COUNT
PROFILE
NEW ENTRIES
CATEGORYS
COMMENTS
SEARCH BOX

「こくごの時間」雁須磨子(秋田書店)
by くさてる

<amazon>

 「走れメロス」「少年の日の思い出」「十五の心」「言葉の力」「夕焼け」「小僧の神様」「山月記」「クマの子ウーフ」。国語の教科書に掲載されていた小説や童話や詩、文章をモチーフにした連作短編集。

 舞台になるのは小さなカフェ。そこの店主の女性がなにげなく昔の自分の国語の教科書を店に置いたことから、それを手に取るお客や従業員との間で交わされる、思い出の作品についてのあれこれ…という感じではありますが、そこらへんはいつも明確なかたちがあるわけではなく、カフェ自体が登場しない話もあったりするあたりが、ふわっと自由でこの著者らしいゆるさです。そしてそのゆるさが、とても自然で、自分の身の回りにも、こういう出来事が起きては通り過ぎていくのではないかと思わされるような錯覚を産みます。この自然さが、わたしにとっての雁須磨子の魅力です。

 個人的に好きなのは、木を描くのが好きなオタク系男子とつけまばっちりのギャル系女子の、恋にもまだ至らない惹かれあいを描いた「言葉の力」と、壇一雄が太宰治とのヒドいエピソードを描いた「熱海行き」と「走れメロス」について女性たちがおしゃべりするうちに、そのひとりが自分の間違った恋愛を待ち続ける不毛さに気づいて静かに歩きだす「走れメロス」の二話です。どちらも分かりにくいといえば分かりにくい、感覚で描かれている部分の多い話なので(そこが少女マンガだといえば少女マンガっぽいところではありますが)、ピンとこない人も多いかもしれませんが、ハマるひとにはハマる。わたしはそのひとりなのです。

 当たり前に誰かと一緒にいること。恋が生まれたり終わったりすること。他人と触れあうことで起きる波紋と、それに付きまとう自分自身の気持ちの揺れ動き。日々のなかで自然に生まれては消えていく、泡のような思いをすくいあげて目の前に差しだされているような気持ちになります。百パーセントの善人も、悪人も存在しない。特別な人間はどこにもいないけれど、ひとりひとりがみな違う、当たり前だけど、ここにしかない世界で生まれる人間模様が、心地良い短編集でした。

|| 12:31 | comments (x) | trackback (x) | ||
「グッデイ」須藤真澄(エンターブレイン・ビームコミックス)
by くさてる

<amazon>


「明日死んじゃうわたしですが、今日はちょっと幸せものです。」

 15歳以上のひとが任意で服用することが出来る「玉薬」。その薬を飲むと、身体の寿命で亡くなる人の体形が、亡くなる前日から球体に見えるようになります。その現象は「玉迎え」と呼ばれます。ただし、亡くなる人と、そのひとの「玉迎え」を見ることが出来る人との組み合わせは、世界でたった一組のみ。天文学的な確率だけど、それでも起こりうる現象。あなたは、いますれ違った誰か、久しぶりに会った家族、偶然出会った他人、それぞれが死ぬ前日にいることに気づいたら、どうしますか?

 …というテーマの連作短篇です。これがまあ素晴らしい。テーマだけ聞くと、重々しかったり、お涙頂戴に思えたり、或いはもっと悪趣味なものに思えてしまうかもしれないのですが、そういう先入観は、須藤真澄描くところの「玉迎え」を迎えたひとびとのヴィジュアルを見た瞬間に吹き飛ぶことでしょう。可愛いんですよ、これが。

 そう、いくらでもシリアスな感動作に仕上げることが出来る素材ではありますが、須藤真澄はそれをとても軽やかに自然な笑いをともなったお話に創りあげています。そしてそれだけに終わらないのがまたすごい。

 なんといっても、絵の力が良いのです。つーてんな描線(見て頂ければ納得できますこの表現)で描かれるこの世界は、とても可愛いけれど、甘過ぎない。細かいところまで描写しているけれど、ごちゃごちゃしてない。作中の女の子たちは、うるさくて落ちつきが無いくせに男子の夢を裏切る冷たさをもっているけれど、そのまつげは可愛らしく伸びやかで、素直なほっぺたはきっと真っ赤に染まっている。

 また、このマンガは「身体の寿命」で亡くなるひとたち、をめぐるお話なので、お年寄りがメインを張る話が多いのですが、さすがはこれまでずっと、お年寄りを可愛らしく生き生きと描かせたら右に出る者はいないマンガ家さん(わたし調べ。次点はひらのあゆでお願いします)である須藤真澄らしく、いまの年代のおばあさん、おじいさんたちってこうよねえ、という服装に髪型、生活の風景に説得力が半端ないです。

 そしてこの可愛い描線で描く世界そのものは、油断して読んでしまえば良いお話、泣けるお話でもあるのですが、それでもなんだかそれだけに終わらない。笑って少し涙ぐんで、良いなあと感動したあとに、でも、そのあとに。ぞくっとするのです。ああ、このひとたちには翌朝は無いんだ、という事実に気づくと、少し冷え冷えするような気持ちが残るのです。須藤真澄の作品は、その可愛さとファンタジーな雰囲気に酔わされて楽しく読み終えてしまうことが多いのですが、そのところどころに、冷たさ、というか、人生そのものを達観して見ている冷静さを感じることがあり、この作品でも、わたしはそれをちらっと感じました。まさに神の視点。

 可愛らしい描線で描かれて悪人は登場しない、気持ちのいいお話が並んでいます。けれど、それは人間の寿命が分かってしまうというある意味、とても怖い世界。正反対であるような両者が同居している、そのバランスが絶妙な作品でもあると思います。須藤真澄の描線でなければ納得できない「玉迎え」の描写であることを踏まえて、本当に、このひとでなければ描けない作品だと思いました。わたしはたいしたマンガ読みではありませんが、直観的に、わたしのなかで、2014ベスト作品である、と決めました。おすすめです。

|| 22:41 | comments (x) | trackback (x) | ||
「阿・吽(1)」おかざき真里 (小学館・ビッグコミックススペシャル)
by くさてる

<amazon>


 「サプリ」「&‐アンド‐」で知られるおかざき真里の新刊です。なんと今回は、歴史物で、主役の二人は最澄と空海!

 実は、わたし、おかざき真里はずっと昔から、かの「ファンロード」で一般投稿されていた頃からのファンでした。しかし、「サプリ」以降の胸が締めつけられるような恋愛物は苦手で(それはね、作品のせいではなく、読み手のわたしが辛くなっちゃうのですよ…)、かの「&‐アンド‐」も未読です。なので久しぶりのおかざき真里体験なのですが、最澄と空海が主役、という前評判を聞いただけでなんだかわくわくしていた、その期待が裏切られることなくて万歳です。

 おかざき真里といえば、やっぱり絵。これがまたいいのです。あの繊細で美しい描線はそのままで、けれども疾走感というか躍動感というか、そんな生命力に溢れているのがすごく良い。電気が無かったこの時代、いまよりもずっと、闇と月の光、木漏れ日の光と影、そういったものが人間に近しかった頃の光景が目の前に広がっているようです。

 また、怨霊が文字を解したところとか、与えられた言葉がかたちをもって姿を見せるときの表現とかが、時にユーモラスでキュートで、温かい。言葉の意味をこういうかたちで現すことにより、現代人とはまた違う、この時代の人間にとっての言葉のちから、というものがよりダイレクトに伝わってくる気がします。そう、現代の人間と、この時代の人間は、なにもかも違う。価値観も倫理観も死生観も。違うからこそ、この二人がこの時代に誕生したことに意味があるんじゃないかな、と思うことが出来る。そんな世界で、この二人がどうやって生きていくのかということに惹かれてしまう。わくわくします。

 そして、最澄と空海という二人だけでなく、それ以外の登場人物もそれぞれが、それぞれの思惑で生きている感じで、良いです。現代人とは違う倫理観のなかで生きているのは間違いないけど、でも、どこかわたしたちと通じるものもある。その説得力が、とても良い。そのなかでもわたしが気になるのは、愛嬌ある微笑みで世界を渡ってきた泰範という僧。かれのなかの鬱屈がどのように変化していくのかに惹かれます。

 まだ1巻なので、お話としてはプロローグの部分なのかもしれませんが、それでも読みどころはたくさんあります。なんていうか、シンプルに面白いのです。この世界で。こんな希有な存在として生まれたこのひとたちはこれからどうなっていくのだろうか。なんとなく覚えている歴史上の人物や出来事が、この二人にどんな影響を与えていくのか。そんなことが楽しみでなりません。

|| 19:44 | comments (x) | trackback (x) | ||
「政党擬人化 政党たん」(原作)水戸泉・(作画)にいにゃん(リブロ)
by くさてる

<amazon>
 
 原作者の水戸泉先生のサイト(URL)で存在を知ってから、マンガ単行本化を待つこと久しの作品でありました。擬人化といえばいまの流行りでありますが、これは政党の擬人化マンガなのです。はい、自民党とか民主党とかの政党です。ある意味、電車だの国だのよりもいろんな意味で微妙かもしれないこのジャンルに果敢に挑戦した結果が大成功という素晴らしい内容となりました。大体の詳細とキャラクター紹介は、こちらの公式サイト(URL)にどうぞ。

 実はわたし、政治家系がかなり好きです。どういう意味での系かという説明はその、疑問を持たれた方の耳元だけでこそっと囁きたいわけですが、まあ分かりやすく言えば、小泉純一郎氏が日本の総理でいらした時分は、わたくしそれはもう忙しくて。それも主にサミットとか日米首脳会談とかのときは、式典の感想も後回しになりそうなくらいに大忙しで。しかし、これはいわゆる中の人に向いた内容ではありません。まさに政党そのものの擬人化なので、政党のイメージで十分楽しめる内容となっています。BL作家の水戸泉先生が原作ではありますが、まったくその手の内容はありませんので(先生ご本人がつぶやかれていたように、共産党たんが魔性なのは…その…まったくの事実なので…)、健全ギャグ漫画として、男性のかたにも楽しめる内容となっております。政治に関する知識についても、ニュースを見ているレベルでほぼ大丈夫。かなり親切な解説も添えられています。むしろ、そこらへんがマジのマニアさんには物足りないところかもしれませんが、まあ、それはそれ。

 また、ちょっとわたしが思いましたことなど。本来は政治に関心が無い御方でも、ちょっとばかしオタクならば、昨今の表現規制の問題について、各政党の立場や意向に関心をもったひともいるのではないかと思います。そういうかたには、この本に収録されている、水戸泉先生による国民新党の亀井静香代表のインタビューをぜひ読んで頂きたい。わたし、亀井代表に関して詳しいわけではないのですが、この文面からして、本当にご本人がざっくばらんに思うことを語られている内容がそのまま掲載されていると感じます。それで、あの、素直に感動しましたよ。帯の文句じゃないけど、萌えましたよ、亀井代表の心意気に。オタクじゃなくても、こういうことを云ってくれるひとがいるんだと、じんとしました。夢。そう、夢が必要なのです、人間は。
 表現規制に関して、マイノリティであるオタクに何が出来るかという問題についてわたしも考えたことがありますが、先の非実在青少年問題で、BL作家のひとりとして積極的に活動された水戸泉先生が、今回、こういう本を出したことも、その答えの一つなのかなとなんとなく感じました。そう、オタクの武器は、いつでも笑いと韜晦とファンタジー。正面からでなく、斜め上というかむしろ地下から。

 しかしなにより、そんな七面倒臭いことを考えなくとも、普通に楽しめる内容なので、少しでも興味があるかたには手にとって欲しいものです。もっと読みたいので、ぜひ売れてほしい。そしてブームになって政党たんオンリーイベントとか開催すればいい(本気)。そのときにはわたしは公安たん×共産党たんで(以下略)。その昔、政治家系で活動されていた同人作家さんが、一般の週刊誌で面白おかしく取り上げられ「漫画の世界でも政治家は大人気のようだ(笑)」的に書かれたのに対し「だったらコミケでブロック作れ」と書いていたのを思い出しましたが、いや、これがきっかけでもっと政治・政党系のジャンルが膨らめばいいなと本気で思います。なんだっていいじゃない、どんなものでも、萌えのひとことで飲み込んでいけるのがオタクの自由さのはず。そして、そのある意味怖いもの知らずな、萌だけをエネルギーに進んでいく勇気こそが、少数派に夢を与えるのです。本当に楽しい一冊でした。おすすめ。

|| 22:22 | comments (x) | trackback (x) | ||
「プリーズ、ジーヴス (1)」勝田文 (白泉社・花とゆめCOMICSスペシャル)
by くさてる

<amazon>

 P・G・ウッドハウスの執事ジーヴス物の漫画化です。いいですよこれは。シンプルな絵柄や展開は原作の雰囲気を壊さず、なによりジーヴスがイメージぴったりで…。あの後頭部が絵で表現されるとこんなに素敵…。入門書として、ぜひ!

|| 14:48 | comments (x) | trackback (x) | ||

CALENDAR
S M T W T F S
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31    
<<  2017 - 05  >>
ARCHIVES
LINKS
OTHERS
    処理時間 0.185903秒
POWERED BY
POWERED BY
ぶろぐん
DESIGN BY
ゲットネット