「ネオ・デビルマン全三巻」 永井豪他 (講談社・モーニングKCデラックス)



 永井豪の「デビルマン」をモチーフにした各マンガ家によるアンソロジー。個性もジャンルも異なる作家さんが総勢18人も参加しているため、当然のことながらそれぞれの作品にばらつきも多く、当たりはずれもございます。以下はあくまでわたしの感性によるおすすめ作品のリスト。
 1巻では江川達也と寺田克也。江川達也は原作マンガにも登場していたデーモンに寄生された少女を主役に丁寧に原作をリプライズしていました。ラストの1ページは良く判らないんだけど。寺田克也は美しいカラーでデビルマンとシレーヌ(なのかな、やはり)のまぐわいにも似た闘いを描いています。絵の勝利。
 2巻では岩明均と長野のりこと高寺彰と夢野一子(しまった、永井豪を外してしまった)。どれも作家性を生かしてオリジナルのデビルマンを描いています。とくに長野のりこと夢野一子は女性作家ならでは(という云い方は好きでないが)の繊細な絵柄と心理描写がいいなあ。夢野一子の「おまえとワタシはひとつになるのだ」にはちと泣けた。
 3巻ではとり・みきと田島昭宇と安彦良和。とり・みきの重苦しい雰囲気溢れる作品はまさに最終戦争の一歩手前の空気にふさわしいです。田島昭宇は、絵が良いですね。スッキリとした綺麗な線で描かれたシレーヌとデビルマンの戦いだけでなく、良と明の関係も良い感じ。安彦良和は内容はともかく(笑)このひとの絵で描かれたデビルマンを見られて幸せ。
 こういうアンソロジーがなりたつということで、人間の持つ原罪、神と悪魔、最終戦争というモチーフの一般的な普遍さを実感します。そしてこれだけ並んだ作品すべての底辺に感じられる原典へのリスペクトも。「デビルマン」好きには当然おすすめですが、自分の好きな作家さんが描いている場合も、面白いと思います。

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