンが目をそらすでしょ。あれ、どう解釈したらいいのやら。わたしは、次元ちゃんを自分の相棒とする宣言だと思って、でもそれはけっこうな修羅の道だし、ふたりの仲がこれまでみたいな子ども同士の友情とは違った意味合いを持つことになる、その意味がルパンには分かってるからこその後ろめたさみたいなものの表明なのかなと思いました。

 ここ、正直いいまして、初見ではけっこうショックだったんですよね。なぜなら、わたしはルパンに次元の心を盗んでもらいたくなかったから。盗むんじゃなくて、正面から、次元の意思で渡してもらいたかったのです。次元の心がルパンのものになるのは別に構わない。だって、それはもう、そういうものだから。でも、それは盗みやチートではない、真っ向勝負であってほしかった。

 でも、落ち着いて考えてみれば、次元ちゃん、ルパンの手が触れるよりずっと前から、盗まれてました。るぜろの次元ちゃん、ルパンのこと大好きだったもの、ずっと。じゃあもうそれでいいのでは。最強の相棒誕生だよ、おめでとう!(ちょっとヤケ)

 一方、男に暴行されている洋子を助けに来たガウチョ。かれらは沖縄の革命軍として日本に革命を起こすべく、二世から受け取った原子砲で官邸を脅迫しているのです。ガウチョの後ろでバイクに乗りながら、どこか浮かない顔の洋子。その脳裏にはルパンたちとの思い出が浮かびます。洋子とガウチョがたどり着いたのは、かれらが隠れ蓑としている米軍の船。しかし、そこには「ルパン三世」からの予告状が届けられていました。

 ガウチョの浮かれ具合とは裏腹な洋子の心象風景を現しているような、冷え切った都会の風景が印象的でした。洋子は東京が焼け野原になったことを記憶している世代なんですよね。もちろん、それは望まない。でも、いまはそれ以上に愛した男の体温を感じていたい。男の夢のためには、わが身を捨てて慰みものになったあたりとか、実に昭和の女という感じでした。

 男勝りでカッコいい洋子の限界、というか峰不二子の特異性ってそこなんだよなあと思いました。洋子は普通の女なんだよね……。洋子が昭和の女なら、右往左往する官邸も、革命を夢見るガウチョも昭和なんですよね。この舞台設定で、あのルパン少年は、どうやって「ルパン三世」になっていくのでしょう?

 というわけで、第5話でした。言いたいことはぜんぶ感想に書きましたが、初見の感想は、ただもうせつなかった。泥棒とカタギの間で揺れるルパン少年も、ルパン少年に陽の当たる世界にいてほしい次元ちゃんも、革命の夢に浸る男を支える洋子も、なんだかみんなちょっとかわいそうだった(かわいそうじゃないのは一世と二世だな)。脚本が大河内さんで納得しました。最終回前だもの、こういう流れは必然だよな……。

 そう、もう次は最終回なんです。なんだろこの密度! もっと見たいというか、ルパンくんと次元ちゃんのわくわく学園エピソードとか(バレンタインとかさ!)、さりげなくしのぶにツンされる次元ちゃんとか、洋子さんとルパンくんの可愛いデートとかいくらでも浮かんできちゃうんだけど、この本筋がそれだけ面白いから、なんですよね。素晴らしいなあ、るぜろ。わたしはとても楽しんでます。最終回、とてもワクワクして待ちたいと思います。よろしくお願いします! 

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