「菜摘ひかるの私はカメになりたい」菜摘ひかる(角川文庫)



 すごい。この薄い一冊の文庫で、なにがすごいって、中村うさぎが何冊もかけてやってきたこと以上の病理に彼女は入りこみ始めている(わたしは中村うさぎも好きです)。
 病理というのはあんまりかもしれないけれど、不安定な完全主義に基づいた摂食障害と買い物依存症と美容整形は明らか。でも、わたしは感じる。それと同じ感性の萌芽が自分にもあることを。一見、柔らかいだけ軽く読めるエッセイみたいだけど、そこに見え隠れするバランスの危うさが怖い。解説の香山リカの能天気さが、また、さらに。精神科医ならもうちょっとさあ…。(わたしは香山リカが好きでないので、よけいにそう思うのかもしれないけど)

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