ルパン三世ベストセレクション第15位「ルパンは二度死ぬ」感想

 「おやすみ、ピューマ。ルパンの愛とともに」(cv山田康雄)。

 ルパン三世ベストセレクション、第15位は、PART2第32話「ルパンは二度死ぬ」でした!いくつかあるルパンの死を描いたお話のなかでも初期の名作ですね。いつものように、ベストセレクションが放送されていない地域に住まうわたくしが、エア感想を書かせて頂きます。ネタバレありなのでお気をつけください。あらすじはこちら→(URL)。

 マイアミを舞台にした今作、まずはルパンと次元のドライブで始まります。わたしはここのなんとも呑気なふたりの会話が好きです。ふたりとも、パームビーチの海岸でなにをなさっておられるのか。そして、まさかの銭形警部と不二子ちゃんのペアを見て動揺するルパン(次元さんが気づいた瞬間にウィンクする銭形警部がお茶目!)。そんなルパンに対して「峰不二子なんてどうせそんな女だ。平気でおれたちを売る女なんだよ」という次元さんの台詞がただの事実なのがいいですね。次元さんは不二子ちゃんの本性をちゃんと知ってるからね!

 そしてそこから要人暗殺のプロフェッショナル、ピューマの紹介に流れるあたりの展開がスマートで分かりやすいです(ところで次元さんの使う「犯罪ファイル」のキーボード、押したキーがそのまま押されっぱなしになってますが大丈夫ですか)。本気でヤバい相手に狙われていると分かっていながらも、ルパンのひょうひょうとした姿がとてもいいなあ。「要人暗殺のプロフェッショナルか……そんなやつに狙われたんじゃ、夜もおちおち眠れないからな……起きてよーっと!」とかときめくわこんなもん。

 そんなルパンを見て、勝手にそわそわ心配しちゃう次元と五ェ門はほんとうに良いひとです(物語の後半になるともっとそう思いますね……)。朝から肉とワインの食事とは豪勢ながら、それも満足に食べられないような状況にあって、とうとう覚悟を決めたルパンは棺桶と墓碑銘を注文し、ひとりピューマとの対決に向かい、地中に隠れていたピューマの銃弾を受け、海中に没します。

 そんなルパンを探してボートで絶叫する次元と五ェ門。あの、我ながらほんとうにひとでなしだなと思うんですが、ここらあたり、わたしはなんど見ても笑っちゃって。だって、波間にぷかぷか浮いてるルパンってあれぜったいひっくりかえしたらへのへのもへじ描いてるやつやん……何回見たか分からないパターンやん……。しかし、そうではなく、ルパンは死を宣告され、取り乱す次元と五ェ門の場面になります。そして、我ながらほんとうに人でなしだと思うんですが(二回目)、ここで次元と五ェ門がおいおい泣きながら銃を乱射したり(また泣いてるのに正確なんだ)シュロの木を斬りまくったりする場面、わたしはなんど見ても笑います。ほんとうにごめんなさい。 ルパンが死んでないという前提はもちろんなんですが、いや、あなたたちそういうキャラではないだろう……とツッコンじゃうんだよなあ。

 それに比して、とっつあんの涙はわりとすんなり受け入れられます。いつもどおり、からかわれてるんだろうと手錠を振り回し、「御用だ、御用だ、御用……」という声がどんどんちいさくなっていくあたりとか、ボロ泣きしてルパンの顔に頬擦りするのもとっつあんならば納得いく。だからむしろ、留置所に入れられた銭形警部に襟首をつかまれてさんざんなじられても、ただ無言で立ち尽くし、帽子に手をやるしかない次元さんの場面のほうがずっとらしいと思うんですよね。

 らしいといえば、ルパンのキャラは一貫してらしいですね。台詞がとてもいい。じつに軽やかで、シリアスなところからおトボケまで、幅が広いんですが、どれもこれもルパンの肉声と言う感じがします。自分の墓碑銘をもじったピューマへのはなむけの言葉とか、すごくうまい。冒頭の次元との会話から始まって、最強の暗殺者相手にもひるむことなく余裕をもって相手を観察し、次元と五ェ門のふたりをもあざむいて種明かしのときには「足はあるんだ、ほれ!」と見せちゃう。こういうとこすっごくルパン。でも五ェ門は許せん、と斬りかけた。そこで青くなっちゃうあたりも含めてルパン。やだもうこのひと可愛い!(わたしは三世さんファンです)

 不二子ちゃんもとても美しいです。いかにも新ルパン初期っぽい北原作画の美人さんですね。冒頭の婦人警官から喪服姿、いつもらしい緑のシャツにオリーブのタイトスカート姿まで、ファッションもそれぞれ決まってます。なにより、ピューマからルパンを守るために銭形の協力を仰ぐってけなげじゃないですか。同じようにルパンに最強の殺し屋が迫る傑作といえばPART2第66話「射殺命令!」ですが(わたしはこれが大好きです)(実は今回、題名を知った瞬間、ルパンが殺し屋に狙われるという展開だけを思い出して勘違いし、ウキウキと「射殺命令!」の感想を書きかけました)、その話でも銭形警部に頼ってましたね。軽んじているようでいて、あんがい本心では頼りにしているところがあるのかしら。ルパンの愛を込めたせっかくの墓碑銘も「なんちゃって」で台無しになっちゃってむくれるあたりも可愛いな。

 とにかく、全体的にテンポよくシリアスもギャグも配分良くまとまっているので、深く考えずに楽しめる一作だと思います。繰り返しになりますが、ルパンのキャラクターがこれぞルパンと言う感じなんですよね。カッコ良いところからおちゃらけたところ、頭脳派なところ、アクション、不二子ちゃんにゾッコンなとこ、最後の遠慮のない敵の葬りかた、そんな様々な面からこぼれ出る、ルパンの魅力がぎゅっと濃縮された話ですよね。三世さんファンのわたしに文句がありましょうか。新ルパンの前半の傑作のひとつだと思います。

 さて、もう15位まで来ちゃいました。そろそろ折り返し地点も見えてきましたが、まだまだ名作傑作が上げられてませんよね。ここまで来たら順位関係なく、まさにベストセレクションとして楽しんでいきたいと思います。そして、折り返すころには、エアでなくリアルで見たいですね……。感想もこうやって楽しく書いていますので、よろしければまた読んでやってください。ありがとうございました!