「ルパン三世」原作誕生50周年記念作品「ルパンは今も燃えているか?」感想

 ルパン三世原作誕生50周年記念作品「ルパンは今も燃えているか?」の感想です。この作品は「ルパン三世PART5 Blu-ray&DVD Vol.1」のプレミアム先着購入特典として公開された作品となります。以下の文章は内容のネタバレを含みますので、それをご了承の上でご覧ください。では、どうぞ!

 まず画面に映るのは美しいモナコの風景と、レースを彩るグリッドガールたち。そしてレース開始をいまかいまかと待ち構える、レーシングドライバーたちです。すいません、この段階で遠目に夜光仮面の姿を発見したわたしは吹きました。このひとがしれっと参加してるの、笑うよ。

 そしていよいよ登場、ルパン三世。PART5の作画に慣れていると、ちょっと精悍な感じ……と思わせておいて、いきなりの笑顔に撃ち抜かれました。なんだもうしょっぱなから可愛いな!その様子を離れたところから五エ門と一緒に眺めている次元さんもお目目が見えて可愛かった。ルパンがレースに参加するとあって、当然そこにいる銭形警部のほかも、なんだか見覚えのある顔ばかり(だから夜光仮面は勘弁してくれないか……/笑)。

 ここで場面はレース前の回想へ。怪しい招待に乗ってレースに参加するというルパン。その意図をたずねる次元は、銃の分解掃除中という細かい描写が楽しいです。送られてきた招待状の封印がサソリであることから、次元と五エ門はそれがミスターXのたくらみであると勘づきます。それはもちろんルパンも承知のうえ。それでもこの誘いに乗る理由は、レース場の近くに、かつて奪い損ねた黄金像があるから、というものです。

 この場面「魔毛狂介を覚えているだろう?」のルパンの台詞に、きゃーっとなりました。この話、旧ルパン1話がベースになっているのはもちろんなのですが、ほかにも旧ルパンの要素があるなんて、ときめくじゃないですか。とか言ってたら、ちゃんと描きおろしで、黄金像を手に入れたときの次元とルパンの絵まで出て、もっとときめいた。なんだこれ、くそ可愛い。

 もちろん、お目当ては黄金像だからレースは途中で抜けるつもり、もし銭形が現れたら……というルパンに、「入れ替わってひきつけとけばいいんだろう?」って笑う次元がカッコいいですね。こちらもルパンに負けず精悍でセクシーな描線なんですよ。五エ門も、服装はPART4なんだけど、渋めのルックスです。そして、そんな三人とは離れた場所で、不二子ちゃんもまたレースの行方を見守っているのでした。

 そして、事前に公開されましたOPに入ります(URL)。思えば、その事前公開時でもわたしは夜光仮面が気になっていた。なんかこのひとだけ懐かしの70年代アニメでな……。も、もちろんルパンさんのカッコよさはいうまでもないんですけど!基本は横堀ルパンだけど、平山ルパンの可愛い感じもありますね。どっちもいいな。いろいろと怪しげな道具も繰り出されなんでもありなレースをくぐりぬけていくルパンですが、やはりその後ろに銭形警部は食らいついてくるのです。そしてここで題名。

 黄金像が隠されていると思しきスコーピオンの本拠地に一人乗り込む不二子ちゃん。不二子ちゃんも、PART5に比べるとずいぶん大人っぽく妖艶な感じですね。やっぱTVSPっぽい。黄金像を手にいれようとする不二子ですが、そこにはミスターXの罠が張られていて、そのまま囚われの身となってしまいます。

 一方、ルパンはライバルを蹴散らしてレースを独走、ついてくるのは銭形のみという状態です。「ルパンのいるところ銭形あり、逃がさんぞルパン!」という銭形の台詞は、いま思えば伏線でした。

 囚われの不二子は、とうとう台座に固定された状態で横たわることに。その前に現れたミスターXは、ルパンを消すまで死ぬつもりはない、と言い、壁の大画面に映ったレース風景を見ながら「思い出さんかね、このシチュエーション」とご満悦の様子です。それにこれも、と身動きできない不二子に迫るのは、マジックハンドの群れ。くすぐりマシーンだ!

 それでも不二子は「またこれ?」とあきれつつ「女が秘め事を抱くのは興味がある相手にだけよ」と笑います。ですが、ミスターエックスはべつになにかを吐かせようというわけではないようです。「期待してるのだよ、みんながな」とスイッチをオン。みんなってだれ、と不二子ちゃんでなくとも言いますが、まあわたしもそのひとりかな。しかし、なんといいますか、この2018年においても、このエロさと怪しさは健在という感じですね。それはもちろん、いくらでもあんなことやこんなことの描写もできるはずながら(ルパンファンはもうみんな大人だから!)、むしろコミカルに処理してくださってありがとう、という感じでした。

 しかしここで、あの魔毛狂介が登場するのです。タイムマシンの拡張機能を使い、ルパンをピンポイントでタイムスリップさせるとすごくカッコつけてるんだけど、不二子ちゃんはくすぐりマシーンの餌食になってるからそれどころではなかった(笑)。いらつきつつもタイムマシーンに乗り込む狂介。

 一方、レースは佳境を迎え、次元はルパンとの入れ替わりに向かいます。しかし、ルパンの車にはべったりと銭形の車がくっついていて、狂介の放ったタイムマシーンからのビームは銭形ごとルパンを消滅させてしまいます。なにが起こったかわからずに唖然とする次元、そして不二子。

 やがて現れたルパンは緑のジャケット姿でフィアットを運転しています。さすがに戸惑うルパン。しかし事態を把握するよりさきに、目の前にあのパイカルが現れます。ルパンは強敵に狙われていた過去に送り込まれたのでした。しかし、ここでパイカルを翻弄するルパンが可愛くてカッコよくて、なによりワルい感じで素敵です。やんちゃな笑顔がいいんだよなあ。そして、さすがのルパンは、パイカルの姿を見て今回の騒ぎにあの魔毛狂介がからんでいることの勘づきます。そんなパイカルとの死闘にも銭形が駆け付け、結果としてパイカルは銭形のせいで崖下へ。ひどい(笑)。

 ルパンはそのまま車を走らせますが、トンネルを抜けたあとは赤いジャケット姿に。しかも、到着した場所は、岩だらけの山の中。一方、くすぐりマシーンに責められていた不二子ちゃんですが、出力を上げすぎたくすぐりマシーンは壊れてしまいました。さすがに、詰めが甘い、とミスターエックスを笑う不二子。「過去に戻したからって、ルパンが一度倒した相手に負けるわけないわ」と言いますが、それを聞いた狂介は「時の流れにはいくつもの分かれ道があるのだ。同じことを繰り返したくとも、思うようにはいかない」と気になる言葉を口にします。

 やがて、赤いジャケットを着たルパンが目にすることになったのは、次元に待ちぼうけを食わされて岩に似顔絵を撃ち込んでいるストーンマンでした。レオンヒル!荒野に散ったコンバットマグナムですね、ここだけ新ルだ!(いや夜光仮面とかもそうですが)。そしてここのルパンは「あいにくだがいつまで待ってもあいつは来ねえぜ」ってワルサーを仕舞う姿がカッコいいです。時の流れに迷い込んでしまったとグチるルパンですが、そこにもまた銭形の姿が。「とっつあんまで仲良くついてこなくていいってのによ」と言いつつもどこか面白がっているような表情もいいですね。

 うまいとこ銭形をまいたと思ったところで、ルパンはストーンマンとの勝負に向かう次元と出会います。なんといってもふたりはまだ知り合う前なので、次元に車を強奪されそうになったルパンはそのままストーンマンのところまで一緒に行く流れとなります。そして、なんとストーンマンとの勝負で、次元は利き腕をやられてしまう結果に。なぜ!というか、歴史が変わるかどうかって危ぶむんなら連れてっちゃだめだよ、三世さん……。

 そしてその結果、モナコにいた現代の次元が消滅します。それをスクリーンで見て「うそ、次元も!」と動揺する不二子ちゃん。動揺する不二子ちゃん(大事なことなので二回言いました)。「過去が変われば現在も変わる……少なくともルパンの仲間としての次元はこの場から消えた」と笑う狂介。「やつをひとりにしてしまえばいくらでも倒すチャンスが広がる」と言うミスターX。そう、ルパンは、自分にとってターニングポイントになる時と場所に送り込まれたのです。

 その言葉の通り、次に緑ジャケットになったルパンが迷い込んだのは、昔の五エ門のアジト。そこに現れた五エ門に、ことのいきさつを説明します。が、五エ門はそこに現れた百地三太夫にみごとにそそのかされて、ルパンを切ろうとします。あわてて逃げ出したルパンは、こんどはプーンが不二子を拉致していたあの山荘の前にたどりつくのです。そしてそのころ、不二子ちゃんはくすぐりマシーンならぬぺろぺろマシーン(命名、とりこ。)の前でまた悲鳴を上げていました……。

 プーンのところから不二子を連れ出そうとするルパン。しかし、それを見とがめたプーンを撃ったのは、本来そうするはずの不二子ではなくルパンでした。その瞬間、消える現在の不二子。それを見た不二子は倒れたプーンに駆け寄り、ルパンを撃ったのです。「いつまでたってもわかりゃしねえ、女心ってやつはよ……」と倒れてうめくルパン。

 いや、あの、どうしてルパンは過去を変えようとしちゃうんですかというのがわたしの疑問でして。ホンマ三世さん空気読んで。さきほどのストーンマンのとこといい、ここといい、記憶のままの過去の流れに干渉しなかったらいいのに!自分が過去の流れにいることは分かっても、なにをすべきかすべきでないかということはいまいち把握してないのか、それとも勝手に体が動いちゃうのか。それもまあルパンらしいけど、結果がどうなるかということまでは、ルパンの理解を越えているということかな。気づいてー。

 そして場面はふたたび現在のモナコへ。ひとりベッドで目を覚ましたルパンは、枕元に黄金像があることを確認し、このためにモナコに来たんだと納得します。しかし、肩にはついさきほど不二子に撃たれた傷が。さらに、テレビをつければ「サムライアサシン」と呼ばれる殺し屋になっている五エ門の姿、それを追う銭形も映るのです。それを見て愕然としながら「思い出したぜ……おれは過去に送られ、あいつらとの関係も変えられちまったんだ」とつぶやくルパン。無精ひげが荒んだ感じで痛々しい……。

 やがて、とぼとぼと街を歩くルパンの前に現れたのは、利き腕をやられて物乞いとなった次元でした。これ、初見時はひどい!と悲鳴をあげたわたしですが、あの、ぶっちゃけ言いますと、物乞いとなった次元さんすごくかわいくないですか……。この情けない感じがわたしの性癖をクリーンヒット。なんだろう、かわいい……。この次元さんかわいい……。ていうか次元さんは物乞いなんかしなくても立派にヒモでいけるくらいにはいい男だと思うのですが、だめですか。

 それを見て唖然としているルパンの前に、いまやサムライアサシンである五エ門とその相棒となったと思しき不二子ちゃんが通り過ぎます。五エ門も無精ひげで荒んでますね。つまり、あのあと、不二子ちゃんと百地にいいように使われているということかな……。次元さんもそうでしたが、このふたりもルパンを見ても顔色ひとつ変えません。五エ門を追って駆けつけた銭形もまた。だれもルパンを覚えてないのです。

 そこに現れた魔毛狂介。「仲間を失ったおまえがここまでくすぶった燃えカスにようになるとは」とルパンに銃口を向けます。そのまま、ミスターXのもとにルパンをつれていく狂介。ルパンはさるぐつわをかまされて動けない状態です。それを見て大喜びするミスターXは、ルパンをいたぶりますが、その結果、皮が破れてそこから現れたのは魔毛狂介。そう、ルパンが狂介に変装していたのです。だれか来てくれ!とあわてるミスターXの前に現れたのは、なんと次元と五エ門。ふたりともこざっぱりとした、本来の姿です。ルパンは「元に戻してきただけさ、趣味悪く変えられた歴史をな」と笑います。ルパンは狂介からタイムマシンを奪ったのです。

 あのとき、現れた狂介に向かってワルサーを抜いたルパンですが、狂介の企みで、その弾倉は空でした。しかし、その狂介の頭の上に降りてきた存在がいました。五エ門です。「通りかかっただけだ」と五エ門は言いますが、迎えに来た不二子は「どうしたの?気になるやつがいるって……」といい、ルパンを見て「なんだかあたしも」とウィンクを贈るのです。なおかつ、次元もまた、その狂介の手から離れた拳銃を左手で使い、ルパンを危機から救います。「ただ、気になってな……」と言い残して。

 「まいったぜ、歴史が変わってもどこかでつながってるっていうのか、おれたちは……」と考えるルパンが素直に嬉しそう。そしてこれまた駆け付けた銭形から車を奪い(ここで「待てー!ルパン!」と叫んじゃって、そのことに動揺する銭形がいいですね)、狂介を追い詰め、タイムマシンのありかを手に入れたわけです。「やりなおしゃいいんだ、くすぶってねえで。盗まれたものを盗み返すまでよ」というときの表情がいい!

 というわけで、ミスターXと狂介を追い詰めたルパンですが、あっさりと二人を解放します。「助けてやるぜ、今度ばかりは。あらためて気づかせてくれたからな。仲間との絆ってやつを」と言い残し、その場を去る三人。ミスターXはすぐに反撃に出ようとしますが、なんとそこはジュラ紀のジャングルの中でした。あらかじめ、タイムマシンで運んでいたのです。

 それを見届けておいてタイムマシンに三人で乗り込みながら、「バッカだねー、ウソに決まってんじゃねえか」と笑うルパン。その言葉を聞いて「おぬし、さっきの言葉も嘘か」と顔色を変える五エ門は真面目で、「仲間との絆がどうとか」と続けてあげる次元は親切だ。そしてそれに直接には答えず「さーて帰るか、やり残したこともあるからな」と笑うルパンは男前。

 そして現在に戻ってきたルパン。やり残したことはレースで優勝することだったみたいです。それに付き合いつつ笑う次元と五エ門。そして黄金像を手に入れた不二子ちゃんも現れます。もちろん、それを追いかける銭形も。それにあきれつつ「でもとっつあんはこれでなきゃな」と笑うルパンで、幕でした。

 というわけで、原作誕生50周年記念「ルパンは今も燃えているか?」の感想でした。モンキーパンチ先生総監督ということで、どんな内容になるのかなと期待してたのですが、ひとことで言えば、面白かったです!全編に旧ルメインで、これまでのルパンへのリスペクトとくすぐりがあって楽しかったし、内容もまとまりあって、作画も素敵でした。横堀さんの作画は、男性キャラがちょっと大人っぽくてセクシーなんですよね。

 まあ、個人的には、やはり過去に干渉しまくって歴史を変える三世さんはちょっと落ち着いたほうがいいのではと思ったのですが、そのおかげであんなに可愛い物乞い次元さんを見ることができたなら良しとするか(笑)。ジゲフジ要素は皆無というか、むしろ旧ルベースなだけにゴエフジでしたな。まあ、それはそれでよし。

 あと、ミスターXを前に「仲間との絆」云々とかいうのはルパンらしくないなーと思ったんですが、そこもちゃんと嘘かホントか分からない、シャレた感じで処理されてよかった。そういうとこがルパンらしい。そしてなにもかもが振り出しに戻って、またルパン一味と銭形警部の追っかけっこが始まるという流れになるのもいいな。やはり、ルパン三世はこういうのがいいですよ。かれらは変わらないの。

 PART5のようなTVシリーズ、LUPINTHEⅢRDのような劇場版、こういう変化球的な短編、といろいろな形で現れるルパンワールド。今回のこの作品もルパンファンであるわたしが無邪気にキャッキャと楽しめる内容で嬉しかったです。またこういう企画が楽しめたら幸せですね!

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