まさか9年ぶりとはさすがに驚いた、ジョナサン・キャロルの新作です。ううん、キャロルは書いてたの。翻訳されたのが9年ぶりなの。何故そんなことになったかといえば、日本では売れない、からだそうです…。そうだなあ、ファンタジーだけど、優しくないし、ミステリーとしても、名探偵が出てくるわけじゃないし…。でも面白いんだよう、皆さん「死者の書」あたりから始めてください、臣民ならたまらない構造だから!
で、待ちに待たされた本書ですが、まずは装丁がツボ。実に美しいです。
肝心の内容はといえば、なにを書いてもネタバレになりそうですが、とってもキャロルらしい作品であると同時にらしくない作品でもあります。エキセントリックなキャラクターの魅力や独特の文体、ハラハラが止まらないどうなっちゃうの感などは、キャロルの持ち味そのまんまではありますが、ストーリーの組み立てと後味が…。 えー、ぶっちゃけ普通のミステリーと言ってしまってもいいので、そこがいちばんびっくりです(笑)いや、これで一般読者を増やそうっていう創元社の戦略だね!じゃあ次はぜひ「月の骨」を(よしなさい)。なので、「ダークファンタジーの帝王」とかの評判に敬遠していたかもしれない、従来のキャロル読者以外のかたにお勧めかも。でもキャロルファンにももちろんお勧めですよー。キャロルはやっぱりキャロルですから。
あと、個人的に一番恐かったのは、解説に添えられたキャロルが書いた本書執筆の経緯だったりします。それは怖いなあ…。