「さらば愛しき女よ」レイモンド・チャンドラー(ハヤカワ・ミステリ文庫)



 出来すぎたタイトル(直訳といえばそのまんまなんですけどね)に惹かれて、中学生のころに読んだことがあったけれども、細部はすっかり忘れておりました。
 あのころは謎解きミステリを次々と読破していたころで、謎解きらしい謎解きともいえないこの話にきょとん、としただけだったような気がします。再読してどうだったかというと、やはり、謎解きの部分はどうということもなく、グレイル夫人や大鹿マロイといったキャラクターの愚かさと愛らしさに惹かれました。グレイル夫人は、ハードボイルドに出てくる典型的な悪女かもしれませんが、この愚かさと共存する一滴の気高さは類を見ないような。表面だけをなぞったら安っぽくなってしまうキャラクターだろうな…。

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