萩尾望都SF最新作の続刊です。まだまだ世界の全体像はつかめないままだけど、ソレを取り巻く根は広がり、伏線がばらばらと実をつけはじめて膨らんでいる、そんな感じ。
 萩尾作品の特徴のひとつでもある擬似家族と子どもを飲み込む母親のモチーフも出てきましたが、「またか」という感じではありません。そんなこというなら、こどもの心的外傷というのもいつものモチーフであるしな。しかしそのおなじみの素材をここまで美しく構成し、魅力的な物語たらしめる力量は、ベテランならでは。それに加えて、一箇所に留まらないでいる現役感がある。本当に、こういうひとを生粋のマンガ家というのでしょう。登場人物ひとりひとりの思惑と、その危うさがどういう結末をもたらすかが読めそうで裏切られそうで、面白いなあと思います。個人的には、『火星』という舞台の登場が、いかにもオールドSFって感じでとくに面白い。そして、渡会の「記憶はすぐにだまされる」という独白が、キーワードになりそうな予感。
 それにしても、こういうマンガは、色々理屈はいわずに、ストーリーのもたらすドライブ感に身を任せて読みふけっていけばいいんだけど、コミックス一巻って短すぎるんですよね。もっとまとまって続きが読みたいな。雑誌で読んでたら気が狂うな。

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