ルパン三世ベストセレクション第6位「荒野に散ったコンバット・マグナム」感想

 「ハジキを組み立てるくらい、目をつぶっていたってやれる男さ」(cv山田康雄)。

 ルパン三世ベストセレクション、第6位は、PART2第99話「荒野に散ったコンバット・マグナム」でした!キャー!(年甲斐もなく黄色い悲鳴)まさかここに来て、中間発表に名前が無かった作品が登場するとは驚きです。しかも、次元回として名高い名作、わたしも、もちろん大好き!いつものように、ベストセレクションが放送されていない地域に住まうわたくしが、エア感想を書かせて頂きます。ネタバレありなのでお気をつけください。あらすじはこちら→(URL)。

 カルタゴの猛将ハンニバルを背景に「おれがいま何を考えてるか分かるか?次元」というルパンの台詞から物語は始まります。次元さんはたいして興味なさげですが、ルパンってなんか前にもこんなこと聞いてなかったかなあ。そして、そこに現れた銭形警部率いる警官隊に囲まれたところを、座席を回転させて後ろ向きに車を発進させる「スイッチバック作戦」なる手段で突破しようとするルパン。無茶というか可愛いというか、こういうトンデモ発明で乗りきるルパンのやりかたっていかにも新ルパンぽくって好きです。さらには車体の色まで変えた上に、変装で一般市民に化けて、銭形の追及をかわします。

 このときの海賊っぽい縞シャツ(ボーダーとか言うお洒落な表現は似合わない気がします)に緑色の帽子、おっきな丸いおめめでにこやかに笑う次元さんが可愛いったらありゃしません。普段はハードボイルドを気取ってるけど、意外とこういう小芝居好きですよね、このひと。それに対し帽子を取って「メルシーボクー!」と喜んじゃう銭形警部も可愛い。そしてうまく逃げおおせたあと、ルパンに煙草を差し出して自分も一服する次元。このふたりの雰囲気がいいです。そしてタイトル。文句なしの導入部ですね。

 銭形警部の目を盗み、地下水道を歩きながら、次の獲物として、ピレネー山脈ふもとにあるブランコ公国とそこにある金貨の話をするルパンと次元。とつぜん、なにかの気配を察した次元の前に突然ワニが現れます。ねえねえ地下水道ってワニがいるものなのかな。その昔の都市伝説でニューヨークの地下水道には捨てられたペットのワニが繁殖しているという話があったけど、そういう流れかな。しかし、ワニはみごと謎の男の銃弾に倒れます。これ、重要なのはこの男のほうが次元より早く抜いてるってことなのかなあとなんとなく思います。

5年前、レオン・ヒル!これだけ言えば思い出すだろう!」と次元に言ったその男はストーンマン。かれは次元に5年前にやり損なった果し合いのやり直しを求めて去ります。ルパンはそれを聞いても「よせやい、そんな暇なんてねえんだぞ」とあまり興味がない様子。そこに現れた五ェ門が、「あの男、拙者が斬る!」と言うのと対照的です。ルパンって基本的に次元の過去の関係者にはあまり興味がないんですよね。ここ、いろいろ考えてしまうポイントです。
 
 そしてこのあと、銃の手入れをしながらストーンマンとの因縁について語る次元という場面になります。ここでの次元さんは上着を脱いだシャツ姿。ゆるめたネクタイといい、腕まくりしているとこといい、生活感ありつつ、レアな感じで素敵です。わたしはあまりスタッフさんのこととかに言及できるほど製作面に詳しくはないのですが、この作品にはかの大塚康生さんも参加されているとのこと(DVDコレクションマガジンより)。道理で、男臭くはあるけれど、かわゆい次元さんだなあと思います。大塚さんの次元さんは、とにかくかわゆいのだ……。あと、胸板の広い感じがすごく好き。そこがルパンと違うんですよねえ。そんな次元さんが銃の手入れをしているなんて、見飽きない。環境ビデオとして長時間Verが欲しい。BGMの「トルネード」がぴったり。

 しかし待ちぼうけを食わされててっぺんの岩に次元の顔を撃ちこむストーンマンって、可愛いのかイカれてるのかどっちだ、という感じですね。なんか発想が女子っぽくないか。五ェ門は果し合いの介添え役を申し出て次元に軽くいなされてますが、ルパンはここでも次元の話をまったく気にした様子もなく「シンガポールの職人顔負けでしょうが」とバッグを縫い上げてご満悦です。これ、さっき倒したワニでワニ革のバッグを作ったらしいんですが、あの、処理とかなめすとか大変だったんじゃないでしょうか……。

 やがてパリのオルレー空港から飛行機に乗りブランコ公国を目指すルパン一味。フランス空軍の飛行機でやってきた銭形警部も軽くいなして(失速する銭形警部の飛行機に向けて「ぜーにやー」と手を振るルパンがらしいですね)、迎えに来た不二子ちゃんのもと、ブランコ公国に降り立ちます。そしてここで銭形警部がひっかかっている大木が、五ェ門の手でだるま落としの要領で切られちゃうところのコミカルさも新ルパンらしいですね、

 やっと無事に市街に入り、狙いのハンニバル金貨の場所を確認するルパンですが、次元はどうもそれどころじゃなさそうです。スッと姿を消すその背中に「こらあ次元……。困るんだよな、てんで役に立たねえ、あんにゃろ」というルパン。この声が、あきれ半分ムカつき半分に心配のフレーヴァーをかけているという感じで(なに言ってるか分からないと思った方、考えずに感じてください)、もうこれこそ山田康雄さん!という響きですごくいいんです。酒場でセロリをかじるストーンマンに自分が果し合いを迫る五ェ門とはやっぱり違った感じになるんですよね。この五ェ門に「いまどき辻斬りは流行らねえぞ」ってなだめる次元もいいですね。

 そして、ルパンと次元は総統閣下の屋敷に変装して乗りこんで、無事に金貨を手にいれます。しかしいつも思うけど、次元さんはあの髭がある限り変装を本気でやろうという気はないものとみていいですよね。軍服はカッコよかったけどな。それでも驚くと帽子から丸いお目目が見えちゃうのも可愛い。「さて、これでおれは用済みってわけだ」という次元に「なーに言ってんでしょうかね、まだまだ」というルパン。

 なんかここらあたりもいろいろポイントなんですよねえ。ルパンは次元の果し合いをどう思ってるんでしょう、的に。このあともいら立つ五ェ門を「次元なら大丈夫よ」と軽くなだめてるし。そしておそらくこのお話のメインではないんですが、この場面でたった一枚のハンニバルの金貨から、頭を使ってお宝の存在を探り出すルパンも、わたしはすごく好きなんです。こういうルパンってカッコいい!頭いい!とうっとりです。

 当日、宝を掘りに行く車から、ひとり飛び降りる次元に「勝手にしろ、そんなに穴掘りが嫌なのかよ」ってあくまで不服気なルパン。けれど結局は、ひとり、レオン・ヒルに決闘に赴く次元を迎えにきます。そして、ストーンマンに対し「よう、スットコトンマ、こいつで一件落着ということにしようじゃないの」とお宝の金貨が詰まったバッグを投げます。いやもう、これってすごくない?だってルパンはあくまでそのためにブランコ公国に来たわけです。だからずっと次元の果し合いなんて興味なさげな顔してたのに、次元といっしょにこの国を出るために、そのお宝を放り出しちゃうんですよ。

 しかしそこに現れたブランコの追手。とりあえず次元を残して車に飛び乗るルパンに、不二子が「ねえ、次元は国境までの道を知らないんでしょう」とあわてます。「それがどうしたよ」と短く答えるルパン。なんかもう、ここらへんで気づきますよね。ルパンはずっと次元を信頼していたのだ、ということに。

 というわけで、ここからは原作「ウェスタン次元」からの展開です。次元のマグナムを奪ったルパンがその部品をばらばらにして国境までの道のりに落とし、次元はストーンマンの弾を避けながらそれを拾って組み立てつつ、国境に向かうこととなります。要するにあれだ、ヘンゼルとグレーテルだ。しかし、この一連の場面での次元さんの動きは本当に素晴らしい。ここら辺も頑張ってくれたらしい(DVDコレクションマガジンより)テレコムさんありがとう。あの長い手足とルパンとはまた違う胸板が存分に飛び回って最高です。帽子が飛んだときにはこれがオールバックだったらと思わずにはいられませんでした。そしてここでも「ルパン、あなたってずいぶん薄情なのね!」と怒る不二子ちゃん。良いジゲフジを頂きました。

 それに対する「なあに奴なら大丈夫だ。ハジキを組み立てるくらい、目をつぶっていたってやれる男さ」というルパンの言葉に対応するように、ヒーヒー言いながらストーンマンから逃げ回っている次元が「バラまいていくんならよ、お宝の方だってよかったんじゃねえのかな、ええ、ルパン!」って言うのがたまらなくいいですね。空間を共にしてないのに阿吽の呼吸のやり取りがあるのですよ。ルパンは次元がこのやり方でやれると信頼しているし、次元もルパンのやりくちに舌打ちしながらもその通りにやっていく。まあ、この状況ではそれ以外に方法はないという話でもありますが。なにげに三世さんてばひどい、次元さんが可哀想だわ!(目をキラキラさせて言ってます)(次元さんのピンチって本当に萌える)。

 そしてストーンマンの猛撃をかいくぐり、ようやく国境の門前に。残るパーツは弾倉のみ。次元の手に届きそうで届かないそのシリンダーをルパンがワルサーで弾き、それを受け取った次元が、空中でコンバットマグナムを完成させ、この決闘で唯一の発砲を行います。もうここはなんど見てもカッコいい。スピード感といい、動きといい、一瞬のタメといい、とにかくヤバい。だめ、カッコいいひとがいる。次元さんがカッコいい。そしてそれをここまで導いた、ルパン三世もカッコいい。最高オブ最高。

 そして閉まった国境の門に、あやうく車が挟まれてしまいますが、そこは五ェ門の斬鉄剣でなんとか出国できることに。しかし肝心のお宝は、置き去りにされた車の後部に乗っていたのでした……という結末です。半分になった車に乗りこんだ三人とボンネットに座った次元さんというコミカルさが良いし、「このまま、まっすぐだ」という最後の次元さんの台詞がいいですね。

 この「荒野に散ったコンバット・マグナム」、女がらみでない次元回として、やっぱりとても好きですし、それ以上にあの原作「ウェスタン次元」からみごとにエッセンスを頂いて新ルパンらしいアニメ作品に再構成しているのが素晴らしいと思います。もちろん、わたしは原作「ウェスタン次元」が大好きです。この「荒野に散ったコンバット・マグナム」とはまた別種の形として、原作に忠実なアニメ化をしてくれないかとすら思います。わたしに動くレッディちゃんを見せてくれ(わたしはレッディちゃん好きなあまりに小説まで書いてます→URL)。下半身ヌードの次元さんも見たいかも(笑)。

 でも、あれをそのまま新ルの枠内でアニメ化するのが難しいのは当たり前だし、どこから出てきたのか分からないガールフレンドより因縁のライバルのほうがアニメの中で掘り下げるのにふさわしい存在であるのも分かります。そしてレッディちゃんの存在が消去されたおかげで、次元が国境にたどりつけるかしらと気を揉む役割が不二子ちゃんに回ってきたので、ジゲフジ者としてはおとなしく黙っておいた方がいいような気もしてきました。なので、それはそれこれはこれ、で両方が好きということに落ち着きました。みんなちがってみんないい精神です。

 そして次元回でありつつも、そこにルパンの存在がずっと大きいのもいい。ルパンは次元の果し合いなんか最初っからキョ―ミないんです。だって次元は勝つと分かっているから。でも、そんなに単純な話ではない状況だと分かったら、ルパンらしいやりかたで手を貸すのです。そう、次元には舌打ちされるようなやりかた、でも結局はそれが次元を救う、そんなやりかたで。このふたりの関係性を見るうえでも、この話はとても面白いのです。長々と書きましたが、結論は、新ルパンのなかでも、文句なしの傑作回のひとつだということですね。何回も見てるけど、やっぱり面白かった。最高です!

 さて、ベストセレクションも第6位となりました。冒頭にも述べましたが、今回の結果を知った瞬間に声が出ました。いやだって、いかに名作と言えど、この時期に中間発表に無かった作品が出てくると思います?五ェ門クラスタすごいすごいと言ってたけど、次元クラスタのみなさまの底力もすごかった。まあたしかに次元回といえばこれだ。あるいはもう「男心」来る?とまで思ってしまいますが、「国境」が消えた可能性もあるんですよねー……。

 残るはあと五本。一位と二位は、まあ確実に「さらば愛しきルパン」と「死の翼アルバトロス」だろうから、残るは三本ですね。そして中間発表にあって、いまだ現れていない残りの作品は、「ルパンは燃えているか……?!」「脱獄のチャンスは一度」「十三代五ヱ門登場」「7番目の橋が落ちるとき」「国境は別れの顔」なわけです。もしかしてまだ、中間発表では出ていない作品が顔を出す可能性もありますよね。わくわくするなあ。

 というわけで、今回も長々と語りましたベストセレクションの感想でした。ずっと書いてきましたが、どんどん長くなるのはやはりどの作品も傑作で、拾いどころがあって、楽しいからだと思います。「ルパン三世」がますます好きになっていきます。このまま一位まで書いていこうと思います。いろいろと好き勝手に、なおかつすでに語られ済のことをいまさらのようにキャッキャッ書いているかもしれませんが、あくまで個人の感想ということでお許し願えたらと思います。そんな感想を読んで下さるかた、ありがとうございます。拍手も嬉しいです。どうぞこれからもよろしくお願いします!