「不安の種+(2)」中山昌亮(秋田書店・チャンピオンコミックス)



 日常でふと通り過ぎる、この世のものでないものたちとの邂逅、或いはもっとおぞましいものとの対面を、オムニバスで描いた連作短編集です。ひとつのエピソードが数ページなので、あっけないといえばあっけないし、パターンではあるかもしれないけれど、これだけバリエーション豊かに「なにかがいる感じ」「絶対に踏み入れてはいけないところ」「見てはいけない存在」を描けたら、それもいいのではないでしょうか。描かれる異形のものたちは、時にどぎつくグロテスクなデザインではあるのですが、出しすぎていない。なにが欠けてなにが強調されていたら怖い、ということをよく分かっている描き方だと思います。
 世にいくらでも溢れるホラー系のマンガでも、わたしがこれを気に入ってる理由は、そのほど良さ感にあります。ホラーは、絵で見せるマンガだと、とにかくどぎつい描写を見せるインパクト勝負になったり、人間関係の歪んだ構図をこれみよがしに強調したり(女子向けホラーはとくにそうなりますね)、と味が濃くなりがちだと思うのですが、この作品はそれをぎりぎりで押さえて、出すときは出して、のバランスがとても巧い感じがします。気持ち悪いものを見たいのではなくて、一瞬、ぞっとする感覚を味わいたい、わたしのようなタイプのホラー好きには、それがたまりません。どこまでそのバランスを保っていけるのかなと思いつつ、続きを楽しみにしたい作品です。どの巻から読んでも問題ないうえに、安めの価格設定でもありますので、奇妙な話や、小さな怖い話がお好きなかたはぜひどうぞ。おすすめです。

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