ルパン三世PART6第23話「愛しの魔女の記憶」の感想です。公式によるあらすじはこちら(URL) 。以下の感想は、完全にネタバレですので、大丈夫な方のみご覧ください。では、どうぞ!
アバンは無し。レヴォンランドで銭形と再会したルパンは、銭形が、マティアを追っていると聞いて驚きます。「さっぱり話が見えねえな」と言いつつ、銭形が差し出したアリアンナの残したテープを再生したルパンは、そこでマティアがアリアンナを刺したことと、ヘイゼルを殺害したことを知ります。「なにかの間違いだ」と驚くものの、続く「ルパン、この言葉は絶対に忘れては……忘れてはいけない。……〝永遠の、愛〟」というアリアンナの声を聞いたとたん、ルパンは顔色を変えレコーダーを落とし、地に膝をつきます。己の身体を抱えた姿は、まるでこどものよう。
えー、いつもでしたらAパートは一気にあらすじ、その後にまとめの感想と言ったスタイルなんですが、今回はちょっといろいろありすぎるので、もうその場でちょこちょこ感想を書いていきます。濃いのよ。
まずは冒頭。美しいオーロラの下で再会した銭形さんとルパンですが、ルパンはマティアがアリアンナを襲ったことを知らなかったのね。そして、そのアリアンナが残したキーワード〝永遠の愛〟を聞いたとたん、顔色が変わり、目玉が忙しく揺れ動くこの描写。怖い。でも、ごめんなさい、わたしったら、つい「〝永遠の愛〟なんて言葉、ルパンはこれまでにしょっちゅう自分でも口にし、聞いてきた言葉なんじゃないの」と思ったんですが、それはまあこのあとの展開で納得しました。
やがて、ルパンは立ち上がり「行かなきゃならねえ」とつぶやきます。どこへだ、と問う銭形に、ルパンはうつろな目で「母親のところさ」と答え、銭形の詰問にも答えようとはしません。それどころか銃を抜き、銭形に向かって発砲。その様子は、そばで見守っていた次元と五エ門を驚かせます。しかも、その銃口は次元と五エ門にも向けられるのです。
「おぬし、気でも狂ったか」と言う五エ門に「いったいどうしちまったんだ」と言う次元。しかしルパンは「忘れてはいけない。母の愛。変わらぬ愛」とつぶやきながら、次元と五エ門に銃を向けるのです。五エ門の頭に銃口がつきつけられそうになったとき、それを妨げたのは銭形でした。銭形に雪の地に倒されても起き上がり「揺るがない魂……わたしの心は燃えている。あなたにわたしの全てを捧げる」とつぶやき続けるルパン。
ここ、ルパンが銭形さんを撃ったとき(当たらなかったけど)には、声が出た。ルパンが正気を失っていることを表現するのにこれ以上の描写はあるでしょうか。そのあとも、これまでの話で出たキーワードをつぶやきながら、自分の邪魔をする(ように見えているんでしょうね)三人を排除し続けるルパン。あきらかに三人の言葉が耳に入っていない。せつない。でも同時に、三人がおたがいを守りつつ、ルパンをなんとかしようとするチームプレーも自然でカッコ良かった。これなら銭形さんが入っても「マリオネット」のあの離れ業できたんじゃないの。
次元のマグナムがルパンの銃をその手から弾き飛ばしますが、ルパンの表情は変わりません。「あなたと、いつまでも一緒」と言ったルパンの手首に、銭形の手錠が飛びます。「再び、幸せが訪れる」と銭形に向かうルパン。それを妨げたのは、五エ門の峰打ちと、次元の殴打でした。「真実の、愛……」とつぶやきながら膝をつくルパンを後ろから抱え「おれはてめえの相棒だぞ、忘れるわけはねえよな?」とその耳元で次元は声をかけ、五エ門はかけよって「それがしをよく見ろ! ルパン!」と叫びます。
この、たたみかけるような三人によるルパンを取り押さえて説得しようとする場面が、迫力あるし怖いしどうなっちゃうんだろう感がすごかったんですが、同時に尊すぎてまいった。それぞれが連携し、流れるようにルパンをなんとかしようとする。三人が三人ともルパンを傷つけようとはしていない。なんとか、自分たちの声を耳に入れようとしている。次元さんのバックハグ(すいません、どうしてもこれ以外の言葉が見つからず)に、必死さが伝わって来てせつなすぎた。そして、「それがしをよく見ろ!」って五エ門もせつない。まるで自分たちを見忘れたかのようなルパンに、思い出せ! と必死なんですね。
しかし、そこに空から降ってくるように現れたのはマティア。マティアに気を取られた次元の隙を逃さず、ルパンは次元を投げ飛ばし自由の身に。「行って。トモエのところに」というマティアの言葉にそのまま車に向かって走るルパン。追いかけようとした次元と五エ門の前には、マティアが立ちふさがります。その動きは素人のものではありません。去るルパンの車を見ながら、マティアに「貴様の目的はなんだ」と問う銭形。マティアはそれに「トモエを殺すこと」と応え、姿を消します。
マティアちゃん!すごい、強い。次元や五エ門、銭形と同格なぐらい強い描写が、説得力あるの素晴らしいな。敵キャラが強いにもかかわらず次元や五エ門がだらしなく見えないのがとてもいい。そしてここでの銭形さんが、マティアを殺すなと五エ門に声をかけ、五エ門もそのつもりはないと応える短いやりとりが、ふたりのキャラを際立たせて良かった。銭形はマティアちゃんを止めるなら殺す気でいかないといけないと判断してそう言ったんだろうけど、五エ門は女を殺す気はない人だし、殺さなくとも止められる自信はあったんだろうな。でも、銭形はなによりもマティアを生かして捕らえなくてはいけないのです。警察官だから。生きて捕らえて、謎を解かなくてはならないから。ほんとにPART6の銭形さんカッコ良すぎるだろ。なんでメイン回ないんだよ。
ひとり雪道を車で走るルパン。後部座席には、次元と五エ門が遊んでいたトランプが散らばります。「母の愛、変わらぬ愛……」とつぶやくルパンの脳裏に浮かぶのは、自分に語りかけるトモエの言葉でした。どことも知れぬ空間で、トモエと向かい合っているルパン。
これはおそらくルパンの深層心理なんでしょうが、次元さんの帽子と斬鉄剣があるよ! ヤバいでしょこんなの。ところでルパン不二子ちゃんは、とも思いましたが、あのミルクティーがそうなんだろうか。そしてこのトランプは、これまでの話にも毎回のように登場してたトランプですよね。
トモエは、ルパンに、「詩をプレゼントするわ」と語りかけます。「この詩を忘れてはいけない……、母の愛、変わらぬ愛、揺るがない魂、わたしの心は燃えている、あなたにわたしのすべてを捧げる、あなたといつまでも一緒、ふたたび幸せが訪れる、真実の愛、永遠の愛……忘れてはいけない」と共に繰り返すルパンとトモエ。トモエはルパンに微笑みかけ、その額に指で触れます。「詩の一節一節があなたのここに刻まれている……この詩があれば、わたしたちはいつまでも一緒にいられるの」。しかし、現実世界のルパンは車を止め、まるで何かと戦っているように蒼ざめた顔で息を荒くしています。それを冷めた目で見つめているのは、マティア。
なるほど、これまでに出たキーワードはすべてトモエによってルパンの深層心理に刻まれたものだったわけですね。そしてそれが、何らかの基準を満たしたら(ひとつひとつの語句はごく平凡なものなので、ただ耳に入ったらそうなるというわけじゃないと思う)、ルパンがこうなるように仕組まれていたわけだ。でも、おそらくはルパンの(正常な)心理はそれに抗おうとして苦しんでいる。そのからくりをマティアは観察しているわけです。マティアはやはり、トモエを憎んでいる。
舞台はロンドンに。次元と五エ門は、かつてルパンとホームズに追い詰められたあのモラン大佐の元を訪れます。ルパンの情報を「教授」が持っているというのです。一方、銭形はメルセデスのもとを訪れますが、メルセデスはとりつくしまもありません。一方、モランに連れられた植物園で、木陰越しに〝教授〟ことモリアーティに会う次元と五エ門。「なぜおれたちに力を貸す」という次元に、モリアーティは「ここでルパン三世を退場させるわけにはいかないんだよ。わたしが思い描く犯罪地図にはかれが必要なのさ」と答え、ルパンがこれから向かうであろう場所を示唆します。
ロンドンに戻った! そしてモランがなぜ自由の身なのかと考えてしまいましたが、そういえば捕まってなかった。そしてまさかのモリアーティの登場。第1クール最終回で思わせぶりに登場したときには、こんな役目があるとは想像もしてませんでした。「次元大介君に石川五エ門くん」って呼び方、いいですね。クールな美少年萌え属性がないわたしでもときめくカッコ良さです。
一方、苦しそうにしながらも車を走らせているルパン。信号にかかりそうになれば指一本で信号機を操作し、交通事故を引き起こしながらも我が道を進みます。また、モリアーティはトモエを知っていました。「潜在意識や記憶に関する分野のスペシャリストだ」というモリアーティの言葉に「催眠なんて古臭い手にルパンがやられるとは思えねえ」と反発する次元ですが、モリアーティは「長きにわたり伝えられるものには理由がある。シンプルゆえにその手段は強固なものさ」と意に介しません。五エ門は、トモエはほんとうにルパンの母親なのか、と問いますが、それは定かでなく、またトモエの目的も分からないままですが、モリアーティは「ルパン三世は世界の全てを手に入れられるほどのポテンシャルを持っている。そんな男が意のままに動くようになったら、怖いものなしだ」とささやきます。
どんどん明らかになっていくトモエの正体。なるほどって感じですが、ここで「ルパンがやられるとは思えねえ」っていきりたつ次元さんが尊かった。あなたほんとにルパンのこと評価してて、なおかつ大好きだな! 知ってたけど! そしてそれを軽くいなしちゃう美少年もいいですね。いなされちゃう次元さんの可愛さも無限大だけど。でも、こういう美少年とルパンはタイプが違いすぎるゆえにおたがいを認め合って仲良くやれちゃうんだろうな。そこがアルベールとの違いだな……(アルベールはあれであんがいルパンと似ているので)(そこが可愛い)。
車を走らせているルパンの脳裏には、美しい八重桜とトモエの言葉が浮かび続けています。八重桜の舞い散るなか、トモエと会話を交わすルパン。トモエが自分の母であることが嬉しい、と言いつつも、思い出が何もないと戸惑うルパン。それに対し、トモエはたたみかけるように、子守歌に微笑んでくれたこと、ご飯をおいしそうにたべてくれたことなどの思い出をささやいていきます。走り回って転んだこと、手品をしたこと……。「だんだん思い出してきたよ」というルパンに「愛してるわ、坊や……あなたは?」と問いかけるトモエ。それに対しルパンは「本当の母さんにそんなこと言わないよ、言わなくても分かるだろ」と微笑みかけます。
うわーうわーと思ったこの場面。屋敷ですらない野外の場面で、紅茶はこぼれ、トランプは宙に舞っている。それでも五エ門の斬鉄剣と次元の帽子はルパンに寄り添い続けている。しかも、山で走り回ったルパンがつまずくのは五エ門の斬鉄剣であり、手品で鳩が飛び出してきたのは次元の帽子ではないですか。これはつまり、ルパンの深層心理はふたりを手放してないということですよね……。
でも、それ以上にわたしはルパンが「母さん」というのがせつなかった。トモエに向けたあの微笑みがつらかった。すべてを欲してすべてを手に入れられるルパンにとって、そんな自分を形作った己のルーツは最大にして唯一のものだとわたしは考えますが、これまではそれはずっとじいさまことアルセーヌ・ルパンの存在だった。でもそこにもっと生々しい〝母さん〟というものが現れたときのルパンは。あの原作の美しくもはかなくやさしい〝ママ〟がそうであったように、この〝母さん〟を前にしたルパンはただもう、せつなく可愛い。泣いちゃうよこんなの。
やがて、降りしきる雨のなか、疲れ切ったルパンの前に現れたのは不二子。「いまのあなたは正気じゃないわ」という不二子に「それは違う」と答えるルパン。「おれはようやく取り戻したんだ。長い間盗まれていた真実を。本当のおれをな」という言葉に、「ほんとうのあなたってなに? わたしがいっしょにすごしてきたあなたはまがいものだったの?」という不二子。「わたしのことが信じられない?」というその言葉に「なんどおれを裏切った?」とルパンはその場を離れようとします。「あなたを手に入れられるのはわたしだけなのよ」という不二子のキスと抱擁も、ルパンを止めることはできません。Aパートはここまで。
ここ、ほんとにPART6の不二子ちゃんはいい女だなと思いました。次元も五エ門も銭形さんも正気に戻せなかったルパンが相手ですから、こうなるのは当然ながらも、女のやり方で一歩も引かない不二子ちゃんがカッコいい。でも、申し訳ないことながら「なんどおれを裏切った?」の台詞にはちょっと笑ってしまった。それこそが不二子とルパンなのですよ。これはいいルパフジ。
さて、Bパート。ふたたび、メルセデスの元を訪れている銭形は、その壁に貼られているポストカードに目をつけます。それはプエブロ・マヒコ(魔法の村)と呼ばれる世界にいくつもある観光地でした。トモエが昔、プエブロ・マヒコに住んでいたことがあるとメルセデスから聞き出した銭形は、八咫烏に調べさせ、日本にあるマヒコ村を見つけ出します。
ついググってしまった「プエブロ・マヒコ」。メキシコの観光地なんですね。でも、トモエはそこに住んでいたわけではなく、日本の「マヒコ村」に住んでいたことがあった。その偶然の一致を面白がってメルセデスに話したことがあるというわけでしょうか。しかし、このメルセデスのポストカードはほんとうに偶然なのだろうか……。そして八咫烏くんは病院にいましたね。やっぱりアリアンナに付き添ってるのだな。ということはアリアンナは死んでない。良かった。
舞台は日本のアジトへ(道路標識が日本語です)。そこでルパンの存在を確信した次元と五エ門。すでにそこには不二子もいました。「おまえさんが追いかける方とはな」という次元に「なんだかんだいいながらもルパンがおらねば駄目だということか」という五エ門。それに対し「あなたたちと一緒にしないで」と怒る不二子ですが「じゃあ何でここにいんだ」と次元に問われると「お宝を盗まれたら取り返すのが普通でしょう」と返します。
「ま、数あるコレクションのひとつだけど」と嘯く不二子に「無理をするな」という五エ門。「してないわよ!」と怒るものの、鼻で笑う次元。不二子は「ルパンの馬鹿、わたしに恥なんかかかせて……思いきりひっぱたいてやらなきゃ気が済まないわ」と怒ります。次元も「よく分からねえが、ひっぱたくのには賛成だ」と言い、ガレージを確認しに行きます。ルパンが選んだのはSSKでした。
尊い。いや、短いですけど素晴らしい場面で、ちょっとヤバい。この三人の関係性が良い。次元が不二子ちゃんをからかうの、いいな! 余裕ある男の雰囲気がある。それに真面目に付け加える五エ門もいいし、勝手にやりこめられたみたいにむくれる不二子ちゃんの可愛さも無限大。なんだかんだ言って、次元と五エ門にとって不二子ちゃんはルパンの公認のガールフレンドなんですよね。わたしも公式はこれでいいと思います!(マジで)
でもまあ、あの、頭がおかしいジゲフジ派としては、元カレを心配する彼女を余裕を持って受け入れている今カレというふうにも見えてしまって大変でしたが……。いや、次元さん、そういうところはすごく寛大だと思うの。しかも相手がルパンだったら当然よね。でも、不二子ちゃんとしてはどうなのかなとか思うと、それはもうわたしの頭が忙しく……(ごめんなさい)。
マヒコ村に向かってSSKを走らせているルパン。その脳裏ではいまだにトモエとの対話が続いています。本当の母親ならなぜ言ってくれなかったのか、というルパンに、トモエはルパンを思い通りに操ろうとしたルパンの祖父に口止めされ、ふたりの親子の証は、屋敷の宝物庫に隠されてしまったのだと告げます。そしてとうとう、八重桜の咲く、荒れた屋敷にルパンはたどりつきます。
ここ、過去の屋敷に彩られた背景には、五エ門の斬鉄剣も次元の帽子も見当たりません。しかし、時計の針が、不二子の口紅になっています。おやすみのキス、というあたりでつながってるのかな?
屋敷の中を歩いていくルパン。そこかしこにどこかで見たような花が飾られており、ルパンが脳内でトモエと語り合った部屋も存在しています。そしてとうとう歳老いたトモエと再会し「母さん」と呼びかけるルパン。トモエは、あの日死んだのは身代わりだったとルパンに告げます。さらに、そこに現れたのは、マティア。「すべてを話してもらう。殺すのはそれから」とトモエに銃を向けるマティア。その前に立ちはだかるルパンですが、マティアはためらわずルパンを撃ちます。窓の外に落ちていく、ルパン。
もしかしてこの屋敷はルパンが育った屋敷なのかな? どうやって手に入れたかは分からないけど、トモエはそこでずっとルパンを待っていたのかな。そしてきっとそのルパンを追って、マティアも来たんですね。
ルパンが窓の外に落ちてもトモエは顔色も変えず「わたしが教えたとおりに出来ているようね」とコメントし、マティアに促されるままに話し始めます。ルパンが想像を越える子どもであったことがすべてのはじまり。ルパンの教育を終えた日に、宝物庫から自分がルパンの母である証を盗んだトモエだったが、ルパンはトモエが母であることを否定し、その手を拒んだ。その日からトモエはルパンの潜在意識を操作するために、マティアをはじめとする女たちを利用することを考えた。人の意識が言語による思考の中で作られる説に注目したトモエは、複数の言語を駆使するルパンのすべての意識に彼女の教育を再構築しようとしたのです。そのため、異なる言語を持つ国々から女たちを選んだ。なぜならルパンは「女の声を決して聞き逃がさない」「女を決して無視できない」から。
トモエが選んだ女たちはトモエが教えたとおりの人生を歩み、それぞれにルパンと出会い、トモエがルパンに仕込んだ、〝正しい記憶〟を固着させるための詩の一節を、ルパンに伝えたのです。メルセデス、マティア、ヘイゼル、ギャビー、アメリア、ミレーヌ、リンファ、ムルー、アリアンナ。彼女たちはみな、トモエによって仕込まれた一節を口にした女性たちでした。「そんなことのために、わたしの人生を操ったの?」とつぶやくマティア。「ええ、そうね」と平然と答えるトモエ。
うわー、面白い! このトモエの理屈は面白いぞとわたしは喜びました。まあどう考えてもあまりにも遠大かつ不確定なあり得ない計画だと思いますが、トモエのような能力の持ち主がルパンを手に入れるために何十年単位で考えた計画、としてなら納得いく。だったら、トモエがこのために使った女たちは他にも何十人といて、今回登場したのはその一部ってことなのかもしれません。個人的には、トモエがあのムルーちゃんになにを教えたか気になるところですが、妄想に素直になれとでも教えたのかな……。
「でも、ルパンはもういない。もうすぐあなたもいなくなる」と銃を構えるマティアですが、トモエはあやしく笑います。ルパンが戻ってきたのです。ルパンは、マティアの一流の殺し屋としての能力を見抜き、あえて急所をずらしてその弾を受けたのでした。しかし、マティアは銃を捨て、ナイフを抜きます。「これなら殺さない。狙った獲物は、かならず殺す」と。冷や汗をかきつつ、笑うルパン。
次回予告。「ねえルパン。あなたの手の中にはいま、どんな宝物が?その輝きが照らすのは未来への旅路」という不二子のナレーション。次回第24話は「悪党が愛すもの」。「楽しませてよね、これからも」という不二子の台詞がぴったりな、最終回です!
というわけで、23話でした。いやー、面白かった! 場面場面のツッコミはもう書いたので省略しますが、最終話に向けての布陣はばっちり。連続話の全体像もはっきりしましたね。正直言って、最後のトモエとマティアの場面なんか、これは最終話までとっておくものではと思ったくらいなんだけど、ここからまたもうひとつ山場が来るのかな?
それにしても、これはもう鉄板で、トモエがルパンに仕込もうとした記憶こそが〝ニセ記憶〟で、こどものころのルパンはそれに惑わされなかったってことでしょうね。つまりトモエはルパンの本当の母親ではない。ですよねーって感じですが、色々と考えてしまうな。
となると、ルパンはトモエを殺すのかもしれない。なぜなら、ルパンにとって自分の母親を騙られることくらい不愉快なことはないのではと思うから、しかも自分の記憶をいじって。なおかつ、その目的のために、トモエが使い捨ててきた人命の数を思うと、よけいに。あと、マリエルの件もありますよね。あれはたぶんルパンとは関係ない仕事だったのかもしれないけど、つまりはああいう仕事ができる女性ということです。
しかし、あのいちばん最初のメルセデスが襲ったオークション、あの出品者こそがトモエ本人で、そこからトモエの計画が始動したとみるのが正解なら、マティアはどういう役割を果たすはずだったんだろう。花屋の店員としてルパンに接触し、他の無害なムルーやギャビー、アメリアのように、ルパンとつかのますれ違い、あの詩の一節を聞かせるだけの役割だったのか。
でも、あの殺しの技を思うと、それだけじゃないはず。なおかつ、頭の怪我で、トモエに記憶を植え付けられていたと気づいたなら、その後にヘイゼルやアリアンナを襲ったわけは? もしかして、すべてが終わったあとに、関わった女たちをみな始末する役割でも背負わされてたんだろうか。でも、あれだけトモエを憎んでいたマティアが、その意のままに行動するかなあ。あ、もしかして操られていると気づけても行動は抑制できないから、よりトモエを憎んでしまうとか? ここら辺、謎解きされるなら楽しみです。
個人的には、お話の都合でいたしかたがないとはいえ、ルパンがやられたりおかしくなる展開には心が痛むものがあるのですが、今回はなんか、大丈夫、というか、ルパンには、どんなことがあっても次元と五エ門、不二子にとっつあんがついている!という感じなので、安心して見ることができました(ぶっちゃけそこが揺らいでいたPART5はルパンが傷つくたびにマジで辛かった)。みんなルパンが大好きじゃん……。尊いよ……。
そう思えるくらい、この連続話ではルパン一味がしっかり描写されてる印象です。単なる出番の多さ、時間の長さじゃないんですよ、台詞や仕草、ちょっとした会話の応酬でそれを見せてるのがいい。まあ個人的にはとっつあんをもっと前に出してもいいんだけど、ああいう立ち位置だとかえって動きが限定されるんだよな。警察側でのドジっ子部分は一身にヤタくんが背負ってるしな……。
それに、ルパンはぜったいにこっちに戻ってくるじゃん。それはあたりまえなんだけど、それをどういう形で見せてくれるかが肝心なわけです。でも、わたしはこの第2クール、信用してるから。ぜったい面白いから。
あと、教授こと美少年モリアーティの登場、良かったですね。舞台をちゃんといちどロンドンに戻したのも、シリーズ全体の最終回に向けてのお約束をちゃんとやっている感がしていいし、ここはホームズじゃだめなんですよ。ホームズとトモエの話ではリアリティレベルが違うので、混ぜるの危険なんです。違和感しかない。(まあ最終回に顔を見せるくらいはありだけど)。あと、これはそもそも、悪党の話だから。
そう、最終話の題名を見て、今回のシリーズのキャッチフレーズを思い出しました。「この男、悪党か、ヒーローか?」どっちかでいうならそりゃルパンは悪党なんです。で、その悪党がたまたまヒーローみたいなことをする。あるいはヒーローも悪党もやっているのは同じことかもしれない。どっちにしても、ルパンはスペシャルな存在。わたしはそういう解釈です。
ということで、最終話に向けての準備は万端な23話でした。毎回言ってますけど、この連続話、第1クールの連続話よりずっと謎でミステリだと思います。トモエの設定も明らかになり、その姿も現れた。ここからどういう展開になだれ込み、どんな大団円を迎えるのか。次回を楽しみに待ちます。そのあと、PART6の総括も書きたいな。わたし的にはとてもお気に入りのシリーズです。
今回も長くなりました。読んで下さってありがとうございました。いつも感想に目を通してくださっている方々には感謝の気持ちでいっぱいです。拍手で反応してくださるの、嬉しいです。自分一人で鑑賞して、公式以外の情報は入れずにただもうひたすら自分の感性だけで書いている感想なので、もしかして的外れだったり「違うよ」と思われるようなことがあるかもしれませんが、みんな違ってみんないい、精神でお許しいただけたらと思います。また、共感したり楽しんで下さっているかたはありがとうございます! いよいよ次回は最終回。どうぞよろしくお願いします、ありがとうございました!