ルパン三世ベストセレクション第7位「五右エ門危機一髪」感想

 
  「ルパンの弱点は毛が三本少ないということ」(cv井上真樹夫)。

 ルパン三世ベストセレクション、第7位は、PART2第112話「五右エ門危機一髪」でした!新ルを代表する五ェ門回だと思いますが、五ェ門ファンならずとも人気の高い一作です。いつものように、ベストセレクションが放送されていない地域に住まうわたくしが、エア感想を書かせて頂きます。ネタバレありなのでお気をつけください。あらすじはこちら→(URL)。

 薔薇をくわえた狼のシルエットが描かれた車と、クラシックギターをかき鳴らす一癖ありそうな男が登場する冒頭場面が印象的です。その男に近くの温泉のありかをたずねる五ェ門でしたが、ただならぬ男の雰囲気に斬鉄剣に手が行きます。が、その場はそのままなにごともなく過ぎることに。しかし、五ェ門が姿を消したあとに現れたのは、真っ赤な薔薇を手にした美女。ウルフとローズの殺し屋コンビの登場です。

 そんなハードボイルドな雰囲気で幕を開けたにも関わらず、タイトル後にいきなり響くのは五ェ門の口ずさむ「YMCA」。可愛いがな。そんな風にひとり温泉に浸かってリラックスしていた五ェ門のもとに現れたのは、さきほどのローズ、そしてウルフ。女のシルエットに動揺した五ェ門は、ローズの薔薇を受けて倒れてしまいます。温泉の中に沈んだ五ェ門が溺れそうでドキドキしました。

 一方、湖の真ん中にあるお城のアジトで、ルパンはのんきにお風呂タイム。泡の中でだれかさんとイチャイチャ……と思いきや、そこに入ってきた次元によりそのお相手は風船人形だったことが明らかになります。ここで風船の不二子人形をさりげなく煙草で破裂させちゃう次元さんがいいです(いろいろ勝手に妄想しちゃいますね!)もっとも、次元さんは五ェ門が斬鉄剣と褌を残して姿を消したことをルパンに伝えに来たのでした。

 けれどルパンはたいして気にしてない様子で褌のない五ェ門の姿を想像して笑う始末。それに「おまえだって(ここで一瞬、視線を下に向けるのがいい)お茶の間の皆さんに失礼だとは思わんのか」という次元さんのメタ台詞が楽しい。もっとも、なにげに三世さんがいい身体をしているので、TVの前のわたし的にはなんの問題も失礼もないのですが。もうすこし見せてくれてもいいんですが。むしろ胸毛の描写が足りな(略)。

 ウルフとローズはルパンたちのアジトにやってきますが、そこに現れたのは警官隊を引き連れた銭形警部。堂々と講談調に語りつつルパンたちを逮捕しようとする銭形警部でしたが、ルパンたちの仕掛けに軽くいなされてしまいます。小さなポイントですが、ここで、ルパンと次元が「アレ用意してくれや」「あいよ」だけで話が通じてるのが、いかにも相棒!って感じでいいですね。気球に乗った銭形警部を迎えた、「蛍の光」の節まじりのルパンのメッセージのじつに軽やかでふざけてて好きです。あの手この手でうまく銭形警部の追求からは逃れた次元とルパンですが、そこで銭形ではない第三者の存在に気づきます。それでも「おれの命を狙ってるやつはいくらでもいるからな」「ああ、おまえの顔は他人の恨みを買いやすいからな」とあくまでトボけたやり取りなのが、実にらしいですね。

 しかし、ここで場面は変わり、囚われの身となった五ェ門がローズから拷問を受けている描写となります。ここの描写は実にサディスティックで、むごたらしい。殺し屋ナンバーワンの座を狙うローズとウルフにルパンの弱点を問われ、それでも薄く笑って拒む五ェ門が美しくさえありますが、正直言って痛々しく、見てられないような場面でもあります。わたしはとくにヘッドフォンでの轟音の拷問が無理だ……。あまりの辛さに、ギターをかき鳴らすウルフを脳内で一生懸命吉本新喜劇の真也さんに変換したパロディとか考えてしまいました。すっちー&真也が好きです。すいません。

 五ェ門の身を心配してるのかしてないのか、どこか余裕さえ感じるルパンと、変わらず拷問に苦しむ五ェ門。見ていてちょっとじりじりする展開ですが、五ェ門への拷問はますますエスカレートして、目を背けたいほどに。一方、敵を誘い出すため、「LupinThe3rd」というネオンの看板まで出したルパンですが(わたし、昔これに似たのを「パタリロ!」で見たことがある。「バンコランはまだロンドンにいます」ってやつだ)、そこにやってきたのは次元曰くの「お呼びでないやつ」、不二子ちゃん。大喜びしてお姫様抱っこで迎えるルパンですが、いつもと違って、不二子ちゃんが実に重そうです。しかし疑う様子もないルパンは、イチャイチャタイムに突入し、その声をウルフは柱に縛りつけた五ェ門に聞かせます。

そもそもこの「五右エ門危機一髪」は、原作新ルパン三世「盗怪道五十三次」がベースとなっているのですが、原作のとってもアダルトな展開は、さすがにアニメでそのままやるわけにはいかなかったということでしょう。というわけで、アダルトな描写は骨抜きです。しかしもちろんルパンはニセ不二子の正体はお見通し。正体がバレて逃げ出すローズに向かってライフルを向ける次元がルパンに止められて「おまえの命を狙った女だぞ」と不服そうなのがいいです。五ェ門回なんだけど、ルパンと次元の相棒っぷりもいいんですよ。

 ローズを追って五ェ門の監禁されている城に向かうルパンたち。失敗したと狂乱するローズとそれを見守るウルフに「おまえの弱点はあの女だったらしいな」と冷静に言う五ェ門がカッコいい。最後のチャンスだと言いあうウルフと五ェ門の緊迫した雰囲気の中、五ェ門の鎖が外され、とうとう姿を現すルパン。ボロボロになった五ェ門の髪を撫で、抱きしめるその姿には、これまでのおちゃらけた雰囲気は微塵もありません。「まったく、おまえってやつはどうしようもない、馬鹿だ……!」。
 
 ルパンがこんなにストレートに仲間への感情を現すのってすごく珍しいですよね。しかもこれ、台詞こそアニメオリジナルなんだけど、この五ェ門を抱きしめるルパンの仕草は原作そのままなんです。わたしはそこがなんだか、すごいと思うのです。たとえば次元が同じ目にあっても、ルパンはこうしないと思う。五ェ門の純粋さにはルパンもこういうストレートさで応えたという印象があります。

 だからこそ、ウルフを前に自分にやらせてくれという五ェ門の願いも聞き入れたんでしょうね(ここが原作の五ェ門はまた言い方がちょっと違ってて、そこが興味深かったりもするんですが)。ギター型マシンガンを抱えるウルフに対し、剣でやれ、という形で介入するルパン。斬鉄剣と剣の勝負は、みごと五ェ門の勝利に終わり、それを見て絶望したローズもまた自ら命を絶つのでした。

 そして、ウルフとローズの城を後にする三人。五ェ門をおんぶしているルパンに「おれは五ェ門みたいに頑張る自信がないんでな。同じような目に合ったらサッサッと喋って楽になりてえ」から、おまえの弱点を教えておいてくれという次元さんがらしくていいですね。それに対してさんざんトボけるルパンも可愛い。もちろん、そこで「ルパンの弱点は毛が三本少ないということ」と笑う五ェ門もすごくいい。原作のラストも捨てがたいところながら(あれ、次元さんがほんとうにほんとうにほんとうにカッコいいんだもん……)。この三人の笑いで締められるラストはやっぱり素敵。旧ルの「タイムマシンに気をつけろ」でもこの三人の笑いが印象的でしたが、この話での三人の笑いもいいですね!

 
 この「五右エ門危機一髪」、ハードな展開とコミカルな場面がとても巧みに構成されていて、見る側を飽きさせない傑作だと思います。徹頭徹尾、ふざけちらして真面目じゃないルパンが、五ェ門をさらった相手を余裕を見せつつ追い詰めて、ボロボロになった五ェ門を見た瞬間に自分の気持ちを露わにする。次元は次元で、五ェ門のことを心配しつつも、ルパンとのパートナーっぷりで要所要所をきっちり詰める。最後の台詞、すごくらしくって大好きなんです。もちろん、主役たる五ェ門は言うに及ばず。「YMCA」を歌う可愛いところから、男臭い魅力のある拷問場面、五ェ門らしい仲間への忠義立てなど、五ェ門の魅力がいっぱいですね。井上真樹夫さんの悲鳴が素晴らしいんだよ……。でもわたしがいちばん好きなのは、ラストで安心しきってルパンの背中に身を預けているときの柔らかな表情かな。まさに仲間という感じです。そんなルパン一味の絆がしっかり描かれたこの話、たっぷり堪能いたしました。

 さて、ベストセレクションも第7位です。正直言って、わたしこの「五右エ門危機一髪」はもう少し上位かと思ってたんですよね。それでも10位からここまで第8位の「ルパン三世颯爽登場」以外はすべて五ェ門回という、なんというか、五ェ門クラスタのみなさまカッコいいという結果がなんだか壮観です。ルパンは主役だからそこらへんは気にしないわたしとしましては、名作が多いぶん票が分散してしまった心配のある次元回が今後現れるかどうかが心配でなりません。「国境」!大丈夫なの「国境」!もう「男心」が入っていて欲しいなんて贅沢は言わないから(言いたいけどな!あきらめきれないけどな!)、せめて、中間発表にあった「国境」は残っていることを祈るばかりです。お願いします。

 というわけで、今回も好き勝手に語りましたベストセレクションの感想でした。こんなふうに小ネタを挟んだ昭和のオタクっぽい感想ではありますが、これを機会に何十回とみている作品をまた再見し、感想をじっくり書くのはとても楽しいことであります。こんな感じで書いていくつもりですので、興味がおありのかたはまたよかったら読んで下さると嬉しいです。拍手などくださるかた、有難うございます。どうぞこれからもよろしくお願いします!