ルパン三世PART5第8話「黒い手帳は誰の手に」感想

 ルパン三世PART5第8話「黒い手帳は誰の手に」の感想です。公式サイトによるあらすじはこちら(URL)。(わたしはHuluにて視聴しています)以下の感想は、完全にネタバレですので、大丈夫な方のみご覧ください。どうぞ!

 今回のアバンは、前回のラストの場面から。ガストンの墓の前で、ニセモノのガストンから渡された聖書の小口にある「Albelt」(アルベール)という名前を見つめるルパン。しかし、なにかの気配に気づき銃を抜いたところ、そこにいたのはさきほどの酒場にいた初老の男でした。安堵して息を吐くルパンでしたが、その様子を見た次元の目は帽子の下で鋭く光ります。アバンはここまで。

 場面は変わり、ルパンは最初に訪れた酒場で、墓地で会った初老の男と酒を酌み交わします。すこし離れたところで、自分は(おそらく)ウィスキーを傾ける次元の立ち位置がらしいですね。ルパンの様子をずっと気にしてるんだな。

 そして、前回、ルパンに煮え湯を飲まされたギョーム局長の命を受けたものが、ルパンの居場所を見つけたことが分かります。どうやら、かれらはあの初老の男のことも知っている様子でした。一方、そんなことを知る由もないルパンはあの黒い手帳をテーブルの上に置いたまま、かれと会話を始めます。

 かれはガストンとは呑み友達だったと言い、ルパンにガストンとの関係をたずねます。それに対し「若え頃にちィとばかりものを教わった仲ってとこさ」とルパンはうそぶき「ま、サヨナラだけが人生である。ならばせめてこの杯を受けよって、聖書にも書いてあるしな」と言ってのけます。え、それはどう考えても井伏鱒二が訳した漢詩のあれですよね。

 もちろん、そんな聖句は聞いたこともないという初老の男にルパンはあの聖書を取り出し、男の前に一瞬だけ頁を開いて突きつけて、すぐに閉じます。すると男は「いまのページにそんなことは書いてなかったぞ」と、ルパンの出鱈目を見抜くのでした。しかしそれは男の能力を確認するためのルパンの悪戯でした。男は、目にしたものを写真のように記憶に移しとる、瞬間記憶能力の持ち主だったのです。その名もカミーユ・バルドー。かれはその能力で腕利きの捜査官として鳴らした人物でした。

 そこで、酒場の電話が鳴ります。女主人が出ると、そこから聞こえてきたのはあのガストンの声でした。ルパンはその電話を取り「つまらねえイタズラはやめな」といいますが、電話の主はあくまでガストンとして話を続けます。依頼の品が手元に届くのを楽しみにしている、報酬はすでに渡してある、と。そこでルパンの頭にあの聖書の小口に記された名前が浮かびます。アルベールだな、と確認するルパンですが「そう思うなら、自分の目で確かめに来ればいい、待っているよ、ルパン」と電話の主は答え、通話は終わります。

 電話の主はやはりアルベールでした。そして、かれのもとに部下がギョーム局長の差し金で、スパイ崩れの始末屋が動き出したことを知らせに来ます。それに対し「心配いらんさ。ルパンは逃げ回るのは得意な男だ」とうそぶくアルベール。この場面のアルベールなんかすごい。ルパンとの通話を終えた瞬間の微笑みが、部下がやってきたとたんにビジネスモードに変わり、しかしまたルパンのことを思う瞬間に、笑みに戻るというこの変化。このひと、なんだろうね。

 電話を切ったあと、むっつりと黙り込むルパン。その様子を見守る次元でしたが、いち早く異変に気付きます。ルパンたちのいる酒場に向かって、銃弾が撃ち込まれたのでした。続いてマシンガンも撃ち込まれ、ルパンたちはカミーユの車に乗って逃げ出すことになります。ここで、あのモノクルを使い、さっとスマートキーを解除するシステム使うルパンさまカッコいいです。

 ロケット弾(?)も使う相手の物騒さに、もとは潜入捜査官だったが裏の世界に染まったジョゼという男が相手だと見抜くカミーユ。ルパンは五ェ門に連絡を取ろうとしますが、滝行の最中で着信に気づいた五ェ門はスマホの操作がうまくいかず、電話に出られません。最初見たときは、手が濡れてるからうまくいかないのかなと思ったんだけど、ちゃんと見たら、明らかに触れる場所が分かっていない。やばい、いま五ェ門にかつてない親近感を感じた。今回の話の中では数少ないなごみポイントでしたね。「アナクロ野郎だからな」という次元さんの台詞が利いてます。

 続いて、ルパンの運転する車の前に立ちふさがった二丁拳銃の仮面の男。わたし、この顔どっかで見たことある気がするんですけど、原作に出てましたっけ……?車をガードレールにぶつけ、動けなくなったルパンが、次元と顔を見合わせ「同時に行くぞ、ひのふのみ!」ってカッコいいんだけど、なごんだ。ワンツースリーじゃないんだ。ふたりは同時に仮面の男に狙いをつけますが、男は弾丸も弾き飛ばし、ルパンに襲いかかります。それでも、次元とルパンは男を追いつめますが、もうすこしのところで、仮面の男はルパンを蹴り倒します。危ういところで、仮面の男を撃ち、崖に落としたのはカミーユの放った銃弾でした。しかし、同時に仮面の男の放った銃弾も、カミーユの身体を撃ち抜いていたのです。

 この場面。アクションも勢いあってカッコイイんですけど、紅葉しているのにうっそうとしている、フランスの森の中の雰囲気がすごく良いなあと思いました。仮面の男の人間離れした動きに目が行きがちだけど、あの緊迫した状況のなかで仮面の男の銃弾をすっとよけている次元さんの動きもすごかったよ……。そしてルパンはここでも正攻法なんだなあと思いました。前回の話でも思ったけど、あくまで生身の身体で勝負している感じがする。おかしなガジェットは(盗み関係以外)使わないのです。そしてAパートはここまで。なんかあっというまでした。

 森の中で火を焚いて、地に横たわるカミーユを見守るルパンたち。ささやかなことですが、次元とルパン、ふたりの上着がそれぞれカミーユの枕と身体を覆うものとして使われている描写が、わたしの胸を突きました……。

 ルパンは、黒い手帳が処分される前にその中身をあの記憶力で移しとり、それを基にガストンが完璧なニセモノを作り上げたことまでは察しをつけていました。カミーユは、黒い手帳に書かれていたことは、いつか状況が許せばなんらかの形で公開されるべきものだと考えて複製したものの、黒い手帳が複製されたことを嗅ぎつけたギョーム局長に、手帳を渡せと迫られたこと、その追及から逃れるために、絶対に手が出せないところ(つまりミスターBのところですね)に隠したことを教えたのです。

 カミーユにその手帳をどうするつもりかと聞かれたルパンは「どうもしねえよ。まあ、なんかに使うとすりゃあ、おれにこんなやっかいなもんをつかませた、アルベールの面をはたくくらいかねえ」とつぶやきます。その返答を聞いたカミーユは笑い、そのまま息を引き取るのです。

 ひとの死をまえにしたときの、ルパンと次元の態度、短い描写ですけど、それぞれにらしさが出ていてぐっときました。次元が帽子を取り、弔意を現す場面はいつみてもせつない。そしてルパンの瞳は常ならず真剣に光ります。これからどうするのかという次元の問いに「逢いに行くさ。この世でいちばん逢いたくない野郎にな」と答えるその後姿は、どこか張りつめたようでした。

 場面は変わり、変装したルパンたちは検問も楽にパスしてパリに戻ります。しかしここで警察が確認用に使用していた二人の写真がキメキメのアー写っぽいいつものプロフィール写真(PART4のやつですね)なのが地味におかしかった。ふたりともあんまり捕まらないから、マグショットがないのかな。

 次元は検問がぬるいことを不審に思いますが、一方のルパンはなんだかあの張りつめた雰囲気のままです。それをおもんばかって「ルパン、こいつは罠だ。それが分からねえおめえじゃねえだろ」と言いますが、ルパンは「そいつを逆手にとって一泡吹かせようってのが分からねえおまえじゃねえだろ」と、とりつくしまもありません。もうここがスリリングだった。コバキヨさんの声が、すごいの。いきりたつルパンをなだめようとして優しいの。なのに、ルパンはそれが分かっていて、無視してるの。いい年した男ふたりの(でもちょっとだけ次元が年上なんだよね)、真剣な喧嘩が始まる前の空気が伝わってくるこのやりとりときたら。

 ふたりとも、おたがいに揉めるべき相手はいまとなりにいる相手じゃないことは分かっている。だから次元さんはルパンをなだめにかかるわけです。「いつものおまえだったら、おれも止めやしねえよ。だが、いまのおまえはいつものおまえじゃねえ。若え頃に戻ったみたいに、妙に熱くなりやがって」と。でも、この台詞を聞いたときの三世さんの、一瞬だけぎゅっと目を閉じる仕草ときたら!それ以上聞きたくないし、言わせたくないんだよね。次元の言うことにも一理ある、それは分かっているはずだもの。だから次元が続いてアルベールの名前を出したとたんに、アクセル踏みこんじゃう。話は終わりだとクラクションで知らせるわけです。乙女か(すいませんつい思わず)。

 場面は変わり、フランス警視庁内部の女子トーク。アルベールを狙っていると思しき女子に、他の子が、アルベールにはティッキーという長いつきあいの相手がいると教えます。もちろん、その女の子は情報を探るルパンでした。アルベールの彼氏はティッキー・パスコーというカメラマンだと知り「野郎、男の趣味は変わってねえな」となぜか腹立たし気なルパンさん。ていうか、やっぱり、アルベールの恋人は同性だったんだね。

 一方、ひとりアジトのソファで寝転ぶ次元さんも腹立たし気です。ルパンは単独で動いてるわけです。「逢いたくないなら逢いに行かなきゃいいじゃねえか」とぼやきつつ、とうとう我慢できなくなったように(ここすっごく可愛い)自分のケータイでなにやらメッセージを打ちこみます。次元さんはガラケーだから、フリック入力じゃないのがなんとなく可愛い。そのメッセージを受け取ったのは、どうやら五ェ門。フランスの田舎町を歩きながら、物珍しさに寄ってきたこどもたちにメールを開いてもらい「めるしー」とひとこと。ほんとう、今回の話は三世さんが厳しいから、五ェ門がなごませてくれて助かったよ……。

 夜になり、自分の部屋に戻ってきたアルベール(普通にバケットとか紙袋で持ってたから、生活感に驚いた)。それを迎えるティッキー。ワイン瓶を見て「張り込んだね、今日はなにかの記念日だったっけ?」とウィンクします。仲睦まじいカップルだな……と思っていたのですが、どうやらこのティッキーも怪しい雰囲気。アルベールの上着にある銃を入れ替え、メッセージを渡します。そのメッセージの通り、サンマルタンホテルに向かうアルベール。地下の駐車場でその車を見つけ、微笑む警備員姿のルパン。やがて、アルベールはこんどはテレヌブ橋で、というメッセージを受け取ります。「ロマンチストなところは変わってないな、ルパン」と笑うアルベール。なんかこのふたり、似たようなこと言いあってますね……。

 そしてとうとう、テレヌブ橋で相対するふたり。ガストンの声で「待ちかねたよルパン。わたしが依頼したものは持ってきてくれただろうね」と笑うアルベール。ルパンは苛立ちを隠せずに、それでも黒い手帳をかざします。自分にこんな仕事をさせた真意をアルベールに問うルパン。するとアルベールは「汚れ仕事は汚れた手にやらせればいい、違うか?」とルパンを挑発します。一瞬顔色を変えるルパンですが、すぐに平静を取り戻し「変わってねえな。おまえはそういうところでしくじるんだよ」と笑います。とうとう銃を向け合うふたり。

 「盗みはできないが、人を撃つのはできるってか。そりゃまたずいぶんキレイなおててだこと」と笑うルパンですが、アルベールは「こそ泥を撃つのに容赦はいらんさ」と引き金を引きます。腹を撃たれ、愕然と膝をつくルパン。銃を取り換えたことは、アルベールにはお見通しだったのでした。「おまえはそういうところでしくじるのさ」と笑うアルベール。「この距離で心臓を外したのはわざとだ。なぜだかわかるか、おれがおまえに勝つところを見せてやるためさ」と言い残し、黒い手帳とともに立ち去ろうとするアルベール。薄れゆく視界のなかで、懸命にスイッチを押すルパンでしたが、爆発はアルベールの車ではなく、そばの川で起きます。車に仕掛けておいた爆弾の存在もまた、アルベールは見抜いていたのでした。もはやなすすべもなく、血だまりに伏すルパン。

 予告。担当は五ェ門です。銀行から大金を盗み出すルパン(おそらくは過去)、バイクに二人乗りしてパリの空に飛ぶ次元とルパン。次々に現れる刺客。たぶん過去の、なんともいえない(ごめんなさい……でもなんかロビンフッドみたいなの……)衣装のルパンと、はっきりは分からないけど、これマントみたいなの着てない?って感じのアルベール、などの場面が映り、なかなか派手な展開になりそうです。そんな第9話のタイトルは「“ルパン”を棄てた男」でした。すごいタイトルだ。

 というわけで第8話でした。もう、この感想を書くために見直したラスト数分が辛くて辛くて。わたし、三世さんのファンだから、こういうとこほんと辛い。削られる。わたしでも、これ、アルベールは完全に分かってるでしょという状況に、冷静さを欠いて次元も連れずに突っ走って飛び込むルパンなんて、見ててどれだけしんどいか。ここから始まる逆転劇のために必要な流れとはいえ、これまでのエピソードではルパンはひたすら有能で完璧だったから、うわーんって感じで見ましたよ。でも、そんなルパンをしのぐ存在でなきゃ、ライバルたるアルベールの意味もないんだよね……。分かってる、分かってるんだけどさあ……(涙)。

 それにしても、こんなに次の週が待ち遠しいルパンなんていつ以来よ、という気分です。ルパンは死なないし、本当の意味でひどい目には合わないし、最終的に勝利するのはルパンだと分かっているから、もう一刻も早くその姿を見せて!という気分でいっぱいです。分かりやすく言うと、脚本の雑破業さんの手のひらの上で踊らされてます!(ダンシングベイビーの雰囲気で)(ちょっとキモい)

 しかし、アルベールが持っていったあの手帳はホンモノなのかなあ。あんがいニセモノ?あれで、あそこまでやったのはあえてのルパンのお芝居だったりしたら惚れちゃうけど、どうだろう。どっちでも驚かない。ニセモノなら、あの殺し屋軍団の登場も納得だし、ホンモノはアルベールが手に入れたけど、さらにルパンを追いつめるため、ギョーム局長にはルパンがホンモノを持ってる、と入れ知恵したなら、やっぱり殺し屋軍団が登場するのに不自然さはないしね。

 そして次のタイトルは「“ルパン”を棄てた男」。これも意味深ですよね。わたしとしては、アルベールはやっぱりルパンの親戚筋で、いっしょにアルセーヌ・ルパンの血をひくものとしてやっていこうゼ!みたいな感じでコンビを組んでたんだけど、アルベールがやがてルパンと同じ道を歩むのを拒んで、結果的に裏切り、まさに「ルパン」という名前を棄てたのかなあなんて想像をしてしまうのですが。そして、それにはアルベールの同性の恋人(ティッキーじゃない過去の男)も絡んでるのかな?だからこそのルパンの男の趣味云々の台詞かなあと思ったりもします。一方、ルパンはあんな感じでおじいちゃん絡みとなるとマジになるひとですから、そんなアルベールの所業はぜったいに許されるものではなかった、とか。

 でも、そうやってふたりの過去が次回明かされるのなら、この連続話は4話くらいで終わるかなという気もします。アルベールはこの1エピソードだけで消えるひとではないと思うから、ここでルパンといったんは痛み分けで、つぎにまた別のエピソードを挟んだうえで、最終エピソードで再び対決とか、そういうのかなと予想もします。なんだかいろいろ考えちゃうなあ……。

 しかしながらこのエピソードはよく考えたらまだ2話目なのでした。銭形も不二子ちゃんも出ていない(五ェ門はなごみ役として出た)。そう思ったら、情報量が多くて、濃い話ですよね。アルベールのキャラ立ちのおかげかもしれませんが、このカッコ良くて強くて頭が切れて、イケメンの彼氏までいる最高眼鏡キャラのアルベールの鼻を見事にあかしてみせるルパン三世を、それこそ、あの黒い手帳でアルベールの横っ面をはたいて見せるルパンを、わたしは見たいです。そしてなにげにこのエピソード2、次元さんのキャラ立ちもなかなかだと思うのです。そうだよね、アルベールが過去のルパンの相棒(?)なら、次元さんはいまのルパンの相棒なんだから。そしてきっと、ルパンは過去よりもいまのほうがずっとカッコよくて、幸せで、最高のはずなんだから。そんないまのルパンが過去のしがらみをふっとばしてくれるといいな。今後の展開が楽しみです。

 というわけで、第8話の感想でした。読んで頂ければお分かりのように、わたしは毎回、PART5をハラハラドキドキしながら、わくわくと見守っています。すごく楽しんでいます。そんな気持ちが伝わる感想が描けたらいいなと思ってますので、おなじようにPART5を楽しんでいるかたに読んで頂ければとても嬉しいです。拍手を押してくださるかた、ありがとうございます。なによりの励みを頂いています。メッセージもいつでも歓迎です。どうぞこれからもよろしくお願いします、ありがとうございました!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です