「第二次世界大戦紳士録」ホリエカニコ(ホビージャパン)



 題名通り、戦前から第2次世界大戦における日本とドイツの軍人を、その人となりが伺えるエピソードと蘊蓄たっぷりに紹介するコミックです。
 マニアも多いこのジャンルですので、本当にうっすらとした興味があるていどのわたし(ええ、基本は軍服萌えですとも)などがあれこれ言うわけにはいかないのですが、そういう人間でも、すらすら読める分かりやすさと楽しさなのは間違いないです。なんかもう抵抗できない軍服の描写の麗しさにはじまって、歴史というものを考えさせられる内容、笑えるコミカルな描写、おお、と思うような逸話やくすりと笑いたくなるようなエピソードを読んでいるうちに、「戦争」という大きな運命自体にまで思いを馳せる事が出来るようになる、傑作だと思います。
 とにかく細かく描き込まれた書き文字ひとつひとつが面白いレベル。表紙からは綺麗で耽美な作風かと思われそうですが、二等身デフォルメキャラは可愛く、ギャグは、なんかもう本当に容赦無い。史実はもちろん、語り継がれていくうちに伝説と化したであろうエピソードもあるのでしょうが、ヒトラーやゲッペルス、山本五十六に山口多聞といった有名どころはもちろん、この本で初めて知ったひとでも、その人となりをなんとなく感じることができるのは、著者によるそれぞれの人生のエピソードの抽出力と、それを適切にまとめあげる力のおかげなのでしょうね。
 もちろん、2.26事件にはじまり、最終的には沖縄、終戦にまでいたる第2次世界大戦当時の人々を紹介したものですので、笑って楽しいだけではすまされない哀切なエピソードもたくさんあります。本当に、たくさん。そして、それらを読んでいるうちに、一つの大きな戦争という渦の中でも、それぞれにもがき、自分の信じる道を歩んでいったであろう人々の不器用さ、まっすぐさ、恐ろしさ、そんな様々なものを感じることになりました。当たり前の話ですが、人間は、どんな状況下でも、結局は人間なのだなと思います。
 そしてわたしは、著者の戦記物同人誌を全部総集編にして商業出版で再版してほしいと心から願うファンでもあります。本当に、もっと読みたいなあ。

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