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「あぶな坂HOTEL」萩尾望都(集英社・クイーンズコミックス)
by くさてる

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 あの世とこの世の間に立つ「あぶな坂HOTEL」。さまざまな原因で生死のあいだをさ迷っている人々は、この場所に足を踏み入れて、どちらの方向に進むかを決断しなくてはならなくなる。自分が死ぬ?死んでもいいかも。いや、なんとしても生き延びたい。わたし、何回もここに来たことがあるわ。ねえ、生きたい願望と死にたい願望、どっちを選べばいいの…?

 萩尾望都の連作短篇集です。生きるか死ぬかという真剣な状況なので、いくらでもドラマチックに盛りあげることが出来る題材ですが、そこをあえて軽くかわして、不思議なユーモアが漂う雰囲気の作品にしているあたりが、とても面白い。何人ものキャラクターがドタバタと繰り広げる大騒ぎが、昔の萩尾望都っぽくて楽しいです。基本的なトーンが賑やかで明るいのがいいですね。そして、温かい。

 でも、そんななかでもやっぱり、ひとの死が周囲の人々にもたらす影響というものに正面から向き合った「雪山へ」がいちばん良かったです。共に雪山へ出かけ、雪崩に巻き込まれた兄と弟。2人がこのHOTELで再会した意味とは…。泣いてしまった。単に悲しいとかいうレベルでなく、ああ、そういうことなんだと腑に落ちたから。愛するひとが突然消え去ってしまうこと、それをいつまでも受け入れられないこと、受け入れること、どちらにしてもその事実の重さは、ひとの人生にいつまでも大きな影を落とすことが、強く、響いてきた作品でした。

 わたしは萩尾望都のファンではありますが、この単行本は、ふと見落としていた一冊です。なので、発行して数年たっての読書となりましたが、とても良い本でした。一冊で読み切ることが出来るし、萩尾望都の良さ(テーマ、構成力、絵)が良く現れていると思います。おすすめ。


|| 22:13 | comments (x) | trackback (x) | ||
「空の色ににている」内田善美(集英社・ぶ~けコミックス)
by くさてる

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 主に1980代に「りぼん」や「ぶ~け」などの雑誌で活躍された少女マンガ家の81年の作品です。リアルタイムで執筆されていたころには、わたしはまだ子どもでしたので、大人っぽい絵柄にいまひとつ惹かれなかったことを覚えています。また、もう少し時がたって「幻の作家」という声を聞くようになった中高生の頃にも何作か読んでみたのですが、難しくて分からない…という印象を受けてそれっきりになったと思います。そして今回、この作品が描かれてから33年たったこの年に、ふと、どこかでこの著者の評判を耳にして、もう一度トライしてみようと手に取ってみました。

 その結果、わあ、この年齢になるまで分からなかったのか…と己に呆れることになりました。びっくりしちゃった。すごかった。

 学校の図書室の貸出カードを通じて、ひとりの女生徒、浅葱の存在を意識するようになった蒼生人。そして、浅葱と強く結ばれている人間嫌いの冬城。この三人の関係が、季節の移り変わりを通じて、深まり、ゆっくりと変化していって、やがて有るひとつの結末に到達するまでの物語です。これみよがしの派手な事件は存在せず、むしろ積み重ねていく静かな日々の中で揺れる感情のうねりだけが伝わってくるような、観念的で内省的なモノローグと台詞に圧倒されました。純粋に、誰かに惹かれるということ、誰かを求めるということを、性愛を含んだ恋愛のかたちで説明すること無く、ただ、こういうものなのだと指し示す展開に、心の芯が震えるような気持ちになりました。

 主人公の蒼生人は、高一という年齢にふさわしく、つねに賑やかで楽しげな仲間たちに囲まれています。かれの幼さを心配しその成長を余裕持って見守る兄をはじめとして、優しく理解ある家族もいます。小さく鳴きながらかれに寄りそい、かれに疑問を残して去っていく飼い猫も(ちょっとずれますが、この飼い猫のエピソードは、猫クラスタのかたにぜひ読んでほしい…。また猫の姿が実にリアルで可愛いのです)。さらに、長距離の選手として走るという目的も持っている。それでも、かれは浅葱に惹かれます。それは、簡単に恋というだけでは片付かない、もっとなにか深いもので、それと同じような深い想いを浅葱もまた、傲慢で孤独な冬城に抱いています。そして、そんな冬城もまた、自分が心を許した浅葱と同質のものを蒼生人に視ているのです。

この三人の関係。それは三角関係などという単純なものでも疑似家族のような温いものでもありません。それぞれの存在が、自分に欠けているなにかを埋めるためのものを求め続ける過程のなかで生まれた、偶然の溜まり場のようなものというほうがふさわしいかもしれません。そしてそれが偶然ならば、とうぜん、いつかは終わりが来るものでもあるのです。

 人間は生まれたときからあらかじめなにかが欠けている存在。そしてひとはそれを埋めるためのなにかを求めている。その欠損に気づいていても、いなくても。そんな単純な事実をこんなに厳しくつきつめて考えて、その結果がもたらしたものをこれほど温かく優しいものに変えた物語を、わたしは読んだことはありません。この作品の素晴らしさが33年たったいまでも有効なのは、時代と関係なく、人間の抱える根本的なそんな課題がテーマだからだと思います。そしてもちろん、流行に左右されない時代に流されないこの描線のちからも。

 ちなみに、アマゾンではすごい高値がついていますが、わたしはこのぶーけコミックスを市立図書館で借りました。図書館のマンガというと、手に取られる機会が多いためかひどい状態になっていることが多いのですが、86年発行の第7刷が、とても良い状態でした。昔の本なので書庫に入れられているせいもあるかと思いますが、借り出す人が丁寧に扱っているのかな、とも思えて、ちょっと嬉しかったです。 


|| 23:26 | comments (x) | trackback (x) | ||
「大島弓子にあこがれて~お茶をのんで、散歩をして、修羅場をこえて、猫とくらす」福田里香・藤本由香里・やまだないと(ブックマン社)
by くさてる

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 三人の識者による大島弓子論、インタビューなどの大島弓子のついての語りを中心に、過去の大島弓子のカラーイラストや、単行本には収録されることのない予告カット、小さなコラムなどを収録したもの。大島弓子ファンならば、後者だけでも買う価値はあります。

 大島弓子について語るというと、まずは「バナナブレッドのプディング」や「綿の国星」などの70年代か80年代の作品についての分析が中心になることが多いと思います。それはまず、大島弓子の作品がジェンダー、少女、マンガ構造などの様々な面からしてとてつもなく優れていたり、面白い切り口であるから当然なのですが。余談になりますが、そういう観点から書かれた評論で、まさしくこれ以上は無くこれ以外のものはいらない、と未だにわたしが信じてならないのが、橋本治「花咲く乙女たちのキンピラゴボウ」です。大島弓子論以外にも、山岸凉子論、萩尾望都論も素晴らしいので、このあたりの女性作家に興味が合って未読の方にはお勧め。マンガ評論を読んで泣いたのはこれが初めてでした。


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 この本は、これまでに評価されてきたそういう点も無視すること無く、しかしそれだけではない内容なのが面白かったし、興味深く読めました。とりわけ、80年代以降の、吉祥寺のマンションで猫と暮らすひとりの女性としての自分を描いた一連のエッセイマンガ(「サバシリーズ」)を評価しているのが面白かった。そう、猫を飼って美味しそうな食品を買い込んで、散歩をして掃除をして、仕事もする。友人は存在するけれど家族や恋人は登場しない。そういう世界がとても素敵で、憧れた時代が自分にもあった、とそれを読んでいた20代の自分を思い出しました。もっとも、それ以後のサバが亡くなり、典型的な「猫おばさん」になってしまった大島弓子の生活には、正直言って憧れの感情よりも大丈夫かなというようなもやもやした気持ちを抱くようになってしまったのですが…それも人生、なのかもしれないけれど。

 そんな風に、大島弓子の作品に惹かれてきた人ならば、この本を読むと自然と「自分と大島弓子」の関係に想いを馳せてしまうと思います。この本の中にもあったように、大島弓子という作家は、そのメジャーさにも関わらず、ファンとなった人間に「私だけの大島弓子」と思わせてしまう作家さんなのです。この本は、まさにタイトル通り、そういうかたちで大島弓子を愛してきたひとによる本なので、ここには「私だけの大島弓子」が溢れています。よって、読む人によっては、ここにあるファンならではの熱い言葉についても、いちいち、違うんじゃないの?ううん、それ、わたしの場合は…みたいな感情を呼び起こされてしまうのではないでしょうか。でも、わたしはそれがこの本の読み方として間違っているとは思いません。

 読み手の数だけ、大島弓子の姿は存在する。そういう意味でも希有な作家なんだと再認識させられました。大島弓子ファンには間違いなくおすすめ。

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「となりのネネコさん(1)」宮原るり(新書館・ウンポココミックス)
by くさてる

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 ウンポココミックス、というものが出来ていたことにちょっと唖然。

 無敵に猫属性(でも猫畜生は大嫌い)な転校生ネネコさんと、それを取り巻く先生、生徒、ストーカーもろもろの日常生活を描いた4コマ漫画です。もとはWEB掲載だったとかで、公式サイトでも読むことが出来ます。書籍化したもののほうがデータ的にも詳細で美しいので、WEBで気に入ったかたには書籍もおすすめ。

 傍若無人で無敵なネネコさんに怯えたり戸惑ったりしながらも、そのペースに巻きこまれていく周囲のひとたちの善意とのんきさが、時おり見え隠れするネネコさんの過去のダークさと良い対比になっていて、単なる4コマに終わってないと思います。素直に可愛らしい絵柄とネネコさんのキャラ立ちだけでも、読んでいて楽しいかと。

 また、ウェブで読める、未書籍化部分の「チマ公」ちゃんのお話は、思春期に弱い女子だったかたならば、なんとも身につまされるお話ではと思います(大人になってもやってるひとたちもいますが、それはそれ)。お話の展開、問題の解決方法などは、実に少女漫画だと云われそうですが(現実はそううまくいかないよ、という意味で)、そもそも現実から浮遊した世界を通して、少女に現実を生きる元気をくれるのが少女漫画の醍醐味だとわたしは思うので、このマンガは実に良質の少女漫画だと思うわけです。面白かった。

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「パタリロ源氏物語!(4)」魔夜峰央(白泉社・花とゆめコミックス)
by くさてる

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 おなじみパタちゃん版源氏物語。しかし今巻はやや失速かな?魔夜先生のいつもの癖で、話が横にずれすぎなのと、下ネタがいただけません。

 本篇の源氏物語の見せ場がほとんどナレーションですまされて、微妙なオリジナル部分が幅を利かせてるのはなんとも微妙な感じです。ただ、魔夜先生のことだから、これもいつもの長編の中だるみなのかもと思わせるのは、ひょっとして人徳ですか。とりあえず、次巻に期待。



|| 18:39 | comments (x) | trackback (x) | ||

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