「偽偽満州」岩井志麻子(集英社文庫)



 岡山の貧農出身の生命力に溢れる娼婦が、自分の魅力と行動力だけを糧にして、愛しい男とともの逃避行から、愛しい男そのものを探す旅に挑む物語です。これもまた正直云って、物語展開からいったら、かなり片手落ちというかファンタジーかそうでないのかはっきりせい的なところがあります。小説としての完成度という点からみたら首をかしげる部分あるでしょう。前半までのバイタリティあふれる展開と、後半のまったりとした幻想的展開の落差が惜しいです。どっちかに偏って統一したら、もっと面白い小説が二作になっただろうに。
 しかし面白かった。岩井志麻子はあれか、キャラクター小説なのかもしかして。それくらいキャラがいい。
 アクも毒もあるキャラが勢ぞろいだけに、合わないひとには本当に合わない感がありますが、わたしはOKです。この濃密極まりない悪文すれすれの美文と傍若無人な比喩で飾られた文体も、駄目なひとは駄目だろう、ごめん、わたしは大好物。栗本薫が好きだったからね!←自虐。

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