「フラグメンツ?」 山本直樹 (小学館)



やはり短編が好き。この作品集では、「小指の思い出」と「みはり搭」と「ASPHYXIA」がとくにお気に入り。
 「小指の思い出」は、ストーリーを説明することにあまり意味はないのだけど、ラストのコマにたどりつくまでの流れが見事。山本直樹というひとは、この手の夢とうつつの境目がはっきりしない世界を描くのがすごく上手い。怖い。
 「みはり搭」は、三年ぶりに再会した親戚の女性と二浪の男の子との話。ラスト数ページがすごくいい。なんかいうことあんまりないです。展望台の風とそこから見る風景をわたしもたしかに見ることが出来た、みたいな陳腐ないいかたしか出来ないんだけど、「夢だね」という波の台詞のせつなさと怖さが分かるから。
 「ASPHYXIA」は、首を締められながらでないとイケない女性と関係を重ねる男の話。首を締められるたびに彼女が見る「この世のものでないもの」がほのかに怖い。電話の音も怖い。恋愛じゃなくセックスを通じてつながる関係の、希薄だけれども離れがたい感じ、でもそう口に出すと陳腐になる空気の密度みたいなもの、を感じました。
 エロな描写も多いので、抵抗あるかたもいらっしゃるかと思いますが、これでないと味わえない世界が確実にあります。 夢の現在化。 

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