ルパン三世PART5第19話「7.62mmのミラージュ」感想

 ルパン三世PART5第19話「7.62mmのミラージュ」の感想です。公式サイトによるあらすじはこちら(URL) 。(わたしはhuluにて視聴しています)以下の感想は、完全にネタバレですので、大丈夫な方のみご覧ください。どうぞ!

 今回のアバンは、ふたりの男の会話で幕を開けます。吹きすさぶ風に古めかしい風見鶏が回っている殺風景な谷底の岩場と、それに似合わない高級ブランデーのボトルとチェスのボード。それを挟んで対峙するふたりは、見知らぬ老人とルパン三世です。

 「……いい勝負だね」と老人が駒を動かせば、「どっちが?」とルパンは答え、老人は「両方さ」と応じ、不敵な笑みを浮かべて「楽しいねえ」と言い放ちます。ルパンもまたそれに負けない挑戦的な表情で笑い、ふたりの間には砂混じりの風が吹きすさびます。その中に、老人の「生きてるって、感じがするねえ」という言葉が響いて、アバンは終了。

 場面は移り、数日前の北アフリカに。いつもの調子で、カフェで美人のウェイトレスをからかっているルパンですが、それを狙うスナイパーの姿が。やがて、狙撃の音が鳴り響き、倒れるウェイトレスに顔色を変えて駆け寄るルパン……。

 場面は変わり、その事件を知らせるニュースを眺める次元の姿が映ります。今回はジャックダニエルがお好みのようです。ウェイトレスは軽傷だったものの「狙っていたウェイトレスが狙われたってか……しゃれにもなんねえな」という次元のコメントに、「えらい迷惑かけちまった……あーもう口説けねえなあ」とルパンはちょっとしょげ気味。ソファに倒れこむ仕草が可愛い。

 狙撃手が残した薬莢には「d4」という文字が刻まれていました。ルパンによれば、それはチェスの初手で、つまりジルベルスタインなる大金持ちからの誘いだということなのです。その男のことは次元も知っているみたいですが、細かく説明されることはありません。そして、ルパンはジルベルスタインの挑発に乗る気はない様子。次元もそれにことさら異議は唱えません。ここの帽子を押さえて、「じゃ、おれも、寝る」とつぶやく仕草が、さりげないけど、とっても次元らしいな……。

 しかし、狙撃事件はその後も続き、とうとうルパンもジルベルスタインの誘いに乗ることに心を決めました。そのことを、満足そうに語るジルベルスタイン。「おまえさんには期待してるよ」と声をかけるその相手とは……。

 やがて、ルパンは切り開かれた岩場の谷底に姿を現します。かれが向かう先に用意されているには、チェス盤とブランデー、そしてジルベルスタインそのひとです。どうやら二人が会うのは三年ぶりらしく、ルパンは「こんどの暇つぶしはチェスってわけか」と笑います。

 ここ、ルパンを「ルパンの坊や」と呼ぶジルベルスタインと、それを聞いても怒るわけでもなく「ご健勝でなにより」と上着を開き、銃を持っていないことを示すルパン、という短い描写だけで、なんとなくこのふたりの関係が分かるのがいいですね。互角レベルの「暇つぶし」の勝負をしたことがあるふたりなんだろうなーと思えます。

 ふたりの勝負の賭け金は百万ユーロ(日本円にして一億二千万円以上!)。それを聞いてもひるむことないルパンは、ただ不敵に笑っておいて、ふっと上を見ます。その視線の先にあるのは、切り立った岩場。それを見て「頼んだぜ、相棒」とルパンは内心でつぶやきます。うわ、こんなキラーフレーズがこんな序盤で来ちゃったよ。

 そして場面は回想シーンへ。狙撃事件が続いていたころ、ジルベルスタインの動きを調べていたルパンは“ミラージュ”というあだ名のスナイパーにたどり着きます。その名前を聞いて顔色を変える次元。いや正確には後ろ姿しか映ってないし、びくっとなって起き上がる姿が映っているだけなんですが、きっと顔色は変わっていたはず。

 次元によれば、ミラージュは元傭兵のスナイパーで、一緒に戦ったこともあるそうです(PARTⅢの傭兵経験設定が生きてるんですね)。「ルパン、ミラージュは凄腕だ。のこのこと行ったら、確実に撃ち殺されるぞ」と警告する次元ですが、ルパンは「大丈夫さ」と気にした様子もなくビールの栓を抜きます。「こっちはもーっと凄腕のスナイパーに背中を任せるからな」と。ここ、ルパンは次元に背を向けてるくせに、視線と眉の動きだけで、ね、相棒♡って言ってる感じがすごくかわいい。次元が断わるわけはないと思ってるんだな。

 しかし次元は「そいつを探すくらいは手伝うぜ」と気の無い様子でソファに戻っちゃうので、ルパンはあわてて「おいおい、そりゃないぜ、次元!ほら、洗面所に行って鏡を見てらっしゃい、ヒゲヅラのすてきなおっさ……おにいさんが、もー」とすがります。それに「おい、言い直すな」と納得していない様子の次元。しかし、ビールを差し出したルパンの「ダメ?」に、くっと観念し、ビールを受け取り「言っとくが、バカンスにライフルは持ってきてねえぞ」とつぶやくのです。

 ……あーもう!って感じで萌えました。わたしにとってPART5屈指のルパンと次元の名場面です。このふたりのこういう会話、たまらないですよねー。定番のお約束に見えて退屈な繰り返しじゃないこの絶妙な台詞のやりとりよ。これまで次元はこのルパンの「ダメ?」に何回ほだされて、そしてひどい目にあってきたんだろう……(笑)。で、きっと次元もそのことはようく分かってるんですよね!もうほんとうに可愛いふたりだ。

 やがて場面は再び、ルパンとジルベルスタインが対峙する谷場へ。「どこだ……」スコープ越しに相手の姿を探す次元。それはいつものスーツにボルサリーノではなく、(おそらく)スナイパーとしての最適な服装になっていると思われます。公式Twitterさまが前もって公開した設定画をご参照ください(URL)。カッコいい!やがて、ミラージュと思しき姿を見つける次元。しかし「いや、ミラージュはあんなミスはしない」と思い直します。

 そしてまた場面は、チェスボードを挟み対峙するジルベルスタインとルパンへ。岩場にかいま見えた光を見て、そこに次元の存在を認めて笑うルパンの笑いが、悪い感じなのがすごくいいんですよ。で、その横顔が、真剣な次元の横顔に切り替わるのもいい(次元のここの息の吐き具合がセクシーだと思いませんかどうですか)。やがて放たれる銃弾。しかし、次元の弾に倒れたのは人形。その人形を動かしていた紐を持っていた人間こそ、あのミラージュで、こんどはミラージュから放たれた弾が次元を狙います。それを危うい位置で避けつつも、なぜか次元の顔には笑みが。「そうだ、ミラージュ。最初のダンスの相手は、おれだ!」と次元は言い、ふたりの果し合いが始まるのです。やだもう、次元さんのカッコよさが無限大。

 というか、これ、わたしにとって、PART5の次元さんの台詞でいまんとこナンバーワンの名セリフですよ。次元のしゃれっ気と、好敵手を前にしたときの躍るような心持ちと、この段階ではいまだ明らかになっていないミラージュとの因縁まで匂わせる、最高の台詞じゃないですか。コバキヨさん最高。その場で三回は聞き直した。

 一方、鳴り響く銃弾の音を聞きながら、チェスを始めるルパンとジルベルスタイン。「おれが目の前で死ぬのを、そんなに見たいってか?……でもおれたちは簡単には負けないぜ」と言うルパン。ここ、うわー、おれ「たち」なんだと思いましたね!しかしジルベルスタインは臆した様子もなく「きみの頭が目の前で吹き飛ぶのが楽しみでたまらない……スイカみたいに」と笑います。それを聞いたルパンもまた、クールに「懲りないねえ」と答えるのです。イカれた億万長者とぶっ飛んだ大泥棒のやりとりです。

 ミラージュと次元は互いの位置を測りつつ対峙しますが、ジルベルスタインは、そこで初めてミラージュが女であることをルパンに明かします(その台詞と共にミラージュを覆うマントが広がり、その女性らしい体の線が露になる演出がスマートですね)。それはさすがに初耳だったらしいルパンを見て、ジルベルスタインは「いけないなあ、友達に隠し事は」と言うのですが、ルパンは「おれに取られるとでも思ったんじゃねえか」とあくまで軽く答えます。そんな会話のあいだにも、チェスの手はどんどん進んでいくのですが、これ、チェスが分かる人なら面白い勝負をしているのかなあ。

 ジルベルスタインはルパンに、ミラージュの過去を語ります。内戦で親を目の前で殺され難民キャンプに入ったものの、そのキャンプがゲリラに襲われ、そこを守るために死んだ兵の狙撃銃を手に取ったこと、父親譲りの良いハンターだったこと、やがて敵からも味方からも恐れられるひとかどのスナイパーに成長し、ミラージュ=蜃気楼というあだ名を得たこと、内戦終結後は生きるために傭兵となったこと……。

 しかし、そんなジルベルスタインの話を聞いたルパンは「じいさん、いちばん大切な情報が抜けてるぜ」と笑い「……いい女だったか?」と問うのです。ジルベルスタインはそれを聞いて大笑いし「ああ、おまえさんの大好きな峰不二子よりもね」と答えるのですが、それを聞いたルパンは「そうかい」と薄く笑うのみ。その反応に不審そうな、ジルベルスタインの表情も気にしていないようです。

 わたしはここ、わーって感じなんですけど!わたしが思うに、そんなつらい過去を持つ凄腕のスナイパー、なおかついい女だというミラージュ。そのミラージュと過去に知り合っていたにもかかわらず、女であることを自分に知らせなかった次元の心持ちまで忖度して、ルパンは笑ったんじゃないかなと思うんですよね。それはもちろん、いい女だというならば真っ先に浮かぶのは、色恋の話かもしれないけれど、それに限定せずとも、まあ野暮なことは詮索しねえよ、相棒、的な笑みなんじゃないかとわたしは受け取りました。やだもうルパンカッコいい……。

 そして、次元とミラージュの戦いは、どんどん激しさを増していきます。焼夷徹甲弾なんて、人間相手に使うものじゃない弾までミラージュは使い、次元を追い詰めていくのです。やがて、腕を負傷する次元。しかしそれでもひるむことはなく、ミラージュに狙いをつけ「もらった」と引き金を引きます。しかし、その弾も間一髪で避けたミラージュ。向こうが動きを読んでいた、と勘づいた次元は、自分を監視するドローンに気づき、「たく、モダンなものを使いやがって」と、まったくモダンとは言い難いリヴォルバーであるマグナムでドローンを破壊します。ライフルを使いつつも、いつものようにマグナムも持っているのですね。ここ、伏線でした。

 そしてここで、ジルベルスタインの「……いい勝負だねえ」という言葉が聞かれます。アバンの場面ですね。そのまま、ジルベンスタインの「生きてるって、感じがするねえ」というセリフまで続いて、Aパートが終了です。

 アイキャッチは、単発話といえばこのかた、さいとー栄先生による描きおろしイラストです(URL)。 今回は、次元メインのクールなもの。ほんとうに、DVDのブックレットとかに再録してください……(何度でも願う)。

 Bパートは、傷ついた腕を包帯で縛りながら、過去を回想する次元で始まります。

 「おれよりさきに辞めるとはね」と言う次元の視線の先にいるのは、ライフルを背負った美しい女性。膨らんだ自分の腹部をなでて「新しい戦いを始めるためさ。わくわくしてるんだよ」と笑います。光る緑の瞳を見れば、これがミラージュだと分かります。「やっていけるのか」とやさしく問う次元に「心配ありがとう、次元。でもね、大丈夫。だれかを守るための戦いなら、実力以上の力が出せるもんさ」とミラージュは答えます。それにうなづきつつも「おれは本気でだれかを守ったことが無いから、よく分からないな」と次元は言いますが、ミラージュは微笑んで、首を横に振ります。

 ああ、すいません。ここ、ぜんぶ描写したうえで自分の感想という名の妄想を語ろうかと思ったんですが、ここまでの30秒くらいで拾うところ多すぎて、ちょっとここで語らせてください。とりあえず、ミラージュも美しいんだけど、それ以上に続いて映った若いころのオールバック次元のカッコ良さに倒れました。だれこのイケメン、こんなイケメン大介、わたしの脳内にしか存在しないと思ってたのに。ラピュタは本当にあったんだ!(錯乱)

 また、わたしはずっとミラージュって次元とどうだったのかな、恋人だったり男と女の関係だったりしたのかな?と思ってたんですが、ここでいきなりミラージュのお腹が大きかったので、その線は無いな、と思い直しました。いや、一瞬、次元さんの子供かと思って死ぬほど驚いたけど、さすがにそれならこんなに淡々と送り出さないだろうと自分を取り戻しました。ないわ。そこはかとない好意とか恋愛まではいかない、それとなく好いた感じはあったかもだけど。

 むしろ、そんなものより、たがいの腕を認めた良きライバル、あるいは男と女だからこそ、張り合うことなく認め合えた存在なのかな。そして「おれは本気でだれかを守ったことが無いから、よく分からないな」の次元の台詞、これもすごいんだけど、それを聞いて首を横に振ることができるミラージュは、次元はまだそんな存在に出会ってないだけよ、と言いたいのか、あるいは、そんなことはない、次元はだれかを守る男だと言いたいのか……。あるいはミラージュを守ったことがあるのかもしれないですね。

 ここで、ミラージュが背負うライフルを「重いだろう……おれがもらってやろうか?」という次元のやさしさよ。身重のミラージュにそんなものは似つかわしくないと思ったのかな。そのライフルは、おそらくはミラージュのこれまでのつらい思い出の象徴でもあるはずだから。しかしミラージュは一瞬だけ厳しい顔になり「これはあたしが背負っていくよ」と言うのです。次元もまたそれにうなずきます。そのミラージュの覚悟を認めるかのように。

 そしてミラージュは「あたしが生き残ったのは、あんたが敵側にいなかったからだよ、次元。あんたと戦わなくてすんで、ほっとしてるんだ」と言います。それに「そりゃあ、こっちの台詞だ」と答える次元。そしてミラージュは両手を広げます。それに戸惑うことなく、やさしく笑ったまま、別れの抱擁をかわすふたり。「……もう、会うことはないだろうね」「……ああ、それがいい」とつぶやきながら。

 ……いやもう。わたしはこれまでずっとPART5大好きだけど、次元さんの活躍が少ないのがさみしいとか次元回早よとかあれこれ言ってきたんですが、全24話も押し迫った19話で、こんないい場面をいただけるとは!待った甲斐がありました。わたしは時雨沢先生に菓子折りでも贈ればいいのでしょうか(待て)。

 女がらみだけど、悲恋ではない、過去ものだけど暗い裏切りではない、次元回のポイントを押さえつつも、まったくテンプレではないこの展開。これたまらないですよ。次元さんがカッコいいの……ほんとうにカッコいいの……。次元回は次元をカッコよく描いてナンボ派のわたしにはたまらないです。PART5史上どころか、これまでの次元回のなかでも指折りの、素晴らしくカッコいい次元ではないでしょうか。この抱擁の時の表情とか、ためらわない感じとか、実に大人の男でたまらないです。ああもう次元、そういうとこだ!(動揺)。

 そんな過去から現実へと戻りながら、次元は「何を守りたくて、戻ってきたんだ、ミラージュ」とつぶやきます。次元とミラージュの戦いは、どんどん殺気迫り、その距離もどんどん近いものになっていき、このアクションのカッコよさも素晴らしい。この弾がすれ違う描写とアクションよ!わたしはミリタリー方面詳しくないので、あれこれ言えないのがはがゆいんですが、それでもこのボルトアクション式のライフルでのふたりの動きは本当にいちいちカッコいい。

 一方、ルパンとジルベルスタインのチェス勝負も続いています。「……チェックメイトかな」とルパンがつぶやき、ジルベルスタインがそれに「まだだよ」と答えると、ルパンは「上の二人だよ」と言います。弾の音が止まったのです。

 息を弾ませつつ、水を飲み「まったく、禁煙には最高だぜ」という次元。その余裕もないということでしょうね。そしてまたミラージュも玉の汗を浮かべ、狙いを定めているうちに、なにかを思いついたようでした。あえて岩の壁を狙い、それを次元の上に落とそうというのです。大音量と共に崩れる岩壁。舞い上がる次元の帽子を見たミラージュは、もはや邪魔されることはないと、本来の目標である、ルパンに狙いを定めます。

 しかし、ライフルの引き金を引いたまさにそのときでした。さきほど崩れた岩壁の土埃のなかから、まっすぐに飛んできた銃弾が、ミラージュのライフルのボルトを破壊したのです。ミラージュのライフルから放たれた弾は狙いをそれて地面に跳ね、ジルベルスタインの膝を撃ちます。そのまま地面に崩れ落ちるジルベルスタイン。「運が無かったな、じいさん……」とルパンはネクタイをほどきながら、そんなジルベルスタインに歩み寄ります。

 その様子を見て愕然としたミラージュは、ライフルを構えようとしますが、すでにボルトを破壊されたライフルは使いものになりません。ルパンはジルベルスタインに応急処置を施しますが、ジルベルスタインは痛みにわめきつつも、チェスの手を指すことを止めませんでした。やがて勝負はつき、ルパンは「……降参だぜ、じいさん」と笑うのでした。

 そこにライフルを構えて襲い掛かってきたミラージュ。しかしルパンは軽くその体を投げて事なきを得ます。駆け付けた次元がルパンと共に見たのは、ミラージュではなく、ミラージュによく似た若い女の姿でした。次元はそれに驚きますが、女もまた、次元の無事を見て「なぜ……岩が直撃したはずなのに」と言うのでした。

 しかし、次元はそれに「撃ってやったぜ」と答えるのです。そう、自分の真上に落ちてきた岩を、次元は己のマグナムで撃つことで、方向を変えてその身を守ったのでした。いやそれはもちろん、いかなマグナムの威力でも巨大な岩を動かすのは無理が無いかと思わないでもないのですが、これはむしろ、やはり次元にはマグナム!という最後の締め的な様式美のようなものでもあると思いますので、わたし的には問題ありません。きっと見かけよりずっと軽い岩だったんだよ!

 女はミラージュの娘でした。ミラージュ自身は病気で、母を欧州の病院に行かせるために、この取引に乗ったのでした。それを聞き「ふざけるな、ミラージュはおまえを生み育てるために戦場を去った。そんなおまえが金のためにのこのこ戦場に出てきたっていうのか?」と怒る次元。しかし、娘も一歩も引きません。母は平和な時でも戦いかたを教えてくれた、と。そのまっすぐな視線と涙に次元は言葉を失いますが、ルパンがそこで割り込みます。ジルベルスタインとのチェス勝負に負けた金を振り込む、と。「憐憫なんかじゃないぜ」という言葉がいいですね。

 やがて次元は、ミラージュの娘に、このさき、どんなに努力したところで母親のようなスナイパーにはなれないと告げ「……蜃気楼を追いかけるのはもうやめるんだ」と言うのでした。そしてライフルを取り上げ「おふくろさんには捨てたと言いな……きっと、分かってくれる」と。この最後の部分のコバキヨさんの声の演技が、静かで、大げさじゃなくて、とてもいい……。

 そしてすべてが終わった夕日の中で、語り合うルパンと次元。じいさんをほうっておいていいのか、と言う次元に(死んでなかったんですね)、「元気になったら、また遊んでやるさ」と答えるルパン。「おれはごめんだぜ。寿命がたっぷり五年は縮んだ」と煙草に火をつけ、深々と吸い込む次元。ようやく吸えたね……。「助かったぜ、次元。ありがとよ」と笑うルパンのこのイケメンさよ。そして、この言葉で、次元は前半の「ダメ?」の元を取ったようなものなのだな、きっと。

 そんなルパンの礼の言葉に直接には返事せず、ミラージュの娘の話を始める次元がらしいです。あのまま続けていたら……という次元の言葉に「続けていたら?」と問うときの、ルパンはなんでこんなにイケメンなんですか。夕日に照らされて信じられないほどカッコいいうえに、このやさしくてやわらかい表情はなに。ミラージュとその娘のことが次元に与えた影響をなんとなくおもんばかってるのかなとか思うと、ほんとうどうしてくれようかなこのおサルさんという気分になりますね!

 それはそのまま、ライフルを背負った次元に向ける「重そうだな、持ってやろうか」という台詞につながるやさしさですね。かつてミラージュに向けて次元が言ったのと同じやさしさ。そしてもちろん、次元もまたミラージュと同じように「……これは、おれが背負っていくよ」と答えるのでした。そんなものを背負ったまま、本気でだれかを守ってるんですよね、いまの次元は。だから強いの。過去と現在がそうと語られないまま、視聴者のなかでだけ、みごとにリンクするこの展開、まさにお見事のひとことです。

 次回予告。担当は次元です。ルパンたちが狙っていた獲物が、ほかの泥棒に先を越されてしまった、なんとその泥棒の正体は銭形警部!しかもあきれるほど手馴れている(笑)。ワイワイしてて、すごく楽しそう。そんな次回、第20話のタイトルは「怪盗銭形」でした!

 というわけで、待ってましたのPART5、次元回でした。ほんとうに待った……。というか、PART5、連続話があって新キャラを全面に押し出す関係からか、どうしてもレギュラーである次元さんの出番が控えめな気がしてて、そこだけがやきもきポイントでした。個人的にはあと3話くらい次元回があってもいいんですが、そういうわけにもいかない(笑)。

 まあ、それでも待った甲斐はあったというか、文句なしの次元回で、しかもルパン三世としてもいい話ですごく嬉しかったです。時雨沢先生のお宅はどちらの方面でしょうか。しばらく足を向けて寝れない気分です。ほんとうにカッコいい次元(そしてルパン)をありがとうございます……!

 作品内容そのものの感想は、前述の通りなので繰り返しませんが、やっぱり「ルパン三世」って卑怯というか、レギュラーキャラの一面をこういう感じで掘り下げるだけでも、これだけたまらないってすごいですよね。しかも、この話、ストーリー自体はまさに30分一話完結にふさわしいシンプルさなのに、あれこれ拾っていけばいくらでも楽しめる。わたしはミリタリー系弱いのであれなんですが、そこらへんがお好きなかたにはさらにたまらないところがあるのでは。

 でも、唯一不満があるとすれば、時雨沢先生、これ一本はもったいないというか、あと何本か書いていただけませんかというあたり(笑)。だって、ルパンと次元のやりとりが素晴らしくてですね、この感じで描かれる五エ門や不二子ちゃん、銭形だって見たくなるじゃないですか。わたし、PART5の単発話を担当した脚本家のなかで、もう何本か書いてほしいのってこれまでは圧倒的に酒向さんだったんですが(理由は言わなくても分かりますね)、時雨沢先生もぜひ……。

 そして次回は、とうとう出た西田シャトナーさん担当で「怪盗銭形」ですよ。このタイトル、見た瞬間の「傑作に決まってる感」は「十三代目石川五エ門散財ス」に並びますね、個人的に。次元さんも待ちましたが、銭形回も待ちましたね。あの、そろそろ、ヤタくんも活躍、とか……しないかな、やっぱり。基本的に防寒服なんだけど、ちらっと映った五エ門と次元の服の色を見るに、新ルリスペクト回っぽいですね。楽しみ!

 それにしても、PART5は本当に楽しくて見ていて嬉しいです。何回も言ってますが、自分がリアルタイムでルパンを好きな時期に製作されている公式がこんなに自分好みってなんの奇跡かと思います。そしてどんどん好きになる。わたしは「ルパン三世」が大好きです。

 そんな思いでいつもこんな感想を書いております。今回もまた、基本的にミラージュと次元の対決がメインだから、そんなに細かく拾うところないだろうとか思ってたら、またいつもと変わらない長さになりました。いつもこんな感想を読んでくださって拍手まで押してくださる方、本当にありがたいです。自分の確認と楽しみのために書いている、といえばまあそうなんですが、それでも、こんなにPART5大好きなわたしの文章を面白いと思ってくださったり、共感していただけたりするのかなーと思うと、やっぱりこれからも書いていこうと思うのです。残り話数も少なくなってきましたが、この勢いで最終回まで行けたらと思います。というわけで、これからもどうぞよろしくお願いします、ありがとうございました!

 ↓以下、追記です(2018.8.17)

  放送終了後に、テレコム公式Twitterさまが掲載していた浄園Pのコメント(URL)、「次元&ミラージュの回想シーン、甘いセリフに清志さんが大照れしていたのを思い出します。」を読んでしばらく首をひねりました。甘いセリフってどこですか。思わずもういちど確認しちゃったよ。どこだ。わたしが考えるに、本命「……ああ、それがいい」(一応抱擁シーンだし)(清志さんは声だけなんだけど)、次点「おれは本気でだれかを守ったことが無いから、よく分からないな」(らしい長台詞としたらこれ?)、大穴「やっていけるのか」(次元の目がやさしい)(だから清志さんは声だけだって)。そもそもああいう雰囲気なだけでも次元には珍しい場面なので、そこがポイントだったのかもしれないですね。照れる清志さんを想像したら萌えるけど!

 公式Twitterと言えば、大河内さんの一連のスレッド(URL)、脚本の時雨沢先生の一連のツイート(URL)も楽しかったです。こういう裏話というか作り手の生の声をリアルタイムで知ることができるのは、ネットならではですね。そして個人的には過去にルパンのノヴェライズも手掛けておられた、リビングレジェンド辻真先先生も、この話を誉めておられたのがすごくときめいた(URL)。辻先生はPART5の感想もリアルタイムで発信されていて、ほんとうにカッコいい86歳だと思います。

 あ、あとこの話には関係ないんだけど、先日、PART5の1話から見直していて気づいたことがあります。1話のEDだと、あのリクヴィールのアジトのカフェの女店主は「未亡人」表記なんですよね。でも、18話では、あのカフェは若夫婦がやってることになってる。18話から1話の間に、悲しい事件でもあったのかな……。
 

2件のコメント

  1. とりこ。さん、こんばんは。
    とりこ。さんが追記された部分。
    ですよね!!私も、コバキヨさんが甘いセリフに大照れ…はて?と思いました!
    私が思うに、「重いだろう…おれがもらってやろうか?」のくだりかなぁと。
    初見では気がつかなかったんですが、ここ、身重の身体とも銃とも取れる言い方してませんか?まぁ、ミラージュは銃と判断したみたいですが。一人で抱えるには「重いだろう?」だからおれがもらってやる。みたいな。深読みし過ぎですか?(笑)
    でも、深読みして、悶絶して、でもそれすら楽しい(笑)それにしても、この19話、本当に次元さんかっこいいの極みでしたね。若かりし次元さんも素敵だったー♡

    1. >すーさま
      こんにちは。コメントありがとうございます♡
      ですよねー(笑)甘い台詞、はて……?と思って、あれこれ考えたんですが、すーさんの説も有力ですね。次元さんなりの遠回しの告白がみごとスルーされてたらそれはそれで、なんというか、次元さんぽくもあります(笑)。本当にこの19話の次元さん、過去も現在も素敵でした。待っただけある完成度で、とても良かったですね!
      この調子で最終回まで楽しみたいと思います。これからもよろしくお願いします!

すー へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です