「スプーンマン(上)」浅田寅ヲ(幻冬舎コミックス・幻冬舎)


 タイトルと表紙で買いました。そしたら当たりでした。こういうことがあるから、ネットだけじゃなく書店通いはやめられない。検索かけたら、森 博嗣の作品をマンガ化してるひとのようですが、そこらへんはわたしは未読です。
 舞台はアメリカ。かつて高校で銃乱射事件を起こしたレインとかれの庇護者である幼馴染、二人が拾ったこども、という三人のロードムービー的なお話です。デジタル処理された多田由美系のストイックな絵柄がまず魅力です。均質な線と、美しい構図。謎めいたストーリー展開もいい感じ。とにかく情報が少なくて、物語全体の構図をつかむまでには数回の再読を必要としたのですが(すみませんわたしだけですか)、必要なピースを一個ずつ拾って集めてみるような、その作業自体も愉しいのです。結果、広がった世界はとても寂寥で美しいから。一種の擬似親子もの(捨て子とそれを拾ったこどもの話)なので、ぶっちゃけJUNEであると云ってもいいかな。あ、でもそういう描写は皆無ですから期待しないでね。
 巻末の初期作品(おそらく連載の元となった読みきり作品)が、二人の関係性がナマで出てる感じがして、とくにいい感じです。明るいしね。
 そしてこのコミックス、(上)とあるのですが、2002年9月以降、(下)は出ていない様子…。でも、これ一冊でも楽しめますので大丈夫ですよ。

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