日日日氏が20歳になって書いた一般文芸小説がこれ。「ちーちゃん」「うそつき」と同じ舞台で重なる人物が登場する作品です。
が、ギミックにやられた「ちーちゃん」、ナイーブさが心地よかった「うそつき」と、大きく違って、ちょっと耐えられないような話でした…。現実を処理しきれずに「虚構」の世界に生きるしかない少女の世界を、ここまで巧みに暴いてしまったその手腕。不幸とか哀しいとか、やりきれないとかではありません。登場人物の辿る道は先行する「ちーちゃん」ですでに明らかなので、その運命が悲劇なのではありません。それがもたらしたカタストロフにやられた。未だにこの小説で描かれているある種の心情をブロックして、そのまま受け止めていない自分がいます。これはもうなんか文学賞やろうよ…そういう小説だよ…。
ギミックはあるものの、あまり問題ではありません。キャラや台詞のラノベっぽさとか展開の読め具合とかも関係ありません。そういうことがいちいちひっかかって読めなくなる人はもう読まずにいてくださいとむしろお願いしたくなる。そういうことに気づく自分もいやなくらいで、それを含んでなおあまりあるこの世界の絶望と哀しさに圧倒されました。ラスト近くの線路のシーンのもたらす虚脱感と、その正しさに、泣きたくなりました。
「すべての少年少女に贈る」と表紙裏にはありますが、少女は読まないほうがいいというか、少女は分かるんだろうかこれという気分にさせられるのです。嵐のただなかにいる人間にその嵐の全容は見えないように。