ルパン三世PART6第18話「フェイクが嘘を呼ぶ 前篇」の感想です。公式によるあらすじはこちら(URL) 。以下の感想は、完全にネタバレですので、大丈夫な方のみご覧ください。では、どうぞ!
花屋で花の世話をしているマティアの元に現れたのは、老人の変装をしたルパンでした。しかしルパンは、病院を退院したマティアが、これから旅に出てそのまま店には戻らないつもりだと聞かされ、驚きます。
アジトに戻っても浮かない顔をしているルパンに「悲しむことはない。ゆく河の流れは絶えずして、しかも元の水にあらず」と声をかける五エ門。「べつに悲しんでねえから!」と苛立つルパンでしたが、次元に「律儀に花、買い続けてたのになあ。こっちはさんざん付き合わされて引退したら花屋で働けそうだぜ」と言われ「はっ、おまえこないだ水やりながら話しかけてたの、おれ知ってんだぞ」と言い返します。むくれて新聞を顔にかけて寝ころぶ次元。
しかし、その新聞に目をやったルパンの顔色が変わります。〝コトルニカ共和国と自身の転換点。活躍の裏に行方知れずの家庭教師〟という見出しとともに写っているのは、政治家と思しき女性の姿。ルパンはその新聞を手に取り「ちょっくら出かけるぜ」と歩き出します。それじゃ煙草、そば粉、とお使いを頼もうとした次元と五エ門ですが、ルパンの行き先はコトルニカでした。アバンはここまで。
ルパンは、ニットキャップと眼鏡をかけた若者に変装し、新聞に出ていた女性を観察しています。その女性議員、ヘイゼルが、かつて自分の家庭教師だった女性〝トモエ〟のゆくえを探していると知ったからでした。次元と五エ門もコルトニカに同行したものの、ルパンは手伝わなくていいと単独で行動している様子。しかし、ヘイゼルを見張っていたルパンの目に飛び込んできたのは、あのマティアの姿でした。
偶然の再会を祝い、ケバブサンドを食べるルパンとマティア。コトルニカは政情不安定で、一人旅には向いていない国ですが、コトルニカに来たかったマティアは情勢が変わるのを待っていたらいつになっても無理だと今回やってきたのでした。「肝がすわってんなあ」と笑うルパンですが、マティアはマティアで、ルパンがここでなにをするのかに興味津々な様子。「今回はそういうんじゃないの、プライベート」とかわしつつ「マティアが寂しいなら考えちゃう」とマティアに合わせて旅の予定を変えると申し出ます。いったんは「お気になさらず」と答えたマティアでしたが、結局はルパンにボディガードしてもらうことに。
一方、舌鋒激しく他党の議員と議論しているヘイゼル。その活躍は彼女の所属している党にも高く評価されています。しかし、街に貼られた彼女のポスターにはスプレーで×印があり、渋滞の隙を狙ってパパラッチに写真を撮られたりと、その周辺は穏やかではなさそうです。
自宅に帰ったヘイゼル。それを待ち構えていたのはルパンでした。冷静なヘイゼルを見てルパンは「声ひとつあげないとはたいしたもんだ」と声をかけます。しかしヘイゼルはあくまで冷静にルパンに何の用かと問うのでした。この国は現在、レアアースの対外政策を巡り、二大政党がにらみ合いの真っ最中であり、推進派のヘイゼルを憎む人間は多いのです。冷蔵庫から銃を取り出し、ルパンに向けるヘイゼル。一瞬、緊張が走りますが、ルパンは自分が来たのはあくまで〝トモエ〟のことを知るためだと伝えます。
やがて、ディップした野菜をつまみながら、語り合うルパンとヘイゼル。トモエのことをルパンに教えて、自分に何のメリットがあるのか、というヘイゼルは「ルパン三世にひとつ貸し、ということでいいかしら」と笑います。ヘイゼルがトモエと出会ったのは14,5年前。親を早くに亡くしたヘイゼルは叔父の元で暮らしていましたが、高等教育を受けることはあきらめざるを得ない身の上でした。そこに、叔父の知人の紹介でやってきた家庭教師がトモエでした。ヘイゼルはそこで政治を学んだのです。
「先生は勉強以外のときもずっと傍らにいてくれた。〝教え子はみんなわたしのこどもだから〟って」というヘイゼルの言葉に、自身の過去を思い出すルパン。そのままヘイゼルの元を去ろうとしますが、そこに窓ガラスを割ってUSBが飛び込んできます。まともに額にそれを食らったルパンはあわてて窓から外をのぞきますが、そこをパパラッチが撮影されてしまうことに。
ヘイゼルの部屋に投げ入れられたUSBには、処刑の場にヘイゼルが同席している動画が入っていました。いわゆるディープフェイクではありますが、証明するまでに世論は大きく傾くのは必至でした。これまでにも汚れ仕事をやってきたヘイゼルは「いずれわたしは罰を受ける。でもそれはこの国が進むべき道を創ってから……邪魔者は必ず潰す」と誓います。真剣なその眼差しを見守るルパン。「ぜったい忘れたら駄目。揺るがない魂、それだけは」というヘイゼルの言葉。それはトモエの言葉なのかもしれません。Aパートはここまで。
ここまでの感想ですが、マティアちゃんラスボス説がまたわたしのなかで有力なものに。初登場の頃の可憐で無垢な感じが薄れていって、かわりにもっと大胆で行動的になっていってますよね。ルパンにぐいぐいいくあたり、わたしは嫌いではありません。小生意気な子どもや実力を伴わない若い娘がルパンにまとわりつくパターンは苦手なんだけど、マティアちゃん、あきらかにそういう娘じゃないものな……。あと、ルパンのこと、異性として見てる雰囲気がまったくしない。
そしてルパンがマティアちゃんに寄せる関心がどういうものなのか気になるところ。だってルパンのストライクゾーンからいけば、マティアちゃん若すぎるでしょ(笑)。そういう手を出したいとかメロメロとかいうのとは違うんじゃないかな。そういう振りをしてる気はするけど。じゃあカタギの女の子を守りたいとかでもない感じがする。ルパンもまた、マティアになにかを感じてるんじゃないかな……。
最初のアジトでの場面が楽しかったですね。水仕事してる五エ門もいいし、ちゃんと花の世話してた次元さんもいい。水やりながら花に話かけてたって、すごく目に浮かぶんだけど、どうしたらいいの(笑)。そんなことを言われて、照れ隠しに寝ころぶ次元に目を向けないままただ笑う五エ門も可愛い。
そして、舞台はコトルニカなんですが、最初、ヘイゼルとやりあってた議員があまりに名探偵コナンで笑いました。目暮警部が出張してきたのかと思った(笑)。そして、ヘイゼルとルパンのやりとりもじつにクールでよかった。2010年代以降のルパンは、美人を見ても極端にデレデレしなくなりましたが、それはそういうときにすればいい話なので……。でも、ヘイゼルに「声ひとつあげないとは」と話かけるあたりがくそイケメンでどうしようかと思った。PART6のルパンさまはあのグレーの瞳が強調されてて、ほんとうにイケメン。他のキャラクターがのきなみトムスのモブ顔のときでも、最高に顔面が良いので、ルパンファンのわたしは満足です。
しかし、ヘイゼルのまえではトモエは普通に家庭教師だったみたいですね。盗術専門を教えるひとではなかったわけだ。しかし、高等教育を受けられなかったヘイゼルに一流の専門家をつけるってそのほうが学費よりよっぽど金がかかる気がするんですが、それはどうなんでしょう。トモエは金で動く人ではなく、なにかの目的があったということなんだろうか。メルセデスを盗賊のリーダーにしたように、ヘイゼルを政治家に育てることに、なにかの意図があるんだろうか……。
Bパート。ヘイゼルのアパートにルパンが現れたことが新聞の記事となり、ルパンはマティアにあきれられています。「ものすごーく誤解してると思うよ!」と弁解に必死なルパンですが、ヘイゼルの方はそれどころでなく、同僚のセリムにも攻め立てられて疲労困憊といった様子です。そこに、やってきたのは、銭形警部。アリーと八咫烏も連れています。
銭形の尋問にも、ルパンには昨夜部屋に忍び込まれ、拳銃で追い払っただけだと説明するヘイゼル。盗まれたものはなにもない、と聞いて納得がいかない銭形たち。ヘイゼルは現在レアアースの問題に関わっているということで、八咫烏とアリーはその方面を探るよう、銭形に命じられます。銭形は、直接、ヘイゼルを張ることに決めました。
ここ、やたくんがアリーに向かって先輩ツラなのがあいかわらず面白かった。アリーはアリーでズレた推理を働かせ、やたくんもどうかなあとか言ってて、いい組み合わせだと思いました。あんがいこの三人でふつうにいちばん大変なのは銭形さんかもしれない。しかし、アリーもやたくんも自分がいちばんちゃんとしないとな!って思ってそう。頑張って銭形さん。
市場を歩くルパンとマティア。どうやらマティアはルパンに革のブレスレットを買ってもらったようです。ルパンは「そんな地味なのでいいのか?」といいますが、マティアに「あの議員さんにはもっといいものあげたのかしら?」と返され「いや、シックでいいセンス、パパびっくり!」とあわてます。が、マティアはピンと来ない様子。「その変装なら〝お兄ちゃん〟がいいかな」と笑います。
ここ、見てて、うわ、と思いました。Bパートの冒頭で、マティアはあきらかにヘイゼルのところに行ったルパンを責めてますよね。ヤキモチのように。でもわたしにはルパンとマティアのあいだには恋愛関係があるようには思えないんです。ルパンが手を出そうとしてマティアがかわしてるわけでもない、なのにマティアはそれを責め、ルパンは言い訳してる。
で、この〝お兄ちゃん〟でピンときた。ルパンとマティアのあいだにあるのは、これ、あきらかに兄と妹のあいだの空気です。一般的に、妹は兄が女性とどうこうなるのを厳しい目でみるものだし、兄は永遠に妹には頭が上がらず勝てないものではないですか。ルパンは(たぶん)気がついてないけど!
そして、そこでルパンは、昨夜ヘイゼルのアパートの前から立ち去った車を見かけます。すぐにその場にいた子供からスケートボードを借り、マティアを抱き上げたままボードを滑らせ、そのあとを追うのでした。ここ、楽しい場面だけど、マティアを抱き上げて連れていく意味とは、と思いました(笑)。でもそれもまたルパンらしいな。マティアのボディガード役なんだから、置いていくわけにもいかなかったのかな? しかしここのルパンさまは変装しているとはいえ、すごくカッコ良くて可愛くて、素敵だった。わたしのなかのリンファちゃんがウチワを振った。
ふたりがたどりついたのは、いつもよりはちょっとランクが上のケバブ料理店。食事を楽しむマティアですが、ルパンはそこであきらかに人相が悪い男たちとオーナーが話している場面を目撃します。しかし、そこに偶然現れたのは、八咫烏くんとアリー。マティアとは先日の事件で顔見知りになっているのです。あせるルパンですが、そのまま同席することに。
和やかに食事をする4人。アリーはマティアのブレスレットを誉めます。いいなあ、とアリーに、「彼氏さんにお願いしてみたら?」と振るルパン。とたんにあわてて「いや、ぼくは、そういうんじゃ……っ!」と赤くなる八咫烏くんとアリー。マティアはそんな二人の様子を見ながら、アリーと連絡先を交換しようと声をかけます。
ヤタくんに春が来た(驚愕)。あ、いえ、やたくんも男の子ですし、アリーちゃんも可愛いし、若い二人が一緒にいればそんな流れになるのもべつにおかしなことではありません。が、長年のやたくんファンのわたしとしては、おかしい、この流れならば「そういうんじゃなくて」とやたくんがあせって言った瞬間に、アリーちゃんが「ホント、マジありえないですからー」とげらげら笑うんじゃないのかと思ってしまいました(わたし、やたくんのファンです)。でも、思い返せば、アリーは銭形警部にもぽっとなってた子なので、ああいう男子が好みなのかもしれない。うん、でもアリー、やたくんが銭形警部になるにはあと二十年くらい必要だよ……。そして、アリーと連絡先を交換しようと持ち掛けるマティアちゃんもなんだかたくらみがありそうですね。
一方、銭形警部は、ドーナツとミルクを飲みながら、ひとりヘイゼルのアパートを見張っているのでした。日本だったらあんパンですね。ヤタくんとアリーちゃんはなんか盛り上がってケバブ料理とか食べてるのに可哀想……。しかし後半ではそれどころじゃなく気の毒になるのですが……。
そして、ルパンは、あの車を手掛かりに、ヘイゼルのディープフェイクを作成している男たちのアジトに乗り込みます。そこにはヘイゼルを支えていたはずのあのセリムの姿もありました。かれらはパパラッチの写真を使って、よりリアルなフェイクを創ろうとしていたのです。ルパンはかれらをパチンコでボコボコにした後、証拠品を持ってヘイゼルの元に向かいます。
ルパンがすべてのデータを持ってきたにもかかわらず、ヘイゼルは「急にいろいろ分からなくなって……自分が何をしているのか、いままでのわたしが、ほんとうに正しかったのか」と浮かない顔です。そして、去ろうとするルパンに、トモエが〝教え子〟という意味ではなく、こどもがいると言っていたこと、きれいな箱を見ながら、これはその子の親であるためのものだと言っていたと伝えます。ルパンとヘイゼルのあいだには、これで貸し借りはなくなりました。立場があるヘイゼルは、もう二度とここにはこないで、とルパンに願い、ルパンも約束します。
翌日、空港で別れるルパンとマティア。ルパンは飛行機で旅立ち、マティアはそれを見送ります。飛行機の中で〝ようやくおまえのルーツが分かるのかと思ったよ〟という次元の言葉を思い出すルパン。「まさかな……」とつぶやくその真意は分かりません。
夕方。銭形はヘイゼルの姿を求めてオフィスに向かいますが、すでにヘイゼルはアパートメントに帰ったあとでした。窓が開いて風が吹き込んでいます。ヘイゼルのアパートにたどりついた銭形ですが、その姿は例のパパラッチに撮られることに。銭形はそれに気づかないまま、ヘイゼルの部屋を訪れますが、そこで目にしたのは、撃たれて絶命していると思しきヘイゼルの姿でした。そして、駆け付けた警官に捕らえられてしまう銭形……。
次回予告。「殺人容疑で捕らえられる銭形。真実は闇のなか。求めればまた新たな闇を引き寄せる」という不二子のナレーション。独房の銭形とやたとアリー、アジトのルパン一味が映ります。次回第19話は「フェイクが嘘を呼ぶ 後篇」。「ま、銭形なら出てこなくてもいいけどね」って不二子ちゃんさすが不二子ちゃん。
というわけで18話でした。謎めいた展開と話の流れ自体が面白くてあっというまだった。メインはマティアとルパン、ヘイゼルのからみとはいえ、次元と五エ門の存在感もあったし(不二子ちゃんは欠席でしたが)、やたくんとアリーという新展開もあった(笑)。
でもまあ、ここまできたら、マティアがトモエの娘でラスボスなんじゃないのとわたしは思うんですが、大ハズレだったらお許しください。わたしは第1クールで、ホレイショ=ワトソン説を唱えたとんだおまぬけさんでもありますので……。でも、それでルパンとマティアの兄妹な雰囲気と、マティアがちょこちょこ見せるあの不穏な感じに説明がつくと思うんですよね。
もちろん、ルパンと兄妹といっても、それはあくまで疑似的なもので、血のつながりはないのですが、ルパンもそれは薄々感じてるんじゃないの? だから、いくらかわいい女の子とは言え、手を出すようなわけでもない相手をほっとけずにいたんじゃないの? とか勝手に予想しています。当たったらほめてください。外れたら、「落ち込むなよ」とぽんと肩を叩いてね!
次回は、もちろん銭形さんの冤罪を晴らすためにルパン一味が頑張るのではと思うのですが、やたくんもちょっと頑張ってくれたら、嬉しいな! たとえその頑張りが何の役にも立たなくても、それはそれでやたくんって感じがするからいいです。そして、ヘイゼルを殺したのは誰なのか。マティアちゃんだったらびっくりだな……。
それにしても最初は「ルパンの母親?」とちょっと引いてしまった第2クールの連続話ですが、わたしはけっこう好きです。正直言って、ネタが最初から割れてた第1クールよりよっぽど謎だし、お話自体がミステリアスで、面白いの。ゲストキャラもバラエティに富んでるし、みんないい女なのだな。あと、第1クールのルパンは、一味にもいろいろ隠してたけど、このルパンは一味のみんなにはわりと正直でいる気がして、そこが嬉しい。全体的な評価はもちろん最終回待ちだけど、この流れ、楽しみに見ていきたいと思います。
そして、こんな風に楽しみに見ながらも、あれこれ感想を書くことを続けられるのは、いつも感想を読んで下さるみなさまのおかげです。拍手などいつもありがとうございます。励まされています。誰かに読まれると思うからこそ書き続けることができているのだと思います。今回は連続話で、さすがに一日で書くのはちょっと疲れましたが、感想をまとめるのは楽しかった。読んで下さったかたにもすこしでも楽しんで頂けるものであれば幸いです、これからも頑張りますので、どうぞよろしくお願いします!