新作歌舞伎『流白浪燦星』みっちり感想(ネタバレあり)

 というわけで、新歌舞伎「流白浪燦星」(新橋演舞場)の感想です。

 わたしは12月17日の昼の部を観劇しましたが、このみっちり感想はそのときの感想と、23日の配信を見たうえで書いています。芝居はナマモノなので、一応分かるようには書いているつもりですが、そのあたりでびみょうに食い違いがあるかもしれません。また、わたしは歌舞伎まったくの初心者のため、おかしなことを書いているところもあるかも……あと、もちろんネタバレです。以上ご了承の上でご覧頂けるとありがたいです。よろしくお願いします。

 まずは冒頭。御所の扉を破って現れた、ルパンと次元のお姿を見た瞬間に、きゃっと声が出ました。きゃっ。宝塚のときもそうだったんですが、まさかというところから赤い衣装をまとったルパンが初登場するときの、文字通り二次元の具現化の瞬間がたまらないんですよね。基本、二次元の三次元化が苦手なわたしなんですが、お芝居の空間だけは別なのです。カッコいい。

 ここで「うぬらはいったいなにものだ!」と問われて、「ルパーン三世、泥棒さ」と絶妙な山田康夫節リスペクトかつ歌舞伎の言い回しで応じ、見栄を切る愛之助ルパン、笑っちゃったけど、マジでカッコいいのですね。笑三郎次元も、たたずまいがもう次元なの。コバキヨ声が聞こえてくる感じなの。

 ここでのルパンと次元のやりとりが、良かった。もうこの段階で、ふたりがすごく仲良し、相棒感がすごかった。世界を股にかけてきたおれたちだが、今回はまた新しいな、という次元に対し、ルパンは「おれァこのごろ、この世の中がイヤになってな。なにかといやあちっぽけでうすっぺれえ、みんな手のひらの中の蛙さ」といい、次元もまた「便利便利の世の中で、夢もロマンもなくなった」と応じます。ここ、次元が「ロマン」って口にするのが嬉しい。また、ルパンがここで「だからよ、心機一転、歌舞いてやるのよ」って言い切るのが、まさに今回のコンセプト。面白いなーと思いました。

 まずはお宝を手に入れる発端、そこから、今回の獲物は石川五右衛門と〝卑弥呼の金印〟なるお宝、そして天下一の大泥棒になることだという説明、ルパンと次元のキャラが把握できるやりとりに、ちょっとメタっぽい(風刺でもある)台詞をまぶすあたりが、じつにいいルパンでした。わたしはこの開始3分で浮き浮きしちゃった。いいルパン大好き!

 続き、舞台は南禅寺山門に移り、石川五右衛門の登場です。さすがに「絶景かな絶景かな」は知ってたので分かりましたが、ヴィジュアルが宣材とぜんぜん違って戸惑いました。が、これは歌舞伎正調の石川五右衛門なんだな。そして、そこに現れるルパンと次元。五右衛門とはここで初対面なのか。配信で見て気づいたんですが、ここ、柱にルパンマークのラクガキがあるんですね。しかし、ここで問われて「ルパン三世」って名乗るの冷静に考えるとすごいよね。ルパンってなんだよ、三世ってなんだよ、という世界のはずなんですが、面白い。

 いざ一触即発、な雰囲気になる三者ですが、そこに割って入ったのが不二子ちゃん。キュート!「なにやら覚えの」と反応する次元さんに「いい女だねえ」と続けるルパン。不二子ちゃんの顔を立てて、とこの場は収めようとする三人の前に現れたのは銭形警部でした。

 銭形警部に関しては、なんかもう納得というかこんなん降参するしかないだろ、な感じの銭形警部でほんと笑っちゃった。ここで五エ門に関係を問われ「見知りというより腐れ縁」と三人が声を合わせるの楽しい。

 そしてここで、和楽器演奏による「ルパン三世のテーマ」が鳴り響きます。これ、現地で聴いたときはほんとに感激しました。間違いなくあのメロディ、でも和楽器で演奏されるとこうなんだーと。テーマをバックに繰り広げられる捕物がまた楽しくてカッコよくて! 現地でも夢中になって見ましたが、配信でもよかった。永遠に見てられる。Blu-reyもなる早でお願いします。

 あと、ここですごいことがありましてね! ここの銭形警部と銭形突撃隊(そんな名前ではない、きっと)を相手にしたルパン一味のやり取りで、舞台上にて、次元さんと不二子ちゃん、ふたりきりになってばしっと見得を決める場面があるんですよ! 現地で見たとき、幻覚かと思った。配信で確かめた。幻覚じゃなかった……。嬉しい……。

 そして、一味を取り逃した警部が悔しがりつつ舞台を去ったあと、例のタイプライターの音とと藻に浮かび上がる〝流白浪燦星 卑弥呼の金印〟の文字とおなじみのSE。思わず拍手しちゃった。お約束だけどこういうところをちゃんとしてくれるの、嬉しいよね。

 次の舞台はにぎわう八坂神社の門前です。ルパンと次元の前に現れたのは峰不二子。「ふーじこちゃん」と大喜びして「やるからにはいちどこう呼んでみたかった」と言う愛之助ルパンがメタってて楽しい。さらには抱きつき、キスしようとして平手打ちを食らうまでの流れが実に美しかったです(笑)。「やっぱり不二子は甘くねえか」とあきれる次元さんもいい立ち位置です。

 唐句麗屋が生み出したカラクリ人形のもと、茶店で〝しょこらあて〟(ココア)を飲む不二子とルパンですが、断って煙草を喫む次元さんが実にらしい。不二子ちゃんの解説を聞きつつ、カラクリ人形相手に目を白黒させるルパン。ここ、人形をちまちま弄る動きがすごくルパンで感心しました。ルパンの好奇心強い感じが良く出てる。世相を反映したくすぐりも入れつつ、次元とルパンの仲良し加減も楽しい。

 ここで、情報提供者としての役割をきちんと果たしている不二子もいいですね。次元さんも「さすがは不二子、よく知ってるじゃねえか」とか感心してたし! しっかりお胸があるのに気づきました。それでこそ。

 そしてルパンと不二子の関係性もいい。唐句麗屋と密かに手を結び、情報を小出しにすることでルパンを操ってみせる不二子と、それをあんがい承知して、危うい場所に飛び込んでいくようなルパン。不二子がルパンを裏切る(?)のはお約束ですが、色気頼りの浅はかさではなく、クレバーなのがたまりません。不二子は賢くなくてはね!

 続いて舞台は聚楽第へ。太閤のお宝を狙ったルパンの予告状を持った銭形刑部(警部)が現れ、太閤の近習頭である長須登美衛門と対面します。このあたりの予告状を持った銭形さんがやって来るけど、軽くあしらわれちゃうパターンもお約束ですね。そしてここで銭形さんが取り出した予告状のルパンの似顔絵が秀逸だった。

 ここで、太閤が不死の身体を望んでいることと、唐句麗屋が創ったカラクリ仕掛けの兵を使って大陸出兵を企てていることが分かります。唐句麗屋によると、太閤が機械仕掛けの不死の身体を手に入れる為には、卑弥呼の金印を手に入れて、封じられた技を呼び覚まさなくてはなりません。なおかつ、赤き瞳を持つ一族の生き残りが、雌雄の刀を持って、隕石を切り開かねばならないというのです。

 ここ、太閤を演じる坂東彌十郎さんのお姿を拝見できて、とても嬉しかったです。わたしにとっては、「鎌倉殿の13人」の時政パパ! あとでそれをいじるネタもあって大喜びしました。贔屓もあるかもしれませんが、ここの長台詞も彌十郎さんのお声がとても聴きやすかった……。

 そこに、囚われた次元と太刀の雄龍丸を連れて、ふたたび銭形刑部が現れます。その場で手打ちになりそうだった次元ですが、銭形は次元を餌にルパンをおびき寄せることを提案します。ここ、太閤に無礼なことを言う減らず口が、すっごく次元さんで良かった……。まあこの段階で着物が赤いので、ルパンが化けたニセ銭形なのは明白なのです。「相棒と深き絆のルパン三世」ってどの口が言うかね(笑)。

 次元が獄に連れていかれたところで、宮中からの使いとして呉羽宙納言なる人物がやってきます。これがもうわたし、見た瞬間に「こんな綺麗な宮中からの使いはいない」と笑ってしまいました。五右衛門の変装です。宮中からの使いと偽り、雌雄の太刀を差しださせようとしますが、銭形に見破られ、囚われの身となります。

 ここで、銭形と登美衛門のふたりのまえで、「銭形風情に」といいつつも、いさぎよく観念しちゃうあたりの潔癖さが、すごく五右衛門! でした。松也さんの五エ門はいちいち所作がキレイなのよ……。そして初見では気づきませんでしたが、ここで五右衛門は(あとで登場する恋人の)「糸星」への未練を口にしてるのですね。

 結果として、みごと雌雄の刀を手に入れた銭形刑部は、太刀を帝の御所に持っていくと言い張り、姿を消します。あわてて追いかける登美衛門でしたが、そこに銭形の到着を告げる知らせが。なんと、さっきからいたのはニセの銭形だったのです! 知ってた! 太閤の御前で対面する二人の銭形。本物の証明として「和同開珎」を出す銭形を前に正体を現し、姿を消すルパン。宙づりで消えました、カッコいい! にしてもここは銭形さん大活躍で楽しかった……。舞台からはけるときの和楽器演奏の「銭形マーチ」も最高だった……。

 次の舞台は、獄屋に連れてこられた五右衛門です。しかしそれを迎えた牢番は、次元の変装でした。みんないろいろ変装するの新ルパン味があって楽しいな。獄屋で五右衛門を迎えた牢名主は、リアル93歳の市川寿猿さん演じる九十三郎。今回、こんなご縁で歌舞伎初体験のわたしですが、こういう形で歌舞伎の層の厚さを体感させて頂けたのは幸せなことだと思いました。93歳で舞台に出るってすごいよね……。まあ、年齢で言えば、不二子の笑也さんも実年齢知ったときには声を上げましたけどね……。

 そして、ここでルパンからの見舞いとして500両が届けられていると知り、顔色を変える五エ門の前に現れたニセ次元が楽しかった。配信では「五エちゃん」と呼びかけるチャラいニセ次元でしたが、わたしが見た17日の公演では、関西弁のニセ次元でこれがまた楽しかったです。「わし次元ちゃいますねん!」ってすごく笑った。 そして「見損なったぞ、次元!」って最高の台詞でしたね。

 明日が仕置きの五右衛門のため、別れの宴が開かれます。ルパンから救いの手が差し伸べられていると知らされた五右衛門でしたが、いさぎよく花を散らす、とそれをきっぱり拒みます。しかし、そこでもらった杯には眠り薬が。すべてはルパンの企みでした。そこに医者に扮して獄にやってきたルパン。「五エ門、すまねえ、こうしなきゃおまえを助けられなかったんだよ」って言うのがすっごくルパンだと思いました。「おまえの最後の相手はおれじゃないとつまらないんだよ」はすごい。いつの間にそんなことにと思ったけど、ルパンらしいから不問。

 また、ちょっとした台詞ですが、ここで、ルパンに礼を言われた牢名主の九十三郎が「なあに、次元とは長い付き合いだ」っていうのが、次元さんのアウトローっぽさ、ルパンとはまた違った人脈を持つキャラ立てが感じられてよかった。こういうちょっとしたことが大事。

 しかし、そこに五右衛門と次元の処刑が早まったと役人がやってきます。医者の振りをしてなんとか役人をいいくるめ、さらしと褌姿の五エ門をつづらに詰めて連れ去るルパン。炭治郎かと思った。ここで「このおれがつづら背負ったがおかしいか」とルパンが言うと九十三郎が「五右衛門の台詞を盗みやがった」といいますが、歌舞伎の五右衛門にはきっとそういう台詞があるんですね。

 舞台は変わり、鴨川のほとりに。つづらから抜け出した五右衛門が尺八を手に糸星への想いを語り、ルパンから太刀を奪い返すことを誓います。ここ、初見だと流してしまった。なんせ「糸星」まだ出ていないからね。そこに銭形刑部がやって来て、五右衛門は身を隠すことに。

 ルパンを追って銭形刑部がその場を去ったあと、井戸から次元とルパンが姿を現します。とっつあんが匂いでルパンを追いかけるから井戸に入って匂いを消してたってマジか。そしてここで、ルパンがわざと五右衛門を逃がしたことと、これから隕石を切り開くことができる赤い眼の持ち主を探しにいくことが語られます。ここのふたりのかけ合いが、相棒ぽくてとてもよいです。

 そして、ここで主要人物が揃っての「だんまり」(URL)。なんかいきなりまだ出てない人(糸星)まで出てきて戸惑ったけど、ずらりと登場人物が並んで、刀を奪い合う(というほどのスピードはないんですが)のは面白かった。ていうか立ち位置、次元さんと不二子ちゃんが並んでてわたしが一気に大変になった。不二子ちゃんてばいきなり次元さんから刀奪っちゃうんだよ。みなさんひとつひとつの所作がほんとに綺麗で眼福でした。

 このあとの花道でのルパンと追手の捕物、アニメのルパンのような動きと華やかさでとても良かった。あの狭い花道でよくもまああれだけ揃ったタイミングで宙返りできるものだなあ……。それもまたルパンの動きと絶妙に絡んでるあたりが、アニメでルパンがよくやるあの感じとなっております。赤い羽織をはためかせて、花道を駆け抜けていく愛之助さんはまさにルパンそのひとでした。ここで一幕目が終了。
 
 幕間のあと、二幕目の幕が開く前に、いきなり花道から現れたのは、通人「萬望軒」(マモー)。いまだから言いますが、観劇前に、この萬望軒を演じる片岡千尋さんのツイートでこのお姿を拝見した時には「え、ルパン歌舞伎、マモー出るの?ネタバレ食らった!」とあわてたものでしたが、実際見たらちっともネタバレではなかった。いや、このお姿の人が出るという意味ではネタバレですが、ストーリーにはなんの関係もない役割なのです。

 萬望軒さん、歌舞伎初見の人向けに、さきほどの「だんまり」の説明をしたり、ストーリーの解説をしてくれました。しっかり「複製人間」ネタでくすぐってくれるあたりが楽しかった。そしてここで、さきほどのだんまりで、ルパンが雌雄の刀を奪われたと解説されて驚愕したわたし。いや、まさかストーリーの行き先を左右する肝心なことを、ああいうお約束(?)なところで処理すると思わないじゃないですか。ここで萬望軒さんが説明してくれなかったら気づかなかったなー。あと、いろいろ歌舞伎のPRもされていて初心者のわたしは楽しかったです。

 二条柳町の廓街にやってきたルパンと次元。ここで愛之助さんの次回のお芝居「西遊記」のPRタイム(笑)。そして五右衛門が死罪になった瓦版を手に、一緒に死罪になったはずの次元の名前がないことに呆れるルパン。「おれたち、まだまだ知られてねえなあ」って台詞が、ルパンの若さとプライドを感じさせて良いです。「そこらの座敷で遊んでいくか」ってルパンの台詞に平然と乗る次元さんも良かった。このふたりなら普通に廓で遊んでそうだ。ぜったい粋な遊び方してる。馴染みもいる。そういう次元とルパンも良いものです。

 しかし、そこでBGMが和楽器演奏による「ラブ・スコール」に。花道から現れたのは、花魁仕立ての不二子ちゃん。禿たちを引き連れての揚屋までの練り歩きです。その姿を見つけ、声をかけるルパンに視線だけ向けて去る不二子。この感じ、すごくルパフジで良かった……わたしはジゲフジのひとですが…。

 不二子は「藤峰大夫」として唐句麗屋の座敷に向かっているのです。ここで笑三郎さんが「VIVANT」ネタを持ち出したり。わたしは「VIVANT」分からないので残念ですが、「VIVANT」もルパンとは無関係じゃないですよね。あと、ここの笑三郎さんのイタズラっぽい笑顔が素敵……笑ったあとに目を伏せて煙管をくわえる動きが最高……見えないのに睫毛が揺れるのが見えた(萌)。さすが、歌舞伎、こういうの重要無形文化財っていうのかな……(うわごと)。

 一方、唐句麗屋は不二子を同席させた座敷で、あの太閤の近習である長須登美衛門を、賄賂と廓での接待で懐柔しようとしていました。しかし、潔癖な登美衛門には逆効果。そこに、登美衛門の敵娼として傾城糸星が呼ばれます。しかし、この糸星は、なんと五右衛門と深い仲であり、その五右衛門が死罪となったため、ふさぎこんでいるのです。そのため、暇を願う糸星でしたが、登美衛門と顔を合わせたとたんに顔色を変えます。糸星こそは、赤き眼を持つ僥速日の一族の主、登美衛門はそれに仕える一族の人間だったのです。

 登美衛門は、唐句麗屋の企みを糸星に訴え、糸星は雌雄の刀のうちの雌龍丸を持っていることを告げます。糸星は五右衛門に己の正体を告げており、五右衛門はそのため雌雄の刀を手にいれようとしていたのです。そこに響く、五右衛門の尺八の音。しかし現れた虚無僧姿の男はルパンでした。そこに五右衛門も駆けつけます。五右衛門は糸星に雄龍丸を届けに来たのでした。あわや一触即発となったルパンと五右衛門でしたが、不二子が太閤の追手が来ていると知らせに来ます。

 ここ、危機迫る場面なのですが「やつらの狙いはルパンと五右衛門だけじゃない、糸星さん、おまえだよ」という不二子の台詞、ナチュラルにスルーされている次元さんがお気の毒でした。いや、ほら、刑場でも名前出てなかったしね……。このあと、次元さんがやたらと不二子ちゃんを信用してないこと言ってたのを含め、あんまり仲良くなさそうなのが、じつにジゲフジで良かったです(迷いのない瞳で書いてます)

 しかしここで唐句麗屋を裏切るつもりか、と言われ「あたしが欲しいのはお宝だけ。戦を始められたらいい迷惑なんだよ」と不二子が言い、ルパンが「その通りだ、平和じゃなきゃ、おれたちの稼業は務まらねえよ」と言うのがほんと良かった。ドロボーは平和を愛すんですよ。そうでなきゃ。

 不二子の手引きで廓から逃げ出したルパンと五右衛門は滝を舞台に一騎打ちに。いわゆる「本水」という、ホンモノの水を使った舞台です。和楽器での「斬鉄剣のテーマ」を背景にやりあうふたりの殺陣はほんとに素晴らしかった。アニメに負けない迫力でした。ほんとにバシャバシャ水が流れてる中で切る見得の素晴らしさ。すごいすごい。そして二人の真剣勝負を止めるのが次元の銃声、という落ちまで最高オブ最高。終わったあと「やるな!」と笑いあうふたりも最高。仲良しか。

 ただ、あの、わたくし、自分でも本当にどうかとは思うんですが、この場面に、ひとつだけ不満があります。配信でもそうだったんですが、わたしが観劇した17日、愛之助ルパンさまが、その、ズボン(?)をしっかり着こまれていたのです。そう、着てたの。公演前のゲネプロの写真で見た、縞ぱんつの褌が見られなかったんです! 見たかったのに! わたし、ルパンさまの縞ぱんつを見に来たのに!(そこまで?) それだけがもう残念でならない。見たかったな、縞パンツ(ふんどし)……。

 次元の仲裁で、勝負はおあずけとなったルパンと五右衛門でしたが、そこに登美衛門が現れます。不二子と糸星が唐句麗屋によって連れ去られたと告げ、助けてほしいという登美衛門。もちろんルパンたちは快諾しますが、そこにさらなる追手がやって来て、ルパンたちを先に行かせた登美衛門はそのまま……。二幕はここまで。

 いよいよ大詰め。太閤と唐句麗屋は卑弥呼の金印を手に入れるための準備ができています。糸星は唐句麗屋の秘術で傀儡となっており、その命のままに雌雄の刀を用いて、隕石から卑弥呼の金印を取り出してしまいます。しかし、それは、糸星の中に眠る伊都之大王なる別の存在の封印を解く結果となったのです。唐句麗屋の真の姿は大王の眷属であり、かれの狙いはそこにあったのでした。伊都之大王は王として、己にひれ伏すことを太閤に命じますが、太閤がそれに従うわけもありません。が、大王の絶大なる力に、身動きできなくなってしまいます。

 そこに連れてこられたのは不二子。命乞いをしろ、という唐句麗屋を毅然とはねつけます。「裏切りはこの身を飾る女の宝石。このあたしに未練とは、おまえ、つまらない男だねェ」って、解釈一致しすぎて拍手した。裏切りは女のアクセサリー。ルパンが言うなら強がりあるいは達観だけど、不二子が言うなら、女を甘く見た男への最後の一撃となる誇りになるのです。この絶望的な状況においても、顎を高くあげて愚かな男をからかうなんて、これぞ不二子だよ、カッコいいよ……。

 怒り心頭に達した唐句麗屋によって、雌雄の刀でなぶり殺しにされそうになる不二子。しかしそこに響いた銃声は……。ルパンのものでした!

 ごめんなさい、わたしこれ、現地で観劇した際は、銃声だから次元だと思ったんですよ! わたしの座席からは次元さんの立ち位置がほとんど見えなかったし。だから、不二子ちゃんの危機に次元来たーってウチワを振った(比喩)のに、配信で確認して、ルパンだったと分かって、その……がっかり……(ごめんなさい)。

 いや、そうですよね、そりゃルパンですよね。なんのための刀との銃の二刀流やねんって話ですもんね……。でもさ、ここでBGMが、和楽器演奏の「トルネード」になるんですよ、誤解しても仕方ないじゃない? 和楽器演奏の「トルネード」ももちろん素晴らしかった。ほんとサントラ出ないかな……。

 まあ、このあとの「待たせたな、助けにきてやったぜ」「ずいぶん待たせるじゃないの」「そう言うんじゃねえよう」というやりとりは新ルのルパフジぽくて、良かったです。さらに、ルパンと次元、五右衛門がそろったところに銭形刑部がやって来て「ルパン逮捕だ!」といったときの「とっつあん、いまそれどころじゃないんだよ」にはリアルで笑った。たしかにそれどころではない(笑)。

 でもそこですぐに現状を飲み込んで「これは捨て置けぬ!」と捕手の皆さんに命令するとっつあんはじつにとっつあんだった。この捕手の皆さんも銭形突撃隊なんだろうな。このあとのからくり兵とルパンの大立ち回りも良かったし、最後に助けに来るのが次元っていう流れも素晴らしい。歌舞伎の見得ってほんとカッコいい。舞台写真のプロマイドが売れるのも分かる(わたくしも注文しました……主に笑三郎さんを……)。

 次元の銃もルパンの刀も効かない伊都之大王。しかし、そこに五右衛門の尺八の音が。五右衛門は伊都之大王の中に眠る糸星の存在を呼び起こそうとしたのです。やがて、姿を現す糸星。しかし、ひととしていられる時間はあとわずか。糸星は、ひとの気持ちを保っているうちに、自分の命を奪って欲しいと五右衛門に懇願します。もちろん拒む五右衛門。しかし、糸星の気持ちは固く、それ以外に方法はないと悟った五右衛門は、糸星を手にかけるのでした。

 ここ、伊都之大王と糸星、てっきり別々の役者さんがやってるのかと思ったら、いわゆる早変わりというやつで、演じているのは尾上右近さんおひとり、とあとで分かって驚愕しました。ぜんぜん分かんなかった。配信で見てもカラクリが分からない、まさに早変わりで、すごいなーと思いました。

  糸星と五右衛門の悲恋ですが、最初、観劇したときには、最初、あの五右衛門に浮いた話が、と驚いた展開でもあったのです。が、この歌舞伎の世界線の五右衛門ならぜんぜん有りだし、糸星を愛しく思い、糸星もまた五エ門をまことの気持ちで想うようになったのも納得できる、そういうふたりであったと思います。悲恋ではあるけれど、五右衛門には似合いの悲恋、というか、キャラ把握的にも歌舞伎というお芝居的にも正解だと感じました。つくづく、お芝居ってすごい。

 また、この糸星と五右衛門の悲恋を見届けたルパンが「五右衛門、おまえは天下の大泥棒さ。心のないカラクリから心を奪っちまったんだからよ」と言うのも、様式美の美しさがありました。好き。

 そして、糸星に五エ門が捧げた雌雄の刀と糸星の心が解け合って、一振りの刀となったあと、主を失った唐句麗屋が現れますが、五右衛門は不死の身体となった唐句麗屋をその刀で切り伏せます。「つまらぬものを斬ってしまった」と一言五エ門がいったあと、それを「斬鉄剣」とルパンが名づけたあと、五右衛門はルパンたちと上下のない仲間になります。そして、不二子が新しいお宝「草薙の剣」を口にするや否や、それに向かって駆けていく五右衛門。この一連の流れが素晴らしかった。これはつくづく五右衛門の物語なのですね! 

 ここ、駆け出していく五右衛門の笑顔と、五右衛門が次元のマントを翻していくのが良かった。それを受けての「あいつはほんとうに刀に目がないんだな……これぞ世にいう〝刀剣男子〟」って誰がうまいことを言えとの笑三郎次元さんも完璧だった。真面目な顔して言うんだもん。そこでおまえも銃をこよなく愛してるじゃねえか、とルパンに突っ込まれ、「ちげえねえや」と笑って目を閉じ、己の銃に頬を寄せる笑三郎さん。この場面のプロマイドが無いのはどうしてですか!(真剣) そしてさらにおねだり不二子ちゃんとルパンのいちゃつきに呆れて場を去るまで完璧な次元さんでした。

 また、これからのいつものルパフジのやり取りも楽しかった。ルパンのキスを指先だけで止める笑也さんの仕草のエレガントなこと! そしてそれで終わらず、太閤と銭形によってお話全体の落ちがつけられるのが美しい。お話にはこういう幕引きがないといけません。

 そしてそして、待ってましたの白波五人衆! ルパンが歌舞伎、と聞いてこれを期待しない方が嘘でしょうと思ってたんですが、実際やられるとすごいですね。もう皆さまが麗しくもカッコ良く、満足以外の何物でもありません。アニメとは違う口上も、キャラ把握完璧の素晴らしさで、永遠に見てられます。ぶっちゃけ、笑也さんの「ボインボイン」も聞きたかったのですが、最後のウィンクでやられた。

 最後 獲手を前に五人が見得を決めた瞬間に、特効で客席にも小判が降り注ぎ、音高く和楽器での「ルパン三世のテーマ」が鳴り響いた瞬間に、泣いちゃうかと思いました。すごい、カッコいい、最高!

 というわけで、全体のみっちり感想でした。長くてすみません……。配信だといちいち映像を確認しながら書けるので、時間がかかってしまった。

 真面目な話、ルパンが歌舞伎、と聞いて、驚きつつも喜んだものの、歌舞伎まったく初心者のわたしは、楽しめなかったらどうしよう……と思ってたんですね。でもまったくの杞憂でした。宝塚のときもそうだったんですが、やっぱり一流のプロのお仕事は違います。ちゃんと原典リスペクトの上で、期待以上のものを見せてくれるんです。ほんと素晴らしかった。楽しかった。

 全体的には、驚くほどの五右衛門回だったんですが、まあ歌舞伎だし、それは正解ですよね。でも他のキャラクターも素晴らしいの。新ルパンのキャラクター造形ってやっぱりすごいんだなと思いました。あのラインをちゃんとなぞればきちんとしたものができるのだ。そして、ストーリーがそれを邪魔してない。良かった。最後の最後に、この人たちのお話は続いていくんだよ、という道が示されるのも嬉しかった!

 各キャラについては、愛之助ルパンはホントにルパンでした。とにかく明るくて華がある。あたりまえかもしれないけど、ルパンはこうじゃなきゃ。台詞ひとつひとつ、ちょっとした仕草もルパンで堪能しました。笑也不二子はとにかく綺麗! そして男性キャラ以上に仕草や手の動きが重要な所を完璧にしてくださいました。最後の白波五人衆、花道での唇だけでキスを飛ばす仕草に倒れました。松也五右衛門は、ふだんバラエティ番組とかで目に入るお姿とまったく違う凛々しさと美しさを堪能しました。すべてが五右衛門らしいキャラで、ほんと良かった。中車銭形は、なにもいう気にならない(笑)。言う必要もないくらいに楽しかったから。

 でも、感想をご覧になった方にはすでにバレてると思いますが、わたしが今回、魂を奪われたのはなんといっても笑三郎次元です……。ぶっちゃけ、目立った出番はないのですが(言っちゃった)、ルパン同様に、キャラとしてのブレがないので、普通に次元が具現化してた。ルパンとの関係性が最高。ヴィジュアルも完璧。笑三郎さんのブログのこの写真見て下さい(URL)この笑三郎次元で次元回やられたらわたし新橋に住まなきゃいけなくなります。助けて。

 あと、わたしの感想なので、ジゲフジ的観点からも語られなくてはならないのですが、観劇の段階できゃっとなったジゲフジ場面が勘違いだったので……。ていうか、とてもルパフジが良いルパフジだったので、今回はそれでいいかなとも思いました。もっとも、次元が基本的に不二子を信用してないのはポイント高いです。あと、ヴィジュアル的にすごくお似合いだった。うっかり続編とかでふたりの絡みが増えたら大変です。
 
 というわけでルパン歌舞伎の感想でした。ひとりでも多くのルパンファンにはぜひご覧いただきたいところながら、配信も期間限定なので、円盤にならないかなあと思います。あるいはシネマ歌舞伎とか! ぜひ! もちろん再演でも新作でも! まだまだお話作れるでしょう、ルパンってなんでもできるんだよ! そんな思いになりました。ほんとうに良い「ルパン三世」でした。ありがとうございました!

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