「凶気の桜」ヒキタクニオ(新潮文庫)



 これまた映画化された有名作品ですが、自分のツボとは違うよなあと手に取るのが遅れた一冊。読んだらびっくり、一気に読める面白さでした。
 ネオ・トージョーという名前で渋谷を中心に暴れまわっていた若者三人が、それぞれのかたちで大人の準備した罠に絡み付かれていく様はリアリティもあるし、スピーディーな展開で飽きさせません。登場人物も魅力あります。嘘くさくない。 ところどころに、どっかで見慣れた展開ややりすぎに出来過ぎな部分もありますが、そういうものだと思って読めばいいのでは。確かに映像で見たくなる作品であります。あと、欲を言うならネオ・トージョーの三人の活躍というかなりたちというか、やんちゃというかをもっと最初の部分でたくさん読みたかったです。それがあれば中盤からのかれらの運命をさらに身にしみて感じることができたかな、と。
 そういえば、わたし、日本のハードボイルドには詳しくないのだけど、昔読んだ大藪春彦の一連の作品を思い出しました。大藪よりウェットだけど、そこがいいひとも多いでしょうね。

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