「WWEの独裁者ービンス・マクマホンとアメリカン・プロレスの真実」ショーン・アセール+マイク・ムーニハム(ベースボールマガジン社)



 WWEのオーナーであり支配者であるビンス・マクマホンについてのノン・フィクションです。ビジネスマンとしてのビンスの姿、WCWとの視聴率競争、WWEをたびたび襲ったスキャンダルとその対応について、事実を追うかたちで記述されていて、とても分かりやすかったです。わたしはこんな本を待っていた。ビンスから協力を得られなかったとあって、その語り口は伝聞に基づいていたり、推測もあったりですが、そうと分かるかたちで書かれているので文句ないです。それこそ、ラリー・フリントのようにビンス本人が自叙伝を書いたら面白いでしょうね。もちろん、この本だけでも、WWEという巨大産業をここまで創りあげたビンスというパワフルな人間像は読み取ることができます。やっぱり一番面白かったのは、WWEとWCWとの争いかな。
 ただ、これは、あくまでわたしの個人的感想なのですが、解説を書いてる日本のプロレス・ジャーナリストの文章は、正直、気持ちのいいものではありませんでした。わたしはこういうのがイヤだから、日本のプロレス雑誌とか日本で独自に出るWWE本を読む気がしないのです。原書に認識違いや間違いがあることを読者に告げるのはいいんですが、なにかと揚げ足取り的な表現が多くて、その本をここまで読んできた読者がそういう表現を目にしたときの不快感が分かってないんだなと思いました。内部の人間でなく、外部の人間がプロレス業界を描くことにも意味はあるでしょうに。書きかたなんでしょうけどね。

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