「麻雀飛翔伝 哭きの竜 外伝(1)?(3)」能條純一(竹書房・近代麻雀コミックス)



 …買っちゃった。真夜さん宅で全巻読んでるのにも関わらず、マンガ喫茶でも読み返して、いちいち「きゅー」とか「むきゅー」とか呻いていたのが、自分でも気持ち悪かったので、買っちゃった…。
 
 かの名作「哭きの竜」の新作です。話は一応、前作の続きになっています。前作のラストでヒットマンに殺されたはずの竜が生きていて、東西のヤクザ組織の対立構造の渦に巻き込まれていくというか自分で渦を作っているというか。わたしは麻雀がまったく分からない人間なのですが、それは将棋がまったく分からないまま「月下の棋士」全32巻を問題なく読み終えたわたしでもあるので、問題ありません。もちろん、読み終えたあとでも、将棋も麻雀もわたしにとっては未知のもののままです。とりあえず、座って勝負するだけで、血を吐いたり心臓が止まったり白髪になることは学びましたが(間違ってる)。
 じゃあなんでこの作品に惹かれるかといえば、能條先生ならではの濃いキャラクター、ケレン味たっぷりの台詞と展開などの魅力はもちろんのことなのですが、もう第一にが。絵が好きです。こんなに美しい線あるかしらと思います。とくに主人公の竜の造形に関しては、髪の一筋、目の下の影、切れ長の眉、いまどき七三な分け目、どれをとっても奇跡のごとく、美しいのです。「月下の棋士」でも、主人公のやんちゃ坊主が将棋を始めたとたんに、美形度マックスのため息モノの顔になってくれましたし、現在連載中の「アレルヤ」でも、ヴァイオリンを持ったとたんに、そこらのお兄ちゃんが人形のように美しくなってくれていますが、今作の主人公である竜にいたっては、出番の95%が麻雀をしているところなので、その鋭利な美貌ばかりを眺められるといっても過言ではありません。ああ、もう能條先生、元彌を描いてください。(わたし、しっかり…)
 もちろん、能條先生はプロなので、ただ綺麗な青年ばかりを描いているわけではありません。脇役から重要な登場人物まで95%はヤクザなわけですが、それぞれがとても濃いキャラなのです。いいオヤジ顔だったり、インテリ風だったり、本当の意味で絵に描いたようにヤクザだったりと、その描き分けを見ているだけでも、楽しい。画面の隅々、夜の歌舞伎町の背景に至るまで、能條先生の視点が行き届いている感があって、この構成がたまらないのです。ここまで線が美しく繊細、なおかつ大胆だと、本当になぜ女性キャラだけが美しくないのかが疑問です。いえ、美しいキャラとして扱われているのは分かるのですけど、その、竜の方が100万倍美しい…。
 そしてそんなに美しい魔性の男(本編でちゃんとそう書かれてるんだもん…)である竜は、ヤクザの血で血を洗う抗争のなか、ふっと息を抜き、「あんた、背中が煤けてるぜ」とつぶやいて、哭き続けるのでした。ああもう、わたし、この竜の姿を手元に置いておけるだけでこのコミックス買って良かった。そしてさらに、そんな竜をいとおしく思い(本編でちゃんとそう略)、ただ追い詰められていく関西の親分、堤との関係はどうなっていくのでしょうか、そんな二人が危うい糸で結ばれていくのを月が見ています(本編で略)。能條先生、頑張ってください。応援しています(なにを)。

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