「女学校」岩井志麻子(中公文庫)



 先日の自分内岩井フィーバーのときに買い込んだ本がまだ何冊も残っています。なかには「なんかどれも同じ話なんじゃ…」と思う作品群もありはするのですが、この一冊は、一見そう思わせておいて、見事こちらを惑わせた幻想小説でありました。
親友と二人で良き女学校時代の思い出を語るうちに、語り手が迷い込んでいく夢と現実の混ざり合った世界。恐怖のなかで、何度も行われる現実の修正と夢の再生の世界のなか、彼女がゆっくりとたどりついた真実の舞台の正体は…という、お好きなかたにはたまらない(向いてないひとはきっとイライラする)内容であります。「ぼっけえ、きょうてえ」で有名になり、その後も奔放な私生活などがクローズアップされやすい作家さんですが、その芯には意外なほど真面目な文体と構成へのこだわりを伺うことができます。凝りすぎて読みにくいと思われることもあるかなあと感じるほどに。しかし、ゴシック・ロマンとはそういうものではないでしょうか。

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