黒い猫

 いい仲の男と女が過ごすひさしぶりの夜に必要なものは、いったいなんだろう?  峰不二子の頭に浮かんだのは、すこしのお酒と甘い言葉、だった。とりあえず、お酒はあたしが持ってるわ、と不二子は思う。あと、甘い言葉をあの男が用意…

続きを読む →

水の名前

 許されないことをしていると、思った。  許さないのは他のだれでもない、峰不二子という名前の自分自身だ。とてもではないが許されない、そんなことをしていると思った。それは恋だ。恋そのものが許されないのではない。いま、自分が…

続きを読む →

赤い月

 やっと見つけたわ、と峰不二子はため息をつく。  祈りの文句は不二子の耳には届かない。しかし、不二子はそれを気にしなかった。なぜなら、不二子はそもそも牧師の言葉が届く場所にはいなかったからだ。そんなことよりも気になるのは…

続きを読む →

あたしのこと、覚えてる?

   ……ちょっと試してみただけのつもりだったんだよ、とルパン三世は言った。 「あの映画見てさ、おれにもこの道具が作れるかなって思ったわけ」  ルパンは、ペンのような機械をかざす。あの映画、というのは、地球に住…

続きを読む →

Hold You Tight

 あたしの男がここにいる。あたしのすぐ横で、死んだように動かないまま眠っている。  それがあまりにも静かで深い眠りだから、つい心配になって、不二子はその男の寝息に耳をすませる。手を滑らせて体温を確かめた。そして、そこから…

続きを読む →

優しく雨ぞ降りしきる

   あの女を撃ち殺す許可をくれ、と次元大介は言った。  その言葉を聞いたルパンは、ため息をついて、次元の肩に巻いていた包帯を、強く引っ張る。 「……頭にくるのは分かるけどよ、これくらいですんで良かったじゃねえ…

続きを読む →

ハートに火をつけて

   はじまりは、わずかに揺らめくだけのちいさな火だった。それがゆっくりと燃え出したと思っていたら、あっというまに、どんどん大きな炎になって燃え盛っていくのだ。 こんなにかんたんに始まっちゃうものなのね、と不二…

続きを読む →

次元大介の休息

 次元大介には、休息が必要だった。  まずひとつ。とんでもない緊張を強いられた、あるマフィアの屋敷への潜入があった。そのマフィアと次元のあいだには、かつて、あまりよろしくない結果とともに終わった関係があったため、次元の存…

続きを読む →

ルパンを待ちながらー次元Side

「ルパンはまだ来ないの?」  それが、次元大介の耳に飛び込んできた、峰不二子の最初の言葉だった。ノックも無しで、ドアを蹴破るようにして入ってきた不二子は、そのまま次元の寝ているソファを蹴って、そう言ったのだ。ばかでかいハ…

続きを読む →